金融政策決定会合における主な意見
(2026年1月22、23日開催分)1
2026年2月2日
日本銀行
1.金融経済情勢に関する意見
経済情勢
- わが国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。先行きは、各国の通商政策等の影響を受けつつも、海外経済が成長経路に復していくもとで、政府の経済対策や緩和的な金融環境などにも支えられて、緩やかな成長を続けるとみられる。
- 米国経済については、雇用を巡るリスクとそれに伴う金融政策の方向性に引き続き不確実性が存在するものの、AIを中心とするIT関連の強さがこれをカバーしていると考えられる。
- 世界中が金融財政両面で緩和策を採用し、AI関連投資拡大も加わる中、本年の世界経済は、回復に向けたモメンタムが始動する転換局面と認識している。
- 今後は、エネルギーや食料品の価格上昇率が徐々に低下し、消費者物価指数も低下するため、実質賃金の上昇率もようやくプラス圏に浮上して、それが定着していくとみられる。
- 円安は、大企業の収益や賃金を押し上げる一方、中小企業の収益や賃金を下押しするので、物価の上押し効果と相まって、格差の拡大に働く可能性がある。
物価
- 消費者物価の基調的な上昇率は、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムが維持されるもとで、緩やかな上昇が続くとみられ、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。リスクバランスは、概ね上下にバランスしている。
- 現在まで、家計の余裕が乏しいこともあって、食料品・外食・宿泊以外の分野では、人件費の価格転嫁の動きは緩やかである。先行きについては、政府の経済対策による家計への所得移転の効果を含めて、物価・家計所得・個人消費のバランスがどうなるか、注視していく必要がある。
- 米価格の値上がりは供給不足が発端だが、昨秋の新米買付け時の需要要因も加わり、複合的な現象であった可能性がある。単純にコストプッシュと割り切れない物価上昇が他の財でも生じていないか、今後も注視していく。
- 既往の食料品価格の上昇に加え、最近では都市部を中心に家賃が上昇している。これには、海外のインフレや円安による資材価格の上昇や人件費の上昇が住宅価格を押し上げ、賃貸需要が増加していることも影響している。政府や自治体の施策はあるが、家計の生活実感と消費行動に与える影響が大きい項目であり、動向を注視している。
- 基調的なインフレの定着度をみるうえで、今後は、前年比でみた食料品価格の減衰ペースに加え、政府の物価高対策が物価の基調に及ぼす影響等を注視したい。もっとも、長期インフレ予想の一部では、既に安定性が確認されつつある。
- 物価上昇の主因が人件費にシフトし、粘着的なインフレに変化してきている。(1)春闘、(2)物価の推移、(3)予想物価上昇率が見通し通りであれば、今春にも、物価の基調は2%に達したと判断できる。
- 企業の価格設定行動が大きく変わりつつあり、円安による輸入価格上昇のパススルーがより強まっている近年のわが国では、為替から物価への影響を従来以上に重視する必要がある。今後より一層の円安が進んだ場合には、消費者物価指数の上昇率の低下ペースが遅くなり、反転上昇する可能性もある。
- 円安に伴い、低価格の輸入品も物価を押し下げにくくなっているとみている。また、国内需要の輸入依存度も上昇しており、為替要因が先行きの物価を押し上げる蓋然性は、以前より高まっている。
- 賃金ノルムの転換に加え、海外経済の回復期待が強まっているだけに、リスクバランス上も物価の上振れをより意識する必要がある。
- わが国経済が労働の供給制約に直面する中、円安のパススルー、財政政策による需要拡大、中国の対日輸出規制等、物価の上振れリスクが膨らんでいる。
2.金融政策運営に関する意見
- 昨年12月の利上げからさほど日数は経過していないが、企業等の資金需要、金融機関の貸出態度、CP・社債の発行環境などを踏まえると、政策金利引き上げ後も、わが国の金融環境は緩和した状態が続いている。
- 超長期の投資案件を抱える企業や中小企業の中には、利払い負担が厳しい先もあるとみられるが、産業界全体としては、現在の堅調な経営環境が金利負担増を吸収する面も大きい。利上げペースが急激でなければ、企業業績に与えるインパクトを過度に心配する必要はない。
