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金融政策決定会合における主な意見
(2025年12月18、19日開催分)1

2025年12月29日
日本銀行

1.金融経済情勢に関する意見

経済情勢

  • わが国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。先行きは、各国の通商政策等の影響を受けて成長ペースは緩やかなものにとどまるものの、その後は海外経済が成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくとみられる。
  • 直近の短観をみても、業況感は自動車関連の中小企業も含めて悪くない。米国の通商政策については、先行きの下振れリスクもひと頃と比べると低下したとみている。
  • 地域企業からは、人手不足に対応した省人化投資が設備投資を押し上げているとの声が多く聞かれた。こうした投資は課題解決に向けた前進であり、経済成長にも寄与している。
  • 来年の賃上げは、高めの物価上昇や堅調な企業業績、人手不足の継続などから、組合のある大企業では、少なくとも今年並みの水準になるとみられる。
  • 先行き1、2年程度は、政府の経済対策が経済の押し上げに働き、成長ペースの一時的な伸び悩みもある程度解消されるかもしれない。家計のインフレ実感が緩和する可能性もある。
  • 今次局面は、コロナ禍で世界同時に金融財政両面から景気押上げ政策がとられた局面と類似し、当時と同様、グローバルな政策サイクルの一致から、世界経済・物価の上振れを展望する。

物価

  • 消費者物価の基調的な上昇率は、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、引き続き、緩やかに上昇しており、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。
  • わが国経済の成長ペースの伸び悩みがメインシナリオではなくなったことから、物価の基調に今後伸び悩みが生じる可能性も小さくなってきている。
  • 消費者物価の上昇率はベース効果を通じて次第に低下していくが、名目賃金はこれまでの上昇モメンタムが来年度の春闘に向けても維持されるため、実質賃金の上昇率は来年前半にはプラス圏に浮上し、物価の基調は2%に向けて着実に上昇し続けると考える。
  • 企業の価格設定行動の積極化や、これまでの為替の影響もあり、物価の上昇は粘着的である。先行きについて、政府の物価高対策や経済政策は、その実際の効果の規模や発現するスピードにもよるものの、消費や投資意欲を高め、経済や中長期的な物価の上昇の力を高めるものと考える。
  • 来春、賃上げ率が、3年連続で物価安定の目標と整合的な水準になることを確認できれば、物価の基調は2%に達したと判断できる。
  • 米関連以外の食料品でも高めの価格上昇が続く中、今後の物価動向を見極めるうえで、企業の値上げ姿勢と消費者の購買状況等を注視すべきである。
  • 世界的な人口動態・気候変動を背景に、輸入物価の上昇ショックが断続的に発生している可能性もあり、基調的物価やインフレ予想にも影響を及ぼし得るため、その動向を注視すべきである。

