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政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨 (2025年12月18、19日開催分)

2026年1月28日
日本銀行

本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2026年1月22、23日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

開催要領

1.開催日時:
2025年12月18日(14:00から15:55)
12月19日(9:00から12:12)
2.場所:
日本銀行本店
3.出席委員:
議長 植田和男 (総裁)
  • 氷見野良三(副総裁)
  • 内田眞一 ( 副総裁 )(注)
  • 野口 旭 (審議委員)
  • 中川順子 ( 審議委員 )
  • 高田 創 ( 審議委員 )
  • 田村直樹 ( 審議委員 )
  • 小枝淳子 ( 審議委員 )
  • 増 一行 ( 審議委員 )
  • (注)内田委員は、本店執務室から電話会議により出席。
4.政府からの出席者:
  • 財務省 前田 努 大臣官房総括審議官(18日)
  • 中谷真一 財務副大臣(19日)
  • 内閣府 林 幸宏 内閣府審議官(18日)
  • 水田 豊 大臣官房審議官(経済財政運営担当)(19日9:00から10:57)
  • 城内 実 経済財政政策担当大臣(19日10:58から12:12)
(執行部からの報告者)
  • 理事 清水誠一
  • 理事 神山一成
  • 理事 諏訪園健司
  • 理事 中村康治
  • 企画局長 奥野聡雄
  • 企画局政策企画課長 井出穣治
  • 金融機構局長 鈴木公一郎
  • 金融市場局長 峯岸 誠
  • 調査統計局長 川本卓司
  • 調査統計局経済調査課長 須合智広
  • 国際局長 近田 健
(事務局)
  • 政策委員会室長 福田英司
  • 政策委員会室企画役 三浦幸大
  • 政策委員会室企画役補佐 梶谷 勉
  • 企画局企画役 北原 潤
  • 企画局企画役 西野孝佑

1.金融経済情勢に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

金融市場調節については、前回会合(10月29、30日)で決定された金融市場調節方針(注)に従って運営し、無担保コールレート(オーバーナイト物)は、0.476から0.482%のレンジで推移した。

この間、長期国債の買入れについては、2025年6月の会合で決定された減額計画に沿って、月間3.3兆円程度の買入れを行った。

2.金融・為替市場動向

短期金融市場では、翌日物金利のうち、無担保コールレートは0.5%程度で推移した。GCレポレートは、無担保コールレート並みの水準で推移した。ターム物金利をみると、短国レート(3か月物)は、上昇した。

わが国の株価(TOPIX)は、米国の株価の調整に連れて下落する場面もみられたが、堅調な企業決算を背景に、期間を通じてみれば上昇した。長期金利(10年物国債金利)は、先行きの経済・物価情勢に対する市場の見方などを反映して、大幅に上昇した。国債市場の流動性指標をみると、総じて改善方向の動きが継続している。為替相場をみると、円の対ドル相場、円の対ユーロ相場は、期間を通じてみれば円安方向の動きとなった。

3.海外金融経済情勢

海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。米国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば堅調な成長を維持している。欧州経済は、駆け込み輸出の反動もみられる中、総じてみれば弱めの動きが続いている。中国経済は、不動産市場などで調整圧力が続く中、関税引き上げの影響や政策効果の逓減などを受けて、減速している。中国以外の新興国・資源国経済は、総じてみれば緩やかに改善している。

先行きの海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて幾分減速するものの、その後は徐々に成長率を高め、成長経路に復していくと考えられる。先行きの見通しを巡っては、各国の通商政策の影響のほか、AI関連のグローバルな需要動向、中国経済の動向などについて、不確実性が高い。

海外の金融市場をみると、世界経済の不確実性が引き続き意識されているものの、市場センチメントは改善した状態が続いている。米国の長期金利は、FRBの利下げ織り込みが進展するもといったん低下したが、その後は先行きの国債発行増額などが意識され上昇し、期間を通じてみれば概ね横ばいとなった。欧州の長期金利は、ECBの利下げ期待の後退などから、上昇した。米国の株価は、AI関連を中心としたバリュエーションの調整などからいったん下落したあと、利下げ織り込みの進展などから上昇し、期間を通じてみれば概ね横ばいとなった。欧州の株価は、米国の株価に連れつつ、期間を通じてみれば概ね横ばいとなった。この間、新興国通貨は、総じてみれば横ばい圏内で推移した。原油価格は、OPECプラスによる増産などを背景に需給の緩和が意識されるもとで、下落した。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。先行きについては、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が幾分減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは緩やかなものにとどまると考えられる。

輸出は、米国の関税引き上げの影響を受けつつも、基調としては横ばい圏内の動きを続けている。先行きは、世界的なAI関連需要の堅調さは一定の下支えとなるものの、米国の関税引き上げに伴う駆け込みの反動や関税の価格転嫁の進捗に伴う最終需要の減退が下押し要因となることから、当面は幾分減速した状態が続く可能性が高い。

