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自己資本に関する新しいバーゼル合意

2001年 1月17日
バーゼル銀行監督委員会

日本銀行から

 「『自己資本に関する新しいバーゼル合意』の概論」の全文はこちら (bis0101d1.pdf 228KB) から、「自己資本に関する新しいバーゼル合意」の全文はこちら (bis0101d2.pdf 523KB) から入手できます。

仮訳

プレス・リリース

 バーゼル銀行監督委員会は、最終的に確定された後には現在の1988年自己資本合意に代わることになる、自己資本に関する新しいバーゼル合意の案を本日発表した。バーゼル委員会の議長であり、ニューヨーク連邦準備銀行総裁である、William J McDonough氏は、今回の案を紹介して以下のとおり述べている。「新しい枠組みは、規制上の所要自己資本を実際のリスクとより密接に結びつけることと、自己資本充実度の評価に関する選択肢を銀行と監督当局に提供することを意図している。」さらにMcDonough氏は、バーゼル委員会は、自己資本に関する新しいバーゼル合意の提案を示すことにより、金融システムの変化に適応することができ、安全性と健全性を高めるような柔軟な自己資本充実度の枠組みの基礎を築いたと考えている、と付け加えている。

 この提案は、銀行が直面する様々なリスクを適切に評価することが銀行と監督当局にとって可能となる、3つの相互に補強し合う柱に基づいている。自己資本に関する新しいバーゼル合意は以下に焦点を当てている。1988年合意に提示されている計測の枠組みを精緻化することを求める最低所要自己資本、金融機関の自己資本充実度と内部評価プロセスの監督上の検証、そして、安全かつ健全な銀行実務を促すための実効的なディスクロージャーを通じた市場規律

 1988年合意は国際的に活動する銀行に当初焦点を当てていたが、その後、100か国以上の国で採用されている。「当委員会は、新たな枠組みの開発に際して世界中の監督当局と協議を行ってきた。そして、一定の期間経過後には世界中の主要な銀行の全てが、自己資本に関する新しいバーゼル合意に沿うようになっていくことを期待している。」とスウェーデン監督庁長官であり、バーゼル合意の見直しの中心的なグループ、バーゼル委員会の自己資本規制の将来に関するタスクフォースの議長であるClaes Norgren氏は述べている。

パッケージの構造

 当委員会が本日公表されたパッケージの提案を開発する上で、1999年6月の「市中協議ペーパー」に対するコメントや銀行業界および世界各国の監督当局との継続的な対話は大変役立った。このパッケージは以下の3つの部分から構成される。

  • 第一は「自己資本に関する新しいバーゼル合意の概論」であり、新たな枠組みの主な構成要素の論拠を論じている。概論では提案の構造が説明されており、当委員会が意見やフィードバックを特に求めている分野が特定されている。
  • 第二の部分である自己資本に関する新しいバーゼル合意は詳細な提案を示している。本文書は最終的に確定された後、参加国が現行規制を修正するために採用するルールの具体的な基礎となるものである。新たな枠組みは2004年に施行されることが期待されている。
  • 第三は技術的な補論で構成されており、今回の提案のために実施した分析に関する背景情報や技術的詳細を提示している。

 当委員会は、自己資本に関する新しいバーゼル合意が1988年合意よりも詳細で複雑であることを認識している。「新たな枠組みの複雑さは金融市場における進展と革新、そしてよりリスク感応度の高い枠組みの必要性をそのまま反映したものである。」とバーゼル委員会の事務局長であるDanièle Nouy氏は述べている。これらの文書で示されている提案の主な側面は、以下で簡潔に説明されている。市中協議パッケージの内容の全般的な記述については、バーゼル委員会事務局より公表される付随文書である「自己資本に関する新しいバーゼル合意:第二次市中協議案の解説」を参照することを推奨する。

