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政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨 (2025年10月29、30日開催分)

2025年12月24日
日本銀行

本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2025年12月18、19日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

開催要領

1.開催日時:
2025年10月29日(14:00から15:46)
10月30日(9:00から12:08)
2.場所:
日本銀行本店
3.出席委員:
議長 植田和男 (総裁)
  • 氷見野良三(副総裁)
  • 内田眞一 ( 副総裁 )
  • 野口 旭 (審議委員)
  • 中川順子 ( 審議委員 )
  • 高田 創 ( 審議委員 )
  • 田村直樹 ( 審議委員 )
  • 小枝淳子 ( 審議委員 )
  • 増 一行 ( 審議委員 )
4.政府からの出席者:
  • 財務省 前田 努 大臣官房総括審議官(29日)
  • 中谷真一 財務副大臣(30日)
  • 内閣府 林 幸宏 内閣府審議官(29日)
  • 城内 実 経済財政政策担当大臣(30日)
(執行部からの報告者)
  • 理事 清水誠一
  • 理事 諏訪園健司
  • 理事 中村康治(30日)
  • 企画局長 奥野聡雄
  • 企画局政策企画課長 井出穣治
  • 金融機構局長 鈴木公一郎
  • 金融市場局長 峯岸 誠
  • 調査統計局長 川本卓司
  • 調査統計局経済調査課長 須合智広
  • 国際局長 近田 健
(事務局)
  • 政策委員会室長 福田英司
  • 政策委員会室企画役 三浦幸大
  • 企画局企画役 八木智之
  • 企画局企画役 北原 潤
  • 企画局企画役 福島駿介

1.金融経済情勢に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

金融市場調節については、前回会合(9月18、19日)で決定された金融市場調節方針(注)に従って運営し、無担保コールレート(オーバーナイト物)は、0.476から0.478%のレンジで推移した。

この間、長期国債の買入れについては、2025年9月は月間3.7兆円程度の買入れを行った。2025年10月は、6月の会合で決定された減額計画に沿って、月間の買入れ額を4,000億円程度減額し、月間3.3兆円程度の買入れを行った。


2.金融・為替市場動向

短期金融市場では、翌日物金利のうち、無担保コールレートは0.5%程度で推移した。GCレポレートは、無担保コールレート並みの水準で推移した。ターム物金利をみると、短国レート(3か月物)は、概ね横ばいとなった。

わが国の株価(TOPIX)は、新政権に対する政策期待や米国の株価上昇の影響などから、上昇した。長期金利(10年物国債金利)は、概ね横ばいとなった。国債市場の流動性指標をみると、総じて改善方向の動きが継続している。為替相場をみると、円の対ドル相場、円の対ユーロ相場は、期間を通じてみれば円安方向の動きとなった。

3.海外金融経済情勢

海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。米国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば堅調な成長を維持している。欧州経済は、駆け込み輸出の反動もみられる中、総じてみれば弱めの動きが続いている。中国経済は、不動産市場などで調整圧力が続く中、関税引き上げの影響や政策効果の逓減などを受けて、減速している。中国以外の新興国・資源国経済は、総じてみれば緩やかに改善している。

先行きの海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて減速するものの、その後は徐々に成長率を高め、緩やかな成長経路に復していくと考えられる。先行きの見通しを巡っては、各国の通商政策の影響のほか、AI関連のグローバルな需要動向、中国経済の動向などについて、不確実性が高い。

海外の金融市場をみると、世界経済の不確実性が引き続き意識されているものの、市場センチメントは改善した状態が続いている。米国・欧州の長期金利は、米中貿易協議への懸念などから小幅に低下した。米国の株価は、米中貿易協議への懸念などを受けて下落する場面もみられたが、FRBの利下げやAI関連需要への期待が下支えとなる中、期間を通じてみれば小幅に上昇した。欧州の株価は、米国の株価上昇に連れて上昇した。この間、新興国通貨は、総じてみれば横ばい圏内で推移した。原油価格は、OPECプラスによる増産の動きや米中貿易協議を巡る不透明感などを背景に下落した後、米国による新たな対ロシア制裁の発表を受けて下落幅を縮小した。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。先行きについては、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは伸び悩むと考えられる。

輸出や鉱工業生産は、一部に米国の関税引き上げに伴う駆け込みとその反動の動きがみられるが、基調としては横ばい圏内の動きを続けている。先行きは、米国の関税引き上げに伴う駆け込みの反動が顕在化してくるもとで、関税の価格転嫁の進捗に伴う海外経済減速の影響も加わり、自動車や資本財を中心に弱めの動きになると見込まれる。

企業収益は、製造業において関税による下押しの影響がみられるが、全体としては高水準を維持しており、業況感も良好な水準を維持している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。先行きの設備投資は、積み上がった受注残高解消の動きや旺盛な省力化投資需要に支えられて、増加傾向を維持するものの、企業収益の減少や通商政策を巡る不確実性を背景に、増勢は徐々に鈍化する可能性が高い。