鉱工業生産は、横ばい圏内の動きを続けている。先行きは、米国の関税引き上げに伴う駆け込みの反動や海外経済減速の影響が下押し圧力となるものの、国内需要は経済対策の効果もあって底堅く推移するとみられることから、基調としては横ばい圏内の動きを続けると見込まれる。

企業収益は、製造業において関税による下押しの影響がみられるが、全体としては高水準を維持しており、業況感も良好な水準で推移している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。先行きの設備投資は、受注残高解消の動きや人手不足対応の省力化投資に支えられて増加傾向を維持するものの、企業収益の減速や建設コストの上昇を背景に、増勢の鈍化した状態がしばらく続く可能性が高い。

個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、雇用・所得環境の改善を背景に底堅く推移している。消費活動指数(実質・旅行収支調整済)をみると、7から9月に前期比で小幅に増加したあと、10月の7から9月対比も、自動車や家電等の耐久財の増加を主因に増加している。企業からの聞き取り調査や業界統計、高頻度データに基づくと、11月以降の個人消費は、前月からは若干減少しているとみられる。消費者マインドは、食料品価格の上昇率低下や株価の上昇等を背景に、このところはっきりと改善している。先行きの個人消費は、賃金上昇や政府によるエネルギー負担緩和策が一定の下支えとなるものの、食料品価格の高止まりが下押し要因となるため、しばらくは横ばい圏内の動きを続ける可能性が高い。

雇用・所得環境は、緩やかに改善している。就業者数は、正規雇用を中心に着実な増加を続けている。一人当たり名目賃金は、着実な上昇を続けている。先行きの雇用者所得は、冬季賞与の支給や最低賃金の改定時期が前年対比後ずれすることによる振れを伴いつつも、当面、着実な増加を続けると見込まれる。

物価面について、商品市況をみると、原油価格は振れを伴いつつも緩やかな低下基調にある一方、銅価格ははっきりと上昇している。この間、食料の市況価格は足もとで幾分低下している。国内企業物価の前年比は、原油価格下落を主因に上昇率が低下傾向をたどってきたが、足もとでは2%台後半で推移している。企業向けサービス価格(除く国際運輸)の前年比は、人件費上昇等を背景に高めの伸びを続けているが、前年にみられた値上げの一巡などから上昇率が低下傾向にあり、足もとでは2%台後半となっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、米などの食料品価格上昇の影響等から、足もとでは3%程度となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。先行きの消費者物価についてみると、米などの食料品価格上昇の影響が減衰するもとで、政府によるエネルギー負担緩和策も下押しに作用することから、本年度末にかけてプラス幅を縮小していくと予想される。

(2)金融環境

わが国の金融環境は、緩和した状態にある。

実質金利は、マイナスで推移している。企業の資金調達コストは、上昇している。資金需要面をみると、経済活動の回復や企業買収の動きなどを背景に、緩やかに増加している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、緩和した状態にある。CP・社債市場では、良好な発行環境となっている。こうした中、銀行貸出残高の前年比は、4%台半ばとなっている。CP・社債計の発行残高の前年比は、7%台半ばとなっている。企業の資金繰りは、良好である。企業倒産は、横ばい圏内で推移している。

この間、マネーストックの前年比は、1%台後半となっている。

2.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要

1.経済・物価情勢

国際金融資本市場について、委員は、世界経済の不確実性が引き続き意識されているものの、市場センチメントは改善した状態が続いているとの見方を共有した。多くの委員は、各国の通商政策等を巡る不透明感が薄れてきていることや、AI関連需要の拡大が続く中、ハイテク関連企業の業績に対する期待感などから、米国を中心に世界的に株価は高値圏で推移していると指摘した。このうちの一人の委員は、AI関連については、投資に見合ったかたちで収益の拡大が実現しない場合には、財務基盤の弱い先を中心に株価の調整が生じる可能性に留意する必要があると指摘した。

海外経済について、委員は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長しているとの認識を共有した。先行きについて、委員は、各国の通商政策等の影響を受けて幾分減速するものの、その後は徐々に成長率を高め、成長経路に復していくとの見方で一致した。何人かの委員は、通商政策の影響を巡る不確実性の低下やAI関連需要の拡大等を踏まえると、来年以降、海外経済が顕著に減速する可能性は小さくなってきていると指摘した。ある委員は、今次局面は、コロナ禍で世界規模での危機意識から、世界同時に金融財政両面から景気押上げ政策がとられた局面と類似し、当時と同様、グローバルな政策サイクルの一致から、世界的に経済・物価の上振れを展望していると述べた。

