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総裁記者会見 2025年9月19日(金)午後3時30分から約65分

2025年9月22日
日本銀行

(問)
本日の金融政策決定会合の内容について、ご説明をお願いします。

(答)
今日の決定会合では、金融市場調節方針を決定致しました。また、日本銀行が保有するETFおよびJ-REITについて、市場への売却を行うことも決定しました。まず市場調節方針ですが、無担保コールレート・オーバーナイト物を0.5%程度で推移するよう促すというこれまでの方針を維持することを賛成多数で決定しました。高田委員は、物価が上がらないノルムが転換し、物価安定の目標の実現が概ね達成されたとして、それから田村委員は、物価上振れリスクが膨らんでいる中、中立金利にもう少し近づけるためとして、政策金利を二人ともそれぞれ0.75%程度に引き上げる議案を提出しましたが、反対多数で否決されました。次に金融市場調節方針の決定の背景となる経済・物価動向についてご説明します。わが国の景気の現状については、一部に弱めの動きもみられるが緩やかに回復していると判断しました。先行きについては、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられます。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで成長率を高めていくと見込まれます。物価ですが、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、米などの食料品価格の上昇の影響等から、足元では2%台後半となっています。先行きですが、このところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられます。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は成長率が高まるもとで、人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想されます。展望レポートの見通し期間後半には、物価安定の目標と概ね整合的な水準で推移すると考えられます。こうした見通しを巡るリスク要因としては、様々なものがありますが、特に各国の通商政策等の今後の展開や、その影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性は高い状況が続いており、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要があります。

続いて、今後の金融政策運営についてです。金融政策運営は、現在の実質金利がきわめて低い水準であることを踏まえますと、以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。そのうえで、こうした見通しが実現していくかについては、各国の通商政策等の今後の展開や、その影響を巡る不確実性が高い状況が続いていることを踏まえ、内外の経済・物価情勢や、金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要と考えています。私どもは2%の物価安定の目標のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく方針です。

最後に、ETFおよびJ-REITの売却についてご説明します。ETF等については、昨年3月に新規の買入れを終了し、その後、処分のあり方を検討してきましたが、今日の決定会合において、保有するETF等について市場への売却を行うことを全員一致で決定しました。具体的には、ETFについては、簿価で年間3,300億円程度、J-REITについては簿価で年間50億円程度のペースで、取引所市場で形成される価格に基づき、市場への売却を行います。こうした売却額については、市場等に攪乱的な影響を与えることを極力回避する観点から、本年7月に完了した、金融機関から買い入れた株式の売却と、同程度の規模としています。また、こうした売却ペースのもとで市場の状況に応じ、売却額の一時的な調整や停止を行うことができるとするなど、市場の安定に配慮するための柔軟性も確保しています。なお、ETF等の処分を開始した後、処分に関する基本方針や今後の売却の経験を踏まえ、金融政策決定会合において、年間の売却ペースを見直すこともあり得ると考えています。日本銀行では、今後、ETF等の処分にかかる受託者を選定したうえで、所要の準備が整い次第、処分を開始する予定です。

(問)
幹事社からは二問質問があります。一問目は追加利上げに向けた判断材料についてです。アメリカの関税政策や金融政策、アメリカの金融政策がアメリカや世界経済に与える影響、それに伴う日本経済・物価への下押しの影響やその不確実性について、前回7月時点と比べてどのように変化したのかを教えてください。日本経済の先行きについては、円安の影響もあって大きな減速に陥る可能性は低いという見方もありますが、この点も踏まえてどのようにお考えかを教えてください。

二問目は、ETFとJ-REITの売却方針についてお伺いします。株式市場では日経平均が最高値を連日更新している状況にあります。このタイミングで売却を決めた理由を教えてください。また、ETF、J-REITをこのペースで売却した場合、全てを売却するまでにそれぞれ何年かかるのでしょうか。この点も踏まえて、日銀が金融政策の一環としてETF、J-REITというリスク性資産を大量に買い入れたことの是非について、どのようにお考えでしょうか。

