このページの本文へ移動

金融政策決定会合における主な意見
(2025年10月29、30日開催分)1

2025年11月10日
日本銀行

1.金融経済情勢に関する意見

経済情勢

  • わが国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。先行きは、各国の通商政策等の影響を受けて成長ペースは伸び悩むものの、その後は海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくとみられる。
  • わが国経済は、米国の関税政策の影響がこれまでのところ限定的なこともあり、緩やかな成長軌道を維持している。
  • 米国の関税政策による日本経済への下押し圧力、特に輸出関連の製造業の業績への影響は相応に大きいが、大手・中堅企業は関税を織り込んだ経済活動・戦略に移行している。今後も関税政策の影響のほか、関税政策が変更される可能性もあるが、先行きを見通すうえで7月時点よりも霧が薄くなったと判断している。
  • 米国の関税政策の影響が今後本格化するとしても、想定される影響の規模は以前よりは小さくなってきており、わが国の成長ペースの伸び悩みもそれほど大きくないと見込まれる。メインシナリオとしては、本年度、来年度ともに、潜在成長率をやや上回る成長が続く、という姿を想定している。
  • 米国では、減税や規制緩和等の経済底上げ政策に移行する中、関税によるこれからのマイナスの動きは生じ難いと考える。
  • 先週新内閣が発足したが、現時点では政府の政策の方向性や中身についての情報は十分とは言い難く、見通しに組み込めていない。財政要因は、経済や物価の見通しを立てるうえで、重要なファクターである。
  • 不動産やM&Aを中心に銀行貸出など信用面で拡張的な動きが生じ出したことは、実質金利が大幅なマイナスであることの効果を示すものと捉えている。
  • 実質金利が大幅なマイナスとなっている中、不動産価格などの動向についても、留意する必要がある。

物価

  • 消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペースの影響などを受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで消費者物価とともに徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。
  • 米国の関税政策による下押しの影響がこれから顕在化するにしても、わが国の景況は、物価上昇率低下による実質賃金の改善などによって相応に維持され、物価の基調も2%に向けて緩やかに上昇し続けていくと考える。
  • 物価面では、食料品価格の上昇の影響が顕著で、他の分野における企業の価格設定行動の変化は緩やかである。これは、食料品への支出増が消費者の節約志向につながっているためと思われ、今後の賃金と家計所得の動向を注視することが重要である。
  • 物価の上昇は食料品価格の大幅な上昇が影響しており、この背景には人件費や物流費、輸入物価の上昇もあるが、一部の企業の積極的な値上げ姿勢もある。今後の物価動向を見極めるうえでは、こうした企業行動が続くかどうかや、消費者の購買状況等を注視していく必要がある。
  • 企業や家計の予想物価上昇率は既に概ね2%に達し、インフレ・ノルムが定着しており、物価の上振れリスクが懸念される。実際、家計の足もとのインフレ実感が低下したにもかかわらず、5年後の予想インフレ率は上昇している。賃上げが3年連続して物価安定の目標と整合的な水準になることを見通せる来年春には、物価安定の目標達成と判断できる公算が大きい。
  • 最近の金融資本市場の動きや企業の積極的な賃金・価格設定行動を受け、物価安定の目標が概ね達成されたとの判断の確度はより高まったと考える。現段階では物価が上がらないノルムは既に解け、賃金圧力も伴うだけに、リスクバランス上も物価の上振れをより意識する必要がある。