個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、雇用・所得環境の改善を背景に底堅く推移している。消費活動指数(実質・旅行収支調整済)をみると、4から6月に小幅に増加したあと、7から8月の4から6月対比は、非耐久財を中心に減少しており、全体としてはこのところ横ばい圏内の動きとなっている。企業からの聞き取り調査や業界統計、高頻度データに基づくと、9月以降の個人消費は、米などの食料品高による消費者の節約志向の根強さは引き続きみられるものの、8月からは増加しているとみられる。消費者マインドは、足もとでは夏季賞与の増加や株価の上昇等を背景に持ち直しているが、依然として水準は低めとなっている。先行きの個人消費は、ベースアップや最低賃金の引き上げを受けた賃金上昇が一定の下支えとなるものの、食料品価格の高止まりに加え、企業収益の減少に伴う冬季賞与の伸び鈍化も下押し要因となるため、横ばい圏内で推移すると予想される。

雇用・所得環境は、緩やかに改善している。就業者数は、正規雇用を中心に着実な増加を続けている。一人当たり名目賃金は、着実な上昇を続けている。先行きの雇用者所得は、当面、着実な増加を続けるとみられるが、企業収益の悪化による特別給与への下押し圧力が顕在化するのに伴い、増加ペースは鈍化すると見込まれる。

物価面について、商品市況をみると、足もとでは、原油価格が振れを伴いつつも下落傾向にある一方、銅価格は上昇している。この間、食料の市況価格は緩やかな上昇を続けている。国内企業物価の前年比は、既往の原油価格下落や円高等の影響から上昇率が低下傾向にあり、足もとでは2%台後半となっている。企業向けサービス価格(除く国際運輸)の前年比は、人件費上昇等を背景に高めの伸びを続けているが、前年にみられた値上げの一巡などから上昇率が低下しており、足もとでは2%台後半となっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、米などの食料品価格上昇の影響等から、足もとでは3%程度となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。先行きの消費者物価についてみると、米などの食料品価格の上昇が一巡するもとで、既往の円高の影響も耐久消費財等を中心に下押しに作用することから、本年度末にかけてプラス幅を縮小していくと予想される。

(2)金融環境

わが国の金融環境は、緩和した状態にある。

実質金利は、マイナスで推移している。企業の資金調達コストは、上昇している。資金需要面をみると、経済活動の回復や企業買収の動きなどを背景に、緩やかに増加している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、緩和した状態にある。CP・社債市場では、良好な発行環境となっている。こうした中、銀行貸出残高の前年比は、4%台前半となっている。CP・社債計の発行残高の前年比は、7%程度となっている。企業の資金繰りは、良好である。企業倒産は、横ばい圏内で推移している。

この間、マネーストックの前年比は、1%台半ばとなっている。

(3)金融システム

わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。

大手行の収益は、貸出金利息を中心とする資金利益の増加などを背景に、増加している。この間、信用コストは、低水準となっている。自己資本比率は、引き続き規制水準を十分に上回っている。

地域銀行の収益は、資金利益の増加などを背景に、増加している。この間、信用コストは、低水準となっている。自己資本比率は、引き続き規制水準を十分に上回っている。

金融循環面では、金融システムレポートで示しているヒートマップを構成する全14指標のうち13指標が、過熱でも停滞でもない状態となっている。金融ギャップは、ひと頃と比べてプラス幅が縮小した状態が続いており、全体として金融活動に過熱感はみられない。ただし、不動産価格や株価といった資産価格の動向には留意が必要であり、今後も、金融活動が実体経済活動から大きく乖離することがないか、注視する必要がある。また、各国の通商政策等の影響を巡る不確実性がなお高い状況が続いていることを踏まえると、それが様々な経路を通じて金融システムに及ぼす影響については丁寧にみていく必要がある。

2.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要

1.経済・物価情勢の現状

国際金融資本市場について、委員は、世界経済の不確実性が引き続き意識されているものの、市場センチメントは改善した状態が続いているとの見方を共有した。多くの委員は、米国の株価が最高値を更新していることを指摘したうえで、その背景として、米国経済に対する関税政策の影響を巡る不確実性が低下してきたことや、AI関連のグローバルな需要拡大やAIの活用に伴う生産性向上に対する期待が高まっていることを挙げた。そのうえで、何人かの委員は、AI関連について市場が期待しているほどの収益拡大が実現しないといった場合には、株価の変動につながる可能性もあると指摘した。

海外経済について、委員は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長しているとの認識を共有した。何人かの委員は、米国をはじめとする海外経済の不確実性は依然として高いが、関税政策の影響は、ゆっくりとしたペースで出てくるとの見方が増えているほか、その影響度合いについても、これまでの想定よりも小さめになるとの見方が多くなっていると指摘した。

