オフィス賃料の経年減価とリノベーション効果
2026年6月4日
篠崎公昭*1
新谷幸平*2
曽我部哲人*3
中山善夫*4
古田早穂子*5
要旨
日本銀行が作成・公表している企業向けサービス価格指数(SPPI)の「事務所賃貸」では、賃貸オフィス物件の経年減価をサービス品質の低下として捉え、指数に反映している。しかし、現行の反映方法は2007年のデータに基づく実証分析結果に依拠しており、その後の外部環境の変化が十分に考慮されていない。本研究では、大手オフィス仲介・管理会社であるザイマックスグループが保有する新規賃料・属性データを利用し、ヘドニック法を適用することで、物件の経年減価がオフィス賃料に及ぼす影響を実証的に分析した。本研究の主な発見は、以下の通り。(1)わが国のオフィス賃料は、新築時点から築25年頃までは概ね一定のペース(年率1.4%)で減価し、その後ペースは鈍化する。この傾向は、米国の商業用不動産を対象とした先行研究と共通している。(2)物件規模によって減価のペースが異なる。大規模物件は中小規模物件よりもやや速いペースで減価する一方、一旦減価ペースが緩やかになると、その後も減価を続ける中小規模物件とは異なり、ほぼ一定の状態を維持する。(3)リノベーションの実施は、新築時点の賃料対比でみて最大で8.2%ポイントほど減価を押し戻す。その押し戻し効果は約16年間続き、この期間中に平均で同5.4%ポイントほどの減価抑制効果が認められる。
- JEL 分類番号
- C43、E31、R32、R33
- キーワード
- 物価指数、品質調整、ヘドニック法、オフィス賃料
本稿は、2025年度統計関連学会連合大会、39th meeting of the Voorburg Group on Service Statistics、International Conference on Real Estate Statistics 2026における報告論文を加筆・修正したものである。本稿の作成過程では、各会合参加者のほか、清水千弘(一橋大学)、Dennis Schoenmaker(CBRE Econometric Advisors)、Xuxin Mao(Bank of China, London)、および一上響、岩崎雄斗、川本卓司、倉知善行、須合智広、中村康治、武藤一郎ほか日本銀行の多くのスタッフから貴重なコメントを頂戴した。記して感謝したい。ただし、あり得べき誤りはすべて筆者らに帰する。なお、本稿中の意見・解釈にあたる部分は筆者ら個人に属するものであり、日本銀行およびザイマックスグループの公式見解を示すものではない。
- *1日本銀行調査統計局 E-mail : kimiaki.shinozaki@boj.or.jp
- *2日本銀行調査統計局(現・総務人事局) E-mail : kouhei.shintani@boj.or.jp
- *3株式会社ザイマックス総研 E-mail : sogabe@xymax.co.jp
- *4株式会社ザイマックス総研 E-mail : yoshi-nakayama@xymax.co.jp
- *5日本銀行調査統計局(現・金融市場局) E-mail : sahoko.furuta@boj.or.jp
日本銀行から
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