(答)
まず、一問目ですけれども、7月会合以降の状況を確認致しますと、まずアメリカ経済についてですが、雇用、消費の一部に弱めの動きがみられていますが、これまでのところ、消費者物価への関税転嫁の動きは緩やかなものにとどまっています。こうした中、一昨日のFRBによる利下げは、米国経済を下支えする方向で作用するとみています。そのうえで、世界経済については、各国の通商政策等の影響を受けていったん減速するものの、その後は緩やかな成長経路に復していくという見通しは変わっていません。次に、わが国に対する影響ですが、米国の関税政策は、製造業中心に収益面でマイナスの影響を及ぼしているものの、これまでのところ、設備投資や雇用・賃金動向を含め、経済全体に波及している様子は窺われません。こうしたもとで、消費者物価の基調的な上昇率は、引き続き2%に向けて緩やかに上昇しているとみています。この間、米国との交渉の結果、自動車等の関税率が決まったことは、わが国経済を巡る不確実性の低下につながると認識していますし、7月の展望レポートでお示しした経済・物価の中心的な見通しも、現時点で修正する必要はないと判断しています。つまり、わが国経済は、関税政策による下押し圧力を受けつつも持ちこたえ、基調的な物価上昇率もいったん伸び悩む局面はあるものの、その後は2%に向けて徐々に高まっていくと考えています。もっとも、米中間の関税交渉は現在も継続していますし、各国の通商政策等が金融・為替市場やわが国の経済・物価に及ぼす影響についても、なお不確実性が高い状況が続いていることには十分な留意が必要です。こうした点を踏まえ、今回の関税に関する合意を受けた企業等の対応を含め、今後明らかとなるデータやヒアリング情報を丁寧に確認し、経済・物価情勢を点検してまいりたいと思っています。

それからETF等の売却方針についてですが、これについては、まず昨年3月に新規買入れの終了を決定した後、処分のあり方について検討してまいりました。この間、今年の7月に、金融機関から買い入れた株式の処分が完了しましたが、その過程でETF等の売却を進めるうえでの有益な知見が蓄積されたほか、それを踏まえた実務的な検討にもめどがついたことから、このタイミングでETF等の処分の開始を決定することが適当であると判断致しました。特定の株価水準等を念頭に置いての判断ではございません。それから売却に要する期間ですが、今回決定した売却ペースで売却するとした場合、ETF、J-REITともに、単純に計算すれば100年以上かかることになります。買入れの評価ですけれども、ETF等の買入れは、市場のリスク・プレミアムへの働きかけを通じて、市場の不安定な動きが企業や家計のコンフィデンス悪化につながることを防止し、経済・物価にプラスの影響を及ぼすことを目的としたものです。こうした施策は、2%の物価安定の目標を実現するための大規模な金融緩和の一環として、必要なものであったと認識しています。また、リスク・プレミアムに働きかける効果を十分に高めるためには、相応の規模のETF等を買い入れる必要があったと考えています。他方で、こうした施策を終了し、ETF等を売却する局面では、市場に対する攪乱的な影響を極力回避するよう、少しずつ処分を進めていくことが適切であると考えています。

(問)
私からも二問お伺いします。一つはですね、今日二人の政策委員から利上げの提案があったことについてです。0.75%程度に上げるよう議案が提出されたということですが、この議案を巡る議論について、もう少しご説明を頂ければと思います。次回会合での取り扱い等についても、どういう議論があったかとか、そういったところについてもお伺いできればと思います。

もう一個、今説明があったETF、J-REITの処分についてです。これ、確認の意味合いが強いんですが、全額売却すると100年を超えるということだったんですけれども、これ、現時点で全額を売却するということは決まっているのか、それともそこについては決めないで取りあえず着手したという段階なのか、その辺についてご教示ください。

(答)
前段ですけれども、詳しいことは議事要旨をご覧頂くしかないと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、高田委員は、物価が上がらないノルムは転換して、物価安定目標の実現が概ね達成されたという理由で提案されましたし、田村委員は、提案はやはり0.75%ですが、理由としては、物価の上振れリスクが膨らんでいるということに着目され、中立金利にもう少し近づけるためということで提案されました。これらの提案に対して他の委員は反対されましたので、必ずしもそれぞれが提案された理由に、完全には同意されなかったということになるかと思います。

それからETFについては、現時点では、今日発表させて頂いたようなペースで淡々と、100年後われわれはいないわけですけれども、100年以上かけて売っていくというつもりでおります。

(問)
今ほどの質問とちょっと似てるんですけれども、まず今日の金利の決定について、高田委員がですね、ノルムが転換して物価安定目標の実現を概ね達成されたと、田村委員が上振れリスクについても言及されてます。総裁ご自身のですね、このお二人のご意見に対する違い、距離感というものがどの程度なのか、というところを教えて頂けますでしょうか。

二点目はですね、またETFなんですけれども、単純計算、同じペースで売却していくと、100年以上かかりますと。今回政策を決められた当事者としてですね、まさにもういらっしゃらないということなんですけども、どういうふうな政策決定の責任を負うのかっていうところについて、そういった意味では、100年かけて売っていくのか、どちらかというとペースを速められるんであればもうちょっと短くしていきたいというお気持ちなのか、その点を教えてください。