米国経済について、委員は、一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば堅調な成長を維持しているとの認識で一致した。多くの委員は、米国における関税政策のマイナスの影響は、これまでのところ限定的なものにとどまっている一方、AI関連を中心に設備投資が増加しているほか、資産価格の上昇にも支えられて個人消費は底堅く推移しているとの認識を示した。このうちのある委員は、小売売上高は引き続き堅調に推移していると述べたうえで、食料や飲料など身近な品目の消費は減少している一方、資産価格の上昇が富裕層の消費を支えており、所得階層による差異の広がりがみられると指摘した。関税賦課に伴うコスト負担について、何人かの委員は、これまでは米国企業や米国向け輸出企業が関税コストを相応に吸収していたが、今後は緩やかながらも、消費者への価格転嫁が進むのではないか、との見方を示した。このうちの一人の委員は、米国企業が値上げによって目立つことを避け、取りあえず自社で負担しているのだとすれば、時間差はあるにしてもいずれ販売価格への影響は出てくるだろうと付け加えた。このほか、何人かの委員は、雇用者数の増加ペースが鈍化している労働市場の動向には留意が必要であると指摘した。このうちの一人の委員は、雇用の伸び鈍化の背景として、関税政策による企業収益の下押しが影響している面もあるが、AIによる労働代替の程度が見極め難いため、企業が人への投資を抑制している可能性や、移民政策に伴う供給要因が影響している可能性も考えられるとの見解を示した。この間、ある委員は、米国では、減税や規制緩和等の経済底上げ政策に移行する中、関税によるこれからのマイナスの動きは生じ難いとの認識を示した。

欧州経済について、委員は、駆け込み輸出の反動もみられる中、総じてみれば弱めの動きが続いているとの見方を共有した。

中国経済について、委員は、不動産市場などで調整圧力が続く中、関税引き上げの影響や政策効果の逓減などを受けて、減速しているとの見方を共有した。ある委員は、海外経済の先行きを展望するうえで、中国経済の減速リスクを以前よりも意識していると述べた。

中国以外の新興国・資源国経済について、委員は、総じてみれば緩やかに改善しているとの認識を共有した。

わが国の金融環境について、委員は、緩和した状態にあるとの認識で一致した。ある委員は、不動産やM&Aを中心に銀行貸出など信用面で拡張的な動きが生じ出したことは、実質金利が大幅なマイナスであることの効果を示しているとの認識を示した。この間、複数の委員は、都市部のマンションを中心とする不動産価格の動向についても留意する必要があると述べた。そのうえで、これらの委員は、最近の不動産価格の上昇については、建築コストの上昇や人手不足などの供給制約に加え、実質金利が大幅なマイナスとなっていることや、円安等を背景とする海外マネー流入が相応に影響していると指摘した。

以上のような海外の金融経済情勢とわが国の金融環境を踏まえて、わが国の経済・物価情勢に関する議論が行われた。

わが国の景気について、委員は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復しているとの認識を共有した。多くの委員は、米国の関税政策はわが国企業の収益面にマイナスの影響を及ぼしているものの、これまでのところ、設備投資や雇用・賃金動向も含め、経済全体に波及している様子は窺われないとの認識を示した。このうちのある委員は、わが国経済は、米国の関税政策の影響がこれまでのところ限定的なこともあり、緩やかな成長軌道を維持していると述べた。この間、一人の委員は、マクロ的な需給ギャップは足もとゼロ%程度と推計されているが、そもそも幅を持ってみるべきものであるほか、労働投入ギャップがプラスであることを踏まえると、労働供給制約により設備を使いたくても使えないという可能性もあり、単純に需要が弱いという状況ではないとの見解を示した。

輸出や鉱工業生産について、委員は、一部に米国の関税引き上げに伴う駆け込みとその反動の動きがみられるが、基調としては横ばい圏内の動きを続けているとの認識で一致した。ある委員は、実質輸出は、米国で分野別関税が導入されている産業では弱めの動きとなっているものの、全体としてトレンドから乖離するような落ち込みはみられていないと指摘した。

設備投資について、委員は、企業収益が関税政策の影響を受けつつも全体としては高水準を維持し、業況感も良好な水準を維持しているもとで、緩やかな増加傾向にあるとの認識を共有した。一人の委員は、設備投資は計画策定と実行の間にタイムラグがあるため、実績値だけをみて企業の設備投資スタンスを判断すべきでないと考えていたが、9月短観でも、引き続き、全体として積極的な計画が報告されていることを踏まえると、米国の関税政策が企業の業況感や設備投資スタンスに深刻な影響を及ぼしていないことが窺えるとの認識を示した。

個人消費について、委員は、物価上昇の影響を受けつつも、雇用・所得環境の改善を背景に底堅く推移しているとの認識で一致した。ある委員は、個人消費は全体としてみれば底堅く推移しているものの、食料品や衣料品などの非耐久財については、節約志向の強まりやいわゆる「値上げ疲れ」の動きが窺われると述べたうえで、賃上げの恩恵は年齢階層間で差異があり、それが消費行動の差に表れていることがデータからも確認できると指摘した。

