総裁記者会見 2025年10月30日(木)午後3時30分から約60分
2025年10月31日
日本銀行
(問)
本日の金融政策決定会合の内容につきまして、展望レポートの内容を含めてご説明をお願い致します。
(答)
今日の会合ですが、まず、無担保コールレート・オーバーナイト物を0.5%程度で推移するよう促す、という金融市場調節方針を維持することを賛成多数で決定しました。高田委員は、物価が上がらないノルムが転換し、物価安定の目標の実現が概ね達成されたとして、また、田村委員は、物価上振れリスクが膨らんでいる中、中立金利にもう少し近づけるためとして、政策金利を0.75%程度に引き上げる議案を提出しましたが、反対多数で否決されました。
今日は展望レポートを公表しましたので、これに沿って経済・物価の現状と先行きについてご説明します。わが国の景気の現状ですが、一部に弱めの動きもみられますが、緩やかに回復していると判断しました。先行きですが、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などは下支え要因として作用するものの、成長ペースは伸び悩むと考えられます。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれます。前回の展望レポートからの比較でみますと、成長率の見通しは概ね不変です。物価については、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、米などの食料品価格上昇の影響等から、足元では3%程度となっています。先行きについては、米などの食料品価格上昇の影響が減衰していくもとで、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、来年度前半にかけて2%を下回る水準までプラス幅を縮小していくと考えられます。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペースの影響などを受けて、伸び悩むことが見込まれます。もっとも、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムが維持され、その後は成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、基調的な物価上昇率と、生鮮食品を除く消費者物価の上昇率はともに徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には物価安定の目標と概ね整合的な水準で推移すると考えられます。前回の展望レポートからの比較でみますと、物価の見通しは概ね不変です。こうした見通しを巡るリスク要因としては、様々なものがありますが、特に、各国の通商政策等の影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性はなお高い状況が続いており、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については十分注視する必要があります。経済見通しのリスクバランスについては、各国の通商政策等の影響を踏まえ、2026年度は下振れリスクの方が大きいとみています。物価の見通しのリスクバランスは、前回の展望レポートと同様、概ね上下にバランスしているとみています。なお展望レポートについて、高田委員からは、消費者物価は既に概ね物価安定の目標に達する水準にあることなどを記述する案、田村委員からは、基調的な物価上昇率は、見通し期間の半ば以降、物価安定の目標と概ね整合的な水準で推移することなどを記述する案が提出され、それぞれ否決されました。
続いて、今後の金融政策運営についてです。金融政策運営は、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえますと、以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになると考えています。そのうえで、こうした見通しが実現していくかについては、各国の通商政策等の影響を巡る不確実性がなお高い状況が続いていることを踏まえ、内外の経済・物価情勢や金融市場動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要と考えています。日本銀行は、2%の物価安定の目標のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく方針です。
(問)
二問質問させて頂きます。まず第一問目です。総裁はこれまで経済・物価情勢で三つの点検ポイントを挙げられてきました。米国を始めとする世界経済の動向、関税政策が企業収益や賃金などに与える影響、食料品価格を含む物価動向ですが、今回の金融政策決定会合では判断に際し、それぞれについてどのような部分に不確実性が残っており、利上げ可能な環境か否かを見極めるうえで、今後どの程度の時間を要するとお考えでしょうか。この際、物価上昇が続く中、ビハインド・ザ・カーブに陥る懸念はないかも併せてお伺い致します。
