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バーゼル銀行監督委員会とIOSCO専門委員会による市中協議ペーパー「銀行と証券会社のトレーディングおよびデリバティブ取引のパブリック・ディスクロージャーに関する提言」

(日本銀行仮訳)

1999年 2月25日
バーゼル銀行監督委員会

日本銀行から

 市中協議ペーパーは、こちら(bis9902b.pdf 112KB)から入手できます。

プレス・ステートメント

 バーゼル銀行監督委員会と証券監督者国際機構(IOSCO)専門委員会は、本日、銀行と証券会社のトレーディングおよびデリバティブ取引のパブリック・ディスクロージャーに関する提言を含む協議用ペーパーを発表した。本ペーパーに対しては、金融機関、業界団体、および規制当局を始め、関心を有する全ての関係者からコメントを募集する。

 今回の提言は、両委員会が継続的に行なってきた努力の一環を成すものであり、銀行と証券会社が、市場参加者および一般に対し、自らのトレーディングおよびデリバティブ取引に関して意味のある情報を提供するよう促すことを狙っている。十分な情報を持った市場参加者が強い市場規律を働かせ、金融機関に対し、注意深くかつ定められた事業目的に適った方法で業務を行なうよう促すことによって、監督と投資家保護の目的が補完されると、両委員会は考える。

 フランス証券取引委員会の委員長であり、IOSCO専門委員会の議長を務めるMichel Prada氏は、「金融機関の取引相手は自らが負うリスクを承知しているべきである。ここに示されている提言が実施されれば、市場参加者は、銀行と証券会社のトレーディングおよびデリバティブ取引ならびに同取引に関連するリスクを評価し易くなるであろう」と述べた。更に、ニューヨーク連邦準備銀行総裁であり、バーゼル委員会の議長を務めるWilliam J. McDonough氏は、「金融機関が質の高いパブリック・ディスクロージャーを行えば、市場参加者は健全な意思決定を行なうために必要な情報を得ることになる。この結果、銀行と証券会社は注意深く業務を行なうインセンティブを与えられる」と述べた。

 本ペーパーの提言は、以下の二つの点に沿ったものとなっている。

 第一に、金融機関は財務諸表の利用者に対し、自らのトレーディングおよびデリバティブ取引の実態を正確に伝えるべきである。金融機関は、こうした取引の範囲と性質に関し、定性・定量双方の面において、意味のある概略情報を提供するとともにそれらの取引が収益構造にどのように寄与しているかを明らかにすべきである。金融機関はまた、こうした取引に伴う主要なリスク、および、それらのリスク管理の実績に関する情報を開示すべきである。

 第二に、金融機関は、自らのリスク・エクスポージャーおよびその管理実績に関して、内部的なリスク測定・管理システムから生成される情報を開示すべきである。パブリック・ディスクロージャーを内部リスク管理プロセスと結び付けることにより、ディスクロージャーがリスク測定・管理技術の革新に遅れをとらないようにすることができる。

 本ペーパーに掲げる提言は、両委員会が、銀行と証券会社のトレーディングおよびデリバティブ取引に係る初回の調査報告書との関連において、1995年に発表した提言に代わるものである。前回の提言以降、金融機関によるデリバティブの利用の拡大、リスク管理技術の利用と手法の変化、およびディスクロージャーのレベルや実務の継続的な向上等、様々な進展がみられた。

 本ペーパーは、バーゼル委員会の「透明性小委員会」とIOSCOの「金融仲介機関の規制に関するワーキング・パーティ」の協力の下に作成された。透明性小委員会の議長は、バーゼル委員会の委員である米国通貨監督庁のSusan Krause女史が務めている。IOSCOの「金融仲介機関の規制に関するワーキング・パーティ」の議長は、英国金融サービス機構のRichard Britton氏が務めた。

