政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨 (2025年9月18、19日開催分)
2025年11月5日
日本銀行
本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2025年10月29、30日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。
開催要領
- 1.開催日時:
- 2025年9月18日(14:00から15:37)
- 9月19日(9:00から12:40)
- 2.場所:
- 日本銀行本店
- 3.出席委員:
- 議長 植田和男 (総裁)
- 氷見野良三(副総裁)
- 内田眞一 ( 副総裁 )
- 野口 旭 (審議委員)
- 中川順子 ( 審議委員 )
- 高田 創 ( 審議委員 )
- 田村直樹 ( 審議委員 )
- 小枝淳子 ( 審議委員 )
- 増 一行 ( 審議委員 )
- 4.政府からの出席者:
-
- 財務省 前田 努 大臣官房総括審議官
- 内閣府 林 幸宏 内閣府審議官(18日)
- 瀬戸隆一 内閣府副大臣(19日)
- (執行部からの報告者)
-
- 理事 清水誠一
- 理事 神山一成
- 理事 諏訪園健司
- 理事 中村康治
- 企画局長 奥野聡雄
- 企画局政策企画課長 井出穣治
- 金融機構局長 鈴木公一郎
- 金融市場局長 峯岸 誠
- 調査統計局長 川本卓司
- 調査統計局経済調査課長 須合智広
- 国際局長 近田 健
- (事務局)
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- 政策委員会室長 福田英司
- 政策委員会室企画役 三浦幸大
- 企画局審議役 服部良太(19日)
- 企画局企画調整課長 太田幸里(19日)
- 企画局企画役 北原 潤
- 企画局企画役 西野孝佑
1.金融経済情勢に関する執行部からの報告の概要
1.最近の金融市場調節の運営実績
金融市場調節については、前回会合(7月30、31日)で決定された金融市場調節方針(注)に従って運営し、無担保コールレート(オーバーナイト物)は、0.476から0.481%のレンジで推移した。
この間、長期国債の買入れについては、2025年6月の会合で決定された減額計画に沿って、月間3.7兆円程度の買入れを行った。
2.金融・為替市場動向
短期金融市場では、翌日物金利のうち、無担保コールレートは0.5%程度で推移した。GCレポレートは、無担保コールレート並みの水準で推移した。ターム物金利をみると、短国レート(3か月物)は、概ね横ばいとなった。
わが国の株価(TOPIX)は、自動車等に関する関税率の決定等により市場センチメントが改善するもと、堅調な企業決算もあって、大幅に上昇した。長期金利(10年物国債金利)は、概ね横ばいで推移した。国債市場の流動性指標をみると、総じて改善方向の動きが継続している。為替相場をみると、円の対ドル相場は、米国の軟調な雇用関連指標等を受けて幾分円高となったあとは、概ね横ばいで推移した。円の対ユーロ相場は、ECBの利下げ観測が後退するもとで円安方向の動きとなった。
3.海外金融経済情勢
海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。米国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに成長している。欧州経済は、駆け込み輸出の反動もみられる中、総じてみれば弱めの動きが続いている。中国経済は、政策面の下支えはあるものの、関税引き上げや不動産市場の調整などによる下押しがみられるもとで、改善ペースは鈍化傾向にある。中国以外の新興国・資源国経済は、総じてみれば緩やかに改善している。
先行きの海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて減速するものの、その後は徐々に成長率を高め、緩やかに成長していくと考えられる。先行きの見通しを巡っては、各国の政策運営の帰趨のほか、中国経済の動向や地政学的緊張の展開などについて、不確実性が高い。
海外の金融市場をみると、世界経済の不確実性が引き続き意識されているものの、通商政策の交渉の進展などから、市場センチメントは改善している。米国の長期金利は、FRBの利下げ織り込みが進展するもとで低下した。欧州の長期金利は、米国の長期金利低下の影響を受けつつも、財政拡張的な動きのもとで国債需給の緩和が意識されたことから、概ね横ばいとなった。米国の株価は、堅調な企業決算や利下げ期待の進展などから上昇した。欧州の株価は、米国の株価に連れて上昇したあと、フランスの政情不安が意識されて下落し、期間を通じてみると、概ね横ばいとなった。この間、新興国通貨は、横ばい圏内で推移した。原油価格は、OPECプラスによる増産決定などを背景に、下落した。
4.国内金融経済情勢
(1)実体経済
わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。先行きについては、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。
輸出や鉱工業生産は、一部に米国の関税引き上げに伴う駆け込みとその反動の動きがみられるが、基調としては横ばい圏内の動きを続けている。先行きは、米国の関税引き上げに伴う駆け込みの反動減がマイナスに作用するほか、海外経済減速による下押し圧力も徐々に強まっていくと見込まれる。
企業収益は、製造業において関税による下押しの影響がみられるが、全体としては高水準を維持している。設備投資は、緩やかな増加傾向にある。先行きの設備投資は、受注残高解消の動きや人手不足対応の省力化投資が一定の下支えとなるものの、収益環境の悪化や不確実性の高まりが下押し要因となり、増勢が鈍化していく可能性が高い。