二点目です。今月高市政権が発足しました。高市首相は金融政策の方向性を決める責任は政府にあると発言しているほか、金融緩和を重視する姿勢であると目されております。今後、新政権とどのように意思疎通を図っていかれるお考えでしょうか。また、植田総裁は昨年、石破前首相と就任の翌日に会談をされていますが、高市首相とも近く会談されるご予定はありますでしょうか。
(答)
まず最初のご質問からですが、今回の展望レポートにおける経済・物価見通しですが、いずれも前回展望レポートから大きく変わっておらず、中心的な見通しが実現する確度は少しずつ高まってきていると判断しています。そのうえで、まず米国経済の動向ですが、関税による企業収益の悪化を通じた雇用・所得形成への影響や、関税コストの価格転嫁を通じた個人消費への影響などが、今後、次第に明らかになると考えられます。もっとも、こうした点は、当面はっきりしない可能性があるため、逐次入手する情報に基づき、経済全体の姿を予想しながら判断していくことになると思います。次に関税政策がわが国経済に与える影響についてですが、これに関しては、関税政策による収益下押し圧力が作用するもとでも、企業の積極的な賃金設定行動が途切れることがないかどうか、もう少し確認したいと考えています。今後は15%の関税率を前提とした収益計画のもとで、来年の春季労使交渉に向けた労使の対応方針が明らかになってくるほか、本支店を通じたヒアリング情報も随時蓄積されていきます。これらを用いて、企業の賃金設定スタンスや具体的な賃金の動向を分析し、賃金と物価がともに緩やかに上昇していくメカニズムが維持されていくかどうか、確認していきたいと考えています。わが国の消費者物価ですが、これまでのところ、食料品価格上昇の影響が減衰していく一方、基調的な物価上昇率が緩やかに上昇するという中心的な見通しに沿って推移しており、現状はビハインド・ザ・カーブに陥る懸念が高まっているとは認識していません。引き続き、基調的な物価の動きに加え、食料品価格の上昇が長期化し、物価全般の上振れ・下振れにつながるリスクが顕現化することがないかどうか、といった点を点検していきます。日本銀行としては、今申し上げた点を中心に、これまでと同様、経済・物価の中心的な見通しの確度やリスクを確認しながら、毎回の決定会合において適切に政策を判断していきます。利上げの是非やタイミングについては現時点で予断を持っていません。
後半のご質問ですが、総理のご発言や総理との会談予定について、私からコメントすることは差し控えさせて頂きます。私どもとしましては、物価安定という使命を果たすために、引き続き2%の物価安定の目標の持続的・安定的な実現を目指して金融政策を運営していきます。その際には、日本銀行法に定められている通り、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図る必要があると認識しています。実際、私どもはこれまでも様々な場を通じて、また様々なレベルで政府と意思疎通を図ってきています。私自身、総裁就任以来、機会を捉えて総理とお会いし、金融経済情勢について意見交換をさせて頂いてきています。また、毎回の金融政策決定会合では、政府から出席された方々より、経済・物価情勢や金融政策運営に関するご意見を聞かせて頂いていますし、日本銀行の側からも、政府で開かれる各種の会合などに参加し、金融・経済情勢等に関する所見を申し述べているところでございます。今後とも政府との間ではこれまでと同様、十分な意思疎通を図ってまいりたいと考えています。
(問)
二問お伺いします。幹事社の質問と若干重なる部分がありますけども、関税政策の国内の影響を見極めるうえで、来年の春闘が重要になるということがありました。現時点でのデータ、見通しのままで進んだ場合に、賃上げがどのような結果になるというふうに現時点でみているかを教えてください。また、特に注目している業界や業種などがあれば併せてお願いします。
先ほど、利上げに向けて確度が少しずつ高まっているというお話がありましたけども、前回9月会合と比べてどういった点からですね、確度が上がっているというふうにお考えかというところをお願いします。あと、利上げまでの距離としてはどれぐらい残っているというふうにお考えでしょうか。
(答)
来春闘の予想を今申し上げるには材料が不足していると思いますけれども、取りあえず、今年の春闘の結果±αくらいであると予想しているという程度にとどめさせて頂きたいと思います。ただ、セクター的にということで申し上げれば、関税の影響で収益に特に下押しの影響が既に出ています製造業、更にその中でも自動車関係というところは注意深くみていきたいなと思っています。
それから、見通しの確度が上がったという点の根拠というご質問だったと思いますが、これは抽象的な言い方になりますが、概ねこれまで、例えば7月に置いた見通しがまずあって、その後3か月間入ってきたデータを利用して見通しをまた置いてみたらほぼ同じ姿になったということで、これまでの見通しの確度が上がったというふうに判断したということでございます。
