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無形資産投資が企業の生産性・競争力・価格設定行動に与える影響
― パネルデータを用いたミクロ実証分析 ―

2026年3月5日
吉井彬人*

要旨

本稿では、無形資産投資が企業の生産性や競争力、価格設定行動に与える影響について、財務統計やサーベイデータのパネルデータを用いたミクロ実証分析を行った。分析の結果、研究開発投資は、製商品・サービスの付加価値上昇による競争力向上を通じて、一貫して企業の価格設定スタンスを積極化させてきたことが分かった。一方、ソフトウェア投資は、コロナ禍前には価格設定スタンスに対する有意な効果は確認できなかったが、コロナ禍以降は、非製造業を中心に、労働生産性の上昇に伴う企業の市場支配力の向上を通じて、価格設定スタンスの積極化に寄与していることが分かった。こうした変化は、労働集約的な非製造業を中心に、人手不足による労働供給制約に直面する企業が増加するもとで、ソフトウェア投資による労働需要の削減により事業活動の優位性が高まっていることが背景にあると考えられる。この結果は、先行きも、無形資産投資の増加が、生産性や市場支配力の向上を通じて、わが国企業の価格設定スタンスの積極化につながりうることを示唆している。

JEL 分類番号
E22, E31, L11, O30
キーワード
無形資産投資、労働生産性、物価、競争環境、価格設定スタンス

本稿の作成にあたっては、青木浩介氏、安達孔氏、稲村晃希氏、尾崎達哉氏、加藤直也氏、倉知善行氏、近藤卓司氏、須合智広氏、高田耕平氏、法眼吉彦氏、八木智之氏、および日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂戴した。また、経済産業省から「企業活動基本調査」の調査票情報の提供を、財務省から「四半期別法人企業統計調査」の調査票情報の提供を受けた。記して感謝の意を表したい。ただし、残された誤りは筆者に帰する。なお、本稿の内容や意見は、筆者個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  • 日本銀行調査統計局(現・総務人事局) E-mail : akihito.yoshii@boj.or.jp

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