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邦銀の利益と市場の評価

当期純利益と包括利益の比較

2011年7月13日
金融機構局 崎山登志之、山下裕司

要旨

わが国の上場企業は、2010年度決算から包括利益の開示が義務付けられた。包括利益の開示は、包括利益計算書という注目度の高い財務諸表で行われる。また、米国では、包括利益が導入された1998年を境に、有価証券評価損益の変動を含むその他の包括利益が重視されるようになったと言われている。このため、わが国金融機関の場合も、これを評価する際の市場の目線は、従来以上に包括利益を重視する方向に変化する可能性がある。邦銀の包括利益の変動は、株価変動の大きさを反映して、当期純利益の変動に比べて格段に大きい。従って、市場が包括利益を重視する場合、邦銀の収益に対するリスク認識が強まり、邦銀の資金調達コスト等にも影響が及び得る。邦銀は、株式保有のリスクとリターンを従来以上に慎重に見極め、リスクが大きいと判断される場合には、リスクの削減に向けた努力が求められる。

日本銀行から

日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。ただし、レポートで示された意見は執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。

内容に関するご質問等に関しましては、日本銀行金融機構局 山下裕司(yuuji.yamashita@boj.or.jp)までお知らせください。