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【挨拶】わが国の経済・物価情勢と金融政策新潟県金融経済懇談会における挨拶要旨

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日本銀行政策委員会審議委員 小枝 淳子
2025年11月20日

1.はじめに

日本銀行の小枝です。本日は、こうした懇談の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。新潟県の行政および金融・経済界を代表される皆様と意見交換できるということで、楽しみにしておりました。また、日頃より、新潟支店の円滑な業務運営に多大なご協力を頂いておりますこと、この場をお借りして御礼申し上げます。

本日は、最初に私から、経済・物価の現状と先行き、日本銀行の金融政策運営などについてご説明し、その後、皆様から当地の実情に関するお話や、日本銀行の政策・業務運営に対するご意見をお伺いできればと存じます。

2.経済・物価の現状と見通し

今年も残すところ1か月余りとなりました。1年を振り返りますと、しばしば目にしたのは「米」という字でした。このうち1つは米国、それからもう1つはコメのニュースです。まず、米国の通商政策については、今年の春にその不確実性が極めて高くなりました。米国の通商政策等の要因が海外経済を下押しした場合、わが国の外需もその分弱まることになります。また、輸出企業の収益や設備投資の減少が生じた際には、同様に経済の下押し圧力になると考えられます。一方、私たちの主食のコメに関しては、去年の後半以降、価格が高騰しました。様々な食料品価格の上昇を背景に物価高といわれるなか、コメ価格への目線も消費者のインフレ実感に影響を与えた可能性はあったと思います。

本日は、こういった二つの「米」の影響とそのマグニチュードを意識しつつ、経済・物価の現状と見通しについてお話していきたいと思います。

海外経済

まず、海外経済の動向についてです。図表1左をご覧ください。ここで海外経済とは、わが国の貿易相手国の実質GDP成長率を、通関輸出ウェイトで加重平均した値となります。過去30年を振り返りますと、海外GDP成長率は、世界金融危機とコロナ禍で大きく落ち込みましたが、平均的には毎年3%台後半で成長してきていることが確認できます。海外経済の見通しについては、ここではIMFが10月に公表した予測を基にしますと、大きな落ち込みは想定しておりません。わが国の財輸出総額はGDPの1/6ほどを占めますが、そのうち半分程度がアジア向けになっています。米国向けは、輸出全体の2割程度ですが、米国経済は世界経済の行方を左右する可能性がありますので、わが国経済の外需動向を考えるうえでも、他の地域の経済動向とともに見ていくことは重要です。足もと、米国経済の内需は底堅く推移しているものの、経済の先行きは、今回の通商政策だけではなく、投資サイクルや雇用環境の変容等によっても左右されうると考えています。

国内経済

次に国内経済についてです。図表1右の実質GDP成長率の内訳をご覧ください。この間、わが国の経済成長率は、海外経済と比べて低めの状況が続いてきました。また、世界金融危機とコロナ禍といった大きな負の外部ショックが生じた際には、内需が大きく落ち込むという反応がみられました。当時、輸出も大幅に落ち込み、経済成長率が極端なマイナスとなりました。今年の米国関税の影響は、こういった過去の大きな外部ショックと比べると、そこまで影響は大きくはないかもしれませんが、不確実性が高い中で、どの程度影響があるかについて見極める必要が出てきました。

図表2右の財別にみた実質輸出をご覧ください。米国側で分野別関税が導入されている「自動車関連」や「中間財」に含まれる鉄鋼・アルミ産業の輸出は、足もと弱めの動きが見えております。一方で、「情報関連」に含まれる半導体は増加しており、これはIT産業関連の需要を反映しているものと思います。図表2左をご覧ください。米国への輸出については足もと弱い動きとなっていますが、NIEs・ASEAN向けは半導体輸出にけん引されて増加しています。したがって、輸出全体としては、足もとまではトレンドから下方に乖離しているとまではいえない状況であると思います。

設備投資も足もとしっかりしています(図表3左)。短観の設備投資計画をみると、昨年並みの高めの伸び率となっています(図表3右)。日本銀行の支店長会議における地域からの報告を聞いていても、人手不足を補うための設備投資ニーズは堅調だとみています。米国の関税政策の不確実性は依然として続いているものの、ひところよりは収まってきましたし、個人的には、そもそも世界的にも株高の流れで、わが国でも株価が史上最高値を更新するなか、投資が刺激される側面もあるのかもしれないと思います。