個人消費は、物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に底堅く推移している。消費活動指数(実質・旅行収支調整済)をみると、4から6月に前期比で幾分増加したあと、7月の4から6月対比は幾分減少しており、このところ横ばい圏内の動きとなっている。企業からの聞き取り調査や業界統計、高頻度データに基づくと、8月以降の個人消費は、米などの食料品価格の上昇もあって消費者の節約志向の強さを指摘する声は引き続き多いものの、前月から横ばい圏内の動きを続けているとみられる。消費者マインドは、足もとでは夏季賞与の増加や株価の上昇を背景にやや持ち直しているが、依然として低めの水準となっている。先行きの個人消費は、春季労使交渉や最低賃金の上昇を反映した所定内給与の上昇が一定の下支えとなるものの、食料品価格上昇に加え、企業収益の減少に伴う冬季賞与の伸び鈍化も下押し要因となるため、横ばい圏内で推移すると予想される。
雇用・所得環境は、緩やかに改善している。就業者数は、正規雇用を中心に着実な増加を続けている。一人当たり名目賃金は、着実な上昇を続けている。先行きの雇用者所得は、本年の春季労使交渉を反映した名目賃金の上昇に支えられて、当面、着実な増加を続けると考えられる。その後は、企業収益の悪化による冬季賞与への下押し圧力が強まるのに伴い、雇用者所得の増加ペースは鈍化していくと見込まれる。
物価面について、商品市況をみると、原油価格や銅価格は期間を通じてみると横ばい圏内の動きとなっている。国内企業物価の前年比は、既往の原油価格下落や円高等の影響から上昇率が低下しており、足もとでは2%台後半となっている。企業向けサービス価格(除く国際運輸)の前年比は、人件費上昇等を背景に高めの伸びを続けているが、前年にみられた値上げの一巡などから上昇率が低下しており、足もとでは3%程度となっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、米などの食料品価格上昇の影響等から、足もとでは2%台後半となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。先行きの消費者物価についてみると、米などの食料品価格の上昇が一巡するもとで、既往の円高の影響も耐久消費財等を中心に下押しに作用することから、本年度末にかけてプラス幅を縮小していくと予想される。
(2)金融環境
わが国の金融環境は、緩和した状態にある。
実質金利は、マイナスで推移している。企業の資金調達コストは、上昇している。資金需要面をみると、経済活動の回復や企業買収の動きなどを背景に、緩やかに増加している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、緩和した状態にある。CP・社債市場では、良好な発行環境となっている。こうした中、銀行貸出残高の前年比は、4%程度となっている。CP・社債計の発行残高の前年比は、7%台前半となっている。企業の資金繰りは、良好である。企業倒産は、横ばい圏内で推移している。
この間、マネーストックの前年比は、1%台前半となっている。
2.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要
1.経済・物価情勢
国際金融資本市場について、委員は、世界経済の不確実性が引き続き意識されているものの、通商政策の交渉の進展などから、市場センチメントは改善しているとの見方を共有した。何人かの委員は、米国の株価が最高値を更新し続けていることを指摘したうえで、そうした動きの背景には、AI関連需要の高まりを受けたハイテク企業の業績に対する期待や、FRBの利下げが米国経済を下支えするとの見方があるとの認識を示した。このうちの一人の委員は、株式市場は先行きの米国経済を楽観しているようにみえるが、今後、関税による下押し圧力が予想以上に大きいと認識されれば、市場が悲観論に傾く可能性にも留意する必要があると指摘した。
海外経済について、委員は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長しているとの認識を共有した。先行きについて、委員は、各国の通商政策等の影響を受けて減速するものの、その後は徐々に成長率を高め、緩やかに成長していくとの見方で一致した。何人かの委員は、海外経済は足もと一部に弱めの動きもみられるものの、多くの国・地域で米国との通商交渉が比較的穏当なかたちで決着したことなどを踏まえると、大幅な減速リスクは引き続き高くないと指摘した。ある委員は、米国における関税コストの消費者への転嫁が緩やかであることなどを踏まえると、関税政策が米国経済や世界経済に与える影響は、インフレや雇用の急激な悪化というかたちではなく、じわじわと時間をかけて出てくる見通しになってきているとの認識を示した。
米国経済について、委員は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに成長しているとの認識で一致した。何人かの委員は、企業収益がハイテク企業を中心に堅調に推移するもとで、設備投資はAI関連を中心に増加しているほか、個人消費も底堅く推移していると述べた。このうちの一人の委員は、米国の家計・企業・金融機関のバランスシートは総じて健全であり、金融環境も安定していることから、信用収縮に伴う景気後退は考えにくいと付け加えた。一方、何人かの委員は、関税政策によるマイナスの影響が米国経済に本格的に表れるのはこれからであり、その時期や影響の大きさには不確実性があるとの見方を示した。複数の委員は、これまでのところ、関税コストの多くは米国企業や米国向け輸出企業が負担しているが、今後は、米国の消費者に転嫁される度合いが次第に高まっていくとの認識を示した。この点に関連し、ある委員は、米国企業が関税コストを吸収していることで、消費者物価への大きな影響は避けられているが、その分、雇用に悪影響が出ている可能性があると述べた。そのうえで、この委員を含む多くの委員は、7月と8月の雇用者数の増加ペースが鈍化しているのは、関税政策が、米国の労働市場に影響を与え始めていることを示している可能性があると指摘した。別の一人の委員は、移民政策の影響で労働供給が減少していることを踏まえると、雇用者数や失業率のデータの解釈は難しくなっているため、当面は賃金の動きに注目していくのがよいとの認識を示した。このほか、何人かの委員は、FRBが雇用の下振れリスクを重視するかたちで利下げを決定したことは、米国経済を下支えする方向に作用するとの認識を示した。
欧州経済について、委員は、駆け込み輸出の反動もみられる中、総じてみれば弱めの動きが続いているとの認識を共有した。