(答)
前半は先ほどのご質問と同じで、ただ私の意見はというご質問だったと思いますけれども、基本的には、基調的な物価上昇率という表現で申し上げれば、高田委員は、概ねそれが2%前後のところに達しているという評価をされたと思いますけれども、私の評価としては、まだ少し下回っていて、しかし2%に向けて近づきつつある過程にあるという評価でございます。それから、田村委員は、見通し対比物価の上振れリスクが膨らんでいるということで、利上げ提案をされたわけですけれども、私の認識では、それももちろんリスクとして一つあると思いますけれども、米国の関税政策の影響等がこれから一段と出てくる可能性がある中で、景気に対する下振れリスク、それを通じて物価に対する下振れリスク、これも意識しないといけないというふうに考えています。

それから、私どもの現在のボードメンバーの任期を越えて、非常に長い期間がかかる政策についてどういうふうに責任を負うのかというご質問だったと思いますが、もちろん文字通り最後まで見届けるということはできないような内容ではあるわけですが、こういう意思決定に至った経緯、それから、どういう基本方針でやっていくのか、そういう考え方をきちっと残しておくことによって、後を引き継ぐ新しいボードメンバーが次々にこの提案を実行していってくださるというふうに考えています。

(問)
二点質問させてください。まず米国の物価動向について伺います。今後も年末にかけてですね、アメリカの方でクリスマス商戦が始まってきますけれども、これを契機に関税の消費者価格への転嫁が進む可能性が指摘されております。総裁は米国のインフレ動向を確認するうえで、クリスマス商戦の結果をみる必要があるというふうにお考えでいらっしゃいますでしょうか。もう一点、国内経済についてです。総裁は7月の記者会見でアメリカの関税政策の影響について、一気に霧が晴れることはなかなかないということでお話をされておられました。その後、自動車関税が実際に引き下げられるなど、新たな動きも出ております。先ほど不確実性が低下しているというお話もありましたけれども、それでもなお霧は深い状態なのか、それとも7月時点に比べると晴れつつあるのか、ご見解をお聞かせください。

(答)
関税との関連で、アメリカ経済、特に物価の動向、そして、そのまた日本等への影響という点については、非常に難しいところかなと思っております。と申しますのも、アメリカの輸入価格はかなり上がっているんですけれども、消費者物価への転嫁は、ある程度出てきてはいますが、それほどは進んでいないという状況に現在あるかと思います。これが標準的な見方では、今後出てくるであろう、それに伴って消費へのマイナスの影響もある程度出てくるであろうということだと思うのですけれども、これを見極めるのにどれくらいの時間がかかるかということについては、非常に依然として不確実性が高いという状況だと思います。クリスマス商戦は一つの大事なポイントでありますけれども、その前にかなりのことが分かってしまうというケースもあり得ますし、クリスマスまで待っても分からないというケースもあり得るかと思います。日本への影響についても同様に考えています。

(問)
私からも二点ありまして、一点目はETFの売却、100年以上かかるということなんですが、その間にですね、金融緩和がおそらく必要になる局面というのは必ず訪れると思うんですけども、その際に売却をしているETF、J-REITを再び緩和手段として活用するということが、普通に考えれば難しいと思うんですけども、そういうことも考えられるのか、ETF売却の緩和手段としての有効性も含めてお願いします。

二点目なんですが、今回、二人の審議委員が政策維持に反対されまして、総裁も基調物価については2%に近づいていますと、そういうふうに発言されています。今、ビハインド・ザ・カーブではないにしてもですね、やはりそういう政策調整の必要性というのは、基調とか実質金利から考えた場合、確実に着実に強まっているというふうに考えておられるのか、この二点お願いします。

(答)
将来のどこかで、金融政策上の観点から、ETFの購入ペースを変更する可能性があるかというご質問だったと思いますが、前半は。それは現時点では考えていません。

それから二番目ですけれども、これは、先ほどの最初の幹事社からの問いへの答えの中でも申し上げた通りですが、私ども、基本姿勢としましては、現在発表させて頂いている経済・物価見通しが実現していく、あるいは実現する確度が高まっていくとすれば、それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになるというふうに考えています。ただ、様々なリスク、特に米国の、あるいは各国の通商政策の日本経済への影響を巡る不確実性が高い中で、もう少しデータをみたいという局面にあるということでございます。