第一の柱

 第一の柱(最低所要自己資本)の提案で、当委員会は1988年合意に提示されている、単一の枠組みを多様な銀行に適用する手法(a one-size-fits-all approach)を多様な選択肢に置き換えることを意図している。自己資本に関する新しいバーゼル合意は、監督当局の許可を前提として、銀行が業務の複雑さとリスク管理の質に応じて選ぶことができる選択肢を示している。「この枠組みは、銀行に対してよりリスク感応的な選択肢を利用して必要な自己資本をより正確に確保するようにリスク管理能力を継続的に向上させるインセンティブを与えるだろう。」とMcDonough氏は述べている。同氏は、当委員会はまた、規制上の自己資本賦課の計算における銀行自身の内部計測手法を重視している、と述べている。

 信用リスクに関しては、複雑な業務を行っていない銀行は、1988年合意を基にした外部信用評価を利用する標準的手法を使用することができる。より進んだリスク管理能力を持ち厳格な監督基準を満たす銀行は、内部格付手法を使用することができる。本手法のもとでは、借り手のデフォルト確率のような信用リスクのいくつかの主要な要素は銀行により内部推計される。また当委員会は、オペレーショナル・リスクに対して明示的な自己資本賦課を提案している。自己資本賦課の計算についての選択肢は、市中協議パッケージにおいて詳細に説明されている。

 所要自己資本の全体的水準に関し、当委員会の第一の目的は、銀行の所要自己資本を、オペレーショナル・リスクに対する新たな自己資本賦課を含めた後で、平均的にみて増加させることも減少させることもない、よりリスク感応的な手法を提示することである。当然、個々の銀行の所要自己資本はそれぞれの銀行のリスク・プロファイルに応じて増加したり減少したりするかもしれない。

第二の柱

 当委員会のこれまでの作業の結果、最低所要自己資本を補完するものとして、監督上の検証プロセスが不可欠であることも確認された。従って、自己資本に関する新しいバーゼル合意では、各銀行が自らの自己資本充実度を評価し、当該銀行に特有のリスク・プロファイル及びリスク統制環境に見合った自己資本の目標水準を定めるための健全な内部プロセスを有していることを、監督当局が確認する手続きが提案されている。こうした銀行の内部プロセスは、監督上の検証と、適当な場合には当局の介入に服する。

第三の柱

 当委員会は、パッケージに示されている開示の要件と推奨項目は、銀行のリスク・プロファイルと自己資本充実度に関する重要な情報を市場参加者が評価することを可能にするものと考える。同提案は、資本構造、リスク・エクスポージャー、そして自己資本充実度の開示についてより詳細な指針を提示している。

次のステップ

 自己資本に関する新しいバーゼル合意に対するコメントは、2001年5月31日までに、関係する各国の監督当局と中央銀行に提出されたい。または、バーゼル銀行監督委員会(住所:The Basel Committee on Banking Supervision, Bank for International Settlements, CH-4002 Basel, Switzerland)に提出されたい。コメントはバーゼル銀行監督委員会の事務局宛電子メール(BCBS.Capital@bis.org)、またはファックス(41-61-280-9100)による提出も受け付けている。透明性を向上させるため、当委員会は第二次市中協議期間中に受けたコメントをウェブサイト上で公開するつもりである。明示的に機密と記されたコメントは公開されない。

 当委員会は、2001年末までに自己資本に関する新しいバーゼル合意を確定するつもりである。新たなバーゼル合意は、加盟メンバーの法域で2004年に施行されることが想定されている。このスケジュールにより、各国内の規制策定手続きのための期間が確保でき、各銀行の内部システム、監督上の手続き、規制上の報告を適応させることが可能になると考えられる。

 当委員会は、監督当局がこれらの提案を実施していくためには、多くの場合、その資源を増強する必要が生じるということを認識している。しかし、当委員会は、よりリスク感応的となり強固なリスク管理の実務を促進する自己資本充実の枠組みが、国際的な金融の安定に貢献し、それゆえに追加的な監督資源の要請を正当化するものと確信している。当委員会とBISの金融安定化研究所は、支援を行う準備があり、監督当局間の情報伝達・交換のフォーラムとしての役割を果たす用意がある。

 ここで触れられている文書は、BISのウェブサイト(www.bis.org/)(外部サイトへのリンク)から入手することができる。