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金融経済月報(基本的見解1)(2003年 4月)2

  1. 本「基本的見解」は、4月7日、8日に開催された政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策判断の基礎となる経済及び金融の情勢に関する基本的見解として決定されたものである。
  2. 本稿は、4月7日、8日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の時点で利用可能であった情報をもとに記述されている。

2003年 4月 9日
日本銀行

日本銀行から

 以下には、基本的見解の部分を掲載しています。図表を含む全文は、こちら(gp0304.pdf 823KB)から入手できます。


 わが国の景気は、一部に持ち直しの動きもみられるが、イラク情勢を含め先行き不透明感が強まる中で、全体として横這いの動きを続けている。

 最終需要面をみると、設備投資は持ち直しつつあるが、個人消費は弱めの動きを続けている。また、住宅投資は低調に推移しており、公共投資も減少している。このように国内需要に明確な回復の動きがみられない中で、輸出入はともにごく緩やかな増加基調にあり、純輸出は横這い圏内で推移している。

 こうした最終需要の動向を反映し、鉱工業生産は、横這い圏内の動きを続けている。企業収益は改善を続けているが、先行きの不透明感が強いこともあり、企業の業況感は、総じて改善が足踏みしている。雇用面では、新規求人が緩やかな増加基調にあるほか、臨時雇用等を広く含む雇用者数は下げ止まり傾向にあるとみられる。しかし、企業の人件費削減姿勢が根強い中で、賃金が引き続き低下するなど、雇用者所得は減少を続けており、家計の雇用・所得環境は、全体として引き続き厳しい状況にある。

 今後の経済情勢を考えると、まず本年の海外経済については、足許アジア経済が堅調に推移していることもあり、緩やかな回復を辿るとの見方が一般的である。しかし、イラク情勢を巡って不透明感が強まっており、欧米諸国の経済指標がこのところ総じて弱めであることなどを踏まえると、少なくとも当面、海外経済の回復力はかなり弱いものとなる可能性が高い。そのもとで、当面、輸出の増加は引き続きごく緩やかなものにとどまり、鉱工業生産も、横這い圏内の動きが続くと考えられる。

 一方、国内需要については、公共投資が減少傾向を辿ると見込まれるほか、個人消費も、厳しい雇用・所得環境のもとで、当面、弱めの動きを続ける可能性が高い。設備投資は、輸出や生産が再びはっきりと増加すれば、回復傾向が明確になっていくと考えられるが、当面はごく緩やかな増加にとどまるとみられる。

 以上を総合すると、今後わが国の景気は、本年の海外経済について緩やかな回復を前提とすれば、いずれは輸出の増勢が強まり、生産が増加基調に復することを通じて、前向きの循環が働き始めると考えられる。ただし、過剰雇用や過剰債務の調整圧力が根強い中で、生産が当面横這い圏内で推移するとみられることなどを念頭に置くと、しばらくの間、国内需要の自律的な回復力が高まることは展望しにくい。また、海外経済の先行きについては、イラク情勢や新型肺炎問題など、不透明な要素が増えていることに注意を要する。国内面でも、株価の動向や、それが金融システムや企業金融、ひいては実体経済に及ぼす影響について、注視していく必要がある。

 物価面をみると、輸入物価は、原油をはじめとする国際商品市況の動向を反映して上昇している。国内企業物価は、機械類の価格低下が続いているものの、輸入物価の上昇や素材業種での需給改善を反映して、全体として下げ止まっている。この間、消費者物価や企業向けサービス価格は、引き続き緩やかに下落している。

 物価を取り巻く環境をみると、輸入物価は、原油価格の動向次第という面が強く、先行きの方向感が見極め難い。国内面では、マクロの需給バランスや機械類における趨勢的な技術進歩、流通合理化といった要因が、引き続き物価を押し下げる方向に作用するとみられる。一方、これまでの原油高の影響や素材業種の需給改善など、物価を押し上げる方向に働く要因も存在する。これらのうち、企業間取引の段階では、目先は物価押し上げ要因の方がやや強く、国内企業物価は、若干の上昇が予想される。消費者物価については、先行きも下落を続けるが、4月以降に医療費自己負担率の引き上げの影響が見込まれることなどから、前年比下落幅が幾分縮小するとみられる。

 金融面をみると、米国等による対イラク武力行使の開始(日本時間3月20日)を踏まえて、日本銀行が金融市場の安定確保に万全を期すため一層潤沢な資金供給を行った結果、3月末の日本銀行当座預金残高は30.9兆円となった。

 こうしたもとで、オーバーナイト物金利は、3月末日における一時的な上昇を除けば、引き続きゼロ%近辺で推移した。また、ターム物金利も、年度末にかけて、短期国債金利などが一時上昇する場面もみられたものの、その後は再び低水準で安定した動きとなりつつある。

 長期国債流通利回りは、わが国経済の先行き不透明感等を背景に、一時0.7%を割り込む水準まで低下した。この間、民間債(銀行債、事業債)と国債との流通利回りスプレッドは、縮小傾向を辿った。

 株価は、3月中旬の対イラク武力行使開始後、その進展を踏まえた神経質な展開が続き、最近では日経平均株価は8千円台前半で推移している。

 円の対米ドル相場は、3月上旬まで米ドルの軟調な地合いが続いたあと、中旬以降は、対イラク武力行使を巡る情勢に大きく振られる展開となり、最近では119~120円台で推移している。

 資金仲介活動をみると、民間銀行は、優良企業に対しては、貸出を増加させようとする姿勢を続ける一方で、信用力の低い先に対しては、慎重な貸出姿勢を維持している。企業からみた金融機関の貸出態度も中小企業等では総じて厳しい。社債、CPなど市場を通じた企業の資金調達環境をみると、高格付け企業は緩和的である一方、低格付け企業では幾分持ち直しの動きもみられるものの総じてみれば厳しい状況にある。

 資金需要面では、企業の借入金圧縮スタンスが維持されている中で、設備投資が低水準にあることなどから、民間の資金需要は引き続き減少傾向を辿っている。

 こうした中で、民間銀行貸出は前年比2%台の減少が続いている。CP・社債の発行残高は、概ね前年並みの水準で推移している。

 この間、企業の資金繰り判断は、中小企業等では総じて厳しい状況が続いている。

 マネタリーベースは、前年比1割程度の伸びとなっている。マネーサプライの伸びは、前年比2%程度で推移している。

 企業の資金調達コストは、全体としてきわめて低い水準で推移している。

 以上を踏まえて、金融面の動きを総合的に判断すると、金融市場では、全体としてみればきわめて緩和的な状況が維持されている。長期金利は幾分低下しているほか、マネーサプライやマネタリーベースも、経済活動との対比でみれば、高めの伸びを維持している。もっとも、株価は低調な動きを続けている。企業金融面では、信用力の高い企業は総じて緩和的な調達環境にあるが、信用力の低い企業については投資家の姿勢が厳しく、民間銀行も慎重な貸出姿勢を維持している。金融資本市場の動向や金融機関行動、企業金融の状況については、引き続き十分注意してみていく必要がある。

以上