雇用・所得環境について、委員は、緩やかに改善しているとの見方を共有した。ある委員は、物価上昇に伴い、実質可処分所得は横ばいとなっているものの、最低賃金の引き上げを含め、今年はしっかりとした賃上げが行われているとの認識を示した。別のある委員は、完全失業率の動向について、このところ幾分上昇する場面があったものの、より高い賃金を求めた自発的離職の増加が影響しているとの見解を示した。

物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、米などの食料品価格上昇の影響等から、足もとでは3%程度となっているとの認識で一致した。また、予想物価上昇率について、委員は、緩やかに上昇しているとの見方で一致した。ある委員は、物価動向をみると、食料品価格の上昇の影響が顕著である一方、他の分野における企業の価格設定行動の変化は緩やかであると述べた。この点について、この委員は、食料品への支出増が消費者の節約志向につながっているとしたうえで、今後の賃金と家計所得の動向を注視することが重要であるとの見解を示した。別のある委員は、食料品価格の大幅な上昇の背景には人件費や物流費、輸入物価の上昇もあるが、一部の企業の積極的な値上げ姿勢も影響しているとの見方を示した。この点に関連し、一人の委員は、米や食料品価格の上昇は、コストプッシュ要因だけで説明することはできないと指摘したうえで、物価が上昇しないゼロノルムのもとで値上げができなかった企業が、この機会に一斉に値上げに動いている面があるのではないか、との認識を示した。これに関連して、別の一人の委員は、食料品が牽引するコストプッシュ色が強いインフレがどの程度持続的か、また、インフレのうちどの程度が需要ショックによるのか、こうした動きがインフレ予想にどの程度影響し得るのか、といった点を引き続きよくみていく必要があると指摘した。

2.経済・物価情勢の展望

2025年10月の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)の作成にあたり、委員は、経済情勢の先行きの中心的な見通しについて議論を行った。大方の委員は、わが国経済について、(1)各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは伸び悩む、(2)その後は、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、わが国経済も成長率を高めていくと見込まれるとの認識を共有した。

米国の関税政策のわが国経済に対する影響について、多くの委員は、当初想定していたよりも小さくなるとみられ、先行きの不透明感は後退しているとの認識を示した。このうちの一人の委員は、関税政策の影響が今後本格化するとしても、想定される影響の規模は以前よりは小さくなってきており、わが国の成長ペースの伸び悩みもそれほど大きくないと見込まれると指摘した。別のある委員は、わが国の企業収益が高水準であることを踏まえると、輸出関連企業に対する関税の直接的な収益下押しの影響は、保守的に見積もったとしても、全体として十分吸収可能であるとの認識を示した。別の一人の委員は、輸出関連の製造業の業績への影響は相応に大きいが、大手・中堅企業は関税を織り込んだ経済活動・戦略に移行しているとしたうえで、今後も関税政策の影響のほか、関税政策が変更される可能性もあるが、先行きを見通すうえで7月時点よりも霧が薄くなったとの認識を示した。こうした議論を踏まえ、何人かの委員は、わが国の経済は、関税政策の影響を受けつつも、本年度、来年度ともに、潜在成長率を上回る成長を続けるとの見方を示した。

わが国の輸出や鉱工業生産について、大方の委員は、海外経済の減速を背景に弱めの動きになると見込まれ、その後は、グローバルなAI関連需要を含め、海外経済が緩やかな成長経路を辿るもとで、増加基調に復していくとの認識を共有した。

設備投資について、大方の委員は、緩和的な金融環境が下支え要因として作用する中、人手不足対応やデジタル関連の投資、成長分野・脱炭素化関連の研究開発投資、サプライチェーンの強靱化に向けた投資は継続されると見込まれるが、海外経済減速の影響を受けて伸び率は鈍化すると見込まれるとの認識を共有した。また、その後は、企業収益が内外需要の増加から改善していくとみられる中、需要増に対応した能増投資もあって、増加傾向を続けるとの見方を共有した。ある委員は、9月短観では、関税の影響を受けやすい製造業でしっかりとした投資計画が確認されたほか、支店長会議でも、自動車企業の投資計画は総じて堅調との報告がなされており、設備投資の下振れリスクは低いとの認識を示した。別のある委員は、過去のトレンドや実績などから、年度下期にかけて設備投資計画は下方修正されると想定しているが、それでも、現在の水準やヒアリング情報などを踏まえると、この先堅調さは維持されるとの見方を示した。

個人消費について、委員は、物価上昇の影響が残るもとで、当面は横ばい圏内の動きとなるものの、雇用者所得の増加が続くもとで、次第に緩やかな増加基調に復していくとの見方で一致した。また、その後についても、雇用者所得の増加が続くもとで、個人消費は緩やかに増加していくとの認識を共有した。ある委員は、今後、食料品やエネルギー価格上昇の影響が減衰し、消費者物価の伸び率が低下していけば、実質賃金の前年比はプラスに転化することが見込まれるとしたうえで、そうした動きは先行きの消費拡大を支える大きな力になると指摘した。