(問)
すいません。一点目なんですが、今後緩和が必要になった場合に、ETFをまた再び買うという選択肢はあるのかということをお伺いしたかったんですが。

(答)
現状では、それは視野に入れていません。

(問)
二点伺います。一点目は、今後の金融政策運営について、ちょっと繰り返しになりますが、今回の会合で複数の政策委員の方が追加利上げを求めて政策金利の維持に反対されました。総裁ご自身は、もう少し統計データですとか、ヒアリング情報が必要だったり、みたかったり、確認したかったりということなのか、次の利上げに対する距離感について、改めて伺えればと思います。

二点目は、ETFとJ-REITの処分に関する市場とのコミュニケーション、あと実際の政策対応についてなんですけれども、今進めてる段階的な利上げの対応に比べて、かなり雑な印象がある一方で、売り方は100年以上かける計算で、かなり慎重な姿勢にもみえます。これはETFの購入ですとか、前に撤廃したイールドカーブ・コントロールですとか、ちょっと異質な政策の出口のやり方なのか、繰り返しになりますけど、今後のコミュニケーションの考え方を踏まえて伺えればと思います。

(答)
今後の金融政策については、ご指摘頂いたように、不確実性が高い中、もう少しデータなり情報なりをみたいということでございます。

それから、ETF売却のタイミング、あるいはそれに至る事前のコミュニケーション等に関するご質問だったと思いますけれども、まずこのタイミングになった理由としては、先ほど申し上げたように、7月に金融機関から買い入れた株式の売却(注)が終了し、その過程で得られた知見をまとめ、実務的な検討にめどがついたということで、今日決定したということでございますが、事柄の性格上、なかなか事前にこういうふうに進めるということが、事前のガイダンス等なかなかできにくい手段であったということはご理解頂けたらと思います。

(問)
二点あります。足元までのヒアリング情報等も踏まえて、日本の経済の7から9月期、今の期についてどうご覧になっているのか、すなわち消費も消費活動指数等をみると弱めですし、直近で出た8月の貿易統計をみても、輸出に明確に、アメリカ向けの輸出の減速が出てますので、足元の7から9の経済についてどのような評価をされているのかが一点目です。

二点目は、先ほど少し言及があったアメリカ経済なんですけれども、雇用関連の指標をみると、相当アメリカの雇用の落ち込み、深刻なのかなと思います。一方で、おっしゃるようにリセッションを予想してるエコノミストはそれほどいないと思うんですが、先日ジャクソンホールにもいらっしゃって、いろんな方の意見も伺って、全体としてアメリカの経済の先行きについてどのようにみてらっしゃるのか、お願いします。

(答)
まず、日本経済の第3四半期入り後の状況ですけれども、おっしゃるように、例えば輸出にこれまでの駆け込みの若干の反動がみられたりしております。それから製造業の収益も、7から9月入り後、特にということではないですが、その前から少し減少傾向だと。ただ、輸出については、減ったところをみてもまだ横ばい圏内、駆け込みで上がって少し下がったところというところでございます。それから、企業収益についても、全体をみますと高水準の収益が続いているというふうにみています。あと、基本的な内需であります設備投資は緩やかな増加傾向を維持していますし、消費はそれ以前と比べると若干弱めですが、それでも底堅く推移しているというふうに今のところはみていますので、例えば米国の関税政策等の影響で経済に大きなマイナスの影響が現在発生しているというふうにはみていないというところでございます。

それから、アメリカ経済の現状についてもう少し詳しくというご質問だったと思いますけれども、これは非常に難しくて、おっしゃるように、雇用については減速の傾向がみえている。他方で設備投資等、強かったり経済全体もある程度の底堅さを維持しているということでございます。おそらく関税あるいは関税周りの不確実性が一部の企業行動には影響を与えていて、それが雇用に出ている可能性はあるのかなと思ったり、そういう意見を聞いたりしています。他方で、もう少し別の要因として、例えばAI周りの強さであったり、今後の規制緩和に対する期待であったりに支えられて、設備投資あるいは経済のその他のところが強い、この両方の要因が作用しているために、なかなか分かりにくいけれども、両方足してみると、ネットでは現在まだ底堅さを維持している。ただし、先ほど申し上げたように、関税の消費者物価への転嫁が進んでいったときにどういう姿に全体としてなるかというところは、まだ必ずしもみえていないというふうに聞いたりみたりしておりますけれども。

(問)
二点ございます。ETFとREITなんですけれども、マイナス金利の解除に加えて国債保有残高の縮小にも踏み切りまして、今回更にETFの処分というところまで辿り着いたといえると思います。こうした異次元緩和の最後の出口ともいえる政策対応を決めたということについて、総裁自身どのように評価されているのかっていうのを一つお伺いしたいと思います。

