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政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨 (2025年1月23、24日開催分)

2025年3月25日
日本銀行

本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2025年3月18、19日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

開催要領

1.開催日時:
2025年1月23日(14:00から15:53)
 
1月24日( 9:00から12:16)
2.場所:
日本銀行本店
3.出席委員:
議長 植田和男 (総裁)
  • 氷見野良三(副総裁)
  • 内田眞一 ( 副総裁 )
  • 安達誠司 (審議委員)
  • 中村豊明 ( 審議委員 )(注)
  • 野口 旭 ( 審議委員 )
  • 中川順子 ( 審議委員 )
  • 高田 創 ( 審議委員 )
  • 田村直樹 ( 審議委員 )
  • (注)中村委員は、電話会議により出席。
4.政府からの出席者:
  • 財務省 寺岡光博 大臣官房総括審議官(23日)
  • 斎藤洋明 財務副大臣(24日)
  • 内閣府 林 幸宏 内閣府審議官(23日)
  • 瀬戸隆一 内閣府副大臣(24日)
(執行部からの報告者)
  • 理事 高口博英
  • 理事 加藤 毅
  • 理事 清水誠一
  • 理事 諏訪園健司
  • 企画局長 正木一博
  • 企画局審議役  服部良太(23日15:06から15:53)
  • 企画局政策企画課長 長野哲平
  • 金融機構局長 鈴木公一郎
  • 金融市場局長 藤田研二
  • 調査統計局長 中村康治
  • 調査統計局経済調査課長 須合智広
  • 国際局長 近田 健
(事務局)
  • 政策委員会室長 播本慶子
  • 政策委員会室企画役 木下尊生
  • 政策委員会室企画役補佐 安藤正広
  • 企画局企画調整課長 土川 顕(23日15:06から15:53)
  • 企画局企画役 丸尾優士
  • 企画局企画役 八木智之
  • 企画局企画役 北原 潤

1.金融経済情勢に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

金融市場調節については、前回会合(12月18、19日)で決定された金融市場調節方針(注)に従って運営し、無担保コールレート(オーバーナイト物)は、0.226から0.232%のレンジで推移した。

この間、長期国債の買入れについては、2024年12月は月間4.9兆円程度の買入れを行った。2025年1月は、2024年7月の会合で決定された減額計画に沿って、月間の買入れ額を4,000億円程度減額し、月間4.5兆円程度の買入れを行った。CP・社債等の買入れについては、2024年3月の会合で決定された資産買入れ方針に沿って、運営した。

2.金融・為替市場動向

短期金融市場では、翌日物金利のうち、無担保コールレートは0.25%程度で推移した。GCレポレートも、概ね無担保コールレート並みの水準で推移した。ターム物金利をみると、短国レート(3か月物)は、上昇した。

わが国の株価(TOPIX)は、NISA制度の本年分の非課税枠の買い付け開始に伴う買いフロー等がみられたものの、米国新政権の政策運営を巡る思惑等が引き続き意識されるもとで、概ね横ばいとなった。長期金利(10年物国債金利)は、先行きの金融政策運営に対する見方や米国金利上昇を背景に、上昇した。国債市場の流動性指標をみると、昨年末にかけて取引が減少するもとで幾分悪化したが、1月入り後は改善方向の動きとなっている。為替相場をみると、円の対ドル相場および対ユーロ相場は、円安方向の動きとなった。

3.海外金融経済情勢

海外経済は、総じてみれば緩やかに成長している。米国経済は、個人消費を中心に堅調に成長している。欧州経済は、一部に弱さを残しつつも、下げ止まっている。中国経済は、足もとは政策による押し上げ効果がみられるものの、不動産市場や労働市場の調整による下押しが続くもとで、改善ペースは鈍化傾向にある。中国以外の新興国・資源国経済は、IT関連財を中心に輸出が持ち直すもとで、総じてみれば緩やかに改善している。

先行きの海外経済は、緩やかな成長が続くと考えられる。先行きの見通しを巡っては、各国の政策運営の帰趨のほか、中国経済の動向や地政学的緊張の展開などについて、不確実性が高い。

海外の金融市場をみると、1月20日の米国の新政権発足後も、全体として落ち着いている。米国の長期金利は、米国新政権の政策運営を巡る思惑や堅調な経済指標等を受けて、小幅に上昇した。欧州の長期金利は、米国金利上昇等を受けて、大幅に上昇した。米国の株価は、金利上昇がハイテク関連銘柄等の重石となったものの、新政権の政策に対する期待等を背景に、小幅に上昇した。この間、新興国通貨は、米国金利上昇・ドル高を背景に、下落した。原油価格は、米国による新たな対ロシア制裁や米国の寒波を背景に、上昇した。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。先行きについては、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。

輸出は、横ばい圏内の動きとなっている。先行きは、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、グローバルなIT関連財の回復などから、増加基調に復していくと見込まれる。

