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全国11支店金融経済概況 (1999年 1月)

1999年 1月25日
日本銀行

目次

北海道地区金融経済概況

1999年 1月25日
日本銀行札幌支店

北海道地区の景気は、一部に明るい動きがみられるものの、全体としてみれば民需の低迷から依然厳しい状態にある。最終需要面では、公共投資が増加基調にあるほか、住宅投資にも持直しの兆しが窺われているが、その一方で、個人消費は低迷が長期化しており、設備投資も減少傾向にある。こうした最終需要の動向を映じ、生産は減少しているほか、企業収益も悪化しており、その下で雇用・所得環境も一段と厳しさを増している。

最終需要面の動きをみると、公共投資については、総合経済対策の効果から発注額が前年比大幅増加を続けており、関連資材メーカーでも受注増から生産水準を引き上げる先が散見されるなど、徐々に波及効果が顕現化してきている。

住宅投資も、低水準の公庫金利や住宅ローン減税の実施を眺め、持家を中心に持直しの兆しが窺われる。

個人消費は、パソコンや軽乗用車等一部耐久消費財の販売は堅調に推移しているものの、雇用・所得環境の悪化に伴う消費者の節約意識の浸透から、全般的には低迷を続けており、歳末・初売り商戦も総じて低調に推移した。

設備投資は、足許の業績悪化等を背景に、維持更新投資についても極力絞り込む動きが広範化するなど、減少傾向が続いている。

こうした最終需要の動向を映じ、企業の生産は、建設資材関連で公共工事向け出荷増から生産水準を引き上げる先がみられるものの、個人消費や設備投資の減少を映じ、高炉(自動車向け特殊鋼)、電子部品(パソコン関連)、紙・パ、食料品、鋳鍛鋼製品・機械関連では低水準の生産を余儀なくされるなど、全体としても減少傾向にある。

企業収益については、受注・販売の不振から10年度上期の経常利益が大幅減益となるなど、一段と悪化している。

雇用面をみると、人員リストラの実施等を背景に失業率が高水準で推移するなど、厳しい状況にある。また、所得面をみても、冬季賞与が前年実績を下回る先が少なくなく、引続き悪化している。

企業倒産は、一連の企業金融支援策の奏効等から年末にかけての企業金融が総じて落ち着いてきたこともあって、このところ減少傾向にある。

金融面をみると、貸出は、公共投資の増加に伴い地公体向けが増加基調を辿っているが、企業からの前向きな資金需要に動意は窺われず、全体でも依然低迷している。一方、預金は、個人預金が堅調に推移しているほか、法人預金も、公共工事関連資金の流入増がみられており、全体でも、底固く推移している。

以上

東北地区金融経済概況

1999年 1月25日
日本銀行仙台支店

東北地区の景気は、業種・企業間で明暗のバラツキを伴いつつも、全体としては後退を続けており、企業マインドの悪化にも歯止めがかかっていない。

すなわち足元では、公共投資が増加傾向にあり、また耐久消費財の一部で販売持ち直しの動きがみられ、関連業種ないし企業の生産姿勢はこれまでの減産一方から幾分和らいでいる。

もっとも、こうした動きは一部にとどまり、波及も今のところは目立っておらず、むしろ設備投資、住宅投資が低迷しているほか、個人消費も全体としては低調に推移している。このため、企業の生産面も総じてみると引き続き減産を継続ないし一段と強化する方向にあり、雇用情勢も一段と厳しさを増している。この間、企業倒産も高水準で推移している。

最終需要動向をみると、個人消費については、百貨店売上高が低調に推移している。年末・年始商戦をみると、歳暮・クリスマス需要は出足こそは順調だったものの、その後は大方の品目において息切れが目立ったほか、年始は福袋が順調だったものの、一般商品の立ち上がりは総じて鈍い。乗用車販売は、軽自動車が新規格車投入効果から堅調に推移しているが、その他の既存車種の不振が根強く、全体としてみると金額ベースでは低調の域を脱していない。家電販売は、パソコンやデジタル製品(ビデオカメラ、MDプレーヤー)が堅調なほか、省エネタイプの一部新製品(洗濯機、冷蔵庫)に動意がみられているものの、エアコン等その他既存製品は依然低調に推移している。