米国経済について、委員は、一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば堅調な成長を維持しているとの認識で一致した。多くの委員は、関税コストの販売価格への転嫁が緩やかなものにとどまる中、株高による資産効果もあって、個人消費が堅調に推移しているほか、AI関連需要の拡大を背景に、設備投資も増加していると指摘した。そのうえで、これらの委員は、労働市場の動向など、なお留意すべき点は少なくないが、米国経済を巡る不確実性は、ひと頃より低下しているとの認識を示した。このうちの一人の委員は、AI関連について、市場の楽観論には留意する必要があるものの、設備投資自体はビッグテック企業を中心に中期的な計画に基づいて進められており、来年も堅調に推移する可能性が高いとの見方を示した。ある委員は、関税コスト上昇の影響が消費者段階に表れてくるのはこれからであると指摘したうえで、米国内企業の負担や先行きの個人消費の不透明感などが雇用に影響する可能性には、引き続き留意が必要との認識を示した。この点に関連して、別の一人の委員は、今後、物価上昇の影響が拡大する場合には、既に一部の食料品で実行されているように、来年の中間選挙に向けて関税の免除・引き下げなどの対応が講じられる可能性もあると述べた。別のある委員は、減税や規制緩和による経済の押し上げ効果から、関税の負の影響が顕現化しない可能性もあると指摘した。この間、複数の委員は、最近の米国経済をみると、個人消費については、所得階層による格差が広がっているほか、設備投資についても、IT関連企業とそれ以外の業種で大きな差がみられると指摘したうえで、こうした動きが今後の景気展開に及ぼす影響をよくみていく必要があると述べた。

欧州経済について、委員は、駆け込み輸出の反動もみられる中、総じてみれば弱めの動きが続いているとの認識を共有した。

中国経済について、委員は、不動産市場などで調整圧力が続く中、関税引き上げの影響や政策効果の逓減などを受けて、減速しているとの見方を共有した。

中国以外の新興国・資源国経済について、委員は、総じてみれば緩やかに改善しているとの認識を共有した。

以上のような海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。

わが国の景気について、委員は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復しているとの見方を共有した。多くの委員は、米国の関税政策の影響について、製造業を中心に企業収益に下押し圧力がかかっているものの、設備投資や雇用・賃金動向を含め、経済全体に波及している様子は窺われないとの認識を示した。複数の委員は、7から9月期の実質GDPは6四半期ぶりのマイナス成長となったが、これは春先にみられた関税引き上げに伴う駆け込み輸出の反動の影響が大きく、マイナス成長は一時的なものとみられると指摘した。 

景気の先行きについて、委員は、(1)各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が幾分減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは緩やかなものにとどまると考えられる、(2)その後は、海外経済が成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれるとの認識を共有した。何人かの委員は、米国経済や関税政策の影響を巡る不確実性が低下するもとで、今年度の企業収益についても、製造業を含め、12月短観において前回対比小幅の上方修正となるなど、先行きの不透明感は次第に薄れてきていると指摘した。そのうえで、多くの委員は、政府の経済対策の効果が今後出てくること等も踏まえると、わが国経済は、従来想定していた「伸び悩み」局面を迎える可能性は低いとの見方を示した。このうちの一人の委員は、先行き1、2年程度は、政府の経済対策が経済の押し上げに働き、成長ペースの一時的な伸び悩みもある程度解消されるかもしれないと述べた。これに関連して、別の一人の委員は、財政政策の効果を考える際には、今般の経済対策だけでなく、予算全体の規模や内容を含めて分析することが重要であり、この点は、1月の展望レポートに向けてしっかりと議論していく必要があると指摘した。

輸出・鉱工業生産について、委員は、米国の関税引き上げの影響を受けつつも、基調としては横ばい圏内の動きを続けているとの認識を共有した。一人の委員は、グローバルなAI関連需要が好調であることに加えて、PC・スマホ関連のITサイクルも拡張局面にあることから、情報関連輸出は増加傾向にあり、関税政策の導入当初に懸念されていた輸出の下振れは生じていないとの認識を示した。この間、複数の委員は、サービス輸出について、中国からの訪日客数が減少し、インバウンド需要が下押しされる可能性には留意する必要があると指摘した。

設備投資について、委員は、企業収益が関税政策の影響を受けつつも全体としては高水準を維持し、業況感も良好な水準で推移しているもとで、緩やかな増加傾向にあるとの認識を共有した。何人かの委員は、12月短観では、関税政策の不透明感が一定程度残る中でも、設備投資の増勢が維持されていることが確認されたと述べたうえで、その背景には、人手不足を補うための省人化投資ニーズの堅調さがあると指摘した。このうちの一人の委員は、地域企業からは、人手不足に対応した省人化投資が設備投資を押し上げているとの声が多く聞かれており、こうした投資は課題解決に向けた前進であり、経済成長にも寄与しているとの認識を示した。この間、別の一人の委員は、法人企業統計をみると、中小企業の設備投資は相対的にやや弱めとなっているが、これには、資材高や人手不足が相応に影響しているとの見方を示した。

個人消費について、委員は、物価上昇の影響を受けつつも、雇用・所得環境の改善を背景に底堅く推移しているとの認識で一致した。一人の委員は、品目別にみると、高額品消費は堅調である一方、食料品や衣料品などの非耐久財消費には慎重さがみられると指摘した。この点に関し、複数の委員は、食料品価格の上昇率低下もあって、消費者マインドはこのところ改善しており、今後、こうした傾向が続けば、個人消費の下押し要因は全体として緩和されていく可能性が高いとの見解を示した。