(問)
私からも二問ございます。まず冒頭の質問にも少し重なりますが、総裁の点検ポイントの一つにアメリカ経済の動向を挙げられていたと思います。ただ現在はですね、政府閉鎖の影響で経済統計の公表とか収集が止まっているという状況で、なかなか米経済の実態はつかみにくいという状況かと思います。今朝ですかね、FRBのパウエル議長は、現状を霧の中の運転というふうに例えましたが、総裁、今、現状、米経済の見通しづらさをどのようにとらえていらっしゃるかということと、あと総裁、現時点で信頼できる経済データの公表が再開されるまでは、日銀としてもなかなか政策判断、特に利上げですね、そういったところに動きにくいとお考えになっているのかということをお聞かせください。
もう一つの質問です。今週の来日に合わせてですね、ベッセント財務長官が日銀の金融政策について複数回言及されていたと思います。内容的にはですね、日銀の利上げを促すものという解説が多いかと思いますけれども、総裁としては、今回の件というのは、何か利上げの背中を押されるようなものなのか、あるいは海外から干渉されるような格好ではありますので、ちょっとありがた迷惑みたいな話なのかですね、ちょっと受け止めというものを聞かせてください。
(答)
アメリカ経済については、後でもご質問が出るかもしれませんが、少し詳しく申し上げますと、これまでのところ底堅い状況が継続しているというふうに考えています。その背景としまして、一つはAI等の強さが予想以上であったということ、それから関税の影響が、簡単に申し上げれば、ゆっくりと出てきている、あるいはゆっくりとしか出てきていない、更にかなり後ずれしているという辺りでございます。ただ、今後、消費者への関税の転嫁が更に進むというふうに考えていますので、消費と景気へのマイナスの影響がこれまで以上に大きくなるリスクはあるというふうに、いつも申し上げているところですが、考えています。また既に、雇用とかAI以外の設備投資等には若干のマイナスの影響が出ているというふうにもみています。ただ、今後、関税の消費者への転嫁が進むにしても、やはり緩やかに進んでいくというふうにみていますので、ある意味、今後の米国経済の下方リスクは、7月にみていた頃と比べますと、やや低下したというふうに言っています。それでも今朝方Fedは、雇用リスク、下方リスクに配慮して利下げを行ったということであります。おっしゃいましたように政府閉鎖もあり、予想以上の負のニュースが今後出てこないかどうか、われわれも確認して進みたいというふうに思っています。
それから、二番目はやはり政府閉鎖と私どもの政策決定ということの関係に関するご質問だったと思いますけれども、それでよろしいですかね。
(問)
ベッセント長官です。
(答)
ベッセント長官のご発言につきましては、直接コメントすることは差し控えたいと思います。私どもは、常日頃申し上げておりますように、経済・物価見通しをきちんと作成し、その実現、現在であればその実現の確度が上昇するに従って、適宜政策金利を調整していく、金融緩和度合いを調整していくということで、持続的・安定的な2%物価の達成を目指したいと思っているところでございます。
(問)
私からも二つお願い致します。今回の決定会合で前回9月と同じく二人の委員から利上げ提案があり、七人が反対されるということになりました。前回9月と比べてですね、総裁含むボードメンバーの中でお二人の主張、9月と同じような主張かと思うんですけれども、理解が広がりつつあるのかどうかという点について教えてください。
二点目がですね、ビハインド・ザ・カーブになるリスクはないと認識されているということですけれども、利上げについて急ぐ必要はない、ゆっくり判断できるというご認識でしょうか。
(答)
反対された二人と、その他の方々の意見の距離というご質問だと思うんですが、詳しいことは議事要旨か主な意見ですか、これをご覧頂けたらと思いますが、平均的に申し上げて、最初にも申し上げましたように、私どもの見通しの確度は少し上昇したというのがわれわれの認識というところだと思います。ただ、緩和度合いの調整を行うまでにもう少しデータ等の確認をしたいというところであるかと思います。
二番目が何でしたっけ。
(問)
二番目がちょっと関連するんですけれども、ビハインド・ザ・カーブに陥るリスクは今のところ大きくないということで、次の利上げは急ぐ必要がない、ゆっくり判断できるというご認識でよろしいでしょうか。
(答)
ビハインド・ザ・カーブに陥るリスクがある、それに近いことをおっしゃってたのは反対された一人の委員でございますが、これも主な意見で詳しくご覧頂きたいと思いますが、強くそういうことを主張される意見があったというわけではございません。ただ、見通しの確度が上がってきている中で、もう少しデータ等の確認をしたうえでどうなるかということは、予断を持たずにデータをみていきたいというところでございます。
(問)
