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財政状況と長期金利

2015年11月27日
中村康治*1
八木智之*2

要旨

本稿では、OECDに加盟する23か国の1980年から2013年までのパネルデータを用いて、財政状況などが名目長期金利に及ぼす影響について定量的な分析を行った。分析の結果、労働生産性や労働投入量、インフレ率に加えて、財政収支や国民負担率、経常収支(=国内貯蓄)が名目長期金利に影響を及ぼすことが分かった。特に、財政収支については、将来の財政の持続性に影響すると考えられる政府債務残高の水準の高低によって、名目長期金利の弾性値が異なるとの結果が得られており、名目長期金利の財政収支に対する弾性値はこの変数に依存して非線形であることが分かった。また、国民負担率が低い場合は、将来の財政再建に対する期待から、長期金利が低位に抑えられるとの結果も得られた。このほか、近年では、非伝統的金融政策が、名目長期金利の押し下げに寄与していることも分かった。

キーワード
長期金利、財政、金融政策

JEL分類番号
E43、E52、H62、H63

本稿の作成過程では、日本銀行の多くのスタッフから有益なコメントを頂戴した。記して感謝したい。もちろん、あり得べき誤りは筆者らに属する。また、本稿に示される内容や意見は、筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行調査統計局 E-mail : kouji.nakamura@boj.or.jp
  2. *2日本銀行調査統計局 E-mail : tomoyuki.yagi@boj.or.jp

日本銀行から

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