1999年2月24日


バーゼル銀行監督委員会The Basle Committee on Banking Supervision

 バーゼル銀行監督委員会は、1975年にG10諸国の中央銀行総裁会議により設立された銀行監督当局の委員会である。同委員会は、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ルクセンブルグ、オランダ、スウェーデン、スイス、英国および米国の銀行監督当局ならびに中央銀行の上席代表により構成される。現在の議長は、ニューヨーク連邦準備銀行のWilliam J. McDonough総裁である。委員会は通常、常設事務局が設けられているバーゼルの国際決済銀行において開催される。

IOSCO専門委員会The IOSCO Technical Committee

 証券監督者国際機構(The International Organization of Securities Commissions、IOSCO)の専門委員会は、主要工業国における証券会社の監督当局の委員会である。同委員会は、オーストラリア、フランス、ドイツ、香港、イタリア、日本、メキシコ、オランダ、カナダ(オンタリオ州、ケベック州)、スペイン、スウェーデン、スイス、英国および米国の証券監督当局の上席代表により構成される。現在の議長は、フランス証券取引委員会のMichel Prada委員長である。

 本調査報告書は、バーゼル委員会の透明性小委員会とIOSCOの「金融仲介機関の規制に関するワーキング・パーティ」の協力の下に作成された。
 バーゼル委員会の透明性小委員会(The Transparency Group)の議長は、米国通貨監督庁の国際関係担当副長官であり、バーゼル委員会メンバーであるSusan Krause女史が務めている。本小委員会の使命は、市場規律を強化し、市場の安定性と効率性を促進し、銀行監督の有効性と包括性を向上させることにある。そのために本小委員会は、監督当局および市場参加者がリスクを評価する際に必要とする情報を巡って、問題の所在を明らかにし、ガイダンスを作成している。本小委員会には、バーゼル委員会加盟機関から、ディスクロージャーと報告について監督上の知識を有する専門家が参加している。
 IOSCOの「金融仲介機関の規制に関するワーキング・パーティThe Working Party on the Regulation of Financial Intermediaries)」の議長は、本年2月初まで英国金融サービス機構のRichard Britton氏が務めた後、同機構のPaul Wright氏が後を襲っている。本グループは近年、健全性監督と顧客保護の分野を中心として多様な作業を行ってきた。本グループは、IOSCO専門委員会の後援の下、バーゼル委員会の行っている作業との間の協力と調整について第一義的責任を担っている。本グループは、IOSCO専門委員会メンバー機関を代表する証券監督者により構成される。

トレーディングおよびデリバティブ取引のディスクロージャーに関する実証的データ

 1995年以降、バーゼル委員会とIOSCO専門委員会は、G10諸国に本部を置いて国際的に活動する大規模な銀行および証券会社を対象として、トレーディングおよびデリバティブ業務のディスクロージャーに関するサーベイを毎年実施してきた。1998年11月に発表された最終のサーベイによれば、同ディスクロージャーは、量、詳細度、および明確性において近年大幅な改善をみている。しかしながら、両委員会は、今後ともパブリック・ディスクロージャーの改善が必要であるとしている。一部の金融機関は、リスク・プロファイルやリスク管理慣行を含め、自らのトレーティングおよびデリバティブ業務の重要な側面について十分な情報提供を行なっていない。

コメントの募集

 本ペーパーに掲げる提言は市中協議のために発表されるものである。両委員会は、規制監督当局、銀行、証券会社、業界団体、および会計基準設定者を含め、関心を有する全ての関係者に対してコメントを求める。コメントの受付けは1999年5月31日までとする。両委員会は、1999年後半に本ペーパーの最終版を公表する所存である。

本レポートの全文をどこで入手できるか

 「銀行、証券会社のトレーディングおよびデリバティブ取引のパブリック・ディスクロージャーに関する提言」のテキストは、公表日より、BISウェブサイトwww.bis.org(外部サイトへのリンク)およびIOSCOウェブサイトwww.iosco.org(外部サイトへのリンク)から入手することができる。