中国経済について、委員は、政策面の下支えはあるものの、関税引き上げや不動産市場の調整などによる下押しがみられるもとで、改善ペースは鈍化傾向にあるとの見方を共有した。
中国以外の新興国・資源国経済について、委員は、総じてみれば緩やかに改善しているとの認識を共有した。
以上のような海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。
わが国の景気について、委員は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復しているとの見方を共有した。多くの委員は、前回会合以降の経済動向は、7月の「展望レポート」の見通しに概ね沿ったものであるとの認識を示した。何人かの委員は、わが国の景気が緩やかに回復していることを示すものとして、4から6月期の実質GDPが前期比+0.5%(年率+2.2%)と5四半期連続のプラス成長となったことなどを挙げた。多くの委員は、米国の関税政策はわが国企業の収益面にマイナスの影響を及ぼしているが、これまでのところ、設備投資や雇用・賃金動向を含め、経済全体に波及している様子は窺われないとの認識を示した。
景気の先行きについて、委員は、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化するとみられるが、その後は海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくとみられるとの認識を共有した。何人かの委員は、関税政策の影響で輸出関連企業の収益が相応に下押しされることは避けられないが、ここ数年の為替円安等によって蓄積された高水準の収益がある程度のバッファーになるとの認識を示した。このうちの一人の委員は、関税政策は、すべての業種に等しく影響を及ぼすものではないことに留意する必要があるとしつつ、米国経済の減速が見込まれる中、企業の景況感がこのまま良好な水準で推移するのか、それとも悪化方向に向かうのかを確認する必要があると述べた。別の一人の委員は、わが国経済は、しばらくは駆け込みとその反動で振れやすい展開となるものの、米国の関税が想定よりも穏当な結果となる中、それがわが国景気の腰を折り、物価に大きな下押し圧力をかけるほどには至らないとの見方を示した。
輸出・鉱工業生産について、委員は、一部に米国の関税引き上げに伴う駆け込みとその反動の動きがみられるが、基調としては横ばい圏内の動きを続けているとの認識を共有した。ある委員は、実質輸出は、自動車関連などで駆け込みの反動の影響が出ているものの、全体としては、トレンドから乖離するような落ち込みはみられていないと述べた。
設備投資について、委員は、企業収益が関税政策の影響を受けつつも全体として高水準を維持しているもとで、緩やかな増加傾向にあるとの認識で一致した。複数の委員は、設備投資は全体として堅調さを維持しており、前回会合以降の各種調査や直近のヒアリング情報でも、下方修正の動きは確認されていないと指摘した。これに関連して、一人の委員は、企業では、省力化投資、DX投資、研究開発投資などは引き続きしっかりと行っていくとの声が多いと指摘したうえで、こうした企業の積極的な経営姿勢が維持されていることを、次回の短観等で確認したいと述べた。この間、ある委員は、設備投資を材料に経済情勢を判断する際には、投資規模が大きい案件ほど、企業内での計画策定と実行のタイミングに大きなズレが生じ、状況が変わり得ることに留意する必要があると指摘した。
個人消費について、委員は、物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に底堅く推移しているとの認識で一致した。何人かの委員は、食料品価格上昇の影響で非耐久財は弱めの動きが続いているが、タイトな雇用環境や株価上昇による資産効果などもあって、消費全体としては底堅い動きが続いているとの認識を示した。ある委員は、このところの物価高が消費者マインドに影響し、これまで好調であったサービス消費は若干伸び悩み気味であると指摘した。これに対して、一人の委員は、米を含む食料品の価格上昇の加速が天井を打ったことで、これまで回復軌道に乗らなかった個人消費が漸く上向きつつあるとの見方を示した。
雇用・所得環境について、委員は、緩やかに改善しているとの見方を共有した。複数の委員は、所定内給与の着実な増加に加えて、昨年度後半の好調な企業収益等を反映して、夏場の特別給与もしっかりと増加していると指摘した。このうちの一人の委員は、こうした名目賃金の増加と、食料品を含む消費者物価の上昇率の低下トレンドが続けば、来年にかけて、実質賃金の前年比プラス化の定着が展望できるとの見解を示した。別の一人の委員は、今年度の最低賃金の引き上げ幅が過去最大となったことは、物価のノルム転換の象徴的な事例であり、来年の春季労使交渉の目線にも影響を与えるとの見方を示した。これに対して、ある委員は、今年度の収益予想などをみると、引き続き、規模・業種間でばらつきは相応に大きいことから、最低賃金の引き上げが中小企業や小規模事業者の経営に与える影響についても、丁寧にみていく必要があるとの認識を示した。
物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、米などの食料品価格上昇の影響等から、足もとでは2%台後半となっているとの認識で一致した。また、予想物価上昇率について、委員は、緩やかに上昇しているとの評価で一致した。多くの委員は、前回会合以降の物価動向は、7月の「展望レポート」の見通しに概ね沿ったものであるとの認識を示した。このうちの一人の委員は、子細にみると、米価格は想定よりも強め、外食などは弱めの動きになっていると指摘した。ある委員は、食料品価格上昇の相当部分は米価を起点とするものであるが、米価以外の要因に基づく部分もかなりの比重を有するとの見方を示した。別のある委員は、食料品の値上げトレンドは依然として根強いものの、輸入食材の円建て価格が前年比マイナスになっている影響もあり、食料品価格の上昇は漸くピークアウトしつつあるとの認識を示した。この間、サービス価格の動向について、複数の委員は、賃金と物価が相互に参照するメカニズムが作用しており、緩やかな上昇が続いているとの認識を示した。このうちの一人の委員は、家賃や公共サービスについても、このところ徐々に伸び率を高めていると付け加えた。このほか、複数の委員は、消費者物価の品目別上昇率の分布や上昇・下落品目比率の動きなどをみると、価格上昇の裾野の広がりが確認できると指摘した。
