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【挨拶】わが国の経済・物価情勢と金融政策福井県金融経済懇談会における挨拶要旨

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日本銀行政策委員会審議委員 増 一行
2026年9月10日

1.はじめに

日本銀行の増と申します。はじめに、先日の豪雨の被害に遭われた方々に、心よりお見舞いを申し上げます。また、災害の発生から間もない中、本日は福井県の行政、財界、金融界を代表される皆様との懇談の機会を賜りましたこと、誠にありがとうございます。皆様には日頃より金沢支店・福井事務所の円滑な運営に多大なご協力をいただいておりますこと、この場をお借りして御礼申し上げます。

さてここでは先ず私から、日本銀行がどういうところに重点的に注意を払って金融政策を運営しているのかを、個人的な見解も交えて簡単にお話しし、その上で皆様の方から、当地のお話や日本銀行に対するご意見などを伺えればと存じます。

2.物価

イラン情勢

私が審議委員に就任してから1年と2か月が経ちましたが、米国発の大きな事象に世界中が翻弄された期間でした。ひとつは関税で、もうひとつがイラン情勢です。

関税問題は意外なほど景気を崩しませんでしたが、もともと自動車など米国向け輸出の多い産業に影響が集中したもので、これに対してイラン情勢は遥かに広い分野に影響を与えております。ホルムズ海峡の封鎖によって、原油などの供給が逼迫するものであり、物価上昇と景気減速の両方の可能性があるため、各国の中央銀行は判断の難しい状況に立たされています。

日本への影響は、原油とLNGで違う動きとなります。原油は不足して価格が上がり、LNGは不足しないのにやはり価格が上がります。図表1に原油とLNGの価格推移をお載せしました。

まず原油ですが、ホルムズ海峡を通る輸入が7割強という状況で今回の事態を迎えました。原油から作られるガソリン、軽油などの輸送用燃料が不足する以上に、化学品の逼迫が懸念されました。70年代の石油ショックのときと比べて、この50年間のプラスチック製品の普及により影響は大きくなっている可能性があります。しかし、いずれも今のところ値段が大幅に上がったものの、国家備蓄の放出や代替調達によって必要量を賄えているようです。

次にLNGですが、日本の電源構成の3割を占めるほか、都市ガスとしても使われています。カタールとの契約が一時期よりも減っていて、ホルムズ海峡を通っていたのは輸入の6%くらいで、スポット調達で賄える規模です。従って量の心配はないのですが、原油価格に連動する契約が多く、4か月前後遅れて反映されます。ウクライナ侵攻の時にはスポット価格の高騰により増幅されていましたが、今回はその影響はないものの、これから価格が上昇することは避けられません。

インフレ

インフレにも色々なものがありますが、需要サイドから来るものと供給サイドから来るものに分けますと、需要サイドとして分かり易いのがホテルの宿泊料でしょう。インバウンド観光の影響もあって、以前に比べると大幅に上昇しています。

供給サイドから来るものとしては、原油高騰などの一時的な供給ショックがその典型です。どうしてもショックが目を惹きますが、恒常的に生じているものもあり、日本では人件費や物流費がこれに当たるのではないでしょうか。ショックと違って短期間では収まりませんから、物価に対して基調的な影響を与えます。

図表2に代表的な物価指標を並べてみました。左から消費者物価指数、企業物価指数、企業向けサービス価格指数となります。

一般に「物価」というときには消費者物価指数を指します。マイナスというデフレになった時期もありましたが、最近ではハッキリとインフレとなっています。直近が下がり気味なのは、コメの価格が落ち着いて来たことや、ガソリンの暫定税率の廃止、高校の授業料無償化などの政策要因によるものです。これら政策要因による低下は一時的なものとはいえ、実際に消費者が支出する価格はこの水準です。しかし、価格が抑えられることで需要を喚起し、物価全般を押し上げる効果を生んでしまう点には留意が必要です。    

企業物価指数は、企業間の取引を把握するもので、原油など原料の価格上昇が商流に与える影響を網羅的に拾うことから大き目の数字となり、川下に進むにしたがって原価割合に応じてその影響は薄まります。また、製品コストには人件費や物流費、利益などが加わって来るため、そのまま消費者物価指数と一致するものではありません。しかし、企業の価格転嫁が進んでいる現在、企業物価の上昇は従来以上に消費者物価を押し上げるものと考える必要があり、直近の7%という上昇率には注意を払う必要があります。