鉱工業生産は、横ばい圏内の動きとなっている。先行きは、グローバルなIT関連財の回復などから、増加基調に復していくと見込まれる。

企業収益は、改善傾向にある。業況感は良好な水準を維持している。こうしたもとで、設備投資は、緩やかな増加傾向にある。先行きの設備投資は、企業収益が改善傾向を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、増加傾向を続けると予想される。

個人消費は、物価上昇の影響などがみられるものの、緩やかな増加基調にある。消費活動指数(実質・旅行収支調整済)をみると、7から9月に、サービス消費が基調として緩やかに増加するもとで、猛暑効果や自然災害に備えた財の販売増加などもあって増加したあと、10から11月の7から9月対比は、猛暑効果や備蓄需要の反動減もあって、非耐久財を中心に小幅の減少となった。企業からの聞き取り調査や高頻度データに基づくと、12月以降の個人消費も、物価上昇を受けた消費者の強い節約志向の影響を指摘する声は聞かれるものの、緩やかな増加基調にあるとみられる。消費者マインドは、横ばい圏内の動きとなっている。先行きの個人消費は、当面、物価上昇の影響を受けつつも、名目雇用者所得の改善が続くもとで、緩やかな増加基調が続くと予想される。その後も、雇用者所得の改善が続くもとで、緩やかな増加を続けると考えられる。

雇用・所得環境は、緩やかに改善している。就業者数をみると、正規雇用は、人手不足感の強い情報通信等を中心に、振れを伴いながらも緩やかな増加傾向にある。非正規雇用は、対面型サービス業などが増加傾向にある一方、労働需給が引き締まるもとで非自発的な理由による非正規雇用が減少傾向にあり、足もとでは横ばい圏内で推移している。一人当たり名目賃金は、はっきりと増加している。先行きの雇用者所得は、名目賃金の伸び率上昇を反映して、はっきりとした増加を続けると考えられる。実質ベースでも、振れを伴いつつも、前年比プラス基調が定着していくと見込まれる。

物価面について、商品市況は、総じてみれば小幅に上昇している。国内企業物価(夏季電力料金調整後)の3か月前比は、円安の影響などから、1%台前半のプラスとなっている。企業向けサービス価格(除く国際運輸)の前年比は、人件費上昇等を背景に高めの伸びを続け、足もとでは3%程度のプラスとなっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、政府によるエネルギー負担緩和策の縮小もあって、足もとは3%程度となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。先行きの消費者物価についてみると、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、消費者物価の基調的な上昇率は、人手不足感が高まるもと、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。なお、2025年度にかけては、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比に対して、米価格が高水準で推移すると見込まれることや政府による施策の反動が生じることが押し上げ方向で作用すると考えられる。

(2)金融環境

わが国の金融環境は、緩和した状態にある。

実質金利は、マイナスで推移している。企業の資金調達コストは、上昇しているが、総じてみればなお低水準で推移している。資金需要面をみると、経済活動の回復や企業買収の動きなどを背景に、緩やかに増加している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、緩和した状態にある。CP・社債市場では、良好な発行環境となっている。こうした中、銀行貸出残高の前年比は、3%台半ばとなっている。CP・社債計の発行残高の前年比は、4%台半ばとなっている。企業の資金繰りは、良好である。企業倒産は、このところ増勢が鈍化している。

この間、マネーストックの前年比は、1%台前半となっている。

(3)金融システム

わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。

大手行の収益は、貸出金利息を中心とする資金利益の増加や手数料収入などの非資金利益の増加などを背景に、堅調に推移している。この間、信用コストは、低水準となっている。自己資本比率は、引き続き規制水準を十分に上回っている。

地域銀行の収益は、資金利益の増加などを背景に、堅調に推移している。この間、信用コストは、低水準となっている。自己資本比率は、引き続き規制水準を十分に上回っている。

金融循環面では、金融システムレポートで示しているヒートマップを構成する全14指標のうち12指標が、過熱でも停滞でもない状態となっており、株価等の2指標については、過熱方向にトレンドから乖離した状態となっている。金融ギャップは、ひと頃と比べてプラス幅が縮小した状態が続いており、全体として金融活動に過熱感はみられない。ただし、株価や不動産価格の上昇ペースには引き続き留意が必要であり、今後も、金融活動が実体経済活動から大きく乖離することがないか、注視する必要がある。

2.貸出増加支援資金供給の終了に伴う経過措置

1.執行部からの説明

貸出増加支援資金供給については、足もとまでの経済・金融情勢を踏まえると、現行の貸付実行期限である本年6月末をもって新規貸付けを終了することが適当と考えられる。本資金供給を終了した場合に、金融機関の資金繰りや市場金利等に与える影響を確認したが、大きな問題は生じないと考えられる。