公共投資は、補正予算の執行が徐々に進捗しており、関連業界への波及も広がってきている。特に、昨年夏の豪雨災害の復興事業が本格化しつつある地域では、雇用面や資機材等への波及が強くみられている。

住宅投資は、住宅着工戸数が持家、貸家とも減少を続けている。

この間、10年度の設備投資計画(企業短期経済観測調査<東北地区>)は、末端需要の不振や業績の悪化から、製造業、非製造業とも大方の先で抑制的なスタンスを崩しておらず、前年度を大幅に下回る計画となっている。

主要製造業の受注・生産動向をみると、電気機械では、通信機器が移動体など通信関連需要の落ち込みから大幅な減産を実施しているほか、その他の幅広い品目(半導体ロジックIC、OA・AV機器、各種電子部品)でも、内需の不振から減産を継続ないし一段と強化しており、雇用調整圧力が強まっている。もっとも、パソコンでは新モデルの販売好調から完成品メーカーではフル操業に転じている先がみられるほか、CD-ROMドライブもノート向けは生産水準を幾分引き上げている。

輸送用機械では、トラックなどの内需低迷から全体としては低操業を続けているが、モデルチェンジ効果から一部にフル操業の動きがみられる。

消費関連業種では、時計が生産水準を引き下げているほか、衣料品もアパレルメーカーからの受注量低迷を背景に大幅な減産を続けている。食品では、缶詰、冷凍・レトルトが小売・外食業者向け受注の不振から生産水準を引き下げているほか、練製品も土産品販売の不振などから抑制気味の操業を続けている。紙・パでは、新聞・印刷用紙が広告・チラシ需要の不振から、段ボール原紙も家電・衣料品梱包需要の低迷から、減産を継続している。

設備関連業種(鋳物、切削工具、工作機械、工場ラインシステム、半導体製造装置)では、国内自動車・家電メーカーを中心とした企業の投資抑制や、半導体メーカーの設備投資先送りの影響から、幅広い品目で減産を継続ないし生産水準をさらに引き下げている。

建設関連業種(窯業・土石、鉄鋼、一般製材、合板)では、民間建設関連向けが減少を続けているものの、公共投資関連向けが工事発注の増加から徐々に持ち直しているため、窯業・土石、鉄鋼、合板で減産を緩和する動きが一部に広がりつつある。

10年度の企業の売上・収益動向をみると、製造業が減収減益を見込んでいる。非製造業は減収の見通しながら、収益は新規出店やリストラ策の奏効を見込んで前年を上回る見通しにある。

雇用情勢については、事業主都合離職者が増勢を続けている一方、新規求人数が幅広い業種で一段と減少していることから、有効求人倍率は低下傾向にある。所定外労働時間も、企業活動の鈍化を映じて減少を続けている。

企業倒産をみると、建設業や卸・小売業を中心に件数、金額とも引き続き高水準で推移している。

金融面をみると、預金は法人、公金ともに引き続き低調に推移しているほか、個人も伸び悩んでいる。また、貸出も資金需要の低迷から低調の域を脱していない。

以上

北陸地区金融経済概況

1999年 1月25日
日本銀行金沢支店

北陸地区の景気は、依然として後退を続けているものの、最終需要の悪化テンポは幾分鈍化しつつある。

最終需要面の動きをみると、公共投資は、総合経済対策の効果もあって増加傾向を続けている。

輸出は、欧米向けが工作機械や電子部品(携帯電話用部材)などを中心に引き続き堅調に推移しているほか、アジア向けが合繊織物などで減少幅を縮小しているため、全体ではこのところ悪化テンポが幾分和らいできている。

一方、設備投資は、国内需要の低迷や企業収益の悪化などを映じて製造業を中心に減少傾向が続いている。

住宅投資は、持家が持直し傾向にあるものの、分譲の落ち込みが大きく、全体ではなお低調裡に推移している。

個人消費は総じてみれば低迷基調が続いている。すなわち、量販店の「消費税分還元セール」の奏効や、AV機器や白物家電等の家電販売増加など一部で堅調な動きがみられるものの、百貨店売上げ、乗用車新車登録台数などで前年割れの状況が続いている。また、観光面でも、温泉旅館では団体・法人客のほか、個人・グループ客も景気低迷を映じて減少傾向が続いている。