企業向けサービス価格指数には、製造業以外の外食や宿泊などのサービス業のほか物流や情報関係の費用などが含まれ、大きくは人件費によって動きます。

人件費

このようなマクロ指標が重要なのですが、長年商売をやる会社にいた所為でしょうか、何がどんなメカニズムで動いているのかがどうしても気に掛かり、やや細かく分解して観ています。まず人件費です。

図表3左は時間外手当や賞与を含まないベアに近い賃金データで、最近は3%前後の上昇率となっています。春闘で言われている5から6%の賃上げは定期昇給を含むもので、各個人ベースの生活実感はその方が合うのでしょうが、会社全体では定年退職して行く人もいれば新卒の採用もあり入れ替わって行きますので、このようなデータを観るべきでしょう。

賃金の上昇率は、金融政策に於いて非常に重要な判断材料となります。賃金の上昇を価格に転嫁する、その物価上昇を賃上げがカバーする、という緩やかな循環があってこそ、経済が安定して回って行くものです。デフレ期の様にどちらも上がらない状態も、第一次石油ショックの時の様に両方が過度に上昇するのも、経済には良くない状況となります。

図表3右の賃上げ率からインフレ率を引いた実質賃金が、家計にとっては重要です。賃金が上がってもインフレに追いつけなければ、家計トータルではマイナスとなりますが、漸くプラス圏に入って来ました。3%前後の賃上げ水準が続く一方で、インフレ率が日銀の目標の2%程度に収まれば、実質賃金のプラスが続きます。ただ、補助金等の政策要因で最近の物価上昇率が抑えられていることには注意が必要です。企業経営者は一般に物価上昇率に見合う賃上げを行い、これを価格に転嫁しようとしますので、物価上昇率が一時的にでも下がれば賃上げ交渉に影響が出ないとも限りません。

尚、賃上げの上に利上げが重なって大変だ、という声をよくお聞きします。確かに、人手不足に加えて最低賃金の引き上げへの対応から、事業者のみなさまが大変なご苦労をなさっていることは想像に難くありません。しかし、物価上昇率が適切な水準に抑制できなければ、さらに大きな賃上げを行わないことには雇用が維持できないという悪循環に陥ってしまいます。折角の賃上げを無駄にしないためにも、適切な金融政策によって物価上昇率をコントロールすることで、実質賃金がプラスとなる状況を維持して行くことが大切だと考えている点、ご理解を賜れれば幸いです。

さて、昨今の人手不足に関連して、ひとつ気になっているデータがあります。図表4左は労働に関するデータです。就業者数は女性やシニアの参加により増えており、就業時間は働き方改革などにより減っています。その2つを掛けた労働投入という数字は、若干減少気味とはいえまだ横這い圏内です。建設や介護などの人手不足が深刻といわれ、業種・職種によるミスマッチがあることは間違いないのですが、総数が横這いで、不足気味の部分があるのなら、そうでない部分もあるはずとなります。後者の部分の賃上げが今後どうなるのかなどが気になるところです。

図表4右は都道府県別の就業者数の伸びの分布で、こちらは地域ごとの差が拡がっており、福井県も全国平均よりも1割ほど低いため、みなさまにも人手不足感が強いのではないかと思われます。

物流費

次に物流費です。図表5左は先ほどの企業向けサービス価格のデータの中から、自動車貨物輸送の価格上昇率を抜き出したもので、7月は前年比で6%近くまで高騰しております。図表5右のように、今年3月中旬から燃料費補助金が復活してガソリン価格等は前年比では下落していたにも拘わらずこの数字ですから、原油高を契機に実質的には人件費の転嫁が進んでいる可能性もあります。

物流費は物価に広く波及するので、後に述べます基調的な物価上昇率への影響が懸念されます。もちろん物流費や人件費が生産コストの全てではありませんから、そのままインフレ率につながる訳ではありません。