そのうえで、本資金供給の利用残高が高水準にあるもとで、円滑に終了する観点から、「貸出支援基金の運営として行う貸出増加を支援するための資金供給基本要領」の一部改正を行い、期限後、本年12月末までの半年間、満期到来額の半分を上限として、貸付期間1年の借り換えを認める経過措置を設けることが適当と考えられる。

2.委員会の検討

委員は、執行部の説明どおり、貸出増加支援資金供給について、(1)本年6月末をもって新規貸付けを終了すること、(2)その際、本年12月末までの半年間、経過措置を設けること、が適切であるとの認識で一致した。一人の委員は、金融機関の積極的な貸出姿勢などをみても本資金供給の目的は既に十分に果たしたと述べたうえで、本資金供給が金融機関の資金繰りを支援する効果がかなり強いことも踏まえると、この段階で終了することが適切であるとの見方を示した。ある委員は、日本銀行のバランスシートが縮小していく過程においては、金融機関の資金繰りについて、従来以上に丁寧にモニタリングをしていくことが重要であると指摘した。

3.採決

採決の結果、上記案件について全員一致で決定された。本件については、会合終了後、対外公表することとされた。

3.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要

1.経済・物価情勢の現状

国際金融資本市場について、委員は、市場センチメントはひと頃に比べて改善した状態が続いており、1月20日の米国の新政権発足後も、全体として落ち着いているとの見方を共有した。

海外経済について、委員は、総じてみれば緩やかに成長しているとの認識を共有した。

米国経済について、委員は、個人消費を中心に堅調に成長しているとの認識で一致した。何人かの委員は、最近の個人消費や雇用関連の指標がしっかりとしていることなどを踏まえると、昨年夏場にみられた経済の急減速懸念は後退していると指摘した。このうちの一人の委員は、実体経済が堅調な中で、ディスインフレのプロセスが続いており、FRBは余裕を持った政策運営が可能な状態にあると述べた。また、この委員は、昨年夏場の世界的な株価下落の一因となった雇用統計の弱さは、一時的な振れであった可能性が高いと付け加えた。この点に関連し、別の一人の委員は、雇用には底入れの可能性が生じており、米国経済はソフトランディングしていくというより、むしろ早期に再加速する可能性が高まっているとの見方を示した。この委員は、そうしたもとで、FRBの利下げの一時休止も見込まれていると指摘した。この間、ある委員は、米国経済についてはソフトランディング期待が高いが、同国の政策運営の不確実性が高い中、物価上昇率や金利の一段の上昇が生じれば、株価の下落を通じて、同国経済を支える個人消費を下押しする可能性もあり、注意を要すると指摘した。

欧州経済について、委員は、一部に弱さを残しつつも、下げ止まっているとの認識を共有した。ある委員は、欧州経済の弱さの背景として、エネルギーコストの高止まりや、高い賃金上昇率によるコスト上昇などを指摘した。一人の委員は、欧州の中でもドイツやフランスでとくに弱めの動きがみられると指摘した。

中国経済について、委員は、足もとは政策による押し上げ効果がみられるものの、不動産市場や労働市場の調整による下押しが続くもとで、改善ペースは鈍化傾向にあるとの見方を共有した。一人の委員は、不動産・労働市場では依然として調整が続いていると指摘したうえで、内需が低迷するもとで、人民元安も相まって、輸出への依存を高める可能性もあるとの見方を示した。

中国以外の新興国・資源国経済について、委員は、IT関連財を中心に輸出が持ち直すもとで、総じてみれば緩やかに改善しているとの認識を共有した。

わが国の金融環境について、委員は、緩和した状態にあるとの認識で一致した。また、委員は、企業の資金調達コストは上昇しているが、総じてみればなお低水準で推移しているとの見方を共有した。

以上のような海外の金融経済情勢とわが国の金融環境を踏まえて、わが国の経済・物価情勢に関する議論が行われた。

わが国の景気について、委員は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復しているとの認識を共有した。大方の委員は、わが国の景気は、これまで「展望レポート」で示してきた見通しに概ね沿って推移しているとの見方を示した。

輸出について、委員は、横ばい圏内の動きとなっているとの認識で一致した。

鉱工業生産について、委員は、横ばい圏内の動きとなっているとの見方を共有した。

設備投資について、委員は、企業収益が改善し、業況感は良好な水準を維持するもとで、緩やかな増加傾向にあるとの認識で一致した。そのうえで、ある委員は、企業収益について、大企業では好調だが、中小企業については、昨年4から6月に増加した後、7から9月は悪化し、2024年度上半期で前年を下回っており、まだ少し弱い面があると指摘した。

