地域経済報告 —さくらレポート— (2010年1月)*
- 本報告は、本日開催の支店長会議に向けて収集された情報をもとに、支店等地域経済担当部署からの報告を集約したものである。
2010年1月18日
日本銀行
目次
- <参考1>地域別金融経済概況
- <参考2>2009年からの各地域の景気判断(総括)の推移
- <参考3>地域別主要指標
I. 地域からみた景気情勢
各地域の取りまとめ店の報告によると、全ての地域が足もとの景気について、「持ち直している」との判断を示したが、ペースや広がりには引き続き差異が認められる。
また、ほとんどの地域が、業種間、企業間等におけるばらつきの存在を指摘しているほか、引き続き水準の厳しさに言及している地域が多い。
なお、今回の地域別総括判断を前回と比較すると、5地域(北海道、東北、北陸、中国、四国)が基調に変化なしと判断した一方、4地域(関東甲信越、東海、近畿、九州・沖縄)では基調に改善方向の変化がみられると判断した。
09/10月判断 | 前回との比較 | 10/1月判断 | |
---|---|---|---|
北海道 | 低迷しているものの、持ち直しの動きもみられる | ![]() |
低迷しているものの、持ち直しの動きもみられる |
東北 | 厳しい状況が続いているが、製造業を中心に持ち直しの動きがみられる | ![]() |
厳しい状況が続いているが、製造業を中心に持ち直しの動きがみられる |
北陸 | 依然として厳しい状況にあるが、一部に持ち直しの動きがみられている | ![]() |
依然として厳しい状況にあるが、一部に持ち直しの動きがみられている |
関東甲信越 | 持ち直しに転じつつある | ![]() |
地理的および業種間のばらつきを残しつつ、緩やかに持ち直している |
東海 | 持ち直しつつある | ![]() |
業種間・企業間の格差が大きいものの、全体としては持ち直している |
近畿 | 雇用面などに厳しさを残しつつも、持ち直しの動きがみられる | ![]() |
雇用面などに引き続き厳しさを残しつつも、緩やかに持ち直している |
中国 | 下げ止まりの状況のもとで、一部に持ち直しの動きがみられる | ![]() |
下げ止まりの状況が続くもとで、一部に持ち直しの動きがみられる |
四国 | 依然として厳しい状況にあるものの、全体として下げ止まっている | ![]() |
一部に持ち直しの動きがみられるものの、全体としては横ばい圏内で推移している |
九州・沖縄 | 持ち直しの兆しがみられるなか、下げ止まった状態にある | ![]() |
緩やかながら持ち直している |
- (注)前回との比較の「
」、「
」は、前回判断に比較して景気の改善度合いまたは悪化度合いが変化したことを示す(例えば、右上がりまたは悪化度合いの弱まりは、「
」)。なお、前回に比較し景気の改善・悪化度合いが変化しなかった場合は、「
」となる。
個人消費は、全ての地域が政策効果による家電販売、乗用車販売の増加に言及したが、全体としての地合いについては、9地域中7地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、近畿、四国、九州・沖縄)で「引き続き弱い」と判断された。この間、東海と中国では、全体としての基調も改善方向に変化したと判断された。
耐久消費財以外の主な動きをみると、百貨店等大型小売店については、全ての地域から、売上高の減少傾向が続いているとの報告があった。観光については、4地域(北海道、東北、関東甲信越、九州・沖縄)が観光客の減少を報告しているが、四国では、堅調に推移していると評価された。
設備投資は、企業収益の悪化等を背景に、各地域で大幅な減少が続いている、ないし低水準で推移していると判断された。もっとも、関東甲信越は「減少幅の拡大には歯止めがかかりつつある」、九州・沖縄も「下げ止まりつつある」と、基調変化の兆しに言及した。
生産については、改善ペースや広がりは異なるものの、引き続き全地域で、増加基調にあると判断された。
主要業種別の動きをみると、全ての地域で、自動車・同部品、電子部品・デバイスについて増加基調にあるとの報告が行われた。また、鉄鋼については6地域(北海道、東北、北陸、東海、中国、九州・沖縄)、化学については4地域(北陸、東海、中国、四国)、非鉄金属については3地域(東北、北陸、四国)で、生産水準が上昇ないし高操業が続いているとされた。この間、一般機械については、4地域(東北、関東甲信越、東海、九州・沖縄)で下げ止まりないし持ち直しと評価された一方、3地域(北陸、中国、四国)では低操業ないし大幅な減産が続いているとされた。紙・パルプについては、3地域(北海道、東北、四国)から、減産継続ないし低操業との報告があった。
雇用・所得環境をみると、雇用情勢は、全地域から厳しい状況が続いていると報告された。すなわち、各地域とも有効求人倍率が低水準で推移しているほか、雇用者数についても多くの地域で減少傾向をたどっている。この間、東海では、労働需給が持ち直していると判断された。
雇用者所得は、冬季賞与等を中心に、全地域で引き続き減少していると判断された。
需要項目等
個人消費 | 設備投資 | 生産 | 雇用・所得 | |
---|---|---|---|---|
北海道 | 政策効果を主因に、持ち直しの動きがみられている | 大幅に減少している | 持ち直しつつある | 雇用情勢は、厳しい状況が続いている。雇用者所得は、企業収益の悪化を背景に、企業の人件費抑制スタンスが根強く、冬季賞与が減少するなど、厳しい状況が続いている |