二点お伺いします。一点目は、冒頭ありましたが、食料品価格の動向についてです。消費者物価指数では、食料品の上昇幅は縮小していますが、依然高い水準にあると思います。あくまでも一時的な要因という見方は変えていないと思いますが、展望レポートでも触れておりますが、人件費や物流費など構造的な要因が影響しているという指摘もあります。こうした側面のウエイトが高まってきているのかどうか、総裁のお考えをお聞かせください。
もう一つは展望レポートの中でAIについて言及されています。アメリカ中心に積極的な設備投資が行われている一方で、その収益化を巡っては、株式市場でも過熱感を指摘する声が上がっています。総裁、下向きのリスクについてどういうふうにお考えか、お聞かせください。
(答)
食料品価格についてですが、依然として一時的な要因で上昇している部分、インフレ率としてはですね、が大きいというふうに考えています。先ほど申し上げましたように、ここまでの動きは、今後もう少し大きく食料品価格インフレ率が下落していくという私どもの見通しに沿ったものでございます。これまでのところ、まず米は、価格水準としてははっきり下落していないですけれども、インフレ率としては下落し始めていると、それから食料品価格についても、今後インフレ率としては下落していくというふうにみています。ただ、もちろん一部にはコスト上昇の影響もありますので、ゼロにインフレ率が戻るというふうに必ずしも考えているわけではないです。
それから、AIのところですが、これは株価の方についてのご質問ですか。それとも支出の方。
(問)
上下双方向の要因があるというふうに指摘されてますけれども、IMFも指摘してますが、その下向き、過熱感とか、AIのリスクってのはどういうところにあるとお考えでしょうか。
(答)
設備投資というような支出面でも、資産価格という面でも、おそらく今の勢いを支えている根本的な理由は、今後この分野で強い生産性上昇の波、あるいはもう少し平たく言えば、収益が上昇するという期待感だと思います。ですので、少し先になるかもしれませんが、仮にこの期待感がその通りには実現しないというようなことが明らかになってくるということであれば、ある程度の調整はあり得るということだと思います。
(問)
基調インフレ率が2%にいってないということで、慎重な利上げスタンスかと思うんですけども、今年の1月に利上げして政策金利が0.5%、30年ぶりの水準なんですけれども、現状、景気も物価もその過熱がみられない中で、次回の利上げで政策金利を0.75%にした場合に、いろいろな影響が懸念されるかと思うんですけれども、経済とか金融市場、経済活動も含めて様々あると思うんですけど、その中で2%の安定的・持続的な物価の達成に向けて一番注意されるというか一番心配されてるリスクをできればお伺いしたいんですけども、よろしくお願い致します。
(答)
利上げをした場合に出る影響の中で一番心配しているリスクですが、それはいろんなことを心配しますけれども、特にここが一番だというふうに、今、特定してそこを中心に考えようと決めているわけではないとだけ申し上げさせて頂きます。
(問)
二問あるんですけど、一問目は消費についてなんですが、賃金がわりと堅調なわりにやはり消費が伸び悩んで、この先も弱含みなのではという声もありますが、海外経済のリスクが意識される一方で、内需とりわけ消費について先行き中心にどのようにみていらっしゃるのか、またそれが利上げの判断にどう影響を及ぼすのかについてお願いしたいのが一点目です。
あと二点目は、次の利上げというよりは、より長期的な日銀の正常化のパスについての質問なんですけれども、2%の物価目標が展望レポートの見通し期間後半に実現すると、かつ物価の上振れリスクが意識されているという中で、本来あるべき政策金利の水準についてどう考えていらっしゃるのでしょうか。実質金利がまだ大幅なマイナスである中、利上げは0.75あるいは1%で終わるはずはないと、市場では1.25%というターミナルレートを織り込み始める動きもあります。将来どこまで利上げするか、経済・物価情勢次第とはいえ、この先の政策金利のパスとか正常化の金利パスのイメージについて、市場の理解をより深めるためにご見解をお願いします。
(答)
まず消費についてですけれども、賃金はそこそこ上がってるわけですけれども、これまで申し上げてきましたように、食料品を中心とする高いインフレ率の影響もあって、非耐久消費財中心に弱めの動きとなっています。このところ、多少それが外食等のサービスにも波及しているという面もあるかと思います。ただ、全体としては、例えば消費者マインドが直近少し好転しているというようなこともあって、底堅いというふうにみています。先行きを展望して今後の消費を決める一つの要因として、私どもも注目していますのは、最初に申し上げましたように、来年度の春闘にかけての賃金の動きがどれくらいになるかという点でございます。
それから二番目の中立金利ですが、これは前回もどこかで申し上げたかと思いますが、私ども中立金利に関する不確実性というか幅を持ってしか中立金利ないしターミナル金利を特定できないという状態は残念ながら続いておりまして、分析は続けておりますけれども、その幅を今のところまだこれまで以上に狭くするということができていない状態でございます。
(問)