物価の先行きについて、委員は、このところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられるとの認識を共有した。ある委員は、米価の先行きはなお不透明であるが、輸入食材を含む食料品の価格が落ち着いてくることに伴い、消費者物価の上昇率は徐々に低下するとの見方を示した。また、別のある委員は、最近の加工食品の値上がりに関し、一部の企業は、輸入物価の上昇が落ち着いている中でも積極的な値上げに踏み切っている印象があるとしたうえで、多くの先が価格転嫁が不可欠であるほど収益が悪化しているわけではないことを踏まえると、今後の消費者の購買状況次第では、値上げの流れに変化が生じることもあり得ると述べた。これに対して、一人の委員は、輸入物価や米などの原材料価格のトレンド、食料品価格への価格転嫁の継続度合い、食料品以外への価格転嫁の広がりの3点に注目していると述べたうえで、銘柄米の価格水準は見通し対比でやや強めに持続する可能性があるとみているほか、データやヒアリング情報を踏まえると、食料品価格への価格転嫁の継続性が高まっているのではないか、との認識を示した。そのうえで、この委員を含む何人かの委員は、最近の食料品価格上昇には、人件費や物流費を販売価格に転嫁する動きも相応に影響していることを踏まえると、価格上昇が想定以上に長引く可能性があることにも留意する必要があると指摘した。
また、消費者物価の基調的な上昇率について、委員は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するとの見方を共有した。何人かの委員は、足もとまでの各種指標の動きを踏まえると、基調的な物価上昇率は2%に向けて緩やかに上昇しているものの、なお2%に至っていないとの認識を示した。ある委員は、実際の消費者物価が徐々に低下していく中でも、基調的な物価上昇率は2%に向けて着実に高まりつつあり、インフレ期待の各指標も、足もとでは1%台後半に入りつつあると指摘した。一人の委員は、基調的な物価上昇率には推計の幅や計測誤差もあるため、2%に達したか、伸び悩んでいるかの識別は容易ではないが、2%近傍で定着したかを丁寧に確認する必要はあり、モデルからの示唆も含めてみていきたいと述べた。この間、別のある委員は、基調的な物価上昇率を計測する指標には様々なものがあるが、それぞれの特性や有用性について整理・検討を深めることが必要であると指摘した。別の一人の委員は、基調的な物価上昇率を捉えるとされる全ての指標を詳しく説明することは必ずしも適切でないものの、月次で公表されている特定の指標の動向だけに注目が集まることも望ましくないと述べたうえで、引き続き、適切な情報発信の方法を工夫していく必要があるとの見解を示した。複数の委員は、基調的な物価上昇率は、金融政策を運営するうえで非常に重要な概念であると指摘しつつも、その正確な計測が難しいことなどを踏まえると、具体的な水準の特定に議論の焦点が当たり過ぎれば、経済・物価見通しとの関係で適切に政策を判断していくという金融政策の基本的な考え方をうまく伝えられなくなる可能性があるとの認識を示した。このうちの一人の委員は、基調的な物価上昇率が2%にかなり近接した状況の中、実際の物価上昇率を重視したコミュニケーションも必要であると指摘した。また、別の一人の委員は、「展望レポート」における物価見通しが、来年度、コストプッシュ要因の減衰に伴いいったん2%を下回り、その後、再び2%に向かっていくかたちになっている背後には、基調的な物価上昇率が、緩やかに上昇しつつも、なお2%に至っていないという判断があるとの認識を示した。このことを前提に、この委員は、基調的な物価上昇率の説明に偏り過ぎず、長年そうであったように、「展望レポート」における経済・物価見通しを政策運営上のコミュニケーションの中心に据えることが適当ではないか、との見解を述べた。
経済・物価の見通しのリスク要因として、委員は、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性は高い状況が続いており、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要があるとの認識で一致した。何人かの委員は、米国との交渉の結果、自動車等の関税率が決まったことは、わが国経済を巡る不確実性の低下に繋がる前向きな動きであるが、通商政策等が内外経済に及ぼす影響に関する不確実性は、なお高い状況が続いているとの見方を示した。このうちのある委員は、最大のリスク要因は米国経済の先行きであると指摘したうえで、米国の関税政策それ自体による不確実性は低下していくとみられるが、仮に今後、関税によるインフレが米国経済を大きく下押しするようであれば、わが国経済も影響を免れないとの認識を示した。これに関連して、一人の委員は、米国の金融政策は、中立的な金利水準に向けてゆっくりと利下げをしていくというのがメインシナリオではあるが、今後の雇用動向次第では、中立金利以下まで大きく利下げする可能性も念頭に置く必要があると指摘した。これに対して、別のある委員は、関税の影響による景気減速懸念がグローバルに共有されるもとで、感染症拡大期と同様、欧米や中国、新興国が揃って財政・金融両面で緩和策に傾く中、世界経済が予想以上に上振れる可能性もあると指摘した。物価面のリスクに関して、複数の委員は、企業の価格設定行動次第では、食料品価格の上昇が想定以上に長期化する可能性がある一方、家計のコンフィデンスの悪化が個人消費に影響すれば、物価上昇率を押し下げる方向に作用する可能性もあると指摘した。ある委員は、賃上げ定着を受けた国内要因によるインフレ圧力に加え、予想物価上昇率も高まるなど、「物価安定の目標」が概ね実現したとの認識を示したうえで、既に物価が上がらないノルムが転換し、インフレ期待も引き上がる中、物価上昇の二次的影響が生じやすく、物価の上振れリスクが存在するとの見方を示した。また、一人の委員は、物価の基調は2%定着に向けて、着実に歩みを続ける公算が大きく、今後の財政政策の影響を含め、物価の上振れリスクも大きいとの見方を示した。これらに対し、別のある委員は、物価高が消費者マインドに影響し、サービス消費が若干伸び悩んでいる足もとの状況を踏まえると、これまでのところ、食料品価格のコストプッシュ的な上昇が、より一般的な基調物価の上昇に広がっていく兆候は感じられないと述べた。そのうえで、この委員は、今後の価格改定の動きや可処分所得に関する政府の対策の影響などを丁寧に確認していきたいと付け加えた。この間、何人かの委員は、米国経済が想定以上に減速した場合には、わが国の実体経済のみならず物価の下振れ要因にもなるとの認識を示した。