雇用者所得について、委員は、当面、着実な増加を続けるとみられるが、企業収益の悪化による特別給与への下押し圧力などから、増加ペースはいったん鈍化する可能性があるとの認識を共有した。その後は、企業収益の回復に伴い、名目賃金の上昇率が再び高まるもとで、雇用者所得の増勢も強まっていくとの見方を共有した。来年の春季労使交渉について、何人かの委員は、今年の物価動向や高水準の企業収益に加え、人手不足に伴う労働需給の逼迫や最低賃金の引き上げなどを踏まえると、今年と同程度の賃上げが期待できるのではないか、との見解を示した。このうちのある委員は、自動車メーカーを含めた輸出関連企業の間では一部に原価低減の動きがみられているが、わが国企業全体として、積極的な賃金設定行動が途切れることはないだろうと付け加えた。複数の委員は、3年連続で高い賃上げが実現する中、物価上昇を踏まえて賃金を毎年見直す動きが習慣化しつつあり、そうした考え方が各企業の中期経営計画の中にも反映されているとの認識を示した。別のある委員は、日本企業は、他社と横並びで賃金を設定する傾向が強いため、足もとまでの経済状況を前提にすれば、来年の春季労使交渉では相応の賃上げが実現すると考えられるが、再来年以降も同様となるかどうかについては、改めてみていく必要があると指摘した。

こうした議論を経て、大方の委員は、中心的な成長率の見通しは、前回の展望レポート時点と比べると、概ね不変であり、先行きの景気展開に対する基本的な見方に変化はないとの認識を共有した。何人かの委員は、関税政策の影響を受けつつも、わが国企業の収益計画が良好な水準を維持していることや、米国経済を巡る不確実性が低下していることなどを踏まえると、わが国経済の中心的な見通しが実現する確度は、少しずつ高まってきているとの認識を示した。

続いて、委員は、物価情勢の先行きの中心的な見通しについて議論を行った。大方の委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、米などの食料品価格上昇の影響が減衰していくもとで、来年度前半にかけて、2%を下回る水準までプラス幅を縮小していくとの見方を共有した。また、大方の委員は、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペースの影響などを受けて伸び悩むことが見込まれるものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、基調的な物価上昇率と消費者物価(除く生鮮食品)の上昇率はともに徐々に高まっていき、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するとの見方を共有した。これに対して、ある委員は、賃上げが3年連続して「物価安定の目標」と整合的な水準になることを見通せる来年春には、目標達成と判断できる公算が大きいとの認識を示した。また、別の一人の委員は、最近の金融資本市場の動きや企業の積極的な賃金・価格設定行動を踏まえると、「物価安定の目標」が概ね達成されたとの判断の確度はより高まったとの認識を示した。

消費者物価(除く生鮮食品)の見通しについて、ある委員は、米価格でみられたように、これまで値上げできなかった分を埋め合わせるような価格設定行動が続く可能性はあるが、それでも、消費者物価の上昇率は今後暫く低下していき、来年度には一時的に2%を下回るとの見方を示した。一人の委員は、今後の物価動向を見極めるうえでは、食品メーカーの積極的な値上げ姿勢が続くかどうかや、それに対する消費者の購買状況等を注視していく必要があると指摘した。この間、別の一人の委員は、来年度前半にかけて物価上昇率が低下する要因としては、食料品価格上昇の影響の減衰に加えて、エネルギー価格下落の影響も大きいとの認識を示した。

基調的な物価上昇率について、何人かの委員は、足もとまでの各種指標の動きを踏まえると、基調的な物価上昇率は2%に向けて緩やかに上昇しているものの、なお2%には至っていないとの見方を示した。このうちのある委員は、米国の関税政策による下押しの影響がこれから顕在化するにしても、わが国の景況は、物価上昇率低下による実質賃金の改善などによって相応に維持され、物価の基調も2%に向けて緩やかに上昇し続けていくとの見解を示した。一人の委員は、各種指標の推計の幅や計測誤差などを踏まえると、基調的な物価上昇率は2%程度になっていると考えられるが、「物価安定の目標」との関係では、その定着度合いを点検していくことがより重要であると指摘した。別のある委員は、中長期的な予想物価上昇率が上昇する中、企業が積極的な経営姿勢を維持し、賃金と物価が相互に参照しながら上昇していくメカニズムが作用していくことを踏まえれば、基調的な物価上昇率は、そのペースは緩やかになるにしても、引き続き高まっていくとの見方を示した。この間、ある委員は、縮小均衡マインドが残存するもとでは、ヘッドライン物価と基調的物価を区別した議論が必要であったが、価格の粘着性が相対的に高い家賃やオフィス賃料の上昇も生じ始めているなど人々のノルムが転換する中、ヘッドラインを重視したシンプルなコミュニケーションが望ましいとの見解を示した。また、別の一人の委員は、金融政策にあたっては、ヘッドラインの消費者物価指数が2.0%より上か下かではなく、その背後にある特殊要因やメカニズム(需給状況、賃金、予想インフレ率等)も踏まえて判断することを丁寧に説明すべきであると指摘した。