こうした最終需要のもと、生産動向をみると、電子部品(携帯電話用、パソコン関連の部材)では、欧州向け輸出の増加や新製品投入効果から操業度を引き上げているほか、工作機械でも既往受注を背景に高めの生産を維持しているが、主力の合繊織物やアルミ建材をはじめ、建設・繊維・プレス機械や化学(医薬品、界面活性剤等)など多くの業種では、長引く内需低迷の影響やアジア地域からの受注減少を映じて、操業度の引き下げや低操業を続けている。

この間、雇用面をみると、新規求人数の減少テンポが幾分鈍化してきているものの、有効求人倍率(含むパート)は低水準で推移している。また、雇用者所得も、生産の減少を映じて所定外労働時間が前年割れを続けている中、所定外給与を中心に低迷している。

金融面をみると、預金は、個人預金では、定期性預金が小幅の伸びに止まっている一方、流動性預金が堅調な伸びを維持しているため、全体としては底固く推移している。一方、法人預金は、企業業績の低迷や財務リストラ圧力等を背景に、低調な地合いが続いている。

貸出は、個人向けが消費者ローンの低迷や住宅ローンの伸び率鈍化から、引き続き低調裡に推移している。また、法人向けも、需資が全般に低迷しており、中でも設備資金は、企業の投資抑制の動きを反映し、低調度合いが強まっている。

この間、貸出約定平均金利(ストック)は、既往最低圏で推移している。

以上

神奈川県内金融経済概況

1999年 1月25日
日本銀行横浜支店

神奈川県経済は、悪化テンポこそ幾分和らいできたものの、最終需要が低迷する下で生産調整が継続され、企業収益の悪化や個人所得の減少傾向が続いているなど、極めて厳しい状況にある。すなわち、公共事業関連の受注が一部資材にみられ始めているものの、設備投資や住宅投資は引続き減少傾向にあるほか、輸出もアジア向けを中心に減少し、個人消費も停滞基調を脱していない。こうした状況下、県内企業の生産は、在庫調整が進捗しつつあるが、最終需要の弱さを反映して、多くの業種でなお大幅な減産を続けている。このため、企業収益は悪化傾向を続け、雇用者所得も減少しているほか、労働需給面でも依然緩和した状態が続いている。

最終需要の動向をやや詳しくみると、個人消費については、小売筋の消費喚起策はそれなりの効果を挙げているものの、総じていえば、個人所得の落込みもあって停滞基調を脱していない。すなわち、乗用車販売も軽乗用車は売上好調ながら全体としていえばなお減少を続けているほか、家電販売も低調に推移している。また、百貨店売上高も各社での横浜ベイスターズ優勝セールが奏効し、売上が回復する局面もみられたが、その後は歳暮商戦の不振から再び前年割れで推移している。この間、レジャー関連では、国内・海外旅行ともに低調に推移している。

設備投資を昨年12月に実施した企業短期経済観測調査(神奈川県分)でみると、県内企業の98年度設備投資計画は、製造業、非製造業とも、前回(9月)調査に比べさらに下方修正され、製造業では2年連続、非製造業では2年振りの減少が見込まれている。

住宅投資は、持家、貸家、分譲とも引き続き減少傾向にある。また、公共投資を公共工事請負額でみると、上期前倒し発注の効果から98年7〜9月期には約2年振りに前年を上回ったが、その後は再び減少傾向にある。

輸出面では、半導体部品を中心とした電気機械や自動車部品等で引続き減少したことから、横浜港通関輸出額は前年割れが続いている。輸入についても、非鉄金属等の素材商品の減少から、前年を大きく下回る状況が続いている。