- 現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが適切である。
- これまでも、利上げの際に、その経済・物価・金融面の反応を確かめながら、政策金利を引き上げてきており、今後も同じ作業を続けていくことが適当である。
- 現状の金融環境は、足もとの円安の進行を踏まえると、経済実態からみて、まだ相当に緩和的である。物価の基調は着実に2%に近づいており、今後も金融緩和度合いの調整を適切なタイミングで行う必要がある。
- ビハインドザカーブのリスクが顕著になっているとまではいえないが、注意深く適時の政策運営を図っていかなければならない度合いは高まっている。
- 今年、海外金利環境が変化した場合には、意図せざるビハインドザカーブが生じるリスクがある。わが国の実質政策金利は世界最低水準であり、為替市場も実質金利差に着目するだけに、大幅なマイナスの実質政策金利の調整を行う必要がある。
- 円安、長期金利の上昇は、インフレ期待等、ファンダメンタルズが反映されている面も大きい。これに対する金融政策面の処方箋は適時適切な利上げに尽きる。
- わが国にとって物価対策が焦眉の急である中、利上げの影響の検証にあまり長い時間を掛け過ぎずに、次の利上げのステップにタイミングを逃さず進むことが必要である。
- 利上げの企業・家計行動への影響をヒアリング情報で確認し、中立金利と比べた政策金利の現在地を探りつつ、数か月に一度のペースで利上げを進めることが適切である。
- 過去数年の長期金利の上昇は、国債市場が正常化し、物価安定目標の実現を織り込んでいく過程と捉えられるが、ここ2週間程度の動きは一方的なスティープ化であり、注意が必要である。
- 長期金利のリスクプレミアムは、財政やインフレ等による押し上げを、本行の国債保有に伴うストック効果が一部相殺しているとみている。最近の長期金利の上昇ペースに貸し手・借り手が適応できているかは、今後も確認したい。
- 長期国債の買入れについては、これまでの考え方に沿って、減額と異例時の増額等を行うべきである。
- 超長期を中心に国債市場のボラティリティが高まっており、今後も需給の不安があるだけに、例外的な状況においては、国債買入れも含めた柔軟な対応の検討が必要である。
- 最近もあったように、本邦債券市場におけるボラティリティの上昇は、時期や規模の特定はできないとしても、その可能性自体は想定できるものである。ボラティリティの上昇時に中央銀行にとって重要なことは、市場機能が働いているかの見極めである。日本銀行に課された役割と政策の目的に沿って、その範囲で用いるべき手段を理解してもらう努力が引き続き重要である。
3.政府の意見
財務省
- 足もとの世界・日本の市場変動について、高い緊張感をもって注視している。
- 令和8年度予算案では、予算全体の公債への依存度を金融危機収束以降、最も低い水準に抑えた。今後、可能な限り早期の予算成立に向けて取り組んでいく。
- 日本銀行には、政府との緊密な連携のもと、内外の経済情勢等を十分に注視し、市場とのコミュニケーションを図りつつ、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。
内閣府
- 高市内閣は、「責任ある積極財政」の下、総合経済対策に関連する施策の実行など「強い経済」の実現に最大限注力する。
- 今後の「強い経済成長」と「安定的な物価上昇」の両立の実現に向け、適切な金融政策運営が行われることが非常に重要である。
- 日本銀行には、経済・物価動向の丁寧な点検とともに、日本銀行法、政府・日本銀行の共同声明の趣旨に沿って政府と緊密に連携し、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向け、適切な金融政策運営を期待する。
以上
- 「金融政策決定会合における主な意見」は、(1)各政策委員および政府出席者が、金融政策決定会合で表明した意見について、発言者自身で一定の文字数以内に要約し、議長である総裁に提出する、(2)議長はこれを自身の責任において項目ごとに編集する、というプロセスで作成したものである。本文に戻る