東北 | 一部に政策効果がみられるものの、全体では弱い状況が続いている | 大幅に減少している | 引き続き持ち直している | 雇用情勢をみると、厳しい状況が続いているものの、下げ止まりの兆しがみられる。雇用者所得は減少が続いている |
北陸 | 全体としては弱い状況にあるが、一部には政策効果から持ち直しの動きが続いている | 大幅に減少している | 在庫調整の進捗や中国等アジア向けを中心とした輸出の増加などから、全体として着実に持ち直している | 雇用情勢をみると、有効求人倍率は低水準で推移し、今春の新卒採用も大幅な前年割れとなる見込みにあるなど、厳しい状況が続いている。雇用者所得も、所定内・所定外給与、特別給与の減少から、引き続き前年を下回っている |
関東甲信越 | 厳しい雇用・所得環境が続いている中で、耐久消費財を中心に各種対策の効果がみられているものの、全体としては弱い地合いが続いている | 厳しい収益状況を背景に大幅な減少が続いているが、減少幅の拡大には歯止めがかかりつつある | 内外の在庫調整の進捗や政策効果を背景に増加を続けている | 雇用情勢は、厳しい状況が続いている。雇用者所得は、企業収益の悪化等を映じて、引き続き大幅に減少している |
東海 | 非耐久財やサービス消費等が引き続き低迷しているものの、自動車等の耐久財が持ち直していることから、全体としては横ばい圏内の動きとなっている | 低水準で推移している | 増加している | 雇用・所得環境は、引き続き厳しい状況にあるが、労働需給は持ち直している |
近畿 | 耐久消費財が政策効果により持ち直している一方、雇用者所得の減少が続く中、その他の分野では弱い動きが続いている | 企業収益が依然厳しい水準にあるもとで、減少している | 輸出の増加や省エネ家電への政策支援を背景に、持ち直している。この間、在庫は減少を続けている | 雇用情勢をみると、有効求人倍率が低い水準となっている中で、雇用者数は引き続き減少している。賃金は弱い動きが続いている。雇用者所得は、減少が続いている |
中国 | 経済対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直しの動きがみられる | 大幅に減少している | 緩やかな持ち直しの動きが続いている | 雇用情勢は、厳しい状況が続いており、有効求人倍率は大幅に低下した後、横ばい圏内で推移している。雇用者所得は、企業の業績悪化に伴う人件費抑制等を背景に、弱めの動きが続いている |
四国 | 各種対策の効果から耐久消費財の販売が増加しているものの、厳しい雇用・所得環境のもとで、全体としては弱めの動きとなっている | 低水準で推移している | 全体として緩やかに持ち直している | 雇用情勢は、厳しい状況にある。雇用者所得は、冬季賞与の削減などから大幅に減少している |
九州・沖縄 | 政策効果等から一部に持ち直しの動きがみられるものの、全体としては弱い動きが続いている | 低水準ながら下げ止まりつつある | 緩やかなペースながら着実に増加している | 雇用・所得情勢は、厳しい状態にある。有効求人倍率は、足もと低下傾向に一服感がみられるものの、常用労働者数が引き続き減少傾向を辿っているほか、一人当たり現金給与総額は、減少傾向が続いている。 |
II.地域の視点
根強い価格下落圧力の中での企業戦略
最近の企業の価格設定動向をみると、業種、製商品・サービス、製造・流通小売段階別等で強弱はあるものの、価格引き下げの動きが続いている。業種ごとにみると、製造業については、素材業種では、化学や非鉄金属などの一部業種で、商品市況上昇を反映した値戻しの動きがみられるが、加工業種では弱めの動きが続いている。非製造業については、製造業における費用削減の影響や消費者の節約志向、低価格志向の強まり等を背景に、幅広い業種で価格引き下げの動きが続いている。
こうした状況のもとで、企業の多くは、海外生産比率引き上げ等も含めた原価低減や人件費も含めた各種経費節減強化などに努めている。そうした中、過当な価格競争を回避しようとする動き、例えば、(1)セール実施方法の工夫による値下げの効率性向上、(2)ハードだけでなく、ソフト(ハードの有効・効率的な使用方法)を併せて販売する、(3)過当な価格競争とは一線を画し、利幅を縮小せずに価格を引き下げる工夫(高付加価値商品・サービス開発・投入等)、(4)内容量や品質・機能を抑えることで価格を引き下げ、収益率を低下させることなく低価格志向に対応する、(5)インターネット等により販売チャネルを拡大する、といった動きがみられている。
先行き、製商品・サービス価格は、当面、弱含みの状況が続くとの見方が多いが、流れを変えるものとして期待されているのは、値ごろ感の台頭(不動産、卸・小売)や消費者の節約疲れ(小売、個人向けサービス)、企業収益改善による需要増加(一般機械、企業向けサービス)等である。前述したような価格競争以外の需要獲得策については、相応の手応えを感じている実施先が少なくない。今後、こうした取り組みがさらに広がりをみせれば、全体としての物価の下落傾向に対する歯止め効果が期待できるのではないか、との声も聞かれるところ。
日本銀行から
本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行調査統計局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。
照会先
調査統計局地域経済担当
Tel : 03-3277-2649