もう一点が、こちらもETFなんですけれども、100年という長期の間で処分を進めるということになれば、当然期間中にですね、経済情勢が悪くなったりして含み損が出たりとかですね、そういったかたちで日銀の財務自身にですね、悪い影響を与えるというリスクも抱えることになると思うんですけれども、その弊害についてどう考えるか教えてください。

(答)
債券については少し前から、大規模緩和のときに購入したものを少しずつ結果としては減らしていくということを始めてますし、ETFについては、今後、近い将来に始めるということを今日決定したということで、いずれもまだそういう大きく膨れ上がった残高を減らし始めた、あるいはこれから減らす準備ができたというところですので、100年最後まで私、見届けることはできませんけれども、ある程度そういうプロセスが順調に進んでからでないと、そういうご質問が後であるかもしれませんが、全体の評価はなかなか難しいというふうにみています。

それから今後、今はみえていないような様々な要因で、市場環境等が大きく変化したときに、という趣旨のご質問だったと思いますけれども、それについては、その時点で処分の基本方針、もちろん短期的な市場の動揺等については売却額の一時的な調整や停止を行うことができるというスキームにしたいと思いますが、もう少し大きな変化があった場合には、基本方針に立ち返って検討するということになるかと思いますし、必要に応じて決定会合で何らかの適切な対応方針を再度考えるということになるかと思います。

(問)
家計のインフレ期待に関してお伺いしたいんですけども、日本だと欧米のように、短期のところはエネルギーとか食料に影響されて、それと日本だと過去3年間の賃上げもあって、じりじりと上がってきてると思うんですけど、それによって中長期のところも多少上がってるかと思うんですけど、足元をみると、CPIの前年伸び比が下がってきてて、来春の賃金をみると、減益の中で賃上げの話がくるかと思うんですけど、そういうようなものが家計の短期のインフレ期待を下押ししないか、その辺のところをお伺いしたいんですけども。というのは、ずっと日銀の方々っていうのは、インフレ期待をみるうえで、家計の短期のところが下がることを結構警戒している向きが強かったと思うんですけども、その辺を現状で植田さんどのようにご覧かをお伺いできればと思います。

(答)
家計のインフレ期待は、当然注目してモニターしていますけれども、短期と長期にも分けてみています。更に短期のところが、これは日本だけでなくて、海外もそうですけれども、特に短期のところが、エネルギーとか食品の動向に、他の例えばエコノミストとか債券市場の期待以上に影響されるという性格も日本でみられてると思いますけれども、この短期の家計のインフレ期待が下がることがすごい問題であるというふうに考えていないと思いますけれども、どういうレベルからどれくらい下がるかということ次第ではありますけれども、むしろ消費との関連では、どちらかというと、短期のインフレ期待みたいなものが、消費マインドに影響して、これがあまり上がると、消費マインドにネガティブな影響があるということもあり得ると思いますので、例えば食品インフレが低下していって、それに応じて短期の家計のインフレ期待が落ち着いていくということが、必ずしもそれはわれわれの物価安定目標の達成にマイナスになるとも限らないというふうにみています。

(問)
二点ございます。一点目は、今日、総務省が発表したCPIについて、総裁ご自身がどうみてらっしゃるかという確認と、お米などの食料品価格についてですね、一時的とみていいのか、基調物価に影響を与えるようなふうにみてらっしゃるのかっていうところが一点。

もう一つですけども、念のための確認で、8月のことで、ブルームバーグさんのインタビューで、ベッセントさんが日銀は後手に回っている、利上げをしてインフレの問題をコントロールする必要があるというご発言がございました。これについて、総裁どういうふうに受け止めてらっしゃいますでしょうか。

(答)
今朝発表のCPIについては、概ね私どもの見通しに沿った動きだったというふうに理解しています。それから、今後、食料品関係のインフレ率が、私どもの見通しは少しずつ下がっていくというふうに、インフレ率としては下がっていくというふうにみているわけですが、それが基調的物価との関連、基調的物価にどういう影響があるかという質問だったと思うんですけれども、基本的にはそこは一時的な、これまでインフレ率の食品の部分の上昇で、今後それが収まっていくということなので、基調には大きな影響はないという見方ですけれども、リスクとして、こうした食料品インフレが長引いた場合に、例えば期待インフレ率に影響を与えて、それが基調物価にも徐々にプラス、引き上げる方向に影響を及ぼすというリスクもあり得ますし、他方で先ほどの質疑にもあった点と重なりますけれども、食料インフレが消費者マインドを委縮させて、食料は必需品の部分がかなりあるので買わざるを得ないんですが、その他の財に対する消費が減少して、それが消費全体にブレーキをかける、あるいは経済、基調物価にも少しマイナスの影響を及ぼしていくというリスクもゼロではないというふうにみています。どちらもメインシナリオではないわけですが、それぞれについて注意しながらみていきたいと思っています。