2.金融面の動向
わが国の金融環境について、委員は、緩和した状態にあるとの認識で一致した。ある委員は、金融システムは引き続き安定性を維持しており、資金調達環境も緩和的であると指摘した。また、この委員は、最近の国債市場の動向に関連して、超長期金利の上昇が他の年限の金利に与える影響は限定的と考えているが、その波及度合いについては、丁寧にみていきたいと述べた。
3.金融政策運営に関する委員会の検討の概要
以上のような金融経済情勢に関する認識を踏まえ、委員は、金融政策運営に関する議論を行った。
まず、当面の金融政策運営の考え方について、委員は、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくということが基本となるとの認識で一致した。そのうえで、こうした見通しが実現していくかについては、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を巡る不確実性が高い状況が続いていることを踏まえ、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要であるとの認識で一致した。
こうした考え方のもとで、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、大方の委員は、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す」という方針を維持することが適当であるとの見解を共有した。
何人かの委員は、日米間の交渉の進展はわが国経済を巡る不確実性の低下に繋がると考えられるが、当面は、通商政策等が内外の経済・物価に及ぼす影響を見極める必要があるため、現在の金融政策運営を維持することが適当であるとの見方を示した。このうちのある委員は、米国の関税率が15%になっても日本経済に影響はあり、成長率がいったんは鈍化するという見通しは不変であるほか、物価面では、食料品のコストプッシュが収まることで、来年度に2%を下回ると予想されることを踏まえると、今は、現在の金利水準で緩和的な金融環境を維持し、経済をしっかりと支えるべきであるとの認識を示した。一人の委員は、わが国経済の特徴として、内需が外的な負のショックに対して脆弱な傾向があると指摘し、金利の正常化を進めるうえでは、ハードデータをもう少し確認してから判断しても遅くないとの見解を示した。別のある委員は、利上げに向けた条件は次第に揃いつつあるものの、米国経済が減速局面に入る可能性もあることを踏まえると、市場にサプライズとなる現時点での利上げは避けるべきであるとの意見を述べた。別の一人の委員は、わが国の経済状況という観点だけから判断すれば、前回の利上げから半年以上が経過していることもあり、そろそろ再度の利上げを考えてもいい時期かもしれないとしつつも、米国経済の落ち込みの程度の目途がついていないため、当面の金融政策運営は、現状維持が適当との認識を示した。
一方、複数の委員は、今回の決定会合で、政策金利を0.75%程度に引き上げることが望ましいとの見解を示した。このうちの一人の委員は、米国の相互関税賦課以来の不安が後退する中、国内では既に物価が上がらないノルムが転換し、「物価安定の目標」の実現が概ね達成されたと考えられることを踏まえると、再び利上げスタンスに回帰し、海外対比で低水準の実質金利の調整を行い得る状況であるとの認識を示した。別の一人の委員は、0.5%までの利上げの経済全体への波及はきわめて限定的であるとの見方を示したうえで、上下双方向のリスクがある現時点で、政策金利を一気に引き締める領域まで引き上げるべきではないが、物価の上振れリスクがある中、将来の急激な利上げによるショックを避けるため、中立金利にもう少し近づけておくべきであるとの見解を示した。
先行きの金融政策運営に関連して、多くの委員は、(1)米国をはじめとする世界経済の動向、(2)関税政策がわが国企業の収益や賃金・価格設定行動に与える影響、(3)食料品価格を含めた物価動向などを点検し、経済・物価の中心的な見通しが実現する確度や、上振れ・下振れ双方向のリスクを丹念に点検し、予断を持たずに判断していくことが重要であるとの認識を示した。ある委員は、企業収益や春季労使交渉の事前情報などから、ここ数年の賃上げの流れが途切れないことがある程度の確度をもって予想できるかどうかが重要であるとの見方を示した。一人の委員は、経済・物価が日本銀行の見通しに対してオントラックであり、大きく軌道を外れなければ、ある程度定期的な間隔で政策金利の水準を調整していくべきであると述べたうえで、この先、米国の関税の影響を含め、企業の上期決算と通期見通しや短観など、幅広い情報が揃うとの認識を示した。別のある委員は、米国経済の帰趨が見えることを待つことで得られる知見もあるが、国内の物価との関係では待つことのコストも徐々に大きくなっていくので、待つことのコスト・ベネフィットやそれに伴うリスクの比較考量が必要になっていくと指摘した。これに関連して、複数の委員は、待つことのコスト・ベネフィットを考える際には、わが国の場合、長年にわたるデフレを経験していることも考慮する必要があるとの認識を示した。このうちの一人の委員は、マクロ的な需給ギャップがほぼゼロに達している状況では、物価の上振れリスクにも留意が必要としつつも、わが国の金融政策には、インフレ期待を2%にアンカーさせるという他の中央銀行にはない特別な配慮が必要であり、アンカリングが不十分と考えられるうちは、緩和的な金融環境をできるだけ維持し続けることが適当であると指摘した。
このほか、委員は、日本銀行が保有するETFおよびJ-REITの処分についても議論した。
