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金融経済月報(基本的見解1)(1999年 3月)2

  1. 本「基本的見解」は、3月12日に開催された政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策判断の基礎となる経済及び金融の情勢に関する基本的見解として決定されたものである。
  2. 本稿は、3月12日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の時点で利用可能であった情報をもとに記述されている。

1999年 3月16日
日本銀行

日本銀行から

 以下には、基本的見解の部分を掲載しています。図表を含む全文は、こちら(gp9903.pdf 598KB)から入手できます。


 最近のわが国経済をみると、公共投資の増加などが最終需要を下支えする中で、在庫調整が一段の進捗をみており、生産活動は下げ止まっている。このように、景気は、足許、下げ止まりの様相を呈している。

 最終需要面をみると、設備投資は大幅な減少を続けている。個人消費については、一部には改善の動きもみられるが、全体としては回復感に乏しい状態が続いている。一方、住宅投資は、水準は依然低いが、下げ止まりが明確となってきている。また、純輸出(輸出−輸入)が横這い圏内で推移する中で、公共投資は引き続き増勢を示している。こうした最終需要の動向や、在庫調整が一段と進捗していることを背景に、鉱工業生産は下げ止まっている。もっとも、企業収益が減少しているほか、家計の雇用・所得環境も引き続き悪化している。企業金融面に関しては、足許改善しているが、先行きに対する不安感は、なお払拭し切れていない模様である。以上のことから、企業・消費者心理は依然慎重なものとなっている。

 今後の経済情勢については、在庫調整の観点からは生産回復の条件が次第に整いつつある中で、政府の経済対策や日本銀行による金融緩和措置などが、下支え効果を発揮することが見込まれる。また、金融機関に対する公的資本投入を軸とした、金融システムの建て直しに向けた取り組みも、景気に対して徐々に好影響を及ぼすものと期待される。しかし他方で、企業行動をみると、上記のように収益の悪化が続き、金融面での不安感がなお払拭されない中で、大企業を中心に、来年度にかけてリストラを本格化させる動きが拡がりつつあるように窺われる。こうした企業リストラは、短期的には、設備投資の抑制に働くほか、雇用・所得環境の悪化等を通じて家計支出にもマイナスの影響を及ぼす可能性がある。これらを踏まえると、速やかな民間需要の自律的回復を期待し難いことには、変わりはない。今後は、このような点に留意しつつ、経済情勢全般の動向を注意深くみていく必要がある。

 物価面をみると、大幅な需給ギャップなどを背景に、国内卸売物価が下落傾向を続け、企業向けサービス価格も軟化している。消費者物価についても、基調としては弱含みで推移している。今後の物価を取り巻く環境についてみると、足許の景気は下げ止まりの様相を呈しているとしても、当面、需給ギャップが明確に縮小するとは見込み難い。また、賃金の軟化が続いていることや、昨秋以降の円高も、物価の低下要因として作用すると考えられる。これらを踏まえると、物価は、今後も、下落基調を続けるものとみられる。

 金融面をみると、日本銀行による一段の金融緩和措置(2月12日)を受けて、オーバーナイト物金利、ターム物金利がいずれも低下した。また、ジャパンプレミアムの急速な縮小にみられるように、邦銀の流動性リスクや信用リスクに対する市場の警戒感も、公的資本投入に向けた具体的な動きの進展なども背景に、後退してきているように窺われる。

 この間、コール市場残高は、機関投資家がコール資金の一部を普通預金にシフトさせたことから、減少している。これまでのところ市場取引の縮小に伴って資金決済面で支障が生じるといった事態はみられていないが、資金の流れに大きな変化が生じつつあるため、その動向を注視していく必要がある。

 長期金利は、神経質な市場の地合いのもと、短期金利の動きを受けるかたちで低下した。また株価は、円相場の下落や米国株価の上伸を材料に、強含んで推移している。

 金融の量的側面に関連して、企業の資金需要面をみると、設備投資などの実体経済活動に伴う資金需要は低迷を続けている。また、資金調達の厳しさを意識した企業の手許資金積み上げの動きも収まってきている。一方、民間金融機関の融資姿勢をみると、企業業績の悪化を踏まえて、基本的に慎重な姿勢が維持されている。ただ、金融機関の資金繰り面や自己資本面からの制約は徐々に緩和される方向にある。こうしたもとで、民間銀行は信用保証制度の活用に引き続き積極的な取り組み姿勢を示している。

 これらの結果、企業金融は一頃に比べ逼迫感が和らいできている。もっとも、信用リスクに対する金融資本市場の警戒感は根強く、格付けが低めの企業などでは依然厳しい資金調達環境にあるものとみられる。

 こうした企業金融の動向が、今後、年度末や新年度入り後に向けてどのような展開を辿るか、注目していく必要がある。

以上