それから、ベッセント長官の発言については、外国の要人の発言ですが、それに対して直接コメントすることは差し控えさせて頂ければと思います。

(問)
二点質問させてください。まず、一点目ですが、米国の関税の影響について伺います。これまで植田総裁は、ハードデータがどうなってくるか、どのように出てくるかというところを確認していく考えを示されておりますが、現時点で今、日本経済への影響をどのように出ているとみてらっしゃいますでしょうか。影響が出るのは後ずれしていくとの指摘もありますけれども、このハードデータに出てくる影響というのは、どのくらいまで確認する時間をかけていく方針でいらっしゃいますでしょうか。

二点目につきましてですが、ETFの売却について伺います。発表を受けて、今日株価が大きく値下がりをしているところでありますが、この市場の反応について、植田総裁はどのように受け止めていらっしゃいますでしょうか。また、今後の売却に伴う影響を最小限にとのことなんですけれども、少ない量を売却していって、長い時間をかける方針ですが、これに伴うメリットとデメリットをどのように議論されて、植田総裁はどのように評価されていらっしゃいますでしょうか。

(答)
関税の日本経済への影響を現在どうみていて、今後どういうふうに確認できるかというご質問だったと思いますが、先ほどちょっと申し上げましたように、これまでのところ、例えば、8月ですか、日本の米国向け輸出はかなりはっきりと減少しています。その少なくとも一部は、申し上げたように、それまでの駆け込みの輸出と、それがなくなってきたという反動のところが大きく出ていると思います。ただ、関税率が上がったことによって、例えば、それが日本の輸出数量に大きなマイナスの影響を及ぼし始めているというところには、まだ来ていないというふうにみています。そうなるケースとしては、先ほど質疑がやはりありましたように、関税がアメリカの消費者物価に転嫁されて、それでアメリカの消費、例えばですが、が減少して、それで日本の輸出が低下するということが典型的なケースとして考えられますが、まだそこには至っていないというふうにみています。今後そうなるかもしれないですし、出てくるにしてもあまり大したことはなくて済むかもしれない。そこはちょっとみてみないと分からないということでございます。

それから、ETF購入について、今日の株価の反応をどうみるかという点については、いつもの通りでございますが、短期的な市場の動向についてはコメントを差し控えさせて頂きます。それから、この売却を速く進めることと、遅く進めることで、メリット・デメリットをどう。

(問)
長期間にわたって進めていくことについてのメリットとデメリットをどのようにみていらっしゃるかという点です。

(答)
メリットは、市場への攪乱的な影響を、少しずつ売ることによって、小さくすることができるということでございます。デメリットとしては、私どもが株をたくさん持っていることが、何らかの、それこそデメリットがあるとしますと、それをゆっくりとしか減らしていかないんですから、そのデメリットが長続きしてしまうというデメリットがございます。この点に関しては、私ども、例えば、企業、コーポレートガバナンスに対する影響を考えなくてはいけないというような、私どものETF保有がですね、批判を受けてきているところですけれども、それに対して、例えば、投信委託会社を通じて議決権行使をするというようなことを通じて、そのデメリットをなるべく小さくするという努力をしてきています。従って、デメリットはあるというふうには考えていますが、それが必ずしもものすごく大きくはないというふうに考えていますので、少しずつ売却していくということでもOKなのかなというふうにみているところでございます。

(問)
利上げの判断について、一点伺います。総裁の経済・物価の見通しについて、もう少しデータをみて判断されたいというふうなことをご説明されてましたけども、日銀の生活意識に関するアンケート調査だと、物価が上がっているという回答の割合が7割台後半だったり、物価上昇についてどちらかといえば困っているというような回答が8割台後半に上ってます。日銀と国民の意識に何かずれがあるような気もするんですけど、判断が慎重過ぎるということはないんでしょうか。総裁のお考えをお聞かせください。

(答)
国民の皆さんは、消費者物価総合の動きをご覧になって、それが現状でも2%台後半であってすごい高い、数年間にわたって2%を超えているというところから、日本銀行の対応が遅れているという感じをお持ちになるんだと思いますが、もちろん、私ども高いインフレ率が国民生活に強いマイナスの影響を与えていることは意識しております。ただ、日頃申し上げていますように、ここでの、あるいはいつもそうかもしれませんが、私どもの重要な使命としては、2%のインフレ率を持続的・安定的に実現するということを達成したいということで動いております。そのため、なかなかご理解頂けない面もありますが、基調的物価上昇率というところに特に注目して政策運営をしてきております。繰り返しになりますが、それが2%に上がっていく過程にあるという中で、緩和的な政策を維持しているということでございます。

