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「金融機関におけるAIの利用を巡る法律問題研究会」報告書 金融機関におけるAI利用に伴う私法上のリスクと管理

2025年6月19日
金融機関におけるAIの利用を巡る法律問題研究会

要旨

本稿は、日本銀行金融研究所が設置した「金融機関におけるAIの利用を巡る法律問題研究会」(メンバー〈50音順、敬称略〉:井上聡、加毛明、神作裕之、神田秀樹〈座長〉、宍戸常寿、事務局:日本銀行金融研究所)の報告書である。

Artificial Intelligence(人工知能。以下、「AI」という。)技術の急速な進展とともに、AIの利用に対する期待も高まりを見せている。金融分野でも、さまざまなデータを利用したAIの導入が進んでいる。そこで、本報告書では、金融機関のAI利用を巡る法的な課題を明らかにすることを目的として、AIの利用に伴う法的リスクとその管理のあり方について分析を行った。

主な指摘事項は次のとおりである。(i)AIモデルまたはシステムの開発・導入等の局面については、金融機関がAI開発者・AI提供者に対する契約責任を追及する場合の問題点と望ましい契約上の定めについて検討を行った。(ii)金融機関がAIを用いたサービスを顧客に提供する局面については、顧客に対する金融機関の責任の内容を確認し、一定の場合にはあらかじめAI利用にかかる契約を顧客との間で締結する必要があることを指摘した。(iii)組織内部のリスク管理の局面については、AIの利用に伴うリスク管理の必要性と取締役のAIガバナンス体制構築義務を前提に具体的なリスク管理のあり方を示した。

AIは技術の進展が非常に速く、法的リスクについても不断の見直しを行っていく必要性が高い。本報告書で示した視点を契機として、金融機関におけるAIの利用に関わる利害関係者が法的リスクにどのように対応していくべきかという観点での議論が深まっていくことが期待される。

日本銀行から

本報告書の内容や意見は、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。なお、本報告書に対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、日本銀行金融研究所(E-mail : imes-law@boj.or.jp)までお寄せ下さい。