食料品

次に消費者物価指数のなかでもウエイトの大きい、食料品の価格です。

図表6左は先ほどの消費者物価指数の最近の部分を、要因別に分解したものです。棒グラフの一番上には通信やホテルや教育などの「サービス」の価格、次が食料品とエネルギーを除いた「財」、その下の「コメ関連」というのがコメそのものとコメを原料とする弁当・お握り・煎餅などの加工食品、その下の濃い青色がそれ以外の「食料品(除く生鮮)」として、消費者物価指数の前年比の伸び率に対する、それぞれが占める割合が示されています。

ご覧の通り、インフレに与える食料品の影響は大きいです。分かり易くするために、図表6右に価格上昇率をグラフにしてみました。生鮮食品とエネルギーはブレが大きいため除いて観ることが多いです。一昨年から昨年にかけてコメの価格が2倍になるという歴史的な事態が生じたため、「コメ関連」の高さは別格ですが、それ以外の3つを比べていただくと、サービスと財が1%台で落ち着いているのに比べて、コメを使わない食料品の上昇率が、コメにつられるように高いことが見て取れます。コメ価格の下落が始まって、これまでコメに合わせる形で値上げを続けて来た食品メーカーにとって難しい局面が到来することも予想されましたが、物流費や包装材、食品トレーの価格上昇などで再び価格を引き上げ易い環境となることから、今後値上げの再加速が懸念されます。コメや原油に目を奪われがちですが、食料品の価格は長い目で見てインフレのカギを握るものと思われます。

その他のリスク要因

日銀としてはイラン情勢の他に、為替相場の変動とAI関連需要の動向を物価のリスク要因として警戒しています。

為替政策は政府の管轄で、日銀が為替に直接対応するために政策金利を決めるというものではありませんが、円安が物価に与える影響は従来に増して大きくなっており、十分に留意する必要があります。

AI関連需要は半導体そのものの他、半導体製造装置、銅、発電設備などの価格を押し上げており、パソコン、家電製品など一般消費財への影響が出ております。この世界的な急拡大は需要ショックと呼べるもので、企業業績などとともに物価にも強い上昇圧力を加えています。しかし、AI関連需要は原油高や円安とは違って、収まれば良いというものではありません。原油高のマイナスの影響を和らげ、世界経済を支えている要因でもありますので、もしこの勢いが止まると影響は大きなものとなります。また、日本は米中のようにグローバルにAIサービスを提供しているのではなく、原材料や周辺機器で恩恵を受けている状況ですから、AIの生産規模の拡大が止まった段階でその恩恵が減ることにも注意が必要です。

3.経済指標

実質金利

次に、われわれが観ている指標について、代表的なものをご説明させていただきます。既に、物価や為替や賃金については述べましたので、まず、日銀の政策との関係で引き合いに出される2つの金利についてお話しします。

まず実質金利で、名目金利からインフレ率を引いたものです。図表7に1年物と10年物の実質金利を示しました。いくつかの統計データを合成して算出したインフレ予想を用いて、これを国債の現在の利回りから引いたものです。昨年までいずれもかなりのマイナス圏にいたのですが、日銀の政策金利の引き上げや、長期金利の上昇などもあって、ゼロを挟んだ姿となっています。

ただ、1年物から2年物辺りまでがいまだにマイナスという状況にあります。借入の利息よりもそれで買った不動産の値上がりの方が大きいので、不動産価格の高騰を招くおそれがあります。企業の設備投資を必要以上に急がす方向に働き、家計の預金は実質的な価値が目減りします。今はデフレではないので、実質金利がマイナスという状況は早く解消すべきだと思います。

中立金利

次に中立金利ですが、金融政策運営にあたって、各国の中央銀行が常に念頭に置いている指標です。そうは言ってもズバリ何パーセントと明確な数字が示せるものではありません。

中立金利の算定は、まず景気を熱しも冷ましもしない自然利子率を推計します。図表8左にあるような様々な理論モデルから算定するのですが、かなり広いレンジを持ったものとして推計されています。これは今年3月に公表した最新の数値です。前回の公表から2年半振りの算定ですが、全体のレンジとしては大きくは変わっておらず、-0.9から0.5%と推定されました。