企業収益については、関税の影響が懸念される製造業でも、とても高い水準にあります(図表4左)。株高が続くなか、業況判断も高水準となっています(図表4右)。もっとも、関税の影響を受けた輸出企業の一部は、関税分を米国での販売価格にフル転嫁しておらず、円建ての輸出価格を抑えることで、関税による負担増をある程度自社で吸収している状況にあります。今後関連企業も含めて収益にどれだけ影響が生じるかは、今後の賃上げ動向を見極めるためにも、注意を払う必要があると考えています。

こうした収益環境のもと、名目賃金はボーナスや残業代などを含まない所定内給与の伸びもあり、着実に上昇を続けています。もっとも、社会保障・税の負担分を引いた可処分所得の実質値(図表5左)は、物価高の影響もあって横ばいとなっています。一般労働者については、ベアもあって一人当たり2%台の伸びとなっており、短時間(パート)労働者についても、一人当たり時間当たり所定内給与がしっかりと伸びています(図表5右)。働き方改革が進み労働時間が減少する中では、一般労働者についても「一人当たり時間当たり」の賃金を見ることも有用ではないかと思います。

賃上げについては、毎年春の賃金改定は重要ですが、加えて、多面的な賃金動向にも注目することが望ましいと私は考えています。例えば、最低賃金がどの程度引き上げられたか、冬のボーナスは企業収益を踏まえてどうなるかといったことや、転職の前後で賃金がどの程度改善しているかといった点も、しっかり見ていく必要があると思います。

こうした中、個人消費については、消費活動指数の内訳をみますと(図表6左)、食料品を中心とした物価高の影響もあり、食料品を含む非耐久財の実質消費が弱い動きとなっております。ただし、サービス消費は堅調な中、消費全体でみると、需給両面のデータを使って作成されるSNAも含め、底堅くみえます(図表6右)。

以上のような状況から、経済の状況を総合的に評価いたしますと、全体として、足もとのわが国の経済指標は悪くないと思います。私どもの展望レポートの基本的見解では、経済面では「一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している」と判断しております。経済の見通しやリスクバランスについては後ほど議論いたします。

国内物価

次に物価についてお話しします。国民生活に密着している物価は、やはり消費者物価指数(CPI)となると思いますが、これは最終財のいわゆるBtoCの価格でありますので、その前に、BtoB、すなわち企業間の価格転嫁についてお話しします。その際、輸入物価の動向は重要と考えています。図表7左をご覧ください。2021年以降、原油高と円安の影響もあり、輸入物価は大きく上昇しました。もっとも、足もとの前年比は若干マイナスとなっています。

図表7右をご覧ください。国内企業物価の動きは、輸入物価の動向に大きく影響を受けていることが示唆されます。企業物価の内訳をみると、足もとでは食料品価格の高騰の影響がけん引していることがわかります。この背景には、輸入物価の動向に加え、人件費や物流費の上昇も反映されていると考えられますし、また気候変動の影響もあって、国際的にも食料品価格は変動しやすい状況といえるかもしれません。今後は、食料品価格がトレンドとしても上昇傾向にあるかどうかについても、注意が必要だと私は考えています。

食料品は、消費者物価指数においても、全体の1/4程度のウェイトを占めています。図表8をご覧ください。足もとCPIの伸びも食料品に牽引されています。特に、この1年をみると米類の寄与が上がりました。ここで、米類とは消費者物価の調査対象となっている銘柄米のことを指しており、「おにぎり」や「すし(弁当)」などコメに関連した食料品への影響は、「食料品(除く米類)」のところに現れてきます。

図表9左をご覧ください。CPIの米類は、昨年以降急激な上昇がみられました。CPIの米類の価格は2倍になりましたが、これはこの間、CPI全体を0.6%ポイント程度押し上げたこととなります。コメ価格は、足もと前年比でみると低下してきていますが、水準としては去年の前半と比べて倍以上になっています。