(問)
今ですね、自民党総裁選が行われていて、与党が少数ということで政治もまた不安定さが増しているようにみえるんですけども、こうした国内政治の不安定さというのはですね、政策運営に当たってどのような影響を与えているとお考えでしょうか。

(答)
政治の動きについては、具体的なコメントは差し控えさせて頂けたらと思います。例えば、新しい自民党の体制とか、次の総理が決まって政策が決まっていくということになりましたら、それは私どもの経済・物価見通しには織り込んだうえで政策対応をさせて頂くということになるかと思います。

(問)
日銀はですね、金融不均衡の発生についてですね注視していくと、いわゆるバブルの発生を警戒するということもですね目標に掲げてきているんだと思いますけれども、それを目標掲げてから初めてと言えるぐらいの株式市場の高騰ぶりや、不動産の上昇、基準地価にみられるようなですね、が起こっているのかなと思います。そういう意味では、このいいタイミングでこの二つの売却を始められたなという感想を持っておりますけれども、現在の足元の市場の動き、株ですね、あるいはその不動産の動きについてはバブル的な症状とみておられるのかどうかと、それへの警鐘のような意味も含めて、このETFとREITの売却を始められることを決めることの一つの要因になったのかどうかを聞かせて頂けますでしょうか。

(答)
まず、ETF等の売却に関する今日の決定は、最初に申し上げましたように、現在の株価水準等を材料として決めたものではないということでございます。そのうえで、現在の資産価格水準についてどうみるかという点については、直近では7月の展望レポートの中で、確か第2の柱で点検をし、その時点では資産市場あるいは金融機関による与信活動に過熱感はないという判断を下していましたけれども、次は10月の展望レポートがありますので、そこで改めて点検させて頂き報告させて頂けるかと思います。

(問)
アメリカの関税の国内外の経済・物価に対する影響を見極めるうえで、例えば10月の決定会合までには日銀短観ですとか支店長会議などがある。それから10月会合の段階で影響を見極められないとしても、その後アメリカのクリスマス商戦の影響というのが、12月会合もしくは1月会合の段階で見極められるようになってくるということで、10月会合から来年1月会合にかけてっていうのが、日銀の次の利上げっていうのを判断するうえで重要な会合になってくるのではないかなと思うんですけれども、この点についてお考えをお聞かせください。

(答)
アメリカの関税のアメリカ経済への影響を判断するのにどういうデータがどういうタイミングで重要かということですけれども、これは次々といろんなデータが出てきますし、消費者物価への関税の転嫁、ゆっくりですので、どこまでみれば大丈夫かということもなかなかはっきりしないと思います。ただ、最後までみなければ分からないというわけではなくて、逐次入ってくる情報に基づいて、全体の姿がどういうふうになりつつあるかということを予想して、われわれ動かざるを得ないんだと思います。そういう予想にある程度確度、そういう言葉をいつも使って恐縮ですが、が持てれば、大体関税の影響はこれくらいだということを頭に置いて、その他の日本経済の動向とか政策の判断をしていけるということだと思います。例えばクリスマス商戦でも、日本からの船便の荷動きですか、こういうのをみることでもある程度情報が分かるわけでして、それで十分と言ってるわけではないですけれども、いろんな情報が次々に入ってくるということではあります。

(問)
ETF、J-REITで、売却をするのに100年以上かかるということですけれども、国債はもしかすると100年かけても処理できないかもしれません。こういうその何世代もかけて後始末をしなければいけないような金融政策っていうのは果たして中央銀行に許されるんでしょうか。

(答)
これは、そういういろんな問題を抱えているということは十分に認識したうえで、私どもは今日、例えばETF等の処分を開始するという決定をさせて頂いたところであります。全体像の評価は、先ほども申し上げましたが、処分がある程度進んで、当初のメリットと、処分していく過程がどれくらいスムーズにいったか、というようなことをまとめて総合的に評価するということにならざるを得ないのかなというふうに思います。

(問)
これからのことではなくて、過去十数年ですね、異次元緩和全体として、こういう後始末をしなければいけないことをやったことは、中央銀行に許されたんでしょうか。

(答)
許されたかどうかということは、私が判断できることではないと思うんですけれども、その政策全体の評価ということは、繰り返しになりますけれども、これから出てくるかもしれない副作用を含めて評価して頂くしかないということだと思います。