雇用・所得環境について、委員は、緩やかに改善しているとの見方を共有した。多くの委員は、労働需給は引き締まった状況が続いているほか、企業収益は、関税政策の影響を加味しても全体として高い水準を維持すると見込まれると指摘したうえで、春季労使交渉(春闘)に向けた労使の対応方針や、本支店を通じたヒアリング情報等を踏まえると、来年もしっかりとした賃上げが実施される可能性が高いとの認識を示した。このうちの一人の委員は、来年の賃上げは、高めの物価上昇や堅調な企業業績、人手不足の継続などから、組合のある大企業では、少なくとも今年並みの水準になるとの見方を示した。複数の委員は、関税政策の影響が相対的に大きい自動車メーカーにおいても、想定レート対比で円安が進行していることや、関税コストの現地販売価格への転嫁が徐々に進んでいることなどから、自動車業界が春闘のモメンタムにマイナスの影響を及ぼすという懸念はかなり後退していると指摘した。別の一人の委員は、企業収益が全体として高水準を維持する中、民間の調査では、今年の冬のボーナスも一人当たり100万円を超える結果となっているとしたうえで、来年の春闘を含め、今後もしっかりとした賃上げが継続される可能性が高いとの認識を示した。こうした賃金動向を踏まえ、何人かの委員は、今後、食料品価格上昇の影響が減衰していけば、実質賃金のプラス転化が展望できると指摘した。このうちのある委員は、消費者物価の上昇率はベース効果を通じて次第に低下していくことが見込まれる一方、名目賃金はこれまでの上昇モメンタムが来年度の春闘に向けても維持されるため、実質賃金の上昇率は来年前半にはプラス圏に浮上し、それが定着していくとの見方を示した。

物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、米などの食料品価格上昇の影響等から、足もとでは3%程度となっているとの認識で一致した。また、予想物価上昇率について、委員は、緩やかに上昇しているとの評価で一致した。多くの委員は、前回会合以降の物価動向は、新米価格の高止まりなどから、10月の「展望レポート」の見通しより、幾分強めで推移しているとの認識を示した。ある委員は、最近の食料品価格の上昇には、一時的な供給要因だけでなく、人件費や物流費の上昇も相応に反映されていると指摘した。一人の委員は、企業の積極的な価格設定行動などを背景に、米関連以外の食料品でも前年比5%を超える価格上昇が続いていることから、今後の物価動向を見極めるうえで、企業の値上げ姿勢と消費者の購買状況等を注視すべきであるとの認識を示した。この間、複数の委員が、最近の家賃の動向について言及した。一人の委員は、住宅・土地統計調査によれば、2018年から2023年にかけての家賃の伸び率が年率2%程度となっており、消費者物価指数の民営家賃の伸び率(0%)と乖離が生じていると指摘したうえで、同指数に占める家賃のウエイトを考慮すれば、消費者物価の前年比は、実態として相応に高いのではないか、との見解を示した。

物価の先行きについて、大方の委員は、(1)消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、米などの食料品価格上昇の影響が減衰していくもとで、政府の物価高対策の効果もあり、来年度前半にかけて、2%を下回る水準までプラス幅を縮小していくものの、(2)その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、基調的な物価上昇率と消費者物価(除く生鮮食品)の上昇率はともに徐々に高まっていくと予想され、「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するとの認識を共有した。一人の委員は、生鮮食品を除いた消費者物価の上昇率は、食料品インフレの収束や政府の物価高対策の効果などから、いったんは2%を切る見通しだが、金融政策運営にとってより重要な基調的な物価上昇率については、賃上げのモメンタムが維持される以上、人件費由来の部分を中心に緩やかな上昇が続くとの見方を示した。ある委員は、本年生じた食料品の値上げの多くは、既往のコスト上昇分のキャッチアップを目的とした「埋め合わせ型」の値上げであり、足もとでは、こうした動きはほぼ完了しつつあるとしたうえで、今後の価格上昇は、人件費に由来する、より粘着的なものになるとの認識を示した。そのうえで、この委員は、賃金の上昇モメンタムが維持され、実質賃金が来年前半にはプラス圏に浮上すると見込まれることから、実際の消費者物価の前年比プラス幅が縮小する中でも、物価の基調は2%に向けて着実に上昇し続けるとの見解を示した。別の一人の委員は、わが国経済の成長ペースの伸び悩みがメインシナリオではなくなったことから、物価の基調に今後伸び悩みが生じる可能性も小さくなってきているとの認識を示した。別のある委員は、政府の物価高対策や経済政策は、その実際の効果の規模や発現するスピードにもよるものの、消費や投資意欲を高め、経済や中長期的な物価の上昇の力を高めると指摘した。この間、一人の委員は、政府の物価高対策によって、人々のインフレ予想に影響を与え得る特定の財の価格が低下すれば、家計のインフレ実感が緩和する可能性があるとしつつ、先行きの物価見通しについては、為替の物価へのパススルーやエネルギー価格の動向についてもみていく必要があると述べた。このほか、別の一人の委員は、賃上げが3年連続して「物価安定の目標」と整合的な水準になることを見通せる来年春には、物価の基調は2%に達したと判断できる可能性が高いとの認識を示した。また、ある委員は、賃上げの定着や予想物価上昇率の上昇などを踏まえると、基調的な物価上昇率を含め、消費者物価は既に概ね「物価安定の目標」に達する水準にあるとの認識を示した。

