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米国における金融政策の波及効果は低下したのか?
クレジットチャネルの役割について

2026年2月26日
木根原健太*1
山本弘樹*2
沖本竜義*3

要旨

本稿は、米国において2022年以降の急速かつ大幅な金融引き締めにもかかわらず、経済が堅調に推移した背景を、GDPの需要項目間の異質性とクレジットチャネルの時変性という2つの観点から検証する。手法面では、Factor-Augmented VARモデルにより、需要項目間における金融政策の効果の異質性を示す。次に、超過債券プレミアムを推移変数とする平滑推移Local Projectionモデルを推計し、金融政策の効果が金融市場環境に応じて時間変化することを定量化する。分析の結果、借入依存度の高い需要項目は金融引き締めに対して下押しされる一方、依存度の低い項目の反応は小さいことが示された。さらに、借入依存度が高い需要項目ほど、クレジットチャネルが強く機能する局面でのみ金融政策の効果が顕著に高まる一方、借入依存度が低い項目は局面によらず反応が小さいことが確認された。以上の結果は、金融政策に対する需要項目間の異質性と、近年の米国経済における、サービス消費の存在感の高まりを背景とした「構成効果」に加え、クレジットチャネルの増幅効果が発現しにくい環境にあった「レジーム効果」の下で、2022年以降の急速かつ大幅な金融引き締めが、実体経済の下押しを限定的なものとした一因である可能性を示唆している。本稿の先行研究への貢献は、「構成効果」と「レジーム効果」を統合的に分析する枠組みを提示したことにある。

JEL 分類番号
E21、E22、E44、E52
キーワード
金融政策、クレジットチャネル、FAVAR、平滑推移Local Projection

本稿の作成にあたり、石川 瑛久氏、石黒 雄人氏、開発 壮平氏、倉知 善行氏、黒住 卓司氏、座本 花氏、新谷 元嗣氏、近田 健氏、中島 上智氏、東 将人氏、松田 太一氏および日本銀行スタッフから有益なコメントを頂戴した。ただし、本稿のありうべき誤りは全て筆者ら個人に属する。なお、本稿に示される内容や意見は、筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行国際局 E-mail : kenta.kinehara@boj.or.jp
  2. *2日本銀行国際局 E-mail : hiroki.yamamoto@boj.or.jp
  3. *3慶應義塾大学および日本銀行国際局 E-mail : tatsuyoshi.okimoto@keio.jp

日本銀行から

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