まず一点目が、今日の政策判断についてなんですけれども、マクロ経済的な観点でみると、利上げに踏み切るのにも十分な環境にもみえるんですけれども、改めてですが、踏みとどまった理由を教えてください。国内外でいろいろあったと思いますけれども、例えば不確実性をそういう定量化するのに十分な材料が揃わなかったりですとか、あと金融システム周りなどで表に何か出ていないリスクを重くみていたりですとか、具体的にどういう理由があるのか教えてください。
あとちょっと関連なんですけれども、今回の展望レポートなんですが、この見通しですとか表現は、政策委員のコンセンサスが取れているものなのかを教えてください。
あとは、ちょっとまた別件なんですけど、もう一点は、ステーブルコインについて度々お聞きして申し訳ないんですけれども、国内でもステーブルコインが発行されて、大手の銀行でも発行を検討する動きが広がっています。トークン化預金といったデジタル通貨の形態も注目されていますが、現状の民間デジタル通貨を巡る動きをどのようにみているのか、あと国内に関しては、規制ですとか整備に出遅れ感はないのか、この分野に限った話ではないのかもしれないですけど、後手に回るリスクを伺えればと思います。
(答)
まず、今回、マクロ的には若干の改善傾向もみられるようにみえる中で金利を据え置いた理由ということですが、やや繰り返しになりますが、海外経済、特に米国経済発、あるいは世界の通商政策動向を巡る不確実性は、あるいは特にその経済の影響という面での不確実性は、先ほどちらっと申し上げましたが、ややダウンサイドリスクが少し限定されるということになりつつあると思いますけれども、依然として継続している。そういう中で当面注目していますのが、これも繰り返しですが、来年の春闘に向けての労使の交渉姿勢がどのようなものになるかというところであります。この辺りを含めてもう少しデータをみたいというのが、今回現状維持に据え置いた理由になります。
それからステーブルコインですが、初の円建てのステーブルコインが出たばかりのところですけれども、制度的には日本は外国と比べますと、法律的には2年前から一応法整備ができていて、その中でようやく第1号が出てきたという状態かと思います。現状はそういう中でどうみているかということで申し上げれば、やはりサイバーリスクとか、マネーロンダリング対策、こういうものをきちんとしたうえで、どのようなユースケースが、今回の発行されたコインも含めて広がっていくかというところを見極めていきたいなと思っています。ただ、これが非常に流通量が多くなるというような状態になっていった場合には、例えば、決済システムの中核であります預金通貨と競合し、決済システム全体がどう変わるのかという問題にもつながっていきますので、そこら辺までももちろん視野に入れつつ、事態の推移を見守っていきたいとは思いますが、まだ初動段階だというふうにはみております。
あと、見通しの表現についての賛否ということですね。基本的見解については、みんなで議論して賛否をもちろん毎回取っているということですし、今回は一部について反対があったということを先ほど申し上げたところでございます。
(問)
二点お願いします。為替についてなんですけれども、もちろん水準についてはコメントは差し控えるということだと思うんですけれども、今円安が進んで、足元円安が進んできていて、これが経済・物価にどのような影響を与えるかということについて一点お願いします。
あともう一点は、総裁、ボード二名の方はもう利上げをすべきだという意見を表明されているわけなんですけれども、ボードも利上げをしていくという方針はシェア、共有してるわけなんですが、ただ総裁のお話などを伺うと、結構慎重な印象も受けるんですけれども、ボードの中には、方向性は同じでも、やっぱりギャップというのは結構大きいものがあるんでしょうか。利上げをするまでの考え方ということについて。その点お願いします。
(答)
最初は為替レートですね。これは短期的な動向についてコメントしないということですし、ファンダメンタルズに沿って安定的に推移することが望ましいということですけれども、変動の経済・物価への影響という点では、これも抽象的な言い方になりますけれども、為替変動のもとになった要因も含めて、経済・物価への影響を精査していきたいというふうに常に考えています。
それから、ボードメンバー間の今後の政策金利の引き上げあるいは政策金利のパスに関するイメージの違いというご質問だったと思いますが、私自身も完全に把握していない面もありますし、これはやはり主な意見とか、議事要旨をちょっとご覧頂ければというふうに思います。
(問)
私から一問だけお伺いします。ちょっと縷々出てきてる食料品や消費の関係なんですが、米とか食料品の価格の高止まりですね、上昇率のみならず高い水準になっているということが人々の予想物価上昇率にどういう影響を与えているかということについて、あるいは消費を既にかなり下押ししているのではないかといったような見方について、総裁、どのようにお考えになるか教えてください。
(答)
