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貸出金の会計処理、信用リスクの開示等についての健全な実務のあり方

(日本銀行仮訳)

1998年10月15日
バーゼル銀行監督委員会

日本銀行から

 全文は、こちら(bis9810a.lzh 41KB [MS-Word])から入手できます。

プレス・ステートメント

バーゼル委員会が貸出金の評価、貸倒引当金および信用リスクの開示に関する協議用ペーパーを公表

 銀行および銀行システムの安全性および健全性を強化するための継続的な作業の一環として、バーゼル銀行監督委員会は、本日、貸出金の評価、貸倒引当金および信用リスクの開示に関する健全な実務の指針を提供する提言を公表した。当文書は、銀行による健全な貸出金の会計および開示の実務に関する銀行監督当局の見方を示している。また、本ペーパーは、監督当局がこれらの分野における銀行の方針・実務を評価する際の基本的な枠組を提供するものである。

 提言は、カナダ金融監督庁の次長で、バーゼル委員会の委員でもあるNick LePan氏が議長を務める、当委員会傘下の会計タスク・フォースが作成した協議用ペーパーに示されている。

 LePan氏は、「本ペーパーは、G10および非G10諸国からの要請に対して、優れて実務的な面から応えるものである。信用の質の悪化の適時の認識について、規則の面でも実務の面でも大きな差異が存在する。当文書は、現在の国際的な指針の大きな空白部分を埋めるうえで、また、この重要な分野に一層の整合性をもたらすうえで、非常に重要な助けを提供し得る。さらに、最終的に完成した暁には、金融機関における貸出金の健全な償却・引当および関連した信用リスクの開示に関する初の国際的な監督当局の指針となるだろう」と述べている。

 バーゼル委員会の議長で、ニューヨーク連邦準備銀行総裁であるWilliam J. McDonough氏は、「当文書は銀行と監督当局が直面する重要な問題を取扱っている。貸出金の会計と償却・引当に関する実務は、銀行における信用リスクの健全な管理のために必須の条件である。こうした実務は、公開財務報告の正確性と将来の市場規律の機能に重大な影響を与え得る。加えて、貸出金の会計上の取扱いは、自己資本規制を含めた監督手法の実効性にとっても重要である」と述べている。

 McDonough議長は、「脆弱ないしは不適切な償却・引当に関する実務や不十分な透明性は、個別銀行並びに銀行システム全体にとってのリスクの主たる源となる。本ペーパーに示されているような健全な実務の国際的な実施は銀行の健全性並びに金融システムの安定性を育成する監督当局の任務に寄与するであろう」と言っている。

 本ペーパーの公表は、実効的な銀行監督と安全かつ健全な銀行システムを促進するためのバーゼル委員会による継続的な作業の一環である。本ペーパーは、世界各国の監督システムが実効的であるための最低基準を示したバーゼル・コア・プリンシプルを補完するものである。これはまた、この分野における改善が必要であるとのG7蔵相会議やG10中央銀行総裁会議などや、国際通貨基金(IMF)や世界銀行といった国際機関の認識に応えるものでもある。

 当文書は、現段階では協議用に公表されるものである。銀行監督者や業界団体を含め、関心を有する全ての関係者からのコメントを募集している。バーゼル委員会は、1999年の前半に本ペーパーを完成させることを目論んでいる。

1998年10月14日

バーゼル銀行監督委員会(The Basle Committee on Banking Supervision

 バーゼル銀行監督委員会は、1975年にG10諸国の中央銀行総裁会議により設立された銀行監督当局の委員会である。同委員会は、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ルクセンブルグ、オランダ、スウェーデン、スイス、英国及び米国の銀行監督当局ならびに中央銀行の上席代表により構成される。現在の議長は、ニューヨーク連邦準備銀行のW.J. McDonough総裁である。委員会は通常、常設事務局が設けられているバーゼルの国際決済銀行において開催される。

会計タスク・フォース(The Task Force on Accounting Issues

 会計タスク・フォースは、実効的かつ包括的な監督および安全で健全な銀行システムを育成することを目的として、1996年にバーゼル銀行監督委員会により設立された。同タスク・フォースでは、銀行監督当局の観点から重要と考えられる会計問題を特定化し、国際的な会計の調和に向けた努力に貢献し、銀行における健全な会計実務のための監督上の指針を作成することによって、この目的を果たしている。当タスク・フォースは、バーゼル委員会に参画している機関における会計問題に関する銀行監督の専門家によって構成されている。当タスク・フォースでは、カナダ金融監督庁の次長で、バーゼル委員会の委員でもあるNick LePan氏が議長を務めている。

ぺーパーの内容(Contents of the paper

 本ペーパーはまず、貸出に関する会計と開示の健全な実務について検討を行うに当たってのバーゼル委員会の全般的な目的を示している。そして、主要な用語を概説し、当指針を信用リスク管理のプロセスと結び付けている。次に、貸出金の当初の認識や測定、減損債権の測定、貸倒引当金の計上、収益認識や問題債権の条件変更、といった貸出金の会計に関する主要な論点について健全な実務のための指針を提示する。さらに、本ペーパーは、貸出ポートフォリオ、問題債権、貸倒引当金や関連するリスク管理実務に係る健全な開示のあり方を提示している。本ペーパーは、銀行による資産内容の管理や貸倒引当金の適切性を評価する上での監督当局の役割に関する簡潔な議論で締めくくっている。

本ペーパーは誰にとって有用なものか?(To whom is the report useful?

 本ペーパーは、監督当局だけでなく、国際的に健全とされる実務(sound practices)に関する情報を必要とする銀行や業界団体にとっても有用であろう。当指針は、会計基準設定主体がより統一的なルールを設定していくうえでの一助ともなり得る。銀行監督当局や他の規制当局は、例えば、バーゼル委員会の実効的な銀行監督のためのコアとなる諸原則を実施していく際に、各国の会計方針・実務を評価・改善していくうえでの1つの基準として当指針を活用することができる。他の国際的な組織やグループにとっても、本レポートは有用であろう。

コメントの募集(Invitation to comment

 本ペーパーは協議用に公表されるものである。非G10諸国の監督当局、銀行、業界団体、会計・監査組織および他の関心を有する関係者からのコメントを募集している。コメントは、1999年3月15日までに受領されなければならない。

本ペーパーの全文をどこで入手できるか?(Where can I obtain the full report?

 「貸出金の会計処理、信用リスクの開示等についての健全な実務のあり方」のテキストは、1998年10月14日の18時(欧州中央時間)より、インターネット上のBIS Web Sitehttp://www.bis.org(外部サイトへのリンク)から入手することができる。また、バーゼル委員会の事務局やバーゼル委員会のメンバーである銀行監督当局や中央銀行からも入手可能である。