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地域経済報告―さくらレポート―(別冊シリーズ)* 地域の消費関連企業の価格設定行動の変化と2026年度の価格改定方針

  • 本報告は、上記のテーマに関する支店等地域経済担当部署からの報告を集約したものである。

2026年5月15日
日本銀行

要旨

長年続いた賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方はここ数年で変化しており、地域の消費関連企業の価格設定行動も従来よりも積極化している。そうしたもとで、最近は、消費者の節約志向やメリハリ消費の動きに対応する様々な工夫を凝らしつつ、原材料費の上昇分だけでなく、人件費等の上昇分を販売価格に転嫁する価格改定の動きが着実に広がっている。この背景には、(1)高水準の賃金改定率や最低賃金の引き上げが続いていること、(2)家計において製商品・サービスの価格が緩やかに上昇するとの見方が続いていること、(3)競争力の高い大企業等が先行して値上げを実施していることにより、地域の消費関連企業でも値上げができるようになっていること、(4)一部の地域・業界では競合企業の減少等から価格競争が幾分緩和していること、(5)納入先が価格の安さよりも安定調達を重視するようになっていること、(6)政府が適正な価格転嫁の実現に向けた取り組みを強化していること、があげられる。

2026年度の価格改定方針に関しては、大半の企業が、自社の人件費および取引先の人件費由来のコスト上昇分の転嫁のため、値上げを計画していることが確認された。中東情勢の混迷が明らかになる前までは、食料品などにおいて既往の原材料価格の上昇が落ち着いてきたことを受け、2025年度対比で値上げ幅の縮小を計画している企業が多かった。もっとも、中東情勢の影響を受けて、燃料・エネルギーコストや石油関連製品の仕入コストの大幅上昇に直面する企業が値上げ幅を拡大する計画を示し始めている。具体的には、石油由来の日用品や包装コストが上昇している食料品などの製造業のほか、温浴施設などの生活関連サービス業や飲食業において、一部に値上げ幅拡大を決定する動きがみられた。このほか、コストがどこまで上昇するか等を見極めたうえで、近々、値上げ幅を拡大するかどうかを決定するとの声が聞かれ、具体的な値上げのタイミングとしては、夏場以降を検討しているとの指摘が聞かれた。ただし、小売業の一部からは、競合他社の出方を様子見する必要があるとして、今後、商品の仕入価格が上昇したとしても、販売価格への転嫁は慎重に進めるとの声が聞かれたほか、サービス業でも、国内外の景気が下押しされ、需要が減少するとの懸念から、中東情勢の影響による追加的なコスト上昇分まで販売価格に転嫁していくことは難しいとの声も聞かれた。

日本銀行としては、高水準の賃上げを受けた人件費上昇の販売価格への転嫁が継続する中、中東情勢の展開が、今後、地域の消費関連企業の価格設定行動をどのように変化させるのか、引き続き丹念に点検していきたい。

日本銀行から

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行調査統計局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

調査統計局地域経済調査課

Tel:03-3277-1357