食料品価格の動向は、特に家計の短期のインフレ期待にはかなり強い影響を与えるというのがこれまでの経験則ですし、最近のデータもそうだと思います。ただ、家計の中長期のインフレ期待とかあるいはその他の主体の中長期のインフレ期待にそれほど大きな影響を与えるかどうかという点は、例えば企業であったり、コンセンサス・フォーキャストの中長期のところをみますと、食料インフレに連れてものすごい上がっているという状況ではないと思います。ただ、インフレ期待への食料品価格上昇の波及については注意してみていきたいと思いますし、インフレ期待が上がってという場合もあるでしょうし、先ほどもちょっと出ましたけれども、食料品価格が高いことが消費に対してマイナスの影響を与えて、逆向きの影響を作り出すという可能性もあるので、両方注視していきたいというふうには思っています。
(問)
一点、賃上げのところについて、総裁先ほど次の利上げに向けてですね、企業の積極的な賃金設定行動が続いていくかご覧になっていくというお話ございましたが、賃上げについてもですね、都市部と地方部、大企業の多い都市部と中小企業の多い地方部という部分で、やはりだんだん地方の方にですね、波及していって地方の方が遅れてより賃上げが幅が出てきたりだとかっていうところ傾向としてあると思うんですが、次、春闘をご覧になっていく中でですね、地方と都市部のバランスだったり大企業と中小企業のバランスを、この辺りどのようにご覧になっていくかお考えを教えてください。
(答)
これは大変大事な点ですが、規模間でのばらつきとか地域間でのばらつき、これは常に注意をしてみているところです。私どもはこの点に関する一番の情報源としましては、四半期に一回支店長会議をやっていますので、日本の各地域の一番ホットな情報を支店長を通じて得ている。こういう機会あるいはその合間合間にも様々なかたちで連続的に情報が入ってきますので、こういう情報網を利用して、収集に努めていきたいというふうに思っております。
(問)
先ほど出ていたベッセント長官のメッセージについて追加質問なんですけど、この二日間のですね、日銀の金融政策決定会合において、このベッセント氏の発言に関して出席者から何らかの言及はあったのかどうかというのが一点。
あともう一点なんですが、日銀がですね、今後金融政策を決定するうえで米国政府の意向や考え方を考慮するなどということがあるのかどうか、以上二点お願いします。
(答)
決定会合での個別の発言についてはコメントしないということですので、ちょっと控えさせて頂きます。やはり議事要旨ないし主な意見のところをご覧頂けたらと思います。
それから、今後の政策運営というところでは、繰り返しになりますが、経済・物価の見通しおよびその確度に基づいて、淡々と適切な金融政策を行っていくという姿勢でございます。
(問)
総裁、先ほどからですね、見通しの実現の確度は上昇したんだけれども、緩和の度合いの調整を行うまでは、もう少しデータを確認したいと。特に春闘に向けてのですね、労使の交渉姿勢についてデータを確認したいんだというお話をされてますが、春闘に関しては、先日連合が5%以上の賃上げを求める基本構想を発表しました。現在は経営側がですね、方針を検討しているというような状況だと思いますが、12月のですね、次回の会合までに、この利上げの是非を判断できるほどですね、そうしたデータがある程度揃うという可能性があるのかどうか、その辺のお考えを伺えますでしょうか。
関連して、12月は国の予算編成の時期でもあり、なかなか政策変更を行うのが難しいのではないかという説を唱える人もいますが、これについて総裁はどのようにお考えでしょうか。
(答)
春闘に関する動きについて、12月までにどうか、情報はどれくらい集まるかというご質問ですが、本当に最終の春闘の妥結の賃金上昇率がどれくらいになるか、ということについて、きちんとした姿を知るまで待ちたいということではなくて、取りあえず私が申し上げているのは、初動のモメンタムがどういう感じになるかというところをもう少し情報を集めたいということでございます。
それから、予算編成と政策ということでございますが、これは、予算編成の途中であっても、どういう政策が決まりそうか、あるいは決まりつつあるか、ということを見通しに織り込みつつ、政策を場合によっては変更するということは十分可能だと思っております。
(問)
先ほど来、質問でも出てきたAIのことをお伺いしたいと思います。IMFも投資ブームが株高につながって、個人消費が押し上げられているというような分析をされていて、日本でも株価は非常に上がっています。これをどうとらえていらっしゃるかということと、事前に利上げをしてこうした過熱感を抑制しようといったお考えがあるのかどうか聞かせてください。
(答)
先ほど申し上げたこととちょっと重なりますけれども、仮に将来、生産性がAI投資によって上昇するということが見込まれている通り、正しいとしますと、その将来の生産性上昇を見込んで現在株価が上がって、その株価の上昇を理由に株を持ってる人の消費が上がるというのはきわめて自然な現象だと思います。将来、生産性とかGDP、所得が増えるということの果実を現在から得ているということになるかと思います。ただ、その見通しが過度に楽観的であるという場合には調整が発生するということだと思います。それから政策との関連では、特定の株価水準が行き過ぎであるから利上げで抑えようというような政策対応は考えていません。