図表9右をご覧ください。品目ごとの企業物価指数(CGPI)を見ると、昨年後半以降のコメ価格高騰は、玄米が牽引してきたことが示唆されます。また、玄米とともに精米価格も上昇しています。コメ市場の価格形成メカニズムに関しては、シンプルな需要曲線と供給曲線だけでは一概に説明できないのかもしれませんが、一般論として、代替品が相対的に少なく、また需要の価格弾力性も高くないのであれば、供給に価格が振らされやすい面はあるかもしれません。

日本銀行が実施している「生活意識に関するアンケート調査」の9月の結果をみると、1年前に比べて物価が「かなり上がった」と感じている人は7割ほどとなっています。この割合は6月の結果と比べて少し低下していることから、ここには政府による備蓄米放出の効果等が表れているのかもしれません。もっとも、コメはわが国では主食ですので、今後その前年比でみた伸び率が減衰していったとしても、水準が高止まりした場合には、インフレ実感や、ひいてはインフレ予想を押し上げる可能性はあると思います。1

また、コメに限らず、幅広い品目の価格が上昇していることは、CPIの上昇・下落品目比率の高まりからも確認できます(図表10左)。財・サービス別には、日本ではコロナ後、当時の米国とは対照的に、サービスではなく財のCPIの伸びが強かったということが指摘されています。一方で、サービスの価格は、最終需要・中間需要物価指数、いわゆるFD-ID指数をみると、川上から川下全ての段階で上昇していることが示唆されています。このうち、経済活動の最終段階で需要されるサービスについてみても、足もと1年程度は前年比+2%強の価格上昇で安定した状態が続いています(図表10右)。今後、こういった動向がCPIにも持続的に反映されてくることは十分に考えられると思います。

以上のような状況から、物価の動向を総合的に評価いたしますと、足もとの物価は全体としては強めだと思います。私どもの展望レポートの基本的見解では、物価面では「消費者物価(除く生鮮食品)の前年比を見ると、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、米などの食料品価格上昇の影響等から、足もとでは3%程度となっている」と判断しております。物価の見通しやリスクバランスについては次に議論いたします。

  1. Coibion and Gorodnichenko (2025) は、観察しやすく同質的な生活必需品(ガソリン)の価格水準が家計の期待インフレ形成に影響を与えていることを、主に米国のデータを使用して指摘している。
    Coibion, Olivier, and Yuriy Gorodnichenko [2025] “Inflation, Expectations and Monetary Policy: What Have We Learned and to What End?” Second Thomas Laubach Research Conference, May 15-16, 2025, Federal Reserve Board.

経済・物価の見通し

日本銀行では、9人の政策委員が、展望レポート公表月の金融政策決定会合で、経済・物価の見通しを、各自独立に示しています。図表11をご覧ください。各政策委員の実質GDPとコアCPI(消費者物価除く生鮮食品)について、年度の見通しを公表しています。直近10月の展望レポートでは、経済の成長ペースについては、いったん伸び悩んだ後で、先行き伸びを高めていく姿を考えています。物価については、来年度前半にかけて、米などの食料品価格上昇の影響が減衰していく影響を考慮しています。

図表11のボックスをご覧ください。経済のリスク要因としては、各国の通商政策などの影響を受けた海外の経済・物価動向、輸入物価の動向、環境変化が中長期的な成長期待や潜在成長率に与える影響等を考慮しています。物価のリスク要因としては、企業の賃金・価格設定行動、為替相場の変動や輸入物価の動向を考慮しています。リスクバランスについては、マーカーの形でお示ししています。直近10月時点の委員の見通しを総合してみると、経済については、25年度についてはバランスしていて、26年度については、下振れリスクの方が大きくなっていることがわかります。物価については、上下にバランスしていることがわかります。

二つの「米」の観点から申し上げますと、関税については、経済へは下振れリスクとなる一方で、物価には上下双方向のリスクがあるとみています。外需の弱まりは物価の下振れリスクとなりますが、供給制約の強まり等は輸入物価の上振れリスクとなります。コメについては、仮に今後その価格水準が消費者の物価高の実感を大きく押し上げる場合には、インフレ予想の上振れを通じて、先行きの物価に対しては上振れリスクとなる一方で、経済に対しては、消費の影響を考慮すると下振れリスクとなりうると考えています。もっとも、総合的に見た経済と物価のリスクバランスは、2つの「米」以外の要因にも左右されます。特に、金融環境は重要な要因の一つですので、次の金融政策運営パートで議論致します。