経済・物価の見通しのリスク要因として、委員は、各国の通商政策等の影響を受けた海外の経済・物価動向、企業の賃金・価格設定行動、金融・為替市場の動向などがあり、それらのわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要があるとの認識で一致した。一人の委員は、世界経済のダウンサイドリスクは引き続き大きいものの、米国の関税政策の影響は、これまで警戒していたほど異例に高いリスクとまでは言えなくなったとの見解を示した。別の一人の委員は、12月短観をみても、企業の業況感は自動車関連の中小企業も含めて悪くないと指摘したうえで、米国の通商政策の影響を巡る先行きの下振れリスクも、ひと頃と比べると低下したとの認識を示した。こうした議論を踏まえ、委員は、各国の通商政策の影響を巡る不確実性は引き続き残っているものの、低下しているとの認識を共有した。この間、ある委員は、仮に海外経済が来年予想以上に減速するとすれば、通商政策の影響というよりは、AIブームに対する市場の楽観的な見方の後退やプライベート・クレジット市場の調整などが主な理由となるのではないかと指摘した。物価面のリスクに関して、何人かの委員は、企業の賃金・価格設定行動が積極化している中、為替円安の進行が、輸入物価の上昇などを通じて、物価の上振れにつながりやすい状況にあるとの認識を示した。この点に関し、何人かの委員は、賃金と物価が上昇しにくいというノルムが既に解消していることなどを踏まえると、輸入物価の上昇が、予想物価上昇率の変化を通じて、基調的な物価上昇率に影響する可能性もあると付け加えた。この間、ある委員は、食料品価格の上昇は、コストプッシュ要因が剥落する中で次第に落ち着いていくと考えられるが、食料品価格の上昇が長期化した場合には、インフレ期待の高まりを通じて、食料品以外の品目の価格上昇に波及していく可能性がある点には留意が必要との見解を示した。このほか、一人の委員は、米関連以外の食料品価格が依然高めの上昇を続けている原因のひとつには、世界的な人口動態・気候変動を背景に、輸入物価の上昇ショックが断続的に発生している可能性もあると指摘したうえで、こうした動きは、基調的物価やインフレ予想にも影響を及ぼし得るため、引き続きよくみていく必要があるとの見解を示した。

2.金融面の動向

わが国の金融環境について、委員は、緩和した状態にあるとの認識で一致した。ある委員は、これまでのところ、0.5%への金利引き上げにより企業の設備投資スタンスが大幅に減退したという話はあまり聞かれず、短観における資金繰り判断や金融機関の貸出態度判断も、大幅な金融緩和の継続により、良好な水準を維持していると指摘した。一人の委員は、実質金利がマイナスで推移するもとで、不動産を中心に銀行貸出の増加が続いているほか、社債発行の前倒しなど信用面で拡張的な動きが生じ出しているとの認識を示した。別のある委員は、政府の経済対策への期待なども相まって、企業の成長意欲が高まっていることも、最近の銀行貸出の高い伸びにつながっているとの見方を示した。

3.金融政策運営に関する委員会の検討の概要

以上のような金融経済情勢に関する認識を踏まえ、委員は、金融政策運営に関する議論を行った。

まず、委員は、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、議論した。

委員は、金融経済情勢に関する討議を踏まえると、賃金と物価がともに緩やかに上昇していくメカニズムは維持される可能性が高いと考えられ、先行き、経済・物価の中心的な見通しが実現する確度は高まっている、との認識を共有した。すなわち、委員は、(1)米国経済や関税政策の影響を巡る不確実性は引き続き残っているものの、低下している、(2)春闘に向けた労使の対応方針や本支店を通じたヒアリング情報等を踏まえると、来年は、今年に続き、しっかりとした賃上げが実施される可能性が高く、企業の積極的な賃金設定行動が途切れるリスクは低い、(3)物価面では、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、基調的な物価上昇率は緩やかな上昇が続いている、との見方で一致した。こうした認識を共有したうえで、一人の委員は、企業業績は賃上げを支え得る程度に堅調であり、為替の物価に与える影響などを踏まえると、このままの金融環境では物価上昇圧力が持続するため、次回会合を待つリスクは大きいとの見解を示した。ある委員は、実質金利がその均衡値から乖離した状態が続くと、マクロの資源配分に影響が出て将来的に偏りが生じ、持続的な経済成長にも影響を与え得ると指摘した。別の一人の委員は、現状の金融環境が経済実態からみて過度に緩和的になりつつあるため、政策金利を0.25%引き上げることが望ましいとの見解を示した。別のある委員は、日本の実質政策金利は群を抜いて世界最低水準であり、為替市場を通じた物価への影響も踏まえ、緩和度合いの調整を行うことが妥当との認識を示した。そのうえで、この委員は、海外環境が今年の利下げ一辺倒の反動から、来年に向け利上げバイアスに一転する可能性もあるだけに、ビハインドザカーブになることを回避すべく、着実な利上げが望ましいと付け加えた。

