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生産性の向上と経済成長

2017年10月20日
中村康治*1
開発壮平*2
八木智之*3

要旨

本稿では、中長期的な経済成長の源泉となる労働生産性を巡る最近の議論を整理し、統計データにもとづく事実確認を行う。そのうえで、近年、わが国の労働生産性成長率が鈍化している背景について、いくつかの考察を行い、わが国経済が持続的成長を実現するための課題について検討を加える。

主要先進国の労働生産性成長率は、近年、鈍化傾向にある。こうした労働生産性成長率の鈍化には、主として全要素生産性(Total Factor Productivity, TFP)成長率の伸び悩みが影響している。日本において、TFP成長率が伸び悩んでいる原因として、第一に、資本や労働といった経営資源あるいは研究開発によって蓄積された技術やアイデアを効率的に活用できていないこと、第二に、そうした経営資源が企業間で効率的に再配分されていないことが指摘できる。

日本の生産性を中長期的に高めていくためには、経済社会環境の変化や新しい技術の出現に合わせて組織としての仕事の進め方を柔軟に変えていくとともに、金融資本市場や労働市場の効率性を高めることで資本や労働といった経営資源の再配分を促すことが望ましい。

JEL分類番号:E20, O30, O47

キーワード:生産性、潜在成長率、無形資産、資源再配分

本稿の執筆に当たっては青木浩介、一上響、加藤涼、亀田制作、木下信行、須合智広、関根敏隆、松林洋一、吉羽要直の各氏および日本銀行のスタッフから有益な助言やコメントをいただいた。また、加来和佳子氏からは、図表作成等においてご助力を頂いた。記して感謝の意を表したい。ただし、残された誤りは全て筆者に帰する。なお、本稿の内容と意見は筆者に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行調査統計局(現・松本支店) E-mail : kouji.nakamura@boj.or.jp
  2. *2日本銀行調査統計局 E-mail : souhei.kaihatsu@boj.or.jp
  3. *3日本銀行調査統計局(現・企画局) E-mail : tomoyuki.yagi@boj.or.jp

日本銀行から

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