3.金融政策運営

金融環境・金融緩和度合い

わが国の金融環境は、緩和的な状況が続いています。図表12をご覧ください。実質金利はマイナスで、その水準は他国と比べても明らかに低いと思います。こうした状態では、仮に実質金利のマイナス幅が少し縮んだとしても、緩和的な環境のもとで、消費や投資は刺激され続ける可能性は高いと私はみています。

金融政策がどれだけ緩和的なのかを判断する上では、実質金利が、均衡的な概念である自然利子率と比べて、どれだけ低い水準にあるのかという視点があります。自然利子率の推計値には幅があります(図表13右)が、長期的には、自然利子率は潜在成長率と(図表13左)は同じような推移になると考えるのは自然かもしれません。人口動態など、経済社会の構造が変化する中で、これらがどのような推移をたどるのかについても、注意を払う必要があると考えています。

現在の実質金利が極めて低い水準にあることを踏まえると、実質金利を均衡状態に戻していくという金利の正常化を進めることが、将来に意図せざる歪みをもたらさないためにも必要であると私は考えています。足もとの需給関連指標を見ると、需給ギャップは概ねゼロ%近傍ですが(図表14左)、人手不足感が高まるもとで、労働市場はタイトです(図表14右)。そうしたもとでは、展望レポートに記載しているように「経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」ことは必要だと考えています。

なお、実質金利と自然利子率はいずれも実質の値ですが、これらに対応する名目の金利、つまり現在0.5%である政策金利を中立金利と比較することは、金融政策の1つの論点となっており、市場関係者の関心も高いと理解しています。

基調的な物価上昇率

金融政策運営を考えるにあたっては、基調的な物価上昇率について議論することも必要だと考えています。日本銀行の使命である持続的に安定的な2%の物価目標を達成するうえでも、こうした概念は重要だと考えています。

基調的な物価上昇率については様々な指標がございます。このうち、ハードデータに基づく指標は、その計算方法が明確であり、一定の役割があると思います。図表15左は、伝統的なCPIの各指標を四半期平均で表しており、このうち、先に申し上げた展望レポートで見通しを公表しているCPI除く生鮮食品については、足もと3%程度となっています。一方、海外でよく使用されているコアインフレの定義であるCPI除く食料・エネルギーは、直近の四半期では1%台半ば程度です。

図表15右も、ハードデータを使用して、品目別の平均値や中央値といった統計的な値から、基調的な物価上昇率を計算したものです。これらの値は、足もとのCPI米類のような、極端に価格が上昇した品目の影響は、直接的には受けません。もっとも、主食であるコメ価格の高騰は、関連品目の価格にも影響を与えますし、さらには、「食料品全体の価格が高くなりそう」といった消費者のインフレ期待を高め、その結果、他の食料品等の価格設定行動が変わる可能性もあることから、物価に対する二次的な影響はありうると考えています。

したがって、食料品価格の高騰は、インフレ予想にも影響する可能性はあります。インフレ予想については、図表16をご覧ください。左の図は、先程少し触れた生活意識アンケートの結果から、一定の仮定に基づいて計算したインフレ予想となります。右の図は、企業や専門家へのアンケートに基づくものや、マーケットベースの指標の一部をお示ししています。どの指標を見てもこの数年でしっかり上昇している傾向であることがわかります。

このように多くの指標がある中で、その推計の幅や計測誤差も踏まえると、私としては、総合的に見て基調的な物価上昇率は2%ぐらいになってきていると思います。物価目標の達成にあたって、基調的な物価上昇率については、その定着度、あるいはアンカー度合いを確認することも重要だと思います。例えば、長期の収束値のほか、物価と失業率の関係を示すフィリップス曲線の切片は安定しているかといった視点は、モデルからも示唆できるところもあり、そうした点は今後も見ていきたいと考えています。また、経済が底堅いか、需給はどのぐらい引き締まっているかなど、物価を取り巻く要因も見ながら、総合的に判断をしていく必要があると思います。

足もとの物価は、基調的な物価上昇率よりも強い状況が続いています。供給サイドの一時的な要因による消費者物価の押し上げ寄与が、今後想定どおりに縮小していくか、注視する必要があります。また、食料品などの上昇が想定以上に長引く可能性はないか、またこうした動きがインフレ予想にどの程度影響しうるのか等についても、みていく必要があります。

