このページの本文へ移動

徳陽シティ銀行に対する手形貸付にかかる特別措置に関する件

1997年12月12日
(議決日 1997年11月26日)
日本銀行政策委員会

徳陽シティ銀行は、これまで資産内容の悪化、業績不振に対処すべく、経営再建のための自主的な努力を続けてきたが、株価が下落するなかで、預金の流出等が生じ、資金繰りが行き詰まる状況となった。こうした中、同行につき、預金保険機構に対し不良債権の買取りを含む資金援助を要請するとともに、七十七銀行をはじめとする宮城県内および県外の金融機関へ一部の資産・預金等の譲渡を行う前提で、仙台銀行へ営業譲渡を行うことについて基本的な合意が得られ、平成9年11月26日、当該合意の内容等に関する対外公表が行われた。また、これと同時に、徳陽シティ銀行においては、このような事態を招いた経営責任を明確にするため、会長、社長が辞任することが表明された。

こうした状況の下で、本委員会は、平成9年11月26日、(1)徳陽シティ銀行において預金払戻し等営業を継続するための資金の不足が生じた場合には、預金者の不安心理の伝播等を通じてわが国信用制度全体の安定が脅かされるおそれが強い、(2)そうした事態を回避するためには、同行の現況からみて、日本銀行による資金供与が不可欠となり、また、当該資金供与に当たっては通常の日本銀行貸出の適格担保を受入れ得ない事態が想定される、との判断の下で、信用制度全体の安定を確保する観点から、下記の決定を行った(なお、下記2.の措置を実施するため、同日、日本銀行法第25条に基づき大蔵大臣の認可を得た)。

徳陽シティ銀行の経営問題に関する処理方策が実施されるまでの間、同行に対する手形貸付につき、以下の特別措置を行う。

  1. 同行に対する手形貸付の担保については、日本銀行法第20条第2号に規定する担保品で従来手形貸付の担保としていない種類のものについても、担保として適当と認められるものに限り、次の要領によりこれを担保として徴求し得る扱いとすること。
    1. (1)各担保品の担保価格は、その市場性および信用力を勘案し、時価(時価のない場合は額面。)の80%を超えない範囲で定める扱いとする。
    2. (2)貸付利子歩合は、基準貸付利子歩合のうち「その他のものを担保とする貸付利子歩合」(「国債、特に指定する債券または商業手形に準ずる手形」以外のものを担保とする場合の貸付利子歩合。以下同じ。)を適用する。
  2. 上記1.の取扱いによっても担保品が不足する等やむを得ない場合には、同行に対し、日本銀行法第20条第2号に規定する担保品および平成2年12月13日付大蔵大臣認可(蔵銀第2669号)により担保として認められた証書貸付債権のいずれをも担保としない手形貸付を、次の要領により行うこと。
    1. (1)貸付金額
      同行の資金繰りを勘案し、同行が預金払戻し等営業を継続するための必要最小限の金額
    2. (2)貸付期間
      日本銀行が適当と認める期間
    3. (3)貸付利子歩合
      基準貸付利子歩合のうち「その他のものを担保とする貸付利子歩合」を適用する。

なお、日本銀行は、本件に関し、平成9年11月26日、次のとおり、対外発表を行った。


1997年11月26日
日本銀行

徳陽シティ銀行について

  1. 本日、徳陽シティ銀行及び仙台銀行より以下の連絡を受けた。
    1. (1)徳陽シティ銀行は、これまで資産内容の悪化、業績不振に対処すべく、経営再建のための自主的な努力を続けてきたが、最近では株価が下落するなかで、預金の流出等が生じ、資金繰りが行き詰まる状況となった。
    2. (2)今後、徳陽シティ銀行につき、預金保険機構に対し不良債権の買取りを含む資金援助を要請するとともに、七十七銀行をはじめとする宮城県内及び県外の金融機関へ一部の資産・預金等の譲渡を行う前提で、仙台銀行へ営業譲渡を行うことについて基本的な合意が得られた。
    3. (3)このような事態を招いた経営責任を明確にするため、徳陽シティ銀行の 早坂会長、新井田社長は辞任する。
    4. (4)営業を譲り受ける仙台銀行は、既に劣後ローンの取り入れを行ってきているが、更にその額を積み増すことにより、経営基盤の強化を図る方針である。
  2. 今回、新たに金融機関の経営破綻が発生したことは誠に残念であるが、破綻に伴う地域経済への影響を最小限に抑えるとの観点から、仙台銀行、七十七銀行をはじめとする宮城県内及び県外の金融機関の協調の下、今般の処理方策が合意されたことは、預金者保護及び金融システム安定化の観点から望ましいものと評価している。
    日本銀行としても、わが国金融システムへの信頼を確保するため、今後、早急に処理策の具体化が図られるよう関係者と協議を行い、その円滑な実施に協力していく所存である。
  3. 徳陽シティ銀行の預金は譲渡先の各金融機関に引き継がれることとなり、全ての預金が保護されることとなるので、預金者におかれては心配されることなく、良識ある行動をとられることを強く希望する。
  4. なお、営業譲渡までの間、徳陽シティ銀行においては通常どおりの営業を継続することとしており、この間必要な場合には、日本銀行は日本銀行法第25条に基づく貸出を行い、所要資金の確保に万全を期す考えである。