こうした議論を経て、大方の委員は、物価の中心的な見通しは、前回の展望レポート時点と比べると、概ね不変であるとの認識を共有した。

次に、委員は、経済・物価の見通しのリスク要因(上振れ・下振れの可能性)について議論を行った。委員は、リスク要因としては様々なものがあるが、とくに、各国の通商政策等の影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性はなお高い状況が続いており、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要があるとの見方を共有した。

そのうえで、経済の主なリスク要因として、委員は、(1)各国の通商政策等の影響を受けた海外の経済・物価動向、(2)輸入物価の動向、(3)わが国を巡る様々な環境変化が企業や家計の中長期的な成長期待や潜在成長率に与える影響、の3点を挙げた。何人かの委員は、AI関連については、グローバルな需要動向次第で、資産価格の変動なども伴って、世界経済の上振れ・下振れ双方向のリスク要因となり得るとの認識を示した。複数の委員は、米国経済について、労働供給と労働需要がともに減少している現在の「奇妙なバランス」が崩れた場合には、同国の経済に対する下押し圧力が強まるリスクがあると指摘した。一人の委員は、関税の影響に対する世界的な危機意識から、感染症拡大期と同様、欧米・中国・新興国が揃って財政金融両面で緩和策に傾く中、経済押し上げ・インフレ圧力が生じ、世界経済が予想以上に上振れる可能性があると指摘した。この間、ある委員は、先週新内閣が発足したが、現時点では政府の政策の方向性や中身についての情報は十分とは言い難く、見通しに組み込めていないと述べたうえで、財政要因は、経済や物価の見通しを立てるうえで、重要なファクターであるとの認識を示した。

物価のリスク要因について、委員は、上記の経済のリスク要因が顕在化した場合には、物価にも影響が及ぶほか、物価固有のリスク要因として、(1)企業の賃金・価格設定行動やそれらが予想物価上昇率に与える影響、(2)今後の為替相場の変動や国際商品市況を含む輸入物価の動向、およびその国内価格への波及には注意が必要であるとの見方で一致した。ある委員は、企業や家計の予想物価上昇率は既に概ね2%に達し、インフレ・ノルムが定着しており、物価の上振れリスクが懸念されるとしたうえで、実際、家計のインフレ実感は足もと低下したにもかかわらず、5年後の予想インフレ率は上昇していると述べた。別の一人の委員は、コロナ禍後の価格上昇時には、物価が上がらないノルムの存在から、二次的な物価上昇は生じ難かったが、今次局面では物価が上がらないノルムが既に解け、賃金上昇圧力も伴うだけに、リスクバランス上も物価の上振れをより意識する必要があると指摘した。これらに対し、ある委員は、食料品価格の上昇がより広範な品目の物価に波及するリスクには留意が必要であるが、所得環境の改善が十分でなければ、食料品価格の上昇は他の分野における節約志向を強めてしまうため、全般的な物価上昇にはつながりにくいのではないか、との認識を示した。この間、何人かの委員は、企業の賃金・価格設定行動が積極化している中、為替円安の進行が、輸入物価の上昇などを通じて、物価の上振れにつながりやすい状況にあるとの認識を示した。

リスクバランスについて、委員は、各委員が示したリスク評価を全体として評価すると、(1)経済の見通しについては、2026年度は下振れリスクの方が大きい、(2)物価の見通しについては、概ね上下にバランスしている、との認識を共有した。

3.金融政策運営に関する委員会の検討の概要

以上のような金融経済情勢に関する認識を踏まえ、委員は、金融政策運営に関する議論を行った。

まず、当面の金融政策運営の考え方について、委員は、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくということが基本となるとの認識で一致した。そのうえで、こうした見通しが実現していくかについては、各国の通商政策等の影響を巡る不確実性がなお高い状況が続いていることを踏まえ、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要であるとの認識で一致した。

こうした考えのもと、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、大方の委員は、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す」という方針を維持することが適当であるとの見解を共有した。

多くの委員は、経済・物価の中心的な見通しが実現する確度は少しずつ高まってきているものの、海外経済を巡る不確実性がなお高い状況にある中で、わが国企業の積極的な賃金設定行動が途切れることがないかどうか、もう少し確認する必要があるとして、現状の金融政策運営を維持することが適当との見方を示した。このうちの一人の委員は、利上げを行うべきタイミングが近づいているものの、足もと、米国の関税政策を巡る不確実性が依然として高いことや、わが国新政権の経済政策の方向性がまだ十分に明らかでないことなどを勘案し、状況をもう少しだけ見極めることが適当との見解を示した。ある委員は、米国で所得税還付などにより景気が過熱し、円安などを通じてわが国の物価が大きく上押しされるリスクを考えれば、早めの利上げが望ましいともいえるが、米国の労働市場の「奇妙なバランス」が崩れ始め、資本市場も調整局面を迎え、わが国の物価や景気に想定以上に下押し圧力がかかるリスクもまだ否定しきれないことから、今しばらく見極めて判断する方が適当であると指摘した。別の一人の委員は、金利の正常化をもう一歩進めるうえでは、条件が整いつつあるとみているものの、基調的な物価上昇率の定着度合いも確認する必要があるとの認識を示した。