個人消費について、委員は、物価上昇の影響などがみられるものの、緩やかな増加基調にあるとの認識で一致した。複数の委員は、好調な企業収益もあって名目賃金が増加しており、所得面から個人消費を支えていると述べた。このうちの一人の委員は、昨年11月の毎月勤労統計で実質賃金が前年比プラスに転化するなど、前向きな変化が生じているとの見方を示した。別のある委員は、賃上げの恩恵を最も受けている若年層では、個人消費が拡大傾向にあると指摘した。この間、何人かの委員は、為替円安に伴う輸入物価上昇や米・生鮮食品の価格上昇が消費者物価を押し上げており、このことが実質所得・個人消費を下押ししていると述べた。このうちの一人の委員は、食料品価格の上昇は、家計のマインドにも悪影響を及ぼしていると付け加えた。別のある委員は、個人消費をみる際には、年金世帯の所得動向や社会保険料の支払い等を勘案した可処分所得の動向に着目すべきであるとしたうえで、実質ベースでみた可処分所得の改善ペースは緩やかなものにとどまっており、家計の強い節約志向につながっていると指摘した。

雇用・所得環境について、委員は、緩やかに改善しているとの見方を共有した。

物価面について、委員は、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、政府によるエネルギー負担緩和策の縮小もあって、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、足もとは3%程度となっているとの認識で一致した。大方の委員は、物価情勢は、これまで「展望レポート」で示してきた見通しに概ね沿って推移しているとの見方を示した。複数の委員は、これまで十分に価格転嫁が行われてこなかった業種・企業などで、既往の原材料価格上昇等を販売価格に反映する動きが引き続きみられているほか、人件費や物流費の上昇分を販売価格に反映する動きも幅広くみられていると述べた。そのうえで、何人かの委員は、足もとの消費者物価の前年比の高まりについては、米価格が新米流通後も下落しなかったことなども影響していると指摘した。

この間、予想物価上昇率について、委員は、緩やかに上昇しているとの見方で一致した。一人の委員は、「生活意識に関するアンケート調査」において家計の5年後の物価予想の平均値が上昇した点を指摘した。別の一人の委員は、中長期の予想物価上昇率に関する指標をみると、1%台後半となるものが増えてきていると述べた。また、ある委員は、企業や家計の予想物価上昇率は概ね2%程度となっているのではないか、との見方を示した。これに対して、一人の委員は、予想物価上昇率が大きめに上昇しているのであれば、名目金利が低位にあるもと、実質金利の低下を通じて、景気刺激効果はより強まっているはずであるとの見方を示した。この委員は、こうした点を踏まえると、予想物価上昇率は、上昇してきているものの、2%より低い水準にあるとみるべきであると付け加えた。

2.経済・物価情勢の展望

2025年1月の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)の作成にあたり、委員は、経済情勢の先行きの中心的な見通しについて議論を行った。委員は、わが国経済について、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続ける、との認識を共有した。

わが国の輸出について、委員は、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、グローバルなIT関連財の回復などから、増加基調に復していくとの見方で一致した。

鉱工業生産について、委員は、グローバルなIT関連財の回復などから、増加基調に復していくとの見方を共有した。

設備投資について、委員は、企業収益が改善傾向を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、増加傾向を続けるとの見方で一致した。

個人消費について、委員は、当面、物価上昇の影響を受けつつも、名目雇用者所得の改善が続くもとで、緩やかな増加基調が続くとの見方で一致した。また、その後についても、雇用者所得の改善が続くもとで、個人消費は緩やかな増加を続けるとの見方を共有した。一人の委員は、個人消費がしっかりとしていくためには、実質賃金のプラス転化が必要との認識を示したうえで、現時点での焦点は、春季労使交渉で賃金上昇のモメンタムが持続するかという点と、米や生鮮食品の価格上昇や為替円安の継続に伴う物価の上振れの行方であると指摘した。また、何人かの委員は、今後の個人消費をみていく際には、家計の所得環境等について、属性ごとのばらつきが大きくなっている点にも留意する必要があるとの見解を示した。

雇用者所得について、委員は、名目賃金の伸び率上昇を反映して、はっきりとした増加を続けるとの見方を共有した。本年の春季労使交渉について、大方の委員は、1月の支店長会議での報告や各種アンケート調査などこれまでに得られた情報をもとにすると、昨年に続いてしっかりとした賃上げが実現すると見込まれるとの見方を共有した。このうちの一人の委員は、企業収益・労働市場・物価の状況に加え、年始にかけての経営者の発言、各種調査、支店長会議などのミクロ情報を踏まえると、本年の賃上げについて、少なくとも昨年とそれほど遜色のない水準になると予想できると述べた。別の一人の委員は、これまで各所から入手した情報からは、昨年同時期と同程度の賃上げの機運の高まりが窺われるとの見方を示した。また、この委員を含めた複数の委員は、このところ初任給の引き上げの発表が相次いでいると指摘した。この点に関連し、一人の委員は、支店長会議でも、企業の間で継続的な賃上げの重要性についての認識が高まっていることが報告されており、前年を上回る賃上げが期待できると述べた。ある委員は、先行きの賃上げを前提として中期経営計画を策定する企業が増加していると指摘したうえで、このことは、賃金は上がらないというゼロ・ノルムからの転換を端的に示していると述べた。この間、一人の委員は、大企業や中堅企業では賃上げに向けたモメンタムが着実に高まっている様子がみられるが、中小企業の中には賃上げ余力が相対的に限られる先も相応にみられており、今後、労使交渉の帰趨を確認していく必要があるとの見方を示した。