この自然利子率はインフレ勘案前の実質金利なので、日銀のインフレ目標である2%を加えて名目ベースにしたものが1.1から2.5%となり、これが中立金利として報道されているものです。これに対して、日銀が現在設定している政策金利が1.0%となります。

それぞれが様々な推定を置いて算定されていて、広いレンジでしか示せないものですので、中立金利はあくまで一つの参考指標です。特に、この2年間の利上げで推定レンジに近づいて来ていることから、今後は物価、雇用、金融環境などをより細かく点検して行くことが必要になります。

図表8右にありますように、日本は欧米と違って政策金利が中立金利の推計レンジを下回っています。最近、世界各国では中立金利に向けて利下げが続き、日本とは逆の方向に進んでいました。なぜ日本だけレンジの下にいるのかは、コロナ禍の後、世界的に起きたインフレとその対応の違いでご理解いただけると思います。図表9にあるように、日本では欧米ほどの高いインフレ率にならなかったことから、マイナス金利が続けられていました。長いデフレの所為で、簡単に原料の値上がりを価格に転嫁できなかったことが影響したのだとも言われています。

米国関税に当たっては、世界中が同じ景気悪化への懸念を抱きながら、利上げと利下げという逆の方向を取らなければならない状況でした。今はイラン情勢を受けて世界中がインフレ懸念の利上げモードとなり、多くの国が利上げ方向に動いているのですが、わが国はまだ緩和的な位置にいるため、仮にインフレが加速した場合には、急速な利上げを迫られるリスクがあります。政策金利を中立金利の推計レンジにしっかりと入れることで、上下両睨みで機動的な施策が行える体制が整えられるよう、さらなる利上げを進めていくことが、金融正常化の完成には求められていると思います。

利上げの企業・家計への影響

利上げが企業や家計に及ぼす影響も重要なチェック項目です。

図表10は企業側から見た資金需要を示したものですが、いずれも最近の利上げによって調達意欲が弱まっている傾向はみられず、むしろ伸びが見られます。ただ、企業の投資行動も過熱の流れがないかは心配です。投資には目利きと慎重さが求められます。投資は失敗すると企業活動を一気に冷ましてしまいますし、日本の成長にもつながりません。

利上げの家計への直接の影響を観るために、図表11に家計のバランスシート総額と世代別の資産・負債構造をお載せしました。全体では現預金とローンを比較しても資産超過です。ただ若い世代には、最近では若年層の賃金改定率が相対的に高くなってはいるものの、住宅ローンの負担が重くなっています。

基調的な物価上昇率

われわれは「基調的な物価上昇率」という概念を使っておりますので、この点についてもご説明します。これは、変動が大きい生鮮食料品や、コメ価格の急騰、原油ショック、増税や補助金のような政府の施策など、一時的な要因を取り除いたものであり、持続的な物価上昇率が2%となることを目標とする金融政策にとって重要な概念です。

これも自然利子率と同じで、ズバリひとつの数値で示すことができないもので、年4回の「経済・物価情勢の展望」、通称展望レポートで幾つかの指標をお見せしていたのですが、今年4月の展望レポートからは、統計手法を駆使したものや、経済モデルを用いたものなどを含めて、我々が定期的に観測しているものをお載せしておりますので、図表12と図表13に少しまとめた形でお載せしました。

ご覧のようにバラツキも多く、見る人によって印象は違うと思いますが、私としては、基調的な物価上昇率はまだ2%の下にいるものの、かなり2%に近接している状況と考えています。

4.最近の金融政策

政策金利

最後に金融政策についてお話しします。金利と日銀のバランスシートの話です。

図表14にお示ししたように、長く続いた異次元緩和から抜け出し、一昨年の3月以降5回の利上げを行っております。年8回の金融政策決定会合では、ここまでご説明したようなデータのほか、設備投資や金融市場情勢など、もっと沢山のデータを吟味して臨んでおります。

引き続き経済・物価・金融情勢に応じて政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整して行くことになると思いますが、ここから最も大切なことは、基調的な物価上昇率が2%を大きく超えないように抑えることです。

