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日本銀行が担う「政府の銀行」の仕事「業務局」 国民一人一人が、国とのお金のやりとりを安心して行えるという「当たり前」を日々実現する仕事(2015年3月25日掲載)

「国庫金」──皆さんが普段、あまり耳にしない言葉かと思います。しかし、実は「国庫金」は、国民の皆さんの生活に深く関わっています。例えば、国から支払われる年金や公共工事の費用、国に納める税金や交通反則金といった、個人や企業と国との間で受払いされるお金のことを、国の庫(くら=金庫)に関係するお金として、「国庫金」と呼んでいます。
この「国庫金」のやりとりのすべては、日本銀行本店にある国の預金口座(政府預金)を通じて行われています。そして、日本銀行でこの政府預金を通じた「国庫金」のやりとりの仕事を担っているのが、業務局です。今回のFOCUS BOJでは、知られざる、しかし国民一人一人に直結している「国庫金」業務を紹介し、そこで働く人々の熱い思いをお伝えしたいと思います。

金融機関と連携し、国と国民のお金のやりとりを円滑に行う

国と個人・企業の間のお金のやりとりは膨大です。業務局総務課国庫業務企画グループ長の稲見征史さんは次のように語ります。

「国庫金の受払件数は、年間で約4億6千万件、金額にして約2千5百兆円にものぼります。国の一般会計予算が100兆円弱なのにその何十倍もの規模になるのは不思議に感じられるかもしれませんが、国庫金のやりとりには、様々な特別会計の受払いや、国に一時的に預けられる現金(供託金、保管金等)の受払いも含まれ、多岐にわたっているんです」

そんな膨大な物量の国庫金業務ですが、その事務を処理する際には、単純なお金の受払いだけではなく、国のお金を正確に管理するために、様々な仕事を同時に処理しています。実際に日本銀行本店で国庫金の受払事務を担っている国庫業務課国庫計理業務グループ長の春田壮彦さんは、「例えば、税金の受入れに際しては、金額だけでなく、納められた税の内容など様々な情報を、納税者から提出を受けた書面から読み取り、正確に官庁に提供しなければなりません。また、お金の受払いに際しては、必ず各官庁別・会計別に計算整理して、官庁に報告する必要があります」と話します。

このように膨大な金額・件数のお金について、極めて複雑な事務を毎日確実にこなしているのが、日本銀行なのです。

ところで、金融機関の店舗に行くと、入口に「日本銀行歳入代理店」といったプレートを見かけたことがあると思います。日本銀行の本支店は全国に33カ店しかありません。そこで、個人・企業が国庫金を納付する際の利便性を考え、受入事務については全国約4万店の金融機関の店舗に委託しています。この委託先の店舗が「日本銀行歳入代理店」なのです。4万店というと、国内の大半の金融機関の店舗を網羅しており、日本全国の津々浦々にある金融機関で国庫金を納付できるようになっています。

逆に、国から個人・企業への年金や税金の還付金、公共工事の費用などの様々な支払いについても、利便性を高めるようにしています。全国各地には約4000の官庁があります。これらの官庁が日本銀行に支払いを依頼したり、国民の皆さんが窓口でお金を受払いしたりするためのアクセスポイントとして、全国約500店の金融機関の店舗──「日本銀行一般代理店」と言います──には国庫金の受入れだけでなく、支払いも含めた広範な業務を委託しています。

また、現状、国民の皆さんが国庫金を受け取る際の方法は、口座振込が一般的です。そこで、国民の皆さんが、国内のほぼすべての金融機関を口座振込先として指定できるようにしています。

「業務局総務課国庫業務企画グループは、わが国の国庫金の受払事務が円滑に進むようにすることを使命として業務に取り組んでいます。具体的には、一般代理店・歳入代理店のネットワークを整備したり、受払事務の進め方等を政府や金融機関と調整したりしています。また、実務に即した事務処理システムの企画・構築等も大事な仕事です。そして、こうした枠組みのもとで、日本銀行本支店・一般代理店・歳入代理店を通じて、一件、一円たりとも間違えることなく、毎日の事務が処理されているのです」と、稲見さんは誇りを持って説明してくれました。