何人かの委員は、本年7月に、金融システムの安定確保のために金融機関から買入れた株式の処分が完了したことを指摘したうえで、このタイミングで、昨年3月に買入れを終了したETFおよびJ-REITの処分の是非や方法について検討することが適当ではないかと述べた。このうちの一人の委員は、「金融機関から買入れた株式」の処分を無事終了できたことを踏まえ、これと同様の方法で、あまり間を置かずにETF等の売却を開始することが望ましいとの見解を示した。別の一人の委員は、金融政策の正常化を量と金利の両面からバランス良く進めるため、今回はバランスシート正常化を優先してもよいとの認識を示したうえで、マイナス金利政策の終了や、国債買入れの減額開始から時間が経ち、ETF等の処分にも踏み出すタイミングが来ているように思われると述べた。ある委員は、少なからぬ規模の株式がマーケットに放出され得る状態で存在し続けることは、望ましい状況とはいえず、株式市場に大きな影響を与えない規模での処分を開始することが適当であるとの見方を示した。この間、一人の委員は、株式市場のリスク・プレミアムは正常化している一方、J-REIT市場はリスク・プレミアムが依然として大きいことを踏まえると、売却ペースは相当緩やかにすることが望ましいと述べた。
以上のような委員の意見を受けて、議長は、執行部に対し、ETFおよびJ-REITの処分について考えられる対応案を説明するよう指示した。
執行部は、まず、ETF等の処分に関する基本方針等について、以下のとおり説明した。
- ETF等の買入れについて規定した「指数連動型上場投資信託受益権等買入等基本要領」は、その処分を行う場合の基本方針として、(1)ETF等の市場等の情勢を勘案し、適正な対価によること、(2)日本銀行の損失発生を極力回避すること、(3)ETF等の市場等に攪乱的な影響を与えることを極力回避することを定めている。
- この間、日本銀行は、金融システムの安定確保のために金融機関から買入れた株式の売却を少しずつ進めてきたが、株式市場に大きな影響を与えることなく、本年7月にすべての株式の処分を完了した。
そのうえで、執行部は、ETF等の処分を行う場合には、以下のとおりとすることが考えられるとの説明を行った。
- ETF等の処分に関する基本方針に基づき、また、「金融機関から買入れた株式」の処分の経験から得られた知見や、それを踏まえた実務的な検討などを踏まえ、当分の間、以下のとおり、保有するETF等の売却を行う。
- ETFについては、年間3,300億円程度(簿価)のペースで、取引所市場で形成される価格に基づき、市場への売却を行う。
- J-REITについては、年間50億円程度(簿価)のペースで、取引所市場で形成される価格に基づき、市場への売却を行う。
- これらの売却ペースについては、まず、市場等に攪乱的な影響を与えることを極力回避する観点から、ETF、J-REITともに、時価ベースで、市場全体の売買代金に占める売却額の割合が、「金融機関から買入れた株式」の売却と同程度(0.05%程度)になるように設定した。そのうえで、本年3月末時点の時価・簿価比率を用いて、簿価ベースの売却額を算出している。
- 「金融機関から買入れた株式」の売却スキームと同様、市場の状況に応じ、あらかじめ定めた一定の範囲内で、売却額の一時的な調整を行うことができるとするなど、市場の安定に配慮した仕組みを取り入れる。
- ETF等の処分開始後、ETF等の処分に関する基本方針や今後の売却の経験を踏まえ、金融政策決定会合において、売却ペースを見直すこともあり得る。
- 2019年12月に導入されたETF貸付制度を、その利用状況等に鑑み、停止する。
- 本件について決定された場合には、ETF等の処分にかかる受託者(信託銀行)を選定し、そのうえで、所要の準備が整い次第、処分を開始する。
執行部の説明に対し、委員は、執行部の示したETF等の処分の案は適当であるとの認識を共有した。
まず、委員は、「金融機関から買入れた株式」の処分が完了し、そこでの経験を踏まえた実務的な検討にも目途がついたこのタイミングで、ETF等の売却の開始を決定することが適当であるとの認識で一致した。具体的なETF等の売却ペースについて、委員は、市場等に攪乱的な影響を与えることを極力回避する観点から、本年7月に完了した「金融機関から買入れた株式」の売却と同程度の規模とし、ETFは簿価で年間3,300億円程度、J-REITは簿価で年間50億円程度のペースで、取引所市場で形成される価格に基づき売却することが適当であるとの認識で一致した。この前提として、何人かの委員は、市場への影響に配慮する観点からは、執行部の説明のとおり、時価ベースで、「金融機関から買入れた株式」の売却と同程度となるよう、売却額を定めることが適当であると指摘した。そのうえで、このうちの一人の委員は、市場全体の売買代金と時価ベースの売却額の間に概ね比例的な関係があることを踏まえると、今回の売却スキームは、将来にわたり、市場の状況に応じて売却の影響をある程度平準化する仕組みを備えているとの認識を示した。この間、何人かの委員は、市場のリスク・プレミアムに影響を与えるために相応の規模で購入したETF等を、市場に影響を与えないように十分緩やかなペースで処分していく以上、処分完了まで長期間かかるのはやむを得ないとの認識を示した。この点に関し、ある委員は、今回の売却ペースについては、単純計算で処分に100年以上かかると指摘されるであろうが、それが却って安心材料となり、市場への影響を軽減することに繋がるとの見方を示した。そのうえで、ETF等の保有が長期間に及ぶことについて、複数の委員は、コーポレート・ガバナンスへの影響には留意が必要であるが、この点については、スチュワードシップ・コードの受け入れを表明した投資信託委託会社を通じた議決権行使といった措置を講じており、今後とも、こうした取り扱いを通じて適切に対応していくことが重要であるとの認識を示した。
続いて、委員は、ETF等の処分に際しては、「金融機関から買入れた株式」の売却スキームと同様、市場の状況に応じ、売却額の一時的な調整や停止を行うことができるとするなど、市場の安定に配慮した柔軟な仕組みを取り入れることが適当であるとの認識で一致した。