(問)
前回、今のご質問に関連するかもしれませんが、バブルでないかと伺ったところですね、今回の展望レポートでは、資産価格の動向には留意が必要であると記述してくださってるんですけれども、そんな中、今回利上げを見送られたことについて、市場関係者の多くはですね、高市政権の発足直後で遠慮したんだろうというふうに受け止めてますよね。今日発表の後ですね、据え置き発表の後の相場はですね、円相場が1円近く下げた後また上がったり、それから日経平均の方はですね、600円ぐらい急落した後また戻したり、またその後下げたり、午後、発表後はですね、非常に振れ幅の大きい乱高下をしていてですね、これは政治への遠慮した姿勢に対する懸念を表明しているようにも思えるんですが、高市首相が利上げに反対をされた場合も、利上げを断行する覚悟は日銀にはおありになるんでしょうか。
(答)
今日、金利を据え置いた理由は、繰り返しになりますが、海外経済等を巡る不確実性が高い中で、特に国内の積極的な賃金設定行動が維持されるかどうかについてもう少しデータをみたいというところでございます。そういう点について、私どもの納得がいけば、それは政治状況にかかわらず、金利を調整するということになるというふうに考えております。
(問)
一点お伺いします。今回で6会合連続の政策金利据え置きとなって、この間全ての会合でですね、予想物価上昇率は緩やかに上昇していると、そういう判断を示されておられます。この間、実質金利がですね一段と低下して金融緩和度合いは強まっていると思いますが、これは日銀が進める金融緩和度合いの調整という方向性と逆行してると思うんですけども、総裁はこの点問題ないとお考えなのか、それともある程度総裁が考える閾値みたいなものに近づいているとお考えなのか、この点お願いします。
(答)
そこは現象的には、アメリカの関税政策を巡る不確実性あるいはそれの影響を巡る不確実性を非常に重視して、私ども金利を据え置いてきたということでありますけれども、その間の実質金利低下の経済への影響、これについては常に精査していますが、今後も改めて精査して次の会合では適切な政策判断をするつもりでございます。
(問)
連日過去最高を更新する株価動向と金融政策運営についてお伺いしたいんですけれども、今回の決定会合を巡っても、市場が利上げ可能性っていうのを織り込まない中で決定会合を迎えたわけなんですけれども、市場が織り込まない中で利上げすると株高が終わってしまうことへの警戒感がおありになったのか。もう一つは日本株、これだけ上がってきますと、日本経済に対して資産効果っていうのがどのぐらいあるのかと、この点についてお聞かせください。
(答)
利上げないし金利の調整が株価のトレンドを大きく変化させるということを懸念して利上げをしないというようなことは考えておりません。それから、株高の資産効果については常に注目してみています。消費への効果であったり、設備投資への効果であったり。ただなかなか、信頼度の高い推計値を得るのは難しいところでございます。
(問)
先ほど来、何人かの方が賃上げについて聞かれていたと思うんですが、私もすいません、賃金上げについて質問させてください。直近の9月の短観の方はですね、景況感の方は比較的いい数字だったと思います。6月の短観についても関税の影響がまだ出ていない、今回もあまり出ていないというようなかたちだったと思います。この後、11月には大手企業の中間決算があって、その後業績見通しなんかも修正され、それを踏まえて賃上げの原資となる利益がどれくらいになるかっていうのがかなりみえてくるんじゃないかと思います。前回利上げをされた今年の1月も賃上げを確認したいということで賃上げを確認して1月にされたと思うんですが、次、賃上げの確認も、前回利上げをしたのと同じようなパスで確認ができるのか、それとも今のこうみえている姿だと、もう少し早くできそうなのか、逆にもう少しかかりそうなのか、現時点でどう考えているか教えてください。
(答)
結論的には、先ほどちらっと申し上げましたが、繰り返しになりますが、春闘全体をみなくてはというふうに考えているわけではなくて、初動のモメンタムを確認したいというところでございます。またその手前として、今おっしゃいましたように、企業収益がどのような姿に、特に関税率が例えば自動車であれば25%超から15%程度に落ち着いたところで、25年度収益の予想はどうなるかというようなところも大事な材料になってくるかと思います。
(問)
ちょっとこれまでの発言の確認になってしまうかもしれないんですけれども、今後の関税政策の影響についてなんですけれども、米国経済の先行きそのものについてはこれ以上の不確実性の低下っていうものが利上げ判断にとってもはや必要ではなくて、国内の来年の賃上げの初期のモメンタムというところにもう焦点が移りつつあるという認識ということでよろしいのでしょうか。
(答)
