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【概要説明】通貨及び金融の調節に関する報告書参議院財政金融委員会における概要説明

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日本銀行総裁 黒田 東彦
2020年5月26日

はじめに

日本銀行は、毎年6月と12月に「通貨及び金融の調節に関する報告書」を国会に提出しております。本日、最近の経済金融情勢と日本銀行の金融政策運営について詳しくご説明申し上げる機会を頂き、厚く御礼申し上げます。

経済金融情勢

まず、最近の経済金融情勢についてご説明いたします。

世界経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行の影響により、急速に落ち込んでいます。各国・地域で、外出・出入国制限などの感染拡大防止策がとられている結果、グローバルに経済活動が大きく制約されています。国際通貨基金(IMF)の最新の世界経済見通しでは、2020年の世界経済成長率は-3.0%と、リーマン・ショック時を超える大幅なマイナス成長が予想されています。

わが国の景気も、内外における感染症拡大の影響から厳しさを増しており、先行きも、当面、厳しい状態が続くとみられます。物価も、当面、感染症の拡大や原油価格の下落などの影響を受けて弱含むとみられます。その後、内外で感染症拡大の影響が和らいでいけば、ペントアップ需要の顕在化や挽回生産が予想されることに加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策にも支えられて、わが国経済は改善していくと考えられます。物価も、徐々に上昇率を高めていくとみられます。もっとも、先行きの経済・物価の見通しは、感染症の拡大が収束する時期や内外経済に与える影響の大きさによって変わり得るため、不透明感がきわめて強く、下振れリスクの方が大きいと考えています。

この間、内外金融資本市場では、2月下旬以降、投資家のリスクセンチメントが悪化し、急速に不安定化しました。各国の政府・中央銀行が迅速かつ積極的な対応を取った結果、金融市場はひと頃の緊張が幾分緩和していますが、流動性は低下しており、引き続き神経質な状況にあります。また、わが国の金融システムは全体として安定性を維持しているものの、金融環境をみると、企業の資金繰りが悪化するなど、企業金融面で緩和度合いが低下しています。

金融政策運営

次に、金融政策運営について、ご説明申し上げます。

日本銀行では、こうした経済金融情勢のもと、金融政策面では、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持が、重要と考えており、そうした観点から、3月および4月に金融緩和を強化しました。また、先週22日に開催した臨時の金融政策決定会合では、中小企業等の資金繰りをさらに支援するための「新たな資金供給手段」の導入を決定しました。

日本銀行は、3月以降に導入・強化した、(1)CP・社債等の買入れ、(2)新型コロナ対応金融支援特別オペ、(3)新たな資金供給手段をあわせた、総枠約75兆円の「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム」により、政府とも連携しながら、企業等の資金繰りを積極的に支援していく方針です。加えて、日本銀行では、金融市場の安定を維持する観点から、国債買入れやドルオペなどによって、円貨および外貨を上限を設けずに潤沢に供給しているほか、ETF等の積極的な買入れを実施しています。引き続き、これらの措置をしっかりと実施していくことにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に貢献していく方針です。

日本銀行による強力な金融緩和措置は、感染症拡大への政府の各種対策や各国の政府・中央銀行による様々な対応と相俟って、金融経済活動の下支えに貢献するものと考えています。

そのうえで、日本銀行としては、当面、感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる考えです。

ありがとうございました。