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当面の金融政策運営について

2019年12月19日
日本銀行

  1. 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。
    1. (1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成7反対2)(注1)

      次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

      短期金利:
      日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用する。
      長期金利:
      10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし1、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。
    2. (2)資産買入れ方針(全員一致)

      長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。

      1. [1]ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする。
      2. [2]CP等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持する。
  2. わが国の景気は、海外経済の減速や自然災害などの影響から輸出・生産や企業マインド面に弱めの動きがみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大している。海外経済は、減速の動きが続いているが、総じてみれば緩やかに成長している。そうしたもとで、輸出は弱めの動きが続いており、鉱工業生産は、自然災害などの影響もあって、足もとでは減少している。一方、企業収益が総じて高水準を維持するなか、設備投資は増加傾向を続けている。個人消費は、消費税率引き上げなどの影響による振れを伴いつつも、雇用・所得環境の着実な改善を背景に緩やかに増加している。住宅投資は横ばい圏内で推移しており、公共投資は緩やかに増加している。この間、労働需給は引き締まった状態が続いている。わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。
  3. 先行きのわが国経済は、当面、海外経済の減速の影響が続くものの、国内需要への波及は限定的となり、基調としては緩やかな拡大を続けるとみられる。国内需要は、消費税率引き上げなどの影響を受けつつも、きわめて緩和的な金融環境や積極的な政府支出などを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。輸出も、当面、弱めの動きが続くものの、海外経済が総じてみれば緩やかに成長していくことを背景に、基調としては緩やかに増加していくとみられる。消費者物価の前年比は、当面、原油価格の下落の影響などを受けつつも、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる(注2)
  4. リスク要因としては、保護主義的な動きの帰趨とその影響、中国を始めとする新興国・資源国経済の動向、IT関連財のグローバルな調整の進捗状況、英国のEU離脱問題の展開やその影響、地政学的リスク、こうしたもとでの国際金融市場の動向などが挙げられる。こうした海外経済を巡る下振れリスクは引き続き大きいとみられ、わが国の企業や家計のマインドに与える影響も注視していく必要がある。
  5. 日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。政策金利については、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。今後とも、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。特に、海外経済の動向を中心に経済・物価の下振れリスクが大きいもとで、先行き、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる(注3)

以上


  1. (注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員。反対:原田委員、片岡委員。原田委員は、長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、政策委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎるとして反対した。片岡委員は、短期政策金利を引き下げることで金融緩和を強化することが望ましいとして反対した。 本文に戻る
  2. (注2)片岡委員は、消費者物価の前年比は、先行き、2%に向けて上昇率を高めていく可能性は現時点では低いとして反対した。 本文に戻る
  3. (注3)片岡委員は、2%の物価目標の早期達成のためには、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と具体的に関連付けた強力なものに修正することが適当であるとして反対した。 本文に戻る

  1. 金利が急速に上昇する場合には、迅速かつ適切に国債買入れを実施する。 本文に戻る

(参考)

開催時間
12月18日(水) 14:00~16:15
12月19日(木) 9:00~11:38
出席委員
議長 黒田 東彦(総裁)
雨宮 正佳(副総裁)
若田部昌澄( 副総裁 )
原田 泰 (審議委員)
布野 幸利( 審議委員 )
櫻井 眞 ( 審議委員 )
政井 貴子( 審議委員 )
鈴木 人司( 審議委員 )
片岡 剛士( 審議委員 )

上記のほか、

12月18日
財務省  神田 眞人 大臣官房総括審議官(14:00~16:15)
内閣府  田和 宏  内閣府審議官(14:00~16:15)
12月19日
財務省  遠山 清彦 財務副大臣(9:00~11:22、11:29~11:38)
内閣府  宮下 一郎 内閣府副大臣(9:00~11:22、11:29~11:38)

が出席。

公表日時
当面の金融政策運営について――12月19日(木)11:45
主な意見――12月27日(金)8:50予定
議事要旨――2020年1月24日(金)8:50予定

以上