こうした議論を経て、委員は、中心的な成長率の見通しは、昨年10月の展望レポート時点と比べると、概ね不変であり、先行きの景気展開に対する基本的な見方に変化はないとの認識を共有した。

続いて、委員は、物価情勢の先行きの中心的な見通しについて議論を行った。委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比について、政策委員見通しの中央値が、今年度に2%台後半、2025年度に2%台半ばとなったあと、2026年度は概ね2%程度になるとの見方を共有した。そのうえで、委員は、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、消費者物価の基調的な上昇率は、人手不足感が高まるもと、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するとの見方を共有した。また、委員は、2025年度にかけては、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比に対して、米価格が高水準で推移すると見込まれることや政府による施策の反動が生じることが押し上げ方向で作用するとの認識も共有した。

委員は、こうした中心的な物価の見通しを、昨年10月の展望レポート時点と比べると、2024年度と2025年度が、米価格の上昇に加え、このところの為替円安等に伴う輸入物価の上振れもあって、上振れているとの認識を共有した。一人の委員は、為替円安と原油高は、半年程度のラグをもって、電気代等の押し上げにつながると指摘した。

基調的な物価上昇率に関して、多くの委員は、今後、賃金の上昇が続くもとで、人件費や物流費などの上昇を販売価格に転嫁する動きがより広がっていくことで、徐々に高まっていくとの見方を示した。何人かの委員は、最近の予想物価上昇率の指標等をみると、今後、基調的な物価上昇率が上昇していく確度は高まってきていると判断できると指摘した。また、何人かの委員は、最近のコストプッシュ圧力の強まりが、予想物価上昇率の変化を通じて、先行きの基調的な物価上昇率に影響を及ぼすことも考えられると指摘した。一人の委員は、より長い目でみると、わが国の輸入依存度の高さや脱グローバル化の動き、新興国の経済成長といった要因も基調的な物価を押し上げる要因になりうるとの見方を示した。一方、ある委員は、家計の節約志向の強さや米欧のインフレ率の低下、中国のデフレ傾向の継続などは、先行き、物価を下押しする要因となると述べた。

委員は、労働需給の引き締まりが物価に及ぼす影響についても議論した。一人の委員は、労働供給の制約が意識されるもとで、企業の賃金・価格設定行動は変化してきており、今後、賃上げとその価格転嫁による物価上昇の循環が本格化していくとの見方を示した。この委員は、そうした状況下では、マクロ的な需給ギャップの物価に対する説明力は低くなると考えられると付け加えた。ある委員は、需給ギャップを分解すると、労働投入ギャップがプラスとなっている一方、資本投入ギャップがマイナスとなっているが、このマイナスには、人手不足によって設備が稼働出来ないことも影響していると述べた。そのうえで、この委員は、業種によって違いはあるものの、実態的には生産要素の稼働率が高くなっていることが、高い物価上昇率が続く背景にあるとの見方を示した。別の一人の委員も、人手不足感が強いもとで、物価上昇の要因が労働市場の引き締まりにシフトしてきていると指摘した。

次に、委員は、経済・物価の見通しのリスク要因(上振れ・下振れの可能性)について議論を行った。委員は、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高いとの認識で一致した。また、そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要があるとの見方を共有した。

そのうえで、経済の主なリスク要因として、委員は、(1)海外の経済・物価情勢と国際金融資本市場の動向、(2)資源・穀物価格を中心とした輸入物価の動向、(3)わが国を巡る様々な環境変化が企業や家計の中長期的な成長期待や潜在成長率に与える影響、の3点を挙げた。このうち海外の経済・物価情勢等に関連して、何人かの委員は、米国の新政権の政策運営が内外の経済や国際金融資本市場に及ぼす影響については、今後とも、丁寧にみていく必要があるとの見解を示した。

物価のリスク要因について、委員は、上記の経済のリスク要因が顕在化した場合には、物価にも影響が及ぶほか、物価固有のリスク要因として、(1)企業の賃金・価格設定行動や、(2)今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向、およびその輸入物価や国内価格への波及には注意が必要であるとの見方で一致した。そのうえで、委員は、とくに、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面があるとの認識を共有した。

リスクバランスについて、委員は、各委員が示したリスク評価を全体として評価すると、(1)経済の見通しについては、概ね上下にバランスしている、(2)物価の見通しについては、2024年度と2025年度は上振れリスクの方が大きい、との認識を共有した。