2.金融政策運営に関する意見

  • 経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる。そのうえで、こうした見通しが実現していくかは、不確実性がなお高い状況が続いていることを踏まえ、予断を持たずに判断していくことが重要である。
  • 先行きの政策判断に当たっては、15%の関税率を前提とした各社の収益計画が早晩固まってくることから、これに基づいた企業の賃金設定行動、特に、来年の春季労使交渉に向けた初動のモメンタムが重要である。
  • 先行きの政策運営に当たっては、引き続き、(1)各国通商政策の世界経済への影響、(2)米国の金融政策と為替相場の方向性、(3)国内の物価と賃金の見通しの3点を注視していく必要がある。特に、わが国企業が、関税の影響や米国をはじめとする世界経済の動向についての不確実性を踏まえたうえで、積極的な賃金設定行動を維持するかが重要である。
  • 来年の賃上げ期待はあるものの、物価上昇による消費行動の変容や、資材価格や人件費などの建設コストや住宅価格の上昇、それに伴う住宅着工件数の減少などから、生活者への負担が増していることが窺われる。また、足もとの銀行貸出の伸びにも注意を払っている。今後、先行きの不透明感は残るが、経済・物価の見通しと達成確度次第で金利を調整すべき環境になると考える。
  • 米欧と異なってわが国の政策金利は中立金利を下回っている。株式市場などの金融資本市場が不安定化する可能性もある。足もとは急ぐ状況ではないかもしれないが、適切な情報発信を続けながらタイミングを逃さずに利上げを行うべきである。
  • 金利の正常化をもう一歩進める上では、条件が整いつつあるとみている。もっとも、基調的な物価上昇率については、その定着度合いも確認する必要がある。
  • 関税政策の影響が表れるのが遅れている中にあって、次回利上げはなお緩和の範囲内での調整であることを踏まえると、世界経済や金融市場で悪いニュースがないことを前提に、春季労使交渉に向けた初期段階の労使双方の動きなどから、企業の積極的な賃金設定行動が維持される見通しを確認できれば、政策変更につながると考える。
  • 米国で所得税還付などにより景気が過熱し、円安などを通じてわが国の物価が大きく上押しされるリスクを考えれば、早めの利上げが望ましいともいえるが、米国の労働市場の「奇妙なバランス」が崩れ始め、資本市場も調整局面を迎え、わが国の物価や景気に想定以上に下押し圧力がかかるリスクもまだ否定しきれない。このため、今しばらく見極めて判断する方が適当である。
  • 利上げを行うべきタイミングが近づいているものの、足もと、米国の関税政策をめぐる不確実性が依然として高いことや、わが国新政権の経済政策の方向性がまだ十分に明らかでないことなどを勘案し、状況をもう少しだけ見極めることが適当と考える。
  • 将来の急激な利上げショックを避けるため、金融緩和度合いを調整して、中立金利にもう少し近付けるべきである。
  • 現段階での利上げは、将来のためにも経済のゆがみを抑制し、政策金利を緩やかに均衡状態に戻していくという、金利正常化のプロセスと考えられる。
  • 金融政策は、消費者物価指数が2.0%より上か下かではなく、その背後にある特殊要因やメカニズム(需給状況、賃金、予想インフレ率等)も踏まえて判断することを丁寧に説明すべきである。
  • 縮小均衡マインドが残存する下では、ヘッドライン物価と基調的物価を区別した議論が必要であったが、人々のノルムが転換する中、ヘッドラインを重視したシンプルなコミュニケーションが望ましい。

3.政府の意見

財務省

  • 物価高対策を早急に講じるとともに日本経済の強さを取り戻すための経済政策を作り上げていく方針であり、10月21日の総理からの指示に基づき、総合的な経済対策を策定し、補正予算の編成を進めていく。
  • 日本銀行には、政府との緊密な連携のもと、内外の経済情勢等を十分に注視し、市場とのコミュニケーションを図りつつ、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。

内閣府

  • 日本経済は、米国の通商政策等による影響が自動車産業を中心にみられるものの、緩やかに回復している。
  • 政府は、「経済あっての財政」、「責任ある積極財政」の考え方の下、物価高対策、危機管理投資・成長投資、防衛力・外交力強化を柱とする「総合経済対策」を策定する。
  • 日本銀行には、日本銀行法、政府・日本銀行の共同声明の趣旨に沿って政府と緊密に連携し、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて、適切な金融政策運営を期待する。

以上


  1. 「金融政策決定会合における主な意見」は、(1)各政策委員および政府出席者が、金融政策決定会合で表明した意見について、発言者自身で一定の文字数以内に要約し、議長である総裁に提出する、(2)議長はこれを自身の責任において項目ごとに編集する、というプロセスで作成したものである。本文に戻る