国庫金の受払いにかかる全国のネットワーク(平成26年12月現在)
日本銀行一般代理店489店舗
日本銀行歳入代理店40,652店舗
口座振込による国庫金の受取りが可能な金融機関1,446金融機関
  • 歳入代理店の数には歳入復代理店、および歳入復々代理店を含む。

期日に確実に振り込まれるように 強い使命感が求められる「支払事務」

システムによる支払事務の様子

それでは実務の現場を見てみましょう。まず、国から個人・企業への国庫金の支払事務です。

国の支払事務の対象は、相手が企業であれば公共工事の費用等の支払い、個人であれば年金の支払い等が挙げられます。例えば年金の支払いであれば、偶数月の支給日毎に約6兆7千億円、約4200万件にものぼる膨大な事務が発生します。

国からの支払いは、まず日本銀行にある政府預金から、日本銀行にある各金融機関の口座にお金が振り込まれます。その後、各金融機関が各個人や企業の口座にお金を振り込みます。この時、国からは支払い相手や金額といった明細情報も日本銀行に伝えられます。日本銀行はその情報を各金融機関に伝え、それをもとに各金融機関は間違いなく各個人・企業の口座に振り込んでいくのです。

現在、国庫金の支払事務の約95%はシステム処理に移行し、電子化・効率化が大きく進んでいます。もっとも、大量のデータが国・日本銀行・金融機関のシステムを流れているわけですから、障害による遅延等が起きないよう、毎日、気が抜けません。

また、国から日本銀行本支店・一般代理店に書面により依頼される支払事務は、全体の約5%まで減少しているとはいえ、件数でみると年間約1200万件にものぼり、これらは引き続き手作業での処理を余儀なくされています。この事務をどのように効率的にするかが、今後の課題となっています。

こうした事務を一手に担う国庫業務課国庫送金業務グループ企画役補佐の漆原新一さんは業務に対する思いを次のように語ります。

「我々が常に意識していることは、期日通りに確実に支払いを行わなければならないということです。国からの支払いには、年金や失業手当など、個人の生活に直結するお金があります。事務に手間取ったりシステムにトラブルが生じたりして、個人の口座への振り込みが遅れることがないよう、日々しっかりした事務処理やシステム運行を行うことが大事であり、この点は、実際に個人の方々の口座へ振込処理を行う各金融機関のご協力・ご理解を得ているところです」

一日90万枚の納付書をOCR処理 効率化を図る「受入事務」

納付書のOCRでの処理作業の様子

続いて、税金に代表される国庫金の受入事務について見てみましょう。支払事務と異なり、受入事務については、電子化の進展はまだ途上にあります。既に、インターネットバンキング、モバイルバンキング、ATM等から電子的な納付が可能になっていますが、その納付件数は国庫金の受入全体の約10%にとどまっています。実際に個人や企業が納付する際は、従来通り、紙の納付書を金融機関の窓口に提出するケースがなお多く、対面により納付手続きを行うといった、これまでのスタイルを大きく変えるまでには至っていません。この点、電子的な納付について、引き続きその利便性の高さを国民の皆さんにお伝えするとともに、使い勝手をさらに向上させるなど工夫の余地がありそうです。

金融機関で納められたお金は、日本銀行にある金融機関の口座から政府預金に振り込まれます。これと並行して、紙の納付書は、全国の歳入代理店等を通じて、日本銀行本支店7カ店(本店のほか、札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、福岡支店)に集められます。そして納付書に記載された情報をもとに各官庁別・会計別等に必要な計算整理を行い、官庁に報告します。お金の収納、紙の納付書の計理処理、これら二つの作業は、国民の皆さんが窓口で国庫金を納めてから、わずか二日の間に完了することになります。

ところで、金融機関から日本銀行への納付書の送付は、特定の日に集中する傾向があります。普段は10万枚程度の送付量が、年間ピークとなる7月10日納付分では、一日に90万枚にも達します。これは、納付書の厚みを0.1ミリとしても、積み上げるとおよそ25階建てのビルの高さに相当します。

ちなみに、7月10日がピークとなるのは、毎月10日の源泉所得税の納期(7月は年2回納付の特例を受けている中小企業の納付も発生し、納付件数が一段と増加)であるほか、労働保険料の納期も重なっているためです。