4.金融政策運営に関する委員会の検討の概要

以上のような金融経済情勢に関する認識を踏まえ、委員は、金融政策運営に関する議論を行った。

まず、委員は、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、議論した。

大方の委員は、金融経済情勢に関する討議を踏まえると、わが国の経済・物価は、これまで「展望レポート」で示してきた見通しに概ね沿って推移しており、先行き、こうした見通しが実現する確度が高まっている、との認識を示した。

すなわち、大方の委員は、(1)賃金面では、企業収益が改善傾向を続け、人手不足感が高まるもと、本年の春季労使交渉において、昨年に続きしっかりとした賃上げを実施するといった声が多く聞かれており、(2)物価面をみると、賃金の上昇が続くもとで、人件費や物流費等の上昇を販売価格に反映する動きが広がってきており、基調的な物価上昇率は、2%の「物価安定の目標」に向けて徐々に高まってきているとの認識を共有した。こうしたもと、何人かの委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、このところの為替円安等に伴う輸入物価の上振れもあって、2024年度が2%台後半となったあと、2025年度も2%台半ばとなる見通しとなっていることを指摘した。このうちの一人の委員は、見通しどおりとなった場合、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は2022年度から4年連続で2%を有意に上回ることになり、コストプッシュとはいえ、経済主体の物価観は累積的に高まっていると述べた。また、ある委員は、為替円安が家計や企業に及ぼす負の影響は、短期的な為替変動というかたちよりも、中長期的な円安傾向が累積することに伴うコスト上昇というかたちで生じていると指摘した。一人の委員は、消費者物価が2%を大きく上回る状態が続いているもとで、予想物価上昇率が2%を上回っていくリスクもあるとの見解を示した。

この間、委員は、海外経済は緩やかな成長経路を辿っており、様々な不確実性は意識されているものの、国際金融資本市場は、米国の新政権発足後も、全体として落ち着いているとの見方を共有した。複数の委員は、米国の新政権発足という大きなイベントを無事に通過し、国際金融資本市場が比較的落ち着いている状況は、政策金利の変更を検討するうえで適切な環境であると指摘した。このうちの一人の委員は、(1)昨年7月の政策金利変更時とは異なり、対円でみたドルのロングポジションが積み上がっていないこと、(2)年初来の各種情報発信もあって、市場参加者と日本銀行との間で大きな情勢判断等の認識の差がないとみられること、を踏まえると、今回の会合で政策金利を変更しても市場の大きな混乱を招く可能性は低いと述べた。ある委員は、日米の金融政策の方向性が逆となることが為替市場等で大幅な価格変動をもたらすことを懸念してきたが、米国経済の底入れでFRBの利下げが一時休止となると見込まれるため、日本銀行の政策の自由度が増したとの認識を示した。この間、複数の委員は、米国の新政権発足時に示された政策を踏まえても、米国経済は先行きも成長が続くとの見方は不変であると述べた。一人の委員は、米国の新政権の施策はこれから順次明らかとなり、そのわが国への波及は様々なかたちで出てくるとみられるが、ある程度の下方ストレスを吸収できる程度には、わが国経済の頑健性は全体として高まっていると述べた。別の一人の委員は、米国のインフレ再燃と世界的な貿易摩擦の激化が同時に起こり、スタグフレーション型シナリオとなる可能性もあり、単に緩和度合いを強くしておけば乗り切れるという状況ではないと付け加えた。

以上の整理を踏まえ、大方の委員は、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観点から、今回の会合で政策金利を0.25%引き上げ0.5%程度とすることが適当であるとの見解を示した。また、これらの委員は、(1)この方針を実現するため、補完当座預金制度の適用利率を0.5%とする、(2)基準貸付利率についても0.25%引き上げ0.75%とすることが適切であるとの認識を共有した。ある委員は、今回会合での利上げは、市場の平均的な予想と比較してタカ派でもハト派でもないという意味で、十分に中立的なタイミングであると述べた。一人の委員は、利上げによる影響やそのペースのほか、足もとの経済・物価情勢を考慮すると、今回会合で利上げを行うことが適当であると述べた。

そのうえで、何人かの委員は、今回の会合で政策金利を引き上げても、実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持されるとの認識を共有した。このうちの一人の委員は、今回の政策金利の引き上げは、金融環境を引き締め的にするものではなく、あくまで緩和的な金融環境下での緩和度合いの調整であると述べた。

一方、別の一人の委員は、今回は政策金利を維持し、次回の会合で、(1)法人企業統計等で中小企業でも価格転嫁が進み賃上げをするための収益が確保されているかを確認し、(2)連合の第1回回答集計結果などから春季労使交渉において中小企業でも高めの賃上げが実現しているかみたうえで、政策金利の引き上げを検討すべきであるとの見解を示した。