一方、複数の委員は、今回の決定会合で、政策金利を0.75%程度に引き上げることが望ましいとの見解を示した。このうちの一人の委員は、関税政策の影響による米国経済の減速は考え難いと指摘したうえで、国内では既に「物価安定の目標」の実現が概ね達成されたと考えられるほか、足もとでは円安進行に伴う物価の上振れリスクにも留意が必要であることを踏まえると、再び利上げスタンスに回帰し、海外対比で低水準の実質金利の調整を行い得る状況であるとの認識を示した。別の一人の委員は、上下双方向のリスクがある現時点で、政策金利を一気に引き締める領域まで引き上げるべきではないが、物価の上振れリスクがある中、将来の急激な利上げによるショックを避けるため、金融緩和度合いを調整して、中立金利にもう少し近づけておくべきであるとの見解を示した。

先行きの金融政策運営に関連して、多くの委員は、随時蓄積されていくヒアリング情報も用いたうえで、企業の賃上げスタンスや具体的な賃金の動向を分析し、賃金と物価がともに緩やかに上昇していくメカニズムが維持されていることを見極めることが重要であるとの見解を示した。このうちのある委員は、15%の関税率を前提とした各社の収益計画が早晩固まってくることから、これに基づいた企業の賃金設定行動、とくに、来年の春季労使交渉に向けた初動のモメンタムが重要であると指摘した。別の一人の委員は、先行きの政策運営にあたっては、引き続き、(1)各国通商政策の世界経済への影響、(2)米国の金融政策と為替相場の方向性、(3)国内の物価と賃金の見通しの3点を注視していく必要があると指摘した。そのうえで、この委員は、わが国企業が、関税の影響や米国をはじめとする世界経済の動向についての不確実性を踏まえたうえで、積極的な賃金設定行動を維持するかがとくに重要であるとの認識を示した。ある委員は、関税政策の影響が表れるのが遅れている中にあって、次回利上げはなお緩和の範囲内での調整であることを踏まえると、世界経済や金融市場で悪いニュースがないことを前提に、春季労使交渉に向けた初期段階の労使双方の動きなどから、企業の積極的な賃金設定行動が維持される見通しを確認できれば、政策変更につながるとの見解を示した。この間、一人の委員は、来年の賃上げ期待はあるものの、物価上昇によって消費行動の変容がみられるほか、資材価格の高騰や人件費の増加などによる建設コストや住宅価格の上昇などから、生活者への負担が増していることを指摘したほか、足もとの銀行貸出の伸びにも注意を払っていると述べた。そのうえで、この委員は、先行きの不透明感は残るが、経済・物価の見通しとその達成確度次第で金利を調整すべき環境になるとの認識を示した。

何人かの委員は、中立金利が現在の政策金利より高い位置にあることを踏まえると、経済・物価情勢の改善に応じて金融緩和の度合いを調整していくことは、長い目でみて安定した経済・物価の実現につながると指摘した。このうちの一人の委員は、現段階での利上げは、将来のためにも経済のゆがみを抑制し、政策金利を緩やかに均衡状態に戻していくという、金利正常化のプロセスと考えられると指摘した。ある委員は、米欧と異なってわが国の政策金利が中立金利を下回っていることや、株式市場などの金融資本市場が不安定化する可能性もあることを指摘したうえで、足もとは急ぐ状況ではないかもしれないが、適切な情報発信を続けながらタイミングを逃さずに利上げを行うべきであるとの見解を示した。別のある委員は、インフレ率が目標に到達するまで金利の調整を一切行わないとした場合、目標達成時点で一挙に金利を中立金利まで引き上げる必要があるが、その時々の中立金利を具体的に特定することはできないため、これを成功裏に行うのはほぼ不可能と考えられると付け加えた。この間、一人の委員は、世界経済や金融市場の動向と、そのもとでのわが国の経済・物価見通しに沿って、適切なタイミングで徐々に政策金利を引き上げていくという基本方針は不変であると述べたうえで、市場の安定を確保しつつ、金融政策の効果を円滑に波及させるためには、こうした政策反応関数が変化したと疑われることがないよう、市場との丁寧なコミュニケーションを続けていく必要があるとの見解を示した。

以上のような議論を受けて、議長は、執行部に対し、「展望レポート」で、先行きの金融政策運営についてどのように記述することが考えられるか、案を示すよう指示した。執行部からは、(1)金融政策運営については、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、本日議論したような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている、(2)そのうえで、こうした見通しが実現していくかについては、各国の通商政策等の影響を巡る不確実性がなお高い状況が続いていることを踏まえ、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要と考えている、(3)日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく、と記述することが考えられると報告した。