金融政策の運営に当たっては、経済・物価動向に加え、金融市場や金融システムにおける様々な動向を踏まえつつ、その短期的・長期的な影響について、日々情報を更新して、その都度、政策判断していく必要があります。

バランスシートの正常化

金融政策の主役はあくまでも政策金利でありますが、日本銀行では、長年続いた非伝統的金融政策のもとで極めて大きくなった本行のバランスシートについて、正常化を進めています。日本銀行のバランスシートで最も大きな資産項目は国債です。図表17をご覧ください。長期国債買入れの減額計画についてお示ししております。減額計画は去年の7月より毎四半期4,000億円ペースで実行されていますが、本年6月の金融政策決定会合では、市場機能の改善と国債市場の安定という2つの点のバランスに配慮し、減額ペースを2026年3月まで続けること、それから来年度については、毎四半期2,000億円ペースで進めることを方針として決定しました。償還分のほうが買入れ分よりも大きいことから、日本銀行におけるストックの国債保有額は、毎年緩やかに低下していきます。買入れの減額については、来年6月の金融政策決定会合で中間評価を実施いたします。

次に図表18をご覧ください。本年9月の金融政策決定会合では、ETF等の処分方針についても決定しました。市場に攪乱的な影響を与えることを極力回避する観点から、市場全体の売買代金に占める売却割合は0.05%程度としています。また、こうした売却ペースのもとで、市場の状況に応じ、売却額の一時的な調整や停止を行うことができるとするなど、市場の安定に配慮するための柔軟性も確保しています。

予見可能な形で粛々と正常化を進めるとともに、適切なバランスシートの大きさやその構成については、資産・負債の両面から議論していく必要があると考えています。

4.新潟県の経済

最後に、新潟支店を通じた情報も踏まえまして、新潟県の経済についてお話しいたします。

新潟県は、広大な越後平野や日本一の長流、信濃川をはじめ、豊かな自然に恵まれており、日本海に面した美しい海岸線など、自然が生み出す四季折々の美しい景観が数多くございます。

そして、日本一の米どころであるほか、枝豆でも作付面積が全国一位を誇るなど、自然の恵みを生かした農業王国でもあります。農業以外にも、豊富な水産資源を活用した練り物、良質なコメと水で作られた日本酒、米菓などの食料品、織物やニットなどの繊維産業のほか、建設業、工作機械や建設機械、化学、金属加工など、幅広い分野で高い技術をもった個性豊かな産業を有しています。さらに、近年、重要性が高まっているAI向けの半導体関連でも競争力のある企業が多くあります。

また、昨年7月にユネスコの世界文化遺産に登録された「佐渡島の金山」をはじめ、スキーリゾートや温泉地など、県外、海外から訪れる観光客を惹きつける観光資源が数多く存在しており、訪れる人の心を満たす魅力に溢れているのが新潟県の大きな強みではないかと考えます(図表19)。

新潟県の経済をみますと、全国と同様に、原材料高の影響などを受けつつも、持ち直しています。同時に、少子高齢化や人口の減少に伴う人手不足のほか、地球規模の気候変動の中で、夏の猛暑や渇水、一方で、豪雨や豪雪も激しさを増しているといった課題にも直面しています。こうした中で、新潟県を代表する作物である米については、農地集約による大規模化、ドローンやAIを用いたスマート農業、高温耐性のある品種の開発や作付けの促進など、人口減少や気候変動といった環境変化への対応を積極的に推進されています。このほかにも、新潟県では、「高い付加価値を創出する産業構造への転換」を重要課題の一つととらえ、意欲ある企業の変革や挑戦の取り組みを後押しすることで、地域経済の活性化と好循環を生み出そうと取り組んでおられるほか、新しいビジネスに挑戦する若者や企業に選ばれる新潟の実現にも力を入れています。

新潟県は、豊かな自然や魅力的な文化、様々な農産物や水産物、幅広い分野で高い技術力を有する産業の集積という強みを上手く活かしていくことで、今後の持続的な発展は十分に期待できると考えています。こうした取り組みが実を結ぶことによって、今後、新潟県経済がますます発展していくことを祈念いたします。

ご清聴ありがとうございました。