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【概要説明】通貨及び金融の調節に関する報告書参議院財政金融委員会における概要説明

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日本銀行総裁 黒田 東彦
2022年6月7日

はじめに

日本銀行は、毎年6月と12月に「通貨及び金融の調節に関する報告書」を国会に提出しております。本日、最近の経済金融情勢と日本銀行の金融政策運営について、詳しくご説明申し上げる機会を頂き、厚く御礼申し上げます。

経済金融情勢

まず、最近の経済金融情勢について、ご説明致します。

わが国経済は、新型コロナウイルス感染症や資源価格上昇の影響などから一部に弱めの動きもみられますが、基調としては持ち直しています。海外経済は、国・地域ごとにばらつきを伴いつつ、総じてみれば回復しています。そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響を残しつつも、基調としては増加を続けています。企業収益は全体として改善していますが、業況感は、感染症や資源価格上昇の影響などから、このところ改善が一服しています。設備投資は、一部業種に弱さがみられるものの、持ち直しています。雇用・所得環境は、一部で改善の動きもみられますが、全体としてはなお弱めとなっています。個人消費は、感染症によるサービス消費を中心とした下押し圧力が和らぐもとで、再び持ち直しつつあります。先行きのわが国経済は、当面、ウクライナ情勢等を受けた資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみています。

物価面をみると、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、昨年実施された携帯電話通信料引き下げの影響の多くが剥落するもとで、エネルギー価格が大幅に上昇していることから、2%程度までプラス幅を拡大しています。当面は、エネルギー価格の押し上げを主因に、2%程度の上昇率が続くとみられますが、その後は、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想しています。この間、変動の大きいエネルギーも除いた消費者物価の前年比は、0%台後半のプラスとなっています。先行きは、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、プラス幅を緩やかに拡大していくと考えています。

先行きのリスク要因としては、引き続き変異株を含む感染症の動向や、それが内外経済に与える影響に注意が必要です。また、今後のウクライナ情勢や、そのもとでの資源価格や国際金融資本市場、海外経済の動向についても、きわめて不確実性が高いと考えています。この間、わが国の金融システムは、全体として安定性を維持しています。より長期的な金融面のリスクとしては、金融機関収益への下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かう惧れがある一方、利回り追求行動などから、金融システム面の脆弱性が高まる可能性もあります。現時点では、これらのリスクは大きくないと判断していますが、先行きの動向を注視する必要があります。

金融政策運営

次に、金融政策運営について、ご説明申し上げます。

わが国のGDPは、依然として感染症拡大前の水準を下回って推移するなど、感染症による落ち込みからの回復途上にあります。また、最近は、資源価格上昇による海外への所得流出という下押し圧力も受けています。物価面では、消費者物価の前年比は、2%程度まで高まっているものの、エネルギー価格の上昇が主因です。

このような経済・物価情勢を踏まえ、日本銀行としては、現在のイールドカーブ・コントロールを軸とする強力な金融緩和を粘り強く続けることで、わが国経済をしっかりと支え、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な形での実現を目指して参ります。

ありがとうございました。