以上の議論を踏まえ、委員は、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観点から、今回の会合で政策金利を0.25%引き上げ、0.75%程度とすることが適当であるとの認識で一致した。また、委員は、(1)この方針を実現するため、補完当座預金制度の適用利率を0.75%とする、(2)基準貸付利率についても、0.25%引き上げ1.0%とすることが適切である、との認識を共有した。一人の委員は、過去10年余りの日本銀行による大規模緩和は、政府の施策と相まって、大幅な雇用増を生み出したと指摘したうえで、現在は、「2%の物価上昇とそれを上回る賃金上昇」を定着させるため、経済・物価や金融市場の状況をみながら、金利水準を徐々に調整していくフェーズにあり、その際の立ち位置として、足もとの状況は、政策金利0.75%の水準が適切と考えられるとの見解を示した。

そのうえで、委員は、今回の会合で政策金利を引き上げても、緩和的な金融環境は維持されるとの認識を共有した。何人かの委員は、0.75%に金利を引き上げた後も実質金利は大幅なマイナスであり、緩和の範囲内の調整であると述べたうえで、引き続き、わが国経済を強力にサポートする金利水準、金融緩和の度合いにあるとの見解を示した。そのうえで、一人の委員は、政策金利の変更後は、実質金利でみるときわめて低い水準にあるとはいえ、名目金利では久方ぶりの水準となるので、経済や金融市場への影響のモニタリングが肝要となると指摘した。ある委員は、政策金利の引き上げによって住宅ローン金利が上昇するとの指摘がある一方、若年層や低所得層の資産の多くを占める預金利回りの上昇につながると述べたうえで、金利の引き上げが家計や消費全体にもたらす影響については、プラスとマイナスの両面を丁寧にみていく必要があるとの認識を示した。

先行きの金融政策運営について、委員は、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくということが適当との認識で一致した。何人かの委員は、経済・物価情勢に応じて緩和の度合いを適切に調整していくことは、金融資本市場の安定を確保しつつ、「物価安定の目標」をスムーズに実現するとともに、わが国経済の息の長い成長につながり、国民経済全体にメリットがあると指摘した。

今後の金融緩和度合いを調整していくペースについて、大方の委員は、特定のペースを念頭に置かずに、経済・物価・金融情勢を丁寧に点検しながら、毎回の決定会合において、適切に判断していくことが望ましいとの認識を示した。このうちの一人の委員は、政策調整のタイミングの判断にあたっては、物価の基調を示す各種指標を参考としつつ、賃金と物価がともに緩やかに上昇するメカニズムがどの程度定着したかといった点を、ヒアリング情報などを含めて多角的に評価していくことになると付け加えた。ある委員は、これまでの利上げに伴う経済・物価への影響はほとんどなく、中立的な金利水準まで、まだかなりの距離があると言えると指摘し、当面は数か月に一回のペースを念頭に、経済・物価の反応を確認しながら、金融緩和度合いの調整を進めるべきであると述べた。そのうえで、この委員は、適時に政策金利の調整を進めることが、将来の急激な金融引締めを回避し、経済の持続的・安定的な成長につながるとの認識を示した。

この間、一人の委員は、日本経済は現在、食料品などのコストプッシュインフレで多くの家計が困難に直面する一方、2%の「物価安定の目標」の持続的達成が現実味を帯びるという、重層的な局面にあると指摘したうえで、金融緩和とコストプッシュ圧力の緩和を企図した財政政策が補完し合うことで、物価安定目標の持続的達成をより確かなものにするとの見解を示した。