(問)
端的に教えて頂きたいんですが、前回の展望レポートでは、経済の先行きのリスク・バランスは下振れリスクの方が大きいというご判断を示されてたと思うんですが、その辺のリスク・バランスのご認識は変わってないんでしょうか、現時点で。

(答)
下振れリスクがそこそこあるという認識で依然としております。ただ、先ほど来申し上げているように、例えば、アメリカ経済についての下振れリスクはこれまでのところはそれほどは顕現化してないけれども、今後出てくる可能性はまだ依然として残っているという見方でございます。

(問)
ETFの売却について、株価の水準には関係ないというコメントがあったと思うんですけども、もともとこれリスク・プレミアムに働きかけるというふうにして始まっていった政策だと思います。そのリスク・プレミアムという観点からは、株式市場の質的な変化であるとか、何か効果があったんでしょうか。それとも銀行保有の株式の処分が一巡して、そういうタイミングだったので、ETFの売却にっていうことなんでしょうか。

(答)
私どもが行った分析の結果等も含めてお答えしますと、リスク・プレミアム一般にうまく働きかけたとかいうよりも、リスク・プレミアムが異常に高まったようなときに、それを抑えるかたちでこのETFの購入が働いたということでございます。そういうふうにリスクを取れないマーケット、場合によってはリスクをなかなか取れなくなってしまうというマーケットであったのが、だんだん正常化されてきたことによって、そういう措置を続けていく必要性がなくなったという判断でございます。

(問)
ETFの売却についてなんですが、本日の売却について、市場の方では事前に予測されてる方っていうのがほとんどいなかったと思います。先ほどの質問の中にも、この案件についてはガイダンスがしづらいというお話をされていたと思うんですが、ちょっとそのガイダンスがしづらいというところを、改めてなぜそういうことがしづらいのかっていうことと、あと今日出された方針の中に、基本方針やその売却の経験を踏まえて今後売却ペースを見直すこともありますというふうに書いてあると思うんですが、これどのような経験をどのぐらい積むと、見直しを考えられるのか、他の国債減額のときとかも定期的にチェックをしてると思うんですが、この見直しに関してはどういうものが蓄積されると、そういうことができるのかっていうのをちょっと教えてください。

(答)
これは直接、ETFを売買、今回は売却するという決定ですので、まだ売ってはいないわけですけれども、売るというアナウンスをしただけで、マーケットに影響も出ているという種類の政策であります。これをフォワードガイダンス的にうまくガイダンスしていくというのは非常に難しいという意味で、先ほど申し上げたところでございます。それから売却ペースを見直すということがあるとすると、どういうことがあった場合にか、ということでございますけれども、一応、金融機関からの株式購入は、10年くらいかかってその中でこれくらいの売却だとインパクトがある、ないということの経験を蓄積していますので、それに匹敵するような何か新しい知見の蓄積があったかどうか、今後出てくるかどうかということになるかと思います。

(問)
もう少し利上げまでの距離ということについてお伺いしたいんですけれども、もちろん不確実性というのは依然存在するわけですが、前回会合の後でもその確度っていうのは少しずつ高まっていると、見通し通り来ているっていうのを、ここ数回の会合でも日銀は確認されてきてます。そういう意味では、利上げまで少しずつ日銀は前進していると考えていいのかどうか。というのも、今日お二人の審議委員の方も政策維持、金利維持に反対されています。そういったことも含めてお願いしたい。

もう一つ、短くなんですけれども、為替についてですね、まだFedが利下げしたにもかかわらず、Fedの先行きってのもありますけれども、円っていうのが結構円安水準で推移しています。そこについて、これだけ円安なんだから、物価上昇圧力を懸念して日銀は利上げすべきじゃないかという見方がありますけど、総裁はそんなに懸念してらっしゃらないという理解でいいのかどうかお願い致します。

(答)
利上げの判断ですけれども、これは今日お話してきたことの繰り返しになりますけれども、関税政策の、特に下振れ方向での日本の景気・物価へのリスクがどれくらい顕在化するかということ、それから逆方向では食料品価格インフレが見通し通り収まっていくかどうか、こういうことを丹念に点検していくということになるかと思います。

それから為替の円安の質問については、いつもの通りで恐縮ですけれども、為替レートについては、短期的な動向についてはコメントを差し控えさせて頂きます。

  1. (注)会見では「金融機関からの株式買入れ」と発言しましたが、正しくは「金融機関から買い入れた株式の売却」です。本文に戻る

以上