調査・研究

ホーム > 調査・研究 > 日本銀行レポート・調査論文 > 地域経済報告(さくらレポート) > さくらレポート別冊 「地域における人材の確保・育成に向けた企業等の取り組み」

地域経済報告―さくらレポート―(別冊シリーズ)* 地域における人材の確保・育成に向けた企業等の取り組み

  • 本報告は、上記のテーマに関する支店等地域経済担当部署からの報告を集約したものである。

2019年12月6日
日本銀行

【要旨】

わが国では、人手不足感が強い状態が続いている。特に地方圏では、若年層を中心とした東京圏への人口転出が生産年齢人口の下押しに効いており、その影響に対する危機感が強い。

こうした状況のもと、企業や自治体、教育機関等は、自社や地域の人材確保・育成に積極的に取り組んでいる。まず、個別の企業による取り組みを概観すると、第1に、イベントなどを通じて企業の認知度を高め、中長期的な採用力を強化する動きがみられる。第2に、スキルのある人材の需給タイト化を踏まえ、採用の範囲を拡大しつつ、IT人材や将来の幹部といった社内で必要な人材を自前で育成する事例がみられる。第3に、女性や高齢者に加え、外国人材や無業者、自社を一度退職した人など多様な人材を採用し、人手不足感の解消や事業の拡大につなげる動きがある。第4に、近年の就労意識の変化等を踏まえ、制度や運用面をきめ細かく見直すことにより離職抑制等に取り組む動きがみられる。最後に、人事や経営のあり方を思い切って見直すことなどによって従業員のモチベーションを高め、生産性の向上や離職抑制を図る動きがみられる。こうした取り組みに共通しているのは、多様な人材が活躍し得る環境の整備が人材確保の必要条件であるとの認識や、社内の人材を戦略的に育成しなければ企業は成長できないとの認識であると考えられる。

次に、地域に人を呼び込むという視点から、関係者間で連携して人材の確保・育成に取り組む動きを紹介する。第1は、教育機関等との連携の強化の動きである。Uターンの推進等に象徴されるこれまでの回帰を促すための連携に加え、最近は若年層の転出を抑制するために企業と教育機関等が連携して取り組む事例がみられている。また、企業間でも人材融通や副業の容認を通じて地域内で人材を効率的に活用しようとする事例がみられる。第2は、農業や観光などの地域の「強み」を活かした事業に対し、地域が一体となって支援する取り組みである。差別化された製品やサービスを提供する企業の創出・集積を促進することで、地域の雇用創出力の向上を目指している。

地方圏における人材確保の状況は、東京圏への人口シフトが続いていることが示すとおり、全体としてみれば引き続き厳しい。しかし、個別にみれば人材の確保・育成に一定の成果を上げているとみられる取り組みが地域を問わず存在する。企業等からは、地域全体の視点からの課題として、(1)デジタル化などの環境変化への対応、(2)地域の基礎体力の向上、(3)粘り強い取り組みが必要との指摘が聞かれる。課題の克服に向けて前向きな動きが数多くみられる中、それら企業等の取り組みが、政府の施策とも相俟って、地方圏における人材の確保・育成と地域の活性化につながっていくか注目される。

日本銀行から

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行調査統計局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

調査統計局地域経済調査課

島田
Tel:03-3277-1357