委員は、今後の政策運営に関し、中立金利の考え方についても議論した。多くの委員は、中立金利の水準を事前に特定することは難しく、かなりの幅をもってみる必要があるとしたうえで、今後とも、短期金利の変化に対する経済・物価の反応を点検し、中立金利の水準を探りながら、金融緩和の度合いを調整していくことが適当であるとの認識を示した。このうちのある委員は、中立金利の特定が困難な中、中立金利の水準を志向していくのではなく、毎回の決定会合で、金融緩和の度合いを経済・金融環境から丁寧に確認する姿勢が望ましいと述べ、今後は海外金利環境の転換も見込まれるだけに、自由度をもった対応が必要であるとの見解を示した。一人の委員は、利上げの影響は、金融市場の変化、金融機関の金利設定や融資行動の変化、企業の設備投資行動や家計の貯蓄・投資行動の変化などの経路を経て、景気や物価の変化となって現れてくると指摘した。そのうえで、この委員は、各段階での働きをヒアリングや様々な指標を通じて把握し、利上げの働きを注意深く観察することによって中立金利を見定めていく、というアプローチを、計量的なモデルを用いた中立金利の推計と併用することで、地に足の着いた政策判断が可能になるとの認識を示した。この間、複数の委員は、中立金利の推計結果に大きな幅が生じざるを得ないことを踏まえると、推計値のレンジを絞っていくというよりも、それぞれの推計値が持つ意味や特性をより意識して、議論していくことが重要であると指摘した。一人の委員は、自然利子率(実質ベースの中立金利)は潜在成長率や人々の貯蓄行動の構造的な変化などによって変化し得ると述べたうえで、今後、政府の経済政策が功を奏し、潜在成長率の引き上げにつながる場合には、自然利子率も上昇する可能性があるとの見方を示した。

このほか、委員は、長期金利や為替市場の動向についても議論した。ある委員は、前回決定会合以降の長期金利の動きはやや急ではあったが、ブレーク・イーブン・インフレ率の動向からは、市場が2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を漸く織り込み始めたと解釈することもできるとの見方を示した。一人の委員は、長期金利の水準と変動はリスクプレミアム要因も相応にあるとの見方を示した。そのうえで、この委員を含む複数の委員は、グローバルにも財政政策の展開やインフレの動きが意識される中、長期金利の動向についても丁寧にみていく必要があると述べた。別のある委員は、円安や長期金利上昇の背景には、インフレ率に対し政策金利が低すぎることも影響している面が相応にあると指摘したうえで、適時の利上げを進めることは、先々のインフレ圧力を抑制し、長期金利の抑制につながり得るとの見解を示した。何人かの委員は、為替動向そのものに対応することは金融政策の目的ではないが、利上げの判断にあたっては、円安が今後の物価上昇率、場合によっては基調的な物価上昇率に与える影響に配慮する必要があるとの認識を示した。

4.政府からの出席者の発言

以上の議論を踏まえ、政府からの出席者から、会議の一時中断の申し出があった。議長はこれを承諾した(11時28分中断、11時42分再開)。

内閣府の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 日本経済は、米国の通商政策等による影響が自動車産業を中心にみられるものの、緩やかに回復している。
  • 高市内閣は、「責任ある積極財政」の下、総合経済対策に関連する施策の実行など「強い経済」の実現に最大限注力する。
  • 今回の提案は、物価安定目標を持続的・安定的に実現するために必要と判断されたものと受け止めている。他方で、設備投資や企業収益等の今後の動向を十分注視する必要がある。
  • 日本銀行には、日本銀行法、政府・日本銀行の共同声明の趣旨に沿って政府と緊密に連携し、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向け、適切な金融政策運営を期待する。

また、財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 日本銀行には、政府との緊密な連携のもと、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。
  • そのうえで、政策金利変更のご提案については、本会合において適切にご判断いただきたいが、市場等には丁寧に政策趣旨を説明していただきたい。
  • また、今後の金融政策運営に向けては、今回の変更が経済・物価に与える影響等を丁寧に点検するとともに、政府とも引き続き緊密な意思疎通をはかっていただきたい。

5.採決

1.金融市場調節方針

以上の議論を踏まえ、議長から、委員の意見を取りまとめるかたちで、金融市場調節方針について、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、全員一致で決定された。

金融市場調節方針に関する議案(議長案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。

無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.75%程度で推移するよう促す。

採決の結果

  • 賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、野口委員、中川委員、高田委員、田村委員、小枝委員、増委員
  • 反対:なし

2.補完当座預金制度の適用利率の変更等

議長から、委員の意見を取りまとめるかたちで、補完当座預金制度の適用利率の変更等について、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、全員一致で決定され、「補完当座預金制度基本要領」の一部改正については、会合終了後、速やかに公表することとされた。

補完当座預金制度の適用利率の変更等に関する議案(議長案)

補完当座預金制度の適用利率を下記のとおりとし、「補完当座預金制度基本要領」を一部改正すること。

補完当座預金制度の適用利率 年0.75%

採決の結果

  • 賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、野口委員、中川委員、高田委員、田村委員、小枝委員、増委員
  • 反対:なし

3.基準割引率および基準貸付利率の変更

議長から、委員の意見を取りまとめるかたちで、基準割引率および基準貸付利率の変更について、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、全員一致で決定された。

基準割引率および基準貸付利率の変更に関する議案(議長案)

日本銀行法第33条第1項第1号の手形の割引に係る基準となるべき割引率(以下「基準割引率」という。)および同項第2号の貸付けに係る基準となるべき貸付利率(以下「基準貸付利率」という。)を、下記のとおりとすること。