ご説明できるかどうかあれですが、大事な焦点としては春闘の最初の動きをみたいというところでございます。それが判断できそうになるタイミングまでに、例えばアメリカ発でみているよりも大きな負のニュースが出てくるかどうかというような感じでみていきたいということでございます。
(問)
住宅投資もしくは資産価格といったことについてお聞きしたいんですが、今回住宅投資については弱めではなくて減少しているというふうに表現を変えられているというふうに思います。この背景なんですけども、日銀の金融政策、利上げの結果として少し弱含んでいる、つまり正常な経路なのか、あるいは不動産価格が高くなり過ぎてその影響が出ているということなのか。だとすると、株価も含めてですね、不動産価格、ややバブル的な要素がみられるようにも思えるんですが、この辺りどうお考えでしょうか。
(答)
住宅投資についてはですね、正確なタイミングはあれですが、今年の春に建築基準法ですか、これが厳しくなりまして、その前にそれを予想して駆け込みの需要がたくさん出た。その反動が今出てる局面にあるというふうにみています。
(問)
日銀と政治との距離感についてお伺いしたいと思います。日銀の独立性を高めたといわれている新日銀法の施行から27年になりますが、私がみる限りでは、政治との距離感っていうのは、旧日銀法のもととそれほど変わってないんじゃないかというふうにみえるわけですけれども、もし植田総裁のご見解がそれと異なるのであれば、是非伺いたいのと、そもそも日銀の独立性ってなぜ必要なのかということについて植田総裁、どうお考えなのかをお聞かせ頂きたいと思います。
(答)
私は旧法時代に政策決定に当たっていないので、もう一つ肌感覚で今とどう違うかというのは分かりませんけれども、改正された日銀法では、3条ですか、金融調節の自主性は尊重されなくてはならないということで、法律的に独立性はきちんと担保されているということだと思います。後半は。
(問)
なぜ独立性が必要なのかです。
(答)
これは一般論でお答えしますけれども、ある意味金融政策も公共的な政策ですので、その他の政策と同時にいろいろ調整をしながらやる方が効率的だという面はあるかと思いますけれども、特に金融政策の場合は政策のラグとかの問題のために非常に長期的な姿をきちんと考え、予想して政策を実行していくことが必要である。そういう中で、選挙等でわりと短期的な視野で決定が影響されがちになる他の政策と同時決定というのは必ずしも望ましい結果を生まないということから、特に金融政策の手段あるいは金利の調整というようなことについては、中央銀行に自主性を与えるという知恵が出てきたんだと思っております。
(問)
実質金利と所得配分についてお尋ねします。現在実質金利は非常に低い状態が続き、とりわけ預金の購買力が損なわれています。中央銀行は長期的にみて所得配分を左右しないという前提で、独立性のもと、金融政策を行う存在なんだと理解していますが、総裁は現状をどう認識しておられるのか。例えば、分配効果は長期でみて均せば相殺される範囲にとどまっているのか、あるいは日銀は政府と連携しているから民主主義の範疇なのか、金融政策の分配効果の現状についてお考えをお聞かせください。
(答)
金融政策は、金利を含めまして資産価格に影響を与えますので、それを通じて所得や資産の分配にも影響を与える面があるということは否定できないと思います。ただ、分配にどういう影響が発生しつつあるかということは注意しつつ進みますけれども、分配を平等にするように政策を行うという政策目標の立て方はしていないということではあります。そのうえで、特に一般の人々にとっては、高いインフレ率が発生して、10%か20%、当然持たなくてはいけないような現金とか、利子が限られている預金、これの実質価値が低下してしまうということが非常に大きな問題であるかと思います。そういうことがないように、物価の安定を実現するというのが、中央銀行の普通の政策運営姿勢であるかと思います。
(問)
先ほど総裁、アメリカ経済について下方リスクがやや低下したという趣旨のご説明でしたけど、それを踏まえますと、日本経済自身のですね、日本経済の下振れリスクがなお上振れリスクより大きいと今回改めて指摘された。この日本経済自体の下振れリスクも後退し、上振れリスクとよりバランスする方向にかなり近づいてきているというご判断なのか、その辺りについてご見解をお聞かせください。
(答)
微妙なところですけれども、関税の効果が少し後ずれしているということで、今年の第4四半期から来年にかけて、もう少し大きなマイナスの影響が出てくるかもしれないというところが、私どもの見通しの分布のところでは、26年[度]の下方リスクのところに多少出ているんだと思います。それがどれくらい大きなものを皆さん予想されてるかっていうのは、ちょっと数字を精査してこなかったんですけれども、日本経済についてのリスクという意味で、私どもが今重視していますのは、先ほど来繰り返し申し上げてますように、当面来年の春闘の初動の姿がどうなるかということと、食料品周りのインフレ率が私どもの見通し通り落ち着いてくるかどうか、これが実体経済にも影響してくるということと考えています。
以上