イラン情勢による燃料・化学品の値上がりは、一時的なショックとして収まる可能性もあります。しかし、物流費のように広範に影響が及ぶものを一層押し上げる可能性もあります。食料品にとっても、国内の物流費に加えて輸入原料の海上運賃、肥料などが値上げの材料となります。これらは、一時的なショックと言うよりも、より基調的なものとして物価を押し上げるのではないかということが懸念されます。

先ほど申し上げたように、基調的な物価上昇率はかなり2%に近づいているという状況ですので、現在の金融環境が緩和的であることを踏まえれば、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。その調整のタイミングやペースについては、原油価格やAI関連需要、為替相場の変動が経済・物価に与える影響といった、展望レポートでお示ししている見通しが実現する確度やリスクを点検しながら、検討してまいります。

バランスシート

昨年9月のETFの売却方針に続いて、この6月には国債の買入減額の停止を決定いたしました。減額の停止というややこしい表現ですが、要は来年度から当面、買い入れ額は一定にするというものです。異次元緩和のときに大量に購入した国債は、2024年の夏以降、買入れ額を段階的に減らして来たのですが、この減らすペースを一旦収めることとしました。ピークであった4年前には年間135兆円もの買入れをおこなったものを、来年度からは月2兆円程度、年間では24兆円前後の買入れ額となります。

国債には満期がありますので、購入額を減らすだけで残高は減って行きます。図表15右に示しましたが、ピーク時には590兆円近く保有し、国債の発行残高に占める保有割合が5割程度と主要国の中では目立って高かったのですが、今後、着実に減っていくことが見込まれます。

なお、将来的にはどの年限の国債を保有すべきか、という議論がより重要になって来ると考えられます。資産は負債の見合いであり、日銀の主な負債は発行している銀行券と金融機関から預かっている当座預金ですので、どう見合わせるのが適切なのかは複雑な面があり、これから検討していくことになります。

バランスシート全体を異次元緩和の前の水準まで縮めるべきかというと、必ずしもそうとは限りません。リーマンショック以降、国際的な流動性規制の強まりや金融機関のリスク管理強化などから、中央銀行の準備預金に対するニーズが変化して来ている可能性なども踏まえつつ、適正なバランスシートの水準を目指して行くことになると思います。

5.福井県経済について

最後に、福井県経済について、日本銀行福井事務所や金沢支店からの報告も踏まえてお話しします。

当地企業には、長い伝統の中で培われてきた優れた技術力や開発力をもとにイノベーションを起こし、逆境を乗り越えて成長してきた力強さがあります。例えば、福井県は古くから絹織物が盛んな地域であり、明治から昭和の時代にかけて世界の繊維業の先頭を走っていました。その後、中国や東南アジアの台頭を受け、衣料向け分野では厳しい競争にさらされますが、当地の繊維関連企業は、それぞれに得意な技術を活かし、車輛資材や土木・建築資材、医療資材、あるいは宇宙事業といった非衣料分野に活躍の場を広げ、現在も福井県は日本を代表する繊維業の拠点となっています。

また、明治期に農閑期の内職としてスタートした眼鏡づくりは、現在では、眼鏡フレームの生産量で国内シェア9割を超す一大産業になっています。眼鏡づくりにおいても、廉価な製品群では中国などとの競争が厳しくなっていますが、高価格帯の製品群では優れた技術やデザインが海外でも高く評価されています。

こうした中、福井県の景気は、緩やかな回復が続いています。直近の福井県短観をみても、2025年度の経常利益は全産業ベースで前年度比+18.5%と高い伸びを示したほか、2026年度についても、引き続き増益見通しとなっています。

もっとも、福井県においても、人口減少とそれに伴う人手不足が企業経営にとっての深刻な課題となっています。このため、当地企業では、オフィスのリニューアルや福利厚生の充実といった従業員のエンゲージメントを高めるための取り組みが広がっています。また、賃上げにも積極的に取り組んでおり、福井県の実質賃金(現金給与総額、事業規模5人以上)は、全国に先駆け、2025年中からプラスに転じています。

2024年3月に北陸新幹線が延伸され、当地への注目度はこれまで以上に高まっています。これを好機とし、福井県経済が今後もますますの発展を遂げられることを祈念しております。

ご清聴ありがとうございました。