2.金融政策運営に関する意見

  • 賃金と物価がともに緩やかに上昇していくメカニズムは維持される可能性が高く、先行き、経済・物価の中心的な見通しが実現する確度は高まっている。「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観点から、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整することが適切である。
  • (1)世界経済のダウンサイドリスクは引き続き大きいが、米国の関税の影響は、異例のリスクとまでは言えなくなったこと、(2)わが国企業の収益は高水準を維持し、来春に向けた賃上げのモメンタムは維持されていること、(3)国内物価は、食料品インフレが収束し、いったんは2%を切る見通しだが、その後は賃上げを伴う上昇を予想できることから、今回、金融緩和度合いの調整を行うことが適当である。
  • 企業業績は賃上げを支え得る程度に堅調であり、為替の物価に与える影響などを踏まえると、このままの金融環境では物価上昇圧力が持続するため、次回会合を待つリスクは大きい。
  • 実質金利がその均衡値から乖離した状態が続くと、マクロの資源配分に影響が出て将来的に偏りが生じ、持続的な経済成長にも影響を与え得る。
  • 現状の金融環境が経済実態からみて過度に緩和的になりつつあるため、政策金利を0.25%引き上げることが望ましい。今後も適切なタイミングでの金融緩和度合いの調整が必要である。
  • 日本の実質政策金利は群を抜いて世界最低水準であり、為替市場を通じた物価への影響も踏まえ、緩和度合いの調整を行うことが妥当と考える。
  • 0.75%に金利を引き上げた後も実質金利は大幅なマイナスであり、緩和の範囲内の調整である。引き続き、わが国経済を強力にサポートする金利水準、金融緩和の度合いにある。
  • 政策金利の変更後は、実質金利でみるときわめて低い水準にあるとはいえ、名目金利では久方ぶりの水準となるので、経済や金融市場への影響のモニタリングが肝要となる。
  • 海外環境が今年の利下げ一辺倒の反動から、来年に向け利上げバイアスに一転する可能性もあるだけに、ビハインドザカーブになることを回避すべく、着実な利上げが望ましい。
  • 今後の金融緩和度合いの調整に際しては、特定のペースを念頭に置かずに、経済・物価・金融情勢を丁寧に点検しながら、毎回の決定会合において、適切に判断していくことが望ましい。
  • 先行きの政策運営については、経済・物価や市場の状況を見極め、タイミングをみながら金利の調整を行っていくことが重要である。
  • これまでの利上げに伴う経済・物価への影響はほとんどなく、中立的な金利水準まで、まだかなりの距離があると言える。当面は数か月に一回のペースを念頭に、経済・物価の反応を確認しながら、金融緩和度合いの調整を進めるべきである。適時に政策金利の調整を進めることが、将来の急激な金融引締めを回避し、経済の持続的・安定的な成長に繋がる。
  • 日本経済は現在、食料品などのコストプッシュインフレで多くの家計が困難に直面する一方、2%の「物価安定の目標」の持続的達成が現実味を帯びるという、重層的な局面にある。その点では、財政政策と金融政策は補完し合う関係にある。
  • 中立金利の水準を事前に特定することは難しく、かなりの幅をもってみる必要がある。今後とも、短期金利の変化に対する経済・物価の反応を点検し、中立金利の水準を探りながら、金融緩和の度合いを調整していくことが適当である。
  • 中立金利の特定が困難な中、中立金利の水準を志向していくのではなく、海外金利環境の転換も見込まれるだけに、自由度をもった対応が必要である。
  • 利上げの影響は、金融市場の変化、金融機関の金利設定や融資行動の変化、企業の設備投資行動や家計の貯蓄・投資行動の変化などの経路を経て、景気や物価の変化となって現れてくる。各段階での働きをヒアリングや様々な指標を通じて把握し、利上げの働きを注意深く観察することによって中立金利を見定めていく、というアプローチを、計量的なモデルを用いた中立金利の推計と併用することで、地に足の着いた政策判断が可能になる。
  • 円安や長期金利上昇の背景には、インフレ率に対し政策金利が低すぎることが影響している面が相応にある。適時の利上げを進めることは、先々のインフレ圧力を抑制し、長期金利の抑制に繋がり得る。
  • 長期金利の水準と変動はリスクプレミアム要因も相応にあるとみている。グローバルにも財政やインフレが意識されており、丁寧にみていきたい。

3.政府の意見

財務省

  • 日本銀行には、政府との緊密な連携のもと、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。
  • そのうえで、政策金利変更のご提案については、本会合において適切にご判断いただきたいが、市場等には丁寧に政策趣旨を説明していただきたい。
  • また、今後の金融政策運営に向けては、今回の変更が経済・物価に与える影響等を丁寧に点検するとともに、政府とも引き続き緊密な意思疎通をはかっていただきたい。

内閣府

  • 高市内閣は、「責任ある積極財政」の下、総合経済対策に関連する施策の実行など「強い経済」の実現に最大限注力する。
  • 今回の提案は、物価安定目標を持続的・安定的に実現するために必要と判断されたものと受け止めている。他方で、設備投資や企業収益等の今後の動向を十分注視する必要がある。
  • 日本銀行には、日本銀行法、政府・日本銀行の共同声明の趣旨に沿って政府と緊密に連携し、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向け、適切な金融政策運営を期待する。

以上


  1. 「金融政策決定会合における主な意見」は、(1)各政策委員および政府出席者が、金融政策決定会合で表明した意見について、発言者自身で一定の文字数以内に要約し、議長である総裁に提出する、(2)議長はこれを自身の責任において項目ごとに編集する、というプロセスで作成したものである。本文に戻る