県内企業の生産動向をみると、多くの業種で大幅な減産が続いている。すなわち、自動車・同部品では、在庫調整の進捗がみられているものの、国内販売の落込みが響き減産が続いている。工作機械についても、国内向け受注の減少に加え、ここへきて輸出向け受注の減少もあって生産水準を大きく低下させている。汎用電子部品も、家電販売や自動車販売の低迷に加え、工作機械の生産水準引き下げの影響もあって減産しているほか、半導体関連も生産水準を引き下げている。また、鉄鋼、化学といった素材業種でも、在庫調整はかなり進捗しているものの、加工業種からの需要減少等に伴い減産を続けている。

雇用面をみると、製造業、非製造業ともに雇用の過剰感は根強く、県内常用雇用者数は前年割れを続けるなど、労働需給は引続き緩和した状態にある。この間、名目賃金についても、前年割れが続いている。

金融面をみると、貸出面では、昨年秋に実施された信用保証制度の拡充に伴い、各金融機関とも中小企業向け融資に前向きに取組んでいることから、伸び率のマイナス幅は縮小しつつある。預金面では、法人預金が引き続き低調に推移していることに加え、個人預金が伸び悩んでいることから、預金全体の伸び率は鈍化傾向にある。この間、企業倒産件数は、上記信用保証制度拡充の効果もあって、昨年末にかけてかなり減少をみた。

以上

東海地区金融経済概況

1999年 1月25日
日本銀行名古屋支店

東海地区4県(愛知、岐阜、三重、静岡)の最近の経済動向をみると、経済対策の効果等から、公共投資が増加しているほか、住宅投資についても、全体としては減少傾向にあるが、政策金利引き下げ効果も加わって、一部に持ち直しの動きがみられる。しかしながら、個人消費は、総じてみれば低迷が続いており、設備投資も減少している。さらに、輸出は、全体として頭打ちとなっている。

こうした需要動向の下で、生産は、減少傾向にある。また、雇用面では、労働需給は引き続き緩和しており、常用雇用者数も減少を続けている。この間、物価は軟調に推移している。以上のように、東海地区の景気は、一部に政策効果がみられるが、国内民間需要の弱まり等から、全体としては悪化を続けている。

個人消費は、総じてみれば低迷が続いている。すなわち、家電量販店の売上げは、パソコン関連製品や映像機器等の好調から、引き続き前年を上回っている。一方、自動車販売については、軽自動車の新規格車投入効果は窺えるものの、普通・小型乗用車がさらに落ち込んでいることもあって、全体としてみると一段と低調に推移している。この間、衣料品販売も低迷しているほか、サービス支出については、旅行取扱高が弱含みとなっており、外食の売上げも全般的には低調に推移している。

設備投資は、減少している。すなわち、製造業では、中堅・中小企業が、収益の悪化や先行きの需要に対する不透明感の高まり等を背景に、引き続き抑制的な投資姿勢を持続している。また、自動車関連等の大企業は、新製品開発投資等を中心に足許では総じて高水準の投資を続けているものの、需要の先行きについての慎重な見方等から投資案件を絞り込む動きがみられる。この間、非製造業では、電力が投資抑制スタンスを一段と強めている。

住宅投資の動向をみると、新規住宅着工については、持家で、昨年末までの住宅公庫金利引き下げ効果等から、持ち直しの動きがみられるものの、分譲、貸家が低迷を続けていることから、全体としては依然低調に推移している。こうした中で、工事量も減少している。

公共投資については、公共工事請負額が、政府の総合経済対策に伴う発注の本格化から、引き続き前年水準を大幅に上回っており、建設業者の官庁関連の工事量も増加している。

輸出は、アジア向けが総じて低水準横這い圏内の動きを続ける中で、欧州向けは堅調を持続しているものの、主力の米国向けで伸び悩んでいるほか、その他地域向けも弱含んでいるため、全体として頭打ちとなっている。

こうした需要動向の下で、生産は、減少傾向にある。すなわち、自動車を中心とする耐久消費財では、普通・小型乗用車の国内販売が一段と落ち込んでいることを主因に操業度を引き下げている。素材業種でも、鉄鋼は北米向け輸出を大幅に絞り込んでいるうえ、国内出荷も弱含んでいるため、減産を一段と強化する方向にあるほか、窯業製品、繊維製品も抑制的な生産スタンスを続けている。この間、情報通信機器・同部品は、欧米向けを中心に高操業を続けている。