日本銀行は、納付された国庫金について、各官庁別・会計別の計算整理に加えて、詳細な納付情報を国に報告する事務も担っており、納付書には読み取らなければならない項目がとてもたくさんあります。そのため、日本銀行本支店7カ店では、ピーク時でなくとも一枚一枚の納付書を手作業で処理することは到底不可能です。そこで、OCR(光学式文字読取装置)を使って、納付書の情報を読み取り、電子データにします。日本銀行本店でその事務を行っているのが、国庫業務課国庫計理業務グループです。その事務について同グループの山縣涼子さんが語ってくれました。

金融機関から届いた大量の納付書

「一枚当たりの読み取り項目や文字数が多く、また手書きで書かれた文字はかすれていたり枠からはみ出たりしていることも少なくありません。このため、高性能のOCRであっても、枚数ベースでみると、一日平均で全体の15%ほどの納付書については完全には読み取ることができません。読み取れなかった納付書の項目は、人が一枚ごとに確認しながら手入力で完璧なデータに仕上げています。間違えないよう、この入力作業はとても緊張します」

続けて、ピーク時の対応を語ってくれました。

「本店には関東、甲信越、そして沖縄地区の納付書が集められます。日本銀行本支店7カ店の中では本店の規模が最も大きく、ピーク時で言えば90万枚のうちの40万枚ほどが届きます。その日は、納付書の入った箱がフロアに所狭しと積まれ、それに埋もれて作業をしているような感じです。こうした送付が集中する日に向けて、グループでは事前に綿密なスケジュールを立てます。当日は、すべての機器をフル稼働させ、さらに局内はもとより、他の支店の応援も受けて、作業を続けます。物量が多く読み取れない項目もあるなど骨が折れる作業に加えて、金融機関との取引を終了する午後3時までにはすべてを終わらせなくてはならないという時間との競争でもあり、いっときも気が休まりません。それだけに終わった後は達成感があります」

従来、日本銀行では、このOCR処理を本支店33カ店で行っていました。しかし、事務合理化を進めるべく、一昨年の平成25年11月に7カ店にOCR処理を集約しました。それにあわせて、物流高度化の進展を踏まえ、全国の歳入代理店から日本銀行本支店7カ店への納付書の搬送ルートについても、従来よりシンプルなものに変更しました。この国庫金受入事務の合理化について再び稲見さんが語ります。

「日本銀行のOCRにかかるシステムの構築や、各金融機関での納付書の搬送ルート、事務手順等を変える必要があったため、入念なシステム開発作業はもとより、全国の金融機関の協力を得て、納付書の搬送や事務処理にかかる訓練を行うなど、万全の準備作業を積み重ね、実施に移しました。そして、実施日初日から、全国で一枚も納付書が無くなることなく、円滑に事務が処理されています。日本の金融機関の現場力の強さや底力によって、国庫金業務が支えられていることを改めて痛感しています。このプロジェクトだけでなく日々の業務での金融機関の多大な協力に心底感謝しています」

より便利に効率的に、それは「皆さまとつながっている」との思いが胸にあるから

国庫金に関する資金の流れ、納付書等書類の流れを示すイメージ図。詳細は本文のとおり。

国庫金に関する業務の主な流れ

海外主要国の中央銀行でも、何らかのかたちで国庫金の取り扱いを行っています。日本銀行については、日本銀行法第35条において、「国庫金を取り扱わなければならない」ものとされています。

日本銀行は、国全体の政府預金の管理に加えて、個別官庁の計算整理事務や受払事務などを一元的に取り扱っており、そうすることで国庫金の効率的な管理を図り、国の決算事務の正確性を確保する役割の一翼を担っています。政府預金の管理をするだけの中央銀行が少なくない中、日本銀行は、100年以上もの間、こうした国庫金業務を遂行する存在なのです。

こうした幅広い業務内容と膨大な物量の国庫金業務に取り組む職員の思いについて改めて稲見さんが語ってくれました。

「日本銀行は、一般の方にはあまりなじみがないと思われがちですが、生活に密接に関わる国庫金の受払いを行う、実はとても身近な存在です。現場の職員は、『国民の皆さまとつながっている』という思いを持ち、強い使命感、責任感のもと、より正確で効率的な事務処理を目指しています」

4200万件もの年金がきちんと支払われることは、「当たり前」のように思われています。しかし、その「当たり前」は、日本銀行業務局の強い使命感と正確な業務遂行なしには成り立たないことを取材を終えて実感したのでした。