執行部の説明に対し、委員は、執行部の示した案は適当であるとの見解を共有した。

4.政府からの出席者の発言

内閣府の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 日本経済は、米国の通商政策等による影響が自動車産業を中心にみられるものの、緩やかに回復している。
  • 政府は、「経済あっての財政」、「責任ある積極財政」の考え方の下、物価高対策、危機管理投資・成長投資、防衛力・外交力強化を柱とする「総合経済対策」を策定する。
  • 日本銀行には、日本銀行法、政府・日本銀行の共同声明の趣旨に沿って政府と緊密に連携し、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて、適切な金融政策運営を期待する。

また、財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 物価高対策を早急に講じるとともに日本経済の強さを取り戻すための経済政策を作り上げていく方針であり、10月21日の総理からの指示に基づき、総合的な経済対策を策定し、補正予算の編成を進めていく。
  • 日本銀行には、政府との緊密な連携のもと、内外の経済情勢等を十分に注視し、市場とのコミュニケーションを図りつつ、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。

5.採決

1.金融市場調節方針

以上の議論を踏まえ、議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、金融市場調節方針について、以下の議案が提出された。

金融市場調節方針に関する議案(議長案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。

無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す。

これに対して、高田委員からは、物価が上がらないノルムが転換し、「物価安定の目標」の実現が概ね達成されたとして、田村委員からは、物価上振れリスクが膨らんでいる中、中立金利にもう少し近づけるためとして、それぞれ、以下の議案が提出された。

金融市場調節方針に関する議案(高田委員・田村委員案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。

無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.75%程度で推移するよう促す。

金融市場調節方針に関する議案(高田委員・田村委員案)は、採決の結果、反対多数で否決された。

採決の結果

  • 賛成:高田委員、田村委員
  • 反対:植田委員、氷見野委員、内田委員、野口委員、中川委員、小枝委員、増委員

金融市場調節方針に関する議案(議長案)は、採決の結果、賛成多数で決定された。

採決の結果

  • 賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、野口委員、中川委員、小枝委員、増委員
  • 反対:高田委員、田村委員

2.対外公表文(「当面の金融政策運営について」)

議長から、対外公表文(「当面の金融政策運営について」<別紙>)が提案され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。

6.「経済・物価情勢の展望」の検討

続いて、「経済・物価情勢の展望」の「基本的見解」の文案が検討され、多数意見が形成された。

これに対し、高田委員からは、(1)経済の見通しについて、「各国の通商政策等の影響が一巡するなか、緩和的な金融環境などが下支え要因となり、潜在成長率を上回る成長が続くと考えられる」とすること、(2)物価の見通しについて、「消費者物価の基調的な上昇率は、引き続き堅調な状況が続くと見込まれる」、「基調的な物価上昇率を含め、消費者物価は既に概ね「物価安定の目標」に達する水準にあると考えられる」とすること、などを内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。

採決の結果

  • 賛成:高田委員
  • 反対:植田委員、氷見野委員、内田委員、野口委員、中川委員、田村委員、小枝委員、増委員

田村委員からは、(1)消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比の見通しについて、「米などの食料品価格上昇の影響が徐々に減衰していくことに加え、成長ペースの影響などから、2%程度まで低下し、その後も、成長率が高まるもとで、2%程度で推移すると考えている」とすること、(2)消費者物価の基調的な上昇率の見通しについて、「成長ペースの影響などを受けつつも、これまで上昇してきた中長期的な予想物価上昇率のもとで徐々に高まっていくと予想され、見通し期間半ば以降「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる」とすること、などを内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。

採決の結果

  • 賛成:田村委員
  • 反対:植田委員、氷見野委員、内田委員、野口委員、中川委員、高田委員、小枝委員、増委員

議長から、会合における多数意見を取りまとめるかたちで、「基本的見解」の議案が提出された。採決の結果、賛成多数で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。また、背景説明を含む全文は、10月31日に公表することとされた。

採決の結果

  • 賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、野口委員、中川委員、小枝委員、増委員
  • 反対:高田委員、田村委員

7.議事要旨の承認

議事要旨(2025年9月18、19日開催分)が全員一致で承認され、11月5日に公表することとされた。

以上


  • (注)「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す。」本文に戻る

別紙

2025年10月30日
日本銀行

当面の金融政策運営について

日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(賛成7反対2)(注)

無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す。

以上


  • (注)賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、野口委員、中川委員、小枝委員、増委員。反対:高田委員、田村委員。高田委員は、物価が上がらないノルムが転換し、「物価安定の目標」の実現が概ね達成されたとして、田村委員は、物価上振れリスクが膨らんでいる中、中立金利にもう少し近づけるためとして、無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.75%程度で推移するよう促すとする議案を提出し、反対多数で否決された。本文に戻る