このほか、委員は、ETF等の処分を開始したあと、処分に関する基本方針や今後の売却の経験を踏まえ、金融政策決定会合において、年間の売却ペースを見直すこともあり得る点について認識を共有した。これに関連して、ある委員は、予見可能性の観点からは、売却ペースの見直しは大きな状況変化があったときに限定することが望ましく、基本的には、今回決定した方法により淡々と処分していくことが適当であるとの見解を示した。
4.政府からの出席者の発言
以上の議論を踏まえ、政府からの出席者から、会議の一時中断の申し出があった。議長はこれを承諾した(11時44分中断、11時59分再開)。
内閣府の出席者から、以下の趣旨の発言があった。
- 日本経済は、米国の通商政策等による影響が一部にみられるものの、緩やかに回復している。ただし、物価上昇の継続等を通じたリスクには十分注意が必要である。
- 政府は、日米間の関税協議の合意の実施を進める一方、残る関税措置に対し必要な対応を行いつつ、経済財政運営に万全を期す。また、実質賃金上昇と最低賃金の引上げの実現に向けた取組を進める。
- ETF及びJ-REITの売却は、市場との適切なコミュニケーションの下、状況に応じて、必要があれば柔軟な対応をお願いする。日本銀行には、政府と緊密に連携し、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて、適切な金融政策運営を期待する。
また、財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。
- 予算編成では、「骨太方針2025」に沿って、経済再生と財政健全化の両立に取り組む。
- ETF・J-REITの処分指針については、適切にご判断いただきたいが、市場の状況を注視し、必要があれば柔軟な対応を期待する。
- 日本銀行には、政府との緊密な連携のもと、内外の経済情勢等を十分に注視し、市場とのコミュニケーションを図りつつ、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。
5.採決
1.金融市場調節方針
以上の議論を踏まえ、議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、金融市場調節方針について、以下の議案が提出された。
金融市場調節方針に関する議案(議長案)
次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。
記
無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す。
これに対して、高田委員からは、物価が上がらないノルムが転換し、「物価安定の目標」の実現が概ね達成されたとして、田村委員からは、物価上振れリスクが膨らんでいる中、中立金利にもう少し近づけるためとして、それぞれ、以下の議案が提出された。
金融市場調節方針に関する議案(高田委員・田村委員案)
次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。
記
無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.75%程度で推移するよう促す。
金融市場調節方針に関する議案(高田委員・田村委員案)は、採決の結果、反対多数で否決された。
採決の結果
- 賛成:高田委員、田村委員
- 反対:植田委員、氷見野委員、内田委員、野口委員、中川委員、小枝委員、増委員
金融市場調節方針に関する議案(議長案)は、採決の結果、賛成多数で決定された。
採決の結果
- 賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、野口委員、中川委員、小枝委員、増委員
- 反対:高田委員、田村委員
2.指数連動型上場投資信託受益権等の処分の指針の制定
議長から、委員の意見を取りまとめるかたちで、指数連動型上場投資信託受益権等の処分の指針を別紙のうち、(別紙)の(別添)のとおり制定することを内容とする旨の議案が提出され、採決に付された。
採決の結果、全員一致で決定された。
採決の結果
- 賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、野口委員、中川委員、高田委員、田村委員、小枝委員、増委員
- 反対:なし
3.「指数連動型上場投資信託受益権の貸付けに関する特則」の一部改正
議長から、委員の意見を取りまとめるかたちで、「指数連動型上場投資信託受益権の貸付けに関する特則」の一部改正に関する議案が提出され、採決に付された。
採決の結果、全員一致で決定された。
採決の結果
- 賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、野口委員、中川委員、高田委員、田村委員、小枝委員、増委員
- 反対:なし
4.対外公表文(「当面の金融政策運営について」)
以上の議論を踏まえ、対外公表文が検討された。議長から、対外公表文(「当面の金融政策運営について」<別紙>)が提案され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。
6.議事要旨の承認
議事要旨(2025年7月30日、31日開催分)が全員一致で承認され、9月25日に公表することとされた。
以上
- (注)「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す。」本文に戻る
別紙
2025年9月19日
日本銀行
当面の金融政策運営について
- 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(賛成7反対2)(注)。
無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す。
- 日本銀行が保有するETFおよびJ-REITについて、市場に攪乱的な影響を与えることを回避する等の基本方針を踏まえ、「金融機関から買入れた株式」の売却1と同程度の規模で、市場への売却を行うことを決定した2(全員一致)(別紙参照)。
- わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は、一部に米国の関税引き上げに伴う駆け込みとその反動の動きがみられるが、基調としては横ばい圏内の動きを続けている。企業収益は、製造業において関税による下押しの影響がみられるが、全体としては高水準を維持している。設備投資は緩やかな増加傾向にある。個人消費は、物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に底堅く推移している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、米などの食料品価格上昇の影響等から、足もとでは2%台後半となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。
先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。消費者物価(除く生鮮食品)については、このところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。
リスク要因としては様々なものがあるが、とくに、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性は高い状況が続いており、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある。
以上
- (注)賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、野口委員、中川委員、小枝委員、増委員。反対:高田委員、田村委員。高田委員は、物価が上がらないノルムが転換し、「物価安定の目標」の実現が概ね達成されたとして、田村委員は、物価上振れリスクが膨らんでいる中、中立金利にもう少し近づけるためとして、無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.75%程度で推移するよう促すとする議案を提出し、反対多数で否決された。本文に戻る
- 日本銀行は、2002年から2004年および2009年から2010年にかけて、金融システム全体の安定性を確保するため、金融機関からの株式買入れを実施した。その後、一定のペースで当該株式の売却を進め、本年7月にその処分を完了した。本文に戻る
- このほか、2019年12月に導入されたETF貸付制度を、その利用状況等に鑑み、停止することとした。本文に戻る
(別紙)
ETFおよびJ-REITの処分について
日本銀行は、2024年3月の政策委員会・金融政策決定会合において、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断し、金融政策の枠組みの見直しを行った。その際、ETFおよびJ-REIT(以下、「ETF等」)については、新規の買入れを終了することを決定し、その後、保有するETF等の処分のあり方について検討してきた。
ETF等の買入れについて規定した「指数連動型上場投資信託受益権等買入等基本要領」は、その処分を行う場合の基本方針として、(1)ETF等の市場等の情勢を勘案し、適正な対価によること、(2)日本銀行の損失発生を極力回避すること、(3)ETF等の市場等に攪乱的な影響を与えることを極力回避することを定めている。
日本銀行は、こうした基本方針にもとづき、また、これまで「金融機関から買入れた株式」の売却を円滑に進めてきた経験を踏まえて、当分の間、以下のとおり、当該売却と同程度の規模(市場全体の売買代金に占める売却割合は0.05%程度)で、保有するETF等の売却を行うこととした。
- ETFについては、年間3,300億円程度3のペースで、取引所市場で形成される価格にもとづき、市場への売却を行う。
- J-REITについては、年間50億円程度4のペースで、取引所市場で形成される価格にもとづき、市場への売却を行う。
- ETF、J-REITともに、上記の売却ペースのもとで、時期の分散に配慮しつつ、各銘柄の保有割合におおむね比例的なかたちで売却する。
日本銀行では、今後、ETF等の処分にかかる受託者を選定したうえで、所要の準備が整い次第、処分を開始する予定である(「処分の指針」は別添)。
なお、ETF等の処分を開始した後、上記の基本方針や今後の売却の経験を踏まえ、金融政策決定会合において、売却ペースを見直すこともありうる。
以上
- 3簿価ベース。2025年3月末時点の時価に換算すると6,200億円程度であり、金融機関から買入れた株式の処分ペースとおおむね同額となる(東証プライム市場全体の売買代金に占める売却額の割合は0.05%程度)。本文に戻る
- 4簿価ベース。2025年3月末時点の時価に換算すると55億円程度(東証REIT市場全体の売買代金に占める売却額の割合は0.05%程度)。本文に戻る
(別添)
指数連動型上場投資信託受益権等の処分の指針
「指数連動型上場投資信託受益権等買入等基本要領」(平成25年4月4日付政委第47号別紙3.)8.(3)に定める指数連動型上場投資信託受益権等の処分の指針については、以下のとおりとする。
- 処分の枠組み
指数連動型上場投資信託受益権および不動産投資法人投資口(以下「指数連動型上場投資信託受益権等」という。)の処分は、取引所市場で形成される価格にもとづき、市場への売却により行う。
- 売却方法
- (1)指数連動型上場投資信託受益権等の売却ペース等については、次のとおりとする。
- イ、指数連動型上場投資信託受益権については、売却時期の分散に配慮しつつ、年間3,300億円程度(簿価ベース)のペースで売却する。
- ロ、不動産投資法人投資口については、売却時期の分散に配慮しつつ、年間50億円程度(簿価ベース)のペースで売却する。
- ハ、イ、またはロ、の売却ペースのもとで、保有する指数連動型上場投資信託受益権等の各銘柄を、その保有割合に概ね比例的なかたちで売却する。ただし、不動産投資法人投資口の毎営業日における銘柄毎の売却口数については、各銘柄の市場流動性を考慮して上限を設定する。
- (2)受託者は、(1)に定める売却ペース等のもとで、指数連動型上場投資信託受益権等の市場等の状況に応じ、日本銀行との間であらかじめ定めた一定の範囲内で売却額の一時的な調整を行うことができる。特に、指数連動型上場投資信託受益権等にかかる価格指数が著しく下落した場合には、売却の一時停止を行うことができる。
- (1)指数連動型上場投資信託受益権等の売却ペース等については、次のとおりとする。
(附則)
この指針は、総裁が別に定める日から実施する。
