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地域金融機関における競争激化と金融の安定性

2017年12月27日
尾島麻由実*1

要旨

本稿では、人口減少などを背景に厳しい競争環境に直面している日本の地域金融機関を対象に、競争激化が金融機関の経営安定度にどのような影響を与えるかを分析した。地域金融機関のマークアップ(=価格-限界費用)を計測してみると、過去30年間ほぼ一貫して縮小している。こうした競争激化が金融機関の経営安定度に及ぼす影響をみると、1990年代前半までは、競争による貸出金利の低下が借り手の破綻リスクを引き下げる経路などを通じ、銀行経営の安定化に寄与していたことが確認できる。もっとも、1990年代後半以降の低金利環境下で続いた競争激化は、金融機関の利鞘縮小圧力を強め、むしろ銀行経営の安定性を低下させる方向に寄与してきたとみられる。この点について、破綻や合併によって市場から退出した金融機関の行動に焦点を当ててみると、競争環境が激化していく中で、リスクテイクの積極化により一時的に利益が嵩上げされた時期があったものの、その後は、過去の過大なリスクテイクが損失をもたらし、経営が不安定化していった傾向が確認される。

2017年9月30日の日本金融学会では、本稿の草稿に対し、大熊正哲(岡山大学)から詳細なコメントを頂戴した。また、本稿の作成過程では、一上響(以下、日本銀行)、今久保圭、川本卓司、木村武、小牧義弘、平形尚久、福田善之、吉羽要直各氏から有益なコメントを頂いた。本稿の内容のうち、地域金融機関のマークアップの推計に係る部分の分析は、小島早都子によるものである。記して感謝の意を表したい。ただし、あり得べき誤りは筆者に属する。また本稿に示される内容や意見は、筆者個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行金融機構局 E-mail : mayumi.ojima@boj.or.jp

日本銀行から

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