先行きの金融政策運営について、委員は、経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが適当との見方で一致した。そのうえで、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していくとの考え方を共有した。

ある委員は、利上げ後も、実質金利は大幅なマイナスとなっており、経済・物価がオントラックであれば、それに応じて、引き続き利上げをしていくことで、そのマイナス幅を縮小していく必要があると指摘した。一人の委員は、今後、基調的な物価上昇率が上昇していけば、それに応じて段階的に政策金利を引き上げていく必要があるとの見方を示した。この間、ある委員は、経済・物価がオントラックで推移する中、物価の上振れリスクが膨らんでおり、金融緩和の度合いを適時・段階的に調整していくことが適当であると述べた。一人の委員は、新年度に向けた賃上げといった国内要因による価格転嫁の一段の進展や為替円安の進行で、物価が上振れる可能性があるほか、不動産も含めた資産価格上昇で投資家の期待も高まっているとして、今後、過度な緩和継続期待の醸成による為替円安の進行や金融の過熱を避ける観点から、金融緩和の度合いを調整することも必要であると述べた。これに対して、別の一人の委員は、昨年前半までのような急激な為替円安の進行は決して望ましいものではないが、経済の現状を踏まえると、為替円安の修正が急激に進むリスクにも相応に注意が必要であると述べた。また、ある委員は、家計の節約志向の強まりなどが、企業の価格設定行動に及ぼす影響を注視する必要があると指摘した。

先行き政策金利を変更していくペースについて、一人の委員は、上下双方向のリスクがかなり大きいことを考えると、利上げのペースや、その到達点を示すターミナル・レートを示唆することにはきわめて慎重であるべきと指摘した。別の一人の委員は、特定の中立金利の水準などを目指して利上げを進めていくのではなく、利上げのたびに、その経済・物価への影響を見極めながら政策を調整していく慎重さが必要であると述べた。これに対して、ある委員は、経済・物価が見通しに沿って推移していくならば、2025年度後半に1%程度という水準を念頭に置き、そこに向けて政策金利を引き上げていくことが望ましいとの見方を示した。

委員は、今後の政策判断にあたって、基調的な物価上昇率をどのように捉えていくかについても議論した。委員は、基調的な物価上昇率を単一の指標で捉えることは出来ず、様々な角度から、幅を持って捉えることが重要であるとの認識を共有した。一人の委員は、基調的な物価上昇率は、総合的に評価されるものであると述べたうえで、将来的には、基調的な物価上昇率に関する各種指標の位置付けを整理していくことが望ましいと述べた。ある委員は、概念的には、基調的な物価上昇率が高まっていくには、価格硬直性の強い家賃等の価格が上昇することが重要であると指摘した。他方で、一人の委員は、わが国の慣行のもとでは、家賃や公共料金が上昇するには長い時間を要するとみられ、金融政策が影響を及ぼしうるものとして、これらを除いた物価をよくみながら、物価の上振れリスクに注意していくべき局面にあると述べた。

5.政府からの出席者の発言

以上の議論を踏まえ、政府からの出席者から、会議の一時中断の申し出があった。議長はこれを承諾した(11時33分中断、11時46分再開)。

財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 政府は、本日、令和7年度予算を国会へ提出する。経済・財政運営に万全を期すべく、本予算の一日も早い成立に向けて取り組んでまいる。
  • ご提案の政策金利の変更は、2%の物価安定目標の実現に向けて必要と判断されたものと受け止めており、政策の趣旨の対外的に丁寧な説明を期待する。
  • 日本銀行には、政府との緊密な連携のもと、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。

また、内閣府の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • わが国経済は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復していると認識している。ただし、海外景気の下振れリスク等の不確実性に十分注意が必要である。
  • 政府は、成長型経済に確実に移行できるよう政策運営に万全を期す。
  • 今回の提案は、物価安定目標を持続的・安定的に実現するために必要と判断されたものと受け止めている。持続的な成長の実現には、金融面から経済をしっかり支えていただく必要があると考える。
  • 日本銀行には、引き続き政府と緊密に連携し、十分な意思疎通を図りながら、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて、適切な金融政策運営を期待する。

6.採決

1.金融市場調節方針

以上の議論を踏まえ、議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、金融市場調節方針について、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、賛成多数で決定された。

金融市場調節方針に関する議案(議長案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。

無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す。

採決の結果

  • 賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、安達委員、野口委員、中川委員、高田委員、田村委員
  • 反対:中村委員

中村委員は、次回の金融政策決定会合において法人企業統計等で企業の稼ぐ力が高まったことを確認したうえで、金融市場調節方針の変更を判断すべきであるとして反対した。

2.補完当座預金制度の適用利率の変更等

議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、補完当座預金制度の適用利率の変更等について、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、賛成多数で決定され、「補完当座預金制度基本要領」の一部改正については、会合終了後、速やかに公表することとされた。

