【挨拶】 全国信用金庫大会における挨拶
日本銀行総裁 植田 和男
(代読 日本銀行副総裁 氷見野 良三)
2026年6月24日
はじめに
本日は、全国信用金庫大会にお招き頂き、誠にありがとうございます。
信用金庫の皆様は、地域に根差した協同組織金融機関として、中小企業や住民の方々に深く寄り添い、地域経済の持続的な成長と地域社会の着実な発展に多大なる貢献を果たしてこられました。あらためて、皆様の日頃のご尽力に対し、日本銀行を代表して深く敬意を表します。
経済・物価情勢と日本銀行の金融政策運営
はじめに、経済・物価情勢について、申し上げます。
わが国の景気は、中東情勢の影響もあって一部に弱めの動きもみられますが、緩やかに回復しています。先行きについては、原油価格上昇が景気の下押し要因として作用するものの、高水準の企業収益などが経済を下支えすると見込まれるほか、政府による各種施策や原材料の代替調達なども進んでいるところです。このため、わが国経済は、伸び率を縮小しつつも、緩やかな成長を続けるとみております。
物価面をみると、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、足もとでは1%台半ばとなっているものの、先行きについては、原油価格上昇が、エネルギー価格や財価格を中心に押し上げ方向に作用することから、2%をはっきりと上回る水準まで伸び率を高めていくと予想しております。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、徐々に高まっていくと予想され、今年度後半から来年度にかけて「物価安定の目標」と概ね整合的な水準になると考えております。
続いて、金融政策運営です。日本銀行は、先週の金融政策決定会合において、政策金利を引き上げて、1.0%程度とすることを決定しました。先ほど申し上げたとおり、わが国経済は、伸び率を縮小しつつも、緩やかな成長を続けるとみられます。物価面では、原油高を起点とする価格上昇の動きが幅広い品目に波及したり、基調的な物価上昇率が2%の「物価安定の目標」を超えて上振れていくリスクがあると考えられます。こうしたことを踏まえ、金融緩和の度合いを調整することが適切であると判断いたしました。政策金利の変更後も、緩和的な金融環境は維持されるため、引き続き経済活動をしっかりとサポートしていくと考えています。
今後の金融政策運営については、基調的な物価上昇率が2%に近づいているなか、現在の金融環境が緩和的であることを踏まえますと、経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。そのうえで、調整のタイミングやペースについては、中東情勢の展開がわが国経済・物価に及ぼす影響を注視したうえで、経済・物価の中心的な見通しが実現する確度やリスクを点検しながら、検討していく方針です。
なお、先週の決定会合では、国債市場の動向と機能度を点検し、日本銀行の今後の国債買入れのあり方についても検討しました。その結果、来年3月までは従来の減額計画を維持し、来年4月以降は月間2兆円程度の買入れを行うことを決定しました。
今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、適切に金融政策を運営していく方針です。
金融システム面の話題
次に、金融システム面の話題です。
わが国の金融機関は、充実した資本基盤と安定的な調達基盤を有しており、金融システムは、全体として安定性を維持しています。
他方で、今後の中東情勢やAI関連投資の収益性、海外ノンバンク部門の動向等が、様々な経路を通じて金融システムに及ぼす影響については丁寧にみていく必要があります。生成AI技術の進展によりサイバー攻撃の高度化も懸念されています。地域金融機関にとっては、多様化する金融サービスへのニーズに引き続き応えていくためにも、こうした状況を踏まえながら、リスクを適切に管理していくことが一段と重要になっています。
地域経済においては、前向きな企業活動がみられる一方で、人手不足や原材料高、さらには事業承継や脱炭素への対応など、多面的な課題への対応が必要となっています。中小企業が持続的な成長を遂げるためには、変化する経営環境に柔軟に対応しながら、生産性の向上や付加価値の創出に向けた取り組みを着実に進めていくことが重要です。こうした地元企業の取り組みを支え、地域の底力を引き出すうえで、信用金庫が果たす役割は一層大きなものとなっています。
この点、多くの信用金庫では、地域密着の強みを活かし、取引先の販路開拓やDX推進、創業・事業承継支援など、幅広い分野できめ細かな取り組みを進めておられます。また、その担い手となる人材の育成や人的資本経営の推進、デジタル技術も用いた業務の効率化、さらには、関係機関とも連携した地域課題の解決にも積極的に取り組まれておられます。
今後も信用金庫が、適切なガバナンスとリスク管理体制のもとで、これまで培われた強みと変革への志を発揮し、時代の要請に応じた新たな価値を地域に提供し続けていかれることを期待しています。
おわりに
最後に、信用金庫業界の皆様の今後のますますのご健勝とご発展を祈念いたしまして、私からのご挨拶といたします。ご清聴ありがとうございました。