基準割引率および基準貸付利率 年1.0%

採決の結果

  • 賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、野口委員、中川委員、高田委員、田村委員、小枝委員、増委員
  • 反対:なし

4.対外公表文(「金融市場調節方針の変更について」)

以上の議論を踏まえ、対外公表文が検討された。高田委員からは、物価の見通しについて、基調的な物価上昇率を含め、消費者物価は既に概ね「物価安定の目標」に達する水準にあるとして、田村委員からは、基調的な物価上昇率の見通しについて、見通し期間の半ば以降、「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するとして、反対するとの意見が表明された。

こうした検討を経て、議長からは、高田委員と田村委員が一部記述について反対する旨を脚注に記載した対外公表文(「金融市場調節方針の変更について」<別紙>)が提案され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。

6.議事要旨の承認

議事要旨(2025年10月29日、30日開催分)が全員一致で承認され、12月24日に公表することとされた。

以上


  • (注)「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す。」本文に戻る

(別紙)

2025年12月19日
日本銀行

金融市場調節方針の変更について

  1. 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。

    無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.75%程度で推移するよう促す1

  2. 上記の金融市場調節方針の変更に伴い、以下のとおり、各種制度の適用利率の変更を決定した2(全員一致)。
    1. (1)補完当座預金制度の適用利率

      補完当座預金制度の適用利率(日本銀行当座預金<所要準備額相当部分を除く>への付利金利)については、0.75%とする3

    2. (2)基準貸付利率4

      補完貸付制度については、その適用金利である基準貸付利率を1.0%とする。

  3. わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している(別紙)。賃金を巡る環境を整理すると、労働需給は引き締まった状況が続いているほか、企業収益は、関税政策の影響を加味しても、全体として高い水準を維持することが見込まれる。こうしたもとで、春季労使交渉に向けた労使の対応方針や日本銀行の本支店を通じたヒアリング情報等を踏まえると、来年は、今年に続き、しっかりとした賃上げが実施される可能性が高く、企業の積極的な賃金設定行動が途切れるリスクは低いと考えられる。この間、米国経済や各国の通商政策の影響を巡る不確実性は引き続き残っているものの、低下している。物価面をみると、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、消費者物価の基調的な上昇率は、緩やかな上昇が続いている。

    このように、最近のデータやヒアリング情報からは、賃金と物価がともに緩やかに上昇していくメカニズムが維持される可能性が高いと考えられ、先行き、「展望レポート」の見通し期間後半には、基調的な物価上昇率が2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するという、中心的な見通しが実現する確度は高まっている。

    こうした経済・物価情勢を踏まえ、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観点から、金融緩和の度合いを調整することが適切であると判断した。政策金利の変更後も、実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持されるため、引き続き経済活動をしっかりとサポートしていくと考えている。

  4. 今後の金融政策運営については、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、「展望レポート」で示している経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。

以上


  1. 新たな金融市場調節方針は、翌営業日(12月22日)から適用する。本文に戻る
  2. 補完当座預金制度の適用利率および基準貸付利率は、翌営業日(12月22日)から適用する。本文に戻る
  3. 被災地金融機関支援オペ、気候変動対応オペの貸付利率は、引き続き、補完当座預金制度の適用利率となる。本文に戻る
  4. 日本銀行法第15条第1項第2号に規定する「基準となるべき貸付利率」。なお、同第1号の「基準となるべき割引率」も1.0%とする(手形割引の取り扱いは現在停止中)。本文に戻る

(別紙)

経済・物価の現状と見通し

  1. わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は、米国の関税引き上げの影響を受けつつも、基調としては横ばい圏内の動きを続けている。企業収益は、製造業において関税による下押しの影響がみられるが、全体としては高水準を維持しており、業況感も良好な水準で推移している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、雇用・所得環境の改善を背景に底堅く推移している。一方、住宅投資は減少している。この間、公共投資は横ばい圏内の動きを続けている。わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、米などの食料品価格上昇の影響等から、足もとでは3%程度となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。
  2. 先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が幾分減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは緩やかなものにとどまると考えられる。その後については、海外経済が成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、米などの食料品価格上昇の影響が減衰していくもとで、政府の物価高対策の効果もあり、来年度前半にかけて、2%を下回る水準までプラス幅を縮小していくと考えられる。その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、基調的な物価上昇率と消費者物価(除く生鮮食品)の上昇率はともに徐々に高まっていくと予想され、「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる(注)
  3. リスク要因としては、各国の通商政策等の影響を受けた海外の経済・物価動向、企業の賃金・価格設定行動、金融・為替市場の動向などがあり、それらのわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある。

以上


  • (注)高田委員は、物価の見通しについて、基調的な物価上昇率を含め、消費者物価は既に概ね「物価安定の目標」に達する水準にあるとして、田村委員は、基調的な物価上昇率の見通しについて、見通し期間の半ば以降、「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するとして、反対した。本文に戻る