補完当座預金制度の適用利率の変更等に関する議案(議長案)

補完当座預金制度の適用利率を下記のとおりとし、「補完当座預金制度基本要領」を一部改正すること。

補完当座預金制度の適用利率 年0.5%

採決の結果

  • 賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、安達委員、野口委員、中川委員、高田委員、田村委員
  • 反対:中村委員

中村委員は、金融市場調節方針と同様の理由で反対した。

3.基準割引率および基準貸付利率の変更

議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、基準割引率および基準貸付利率の変更について、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、賛成多数で決定された。

基準割引率および基準貸付利率の変更に関する議案(議長案)

日本銀行法第33条第1項第1号の手形の割引に係る基準となるべき割引率(以下「基準割引率」という。)および同項第2号の貸付けに係る基準となるべき貸付利率(以下「基準貸付利率」という。)を、下記のとおりとすること。

基準割引率および基準貸付利率 年0.75%

採決の結果

  • 賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、安達委員、野口委員、中川委員、高田委員、田村委員
  • 反対:中村委員

中村委員は、金融市場調節方針と同様の理由で反対した。

4.対外公表文(「金融市場調節方針の変更について」)

以上の議論を踏まえ、対外公表文が検討された。議長から、対外公表文(「金融市場調節方針の変更について」<別紙>)が提案され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。

7.「経済・物価情勢の展望」の検討

続いて、「経済・物価情勢の展望」の「基本的見解」の文案が検討され、議長から、委員の見解を取りまとめるかたちで、議案が提出された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。また、背景説明を含む全文は、1月27日に公表することとされた。

8.議事要旨の承認

議事要旨(2024年12月18、19日開催分)が全員一致で承認され、1月29日に公表することとされた。

以上


  • (注)「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.25%程度で推移するよう促す。」本文に戻る

別紙

2025年1月24日
日本銀行

金融市場調節方針の変更について

  1. 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(賛成8反対1)(注)

    無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す。1

  2. 上記の金融市場調節方針の変更に伴い、以下のとおり、各種制度の適用利率の変更を決定した2(賛成8反対1)(注)
    1. (1)補完当座預金制度の適用利率

      補完当座預金制度の適用利率(日本銀行当座預金<所要準備額相当部分を除く>への付利金利)については、0.5%とする。3

    2. (2)基準貸付利率4

      補完貸付制度については、その適用金利である基準貸付利率を0.75%とする。

  3. 貸出増加支援資金供給について、予定通り2025年6月末をもって新規の貸付けを終了する。なお、本資金供給を円滑に終了する観点から、経過措置として、7月以降、2025年中は、満期到来額の半分を上限として、貸付期間1年の借り換えを認めることとした(全員一致)。
  4. わが国の経済・物価は、これまで「展望レポート」で示してきた見通しに概ね沿って推移しており、先行き、見通しが実現していく確度は高まってきている。すなわち、わが国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。賃金面では、企業収益が改善傾向を続け、人手不足感が高まるもと、本年の春季労使交渉において、昨年に続きしっかりとした賃上げを実施するといった声が多く聞かれている。物価面をみると、賃金の上昇が続くもとで、人件費や物流費等の上昇を販売価格に反映する動きが広がってきており、基調的な物価上昇率は、2%の「物価安定の目標」に向けて徐々に高まってきている。こうしたもと、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、このところの為替円安等に伴う輸入物価の上振れもあって、2024年度が2%台後半となったあと、2025年度も2%台半ばとなる見通しである。この間、海外経済は緩やかな成長経路をたどっており、様々な不確実性は意識されているものの、国際金融資本市場は全体として落ち着いている。

    こうした状況を踏まえ、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観点から、金融緩和の度合いを調整することが適切であると判断した。政策金利の変更後も、実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持されるため、引き続き経済活動をしっかりとサポートしていくと考えている。

  5. 今後の金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、今回の「展望レポート」で示した経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。

以上


  • (注)賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、安達委員、野口委員、中川委員、高田委員、田村委員。反対:中村委員。中村委員は、次回の金融政策決定会合において法人企業統計等で企業の稼ぐ力が高まったことを確認したうえで、金融市場調節方針の変更を判断すべきであるとして反対した。本文に戻る

  1. 新たな金融市場調節方針は、翌営業日(1月27日)から適用する。本文に戻る
  2. 補完当座預金制度の適用利率および基準貸付利率は、翌営業日(1月27日)から適用する。本文に戻る
  3. 被災地金融機関支援オペ、気候変動対応オペの貸付利率は、引き続き、補完当座預金制度の適用利率となる。本文に戻る
  4. 日本銀行法第15条第1項第2号に規定する「基準となるべき貸付利率」。なお、同第1号の「基準となるべき割引率」も0.75%とする(手形割引の取り扱いは現在停止中)。本文に戻る