このページの本文へ移動

【概要説明】通貨及び金融の調節に関する報告書

English

衆議院財務金融委員会における概要説明

日本銀行総裁 黒田 東彦
2016年3月16日

目次

はじめに

日本銀行は、毎年6月と12月に「通貨及び金融の調節に関する報告書」を国会に提出しております。本日、わが国経済の動向と日本銀行の金融政策運営について詳しくご説明申し上げる機会を頂き、厚く御礼申し上げます。

わが国の経済金融情勢

最初に、わが国の経済金融情勢について、ご説明申し上げます。

わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、企業部門・家計部門ともに所得から支出への前向きの循環メカニズムが作用するもとで、基調としては緩やかな回復を続けています。先行きについては、当面、輸出・生産面に鈍さが残るとみられますが、国内需要が増加基調をたどるとともに、輸出も、新興国経済が減速した状態から脱していくことなどを背景に、緩やかに増加するとみられます。このため、わが国経済は、基調として緩やかに拡大していくと考えられます。

物価面をみると、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、0%程度となっています。もっとも、生鮮食品・エネルギーを除く消費者物価の前年比は、28か月連続でプラスを続け、最近では1%を上回る水準で推移するなど、物価の基調は着実に改善しています。先行き、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられますが、需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の上昇を背景に物価の基調は着実に高まり、「物価安定の目標」である2%に向けて上昇率を高めていくと考えています。原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、2%程度に達する時期は、2017年度前半頃になると予想しています。

金融政策運営

このように、メインシナリオとしては、わが国経済は基調として緩やかに拡大し、消費者物価の前年比は2%に向けて上昇率を高めていくと考えていますが、年初来、原油価格の一段の下落に加え、中国をはじめとする新興国・資源国経済に対する先行き不透明感などから、金融市場は世界的に不安定な動きとなっています。このため、企業コンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が遅延し、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大しています。

日本銀行は、こうしたリスクの顕在化を未然に防ぎ、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、1月の金融政策決定会合において「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入しました。「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」は、日本銀行当座預金金利をマイナス化することでイールドカーブの起点を引き下げ、大規模な長期国債買入れを継続することとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えていくことを主たる波及経路としています。国債のイールドカーブは、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入以降、大幅に低下しており、これを受けて貸出の基準となる金利や住宅ローン金利も低下するなど、金利面では政策効果は既に現れています。今後、その効果は、実体経済や物価面にも、着実に波及していくものと考えています。

日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を継続します。今後とも、経済・物価のリスク要因を点検し、「物価安定の目標」の実現のために必要な場合には、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じます。

国際金融市場では、なお世界的に不安定な動きが続いています。日本銀行としては、こうした動きが、わが国の経済・物価にどのような影響を与えるかについて、しっかりと注視していく方針です。

ありがとうございました。