雇用面では、労働需給は、鉱工業生産の減少等を背景に、引き続き緩和している。すなわち、所定外労働時間が前年割れとなっているほか、求人数も減少を続けている。この間、求職者数の増加傾向が続いていることから、有効求人倍率も徐々に低下している。こうした中で、常用雇用者数も各業種で減少している。

物価面では、主要商品市況は、最終需要が低迷する中で、総じて軟調に推移している。この間、消費者物価も、前年水準を下回っている。

金融面では、昨年10月以降の信用保証協会保証制度拡充を受けて、同保証制度を利用した中小企業向け貸出が高い伸びを示しているほか、本行の企業金融支援策の効果もあって、逼迫感は幾分和らいできているようにみられる。もっとも、企業の資金需要が設備・運転資金とも低迷していることもあって、貸出全体の伸びは徐々に低下している。

この間、管内金融機関は、基本的には地元中堅・中小企業向け貸出を伸ばしていく姿勢にあるが、一方で、信用リスク管理や取引採算管理を強化しており、企業収益が悪化している中で、企業金融の動向については、引き続き十分注意してみていく必要がある。

以上

京都管内(京都府、滋賀県)金融経済概況

1999年 1月25日
日本銀行京都支店

最近の管内景気をみると、依然として悪化傾向を辿っており、企業マインドも一段と慎重化している。

すなわち、最終需要面をみると、公共投資の発注は増加基調にある。一方、輸出は頭打ちとなり、個人消費が総じて低迷を続けているほか、住宅投資も減少傾向を辿っている。こうした中で、設備投資は、これまで高水準を維持してきた製造業大企業でも減少傾向が明確化するなど、全体として調整色が強まっている。このような最終需要の動向を背景に、企業は大幅な減産を続けている。この結果、在庫は減少傾向にあるが、依然高めの水準にある。

以上のような支出・生産活動の下、企業収益が為替円高化もあって大幅に悪化しているほか、雇用・所得環境も引続き厳しさを増している。

最終需要の動きをやや詳しくみると、公共投資は、受注ベース(公共工事請負金額)でみると、補正予算の執行進捗等から、このところ増加傾向を示している。

一方、輸出については、欧米向けは、パソコン・移動体通信機器用の電子部品や計測機器等を中心に引続き堅調に推移しているが、このところ減速の動きがみられるほか、アジア向けが低迷を続けているため、全体としては頭打ち傾向にある。

また、個人消費については、自動車販売がこのところ不振の度合いを強めているほか、百貨店売上げも総じて低調を続けている。家電販売も一部商品では堅調な売れ行きを示しているが、全般的には低調に推移している。この間、京都観光についても入り込み客の減少が続いている。さらに、住宅投資も、新設住宅着工戸数をみると、前年割れを続けている。

この間、設備投資については、非製造業、製造業中小企業では、収益の大幅悪化や資金調達面の制約等から引続き減少している。また、これまで高水準を維持してきた製造業大企業でも、為替円高化等に伴う収益の下振れや、先行き不透明感の強まり等から、このところ減少傾向が明確化しており、全体として調整色が強まっている。

生産面をみると、電子部品は欧米向け輸出の堅調持続から高操業を継続しているものの、輸送用機械、繊維機械等の一般機械がアジア向け輸出の低迷を主因に減産を続けているほか、半導体製造装置も内外需の不振から生産が大幅に落ち込んでいる。また、地場産業の和装関連でも需要不振から大幅減産を継続しているなど、全体として大幅な生産調整を続けている。

企業収益をみると、最終需要の低迷に加え、大幅な需給ギャップや昨秋以降の為替円高を背景とする製商品価格下落の影響もあって、総じて悪化傾向を強めており、このところ中堅・中小企業を中心に本格的なリストラに踏み切る先が次第に増えている。

こうした状況の下で、雇用・所得面をみると、有効求人倍率が低下傾向を辿っているほか、所定外労働時間も引続き前年を大幅に下回っている。また、雇用調整助成金の申請件数も引続き高水準にあり、雇用情勢は厳しさを増している。また、企業倒産も、繊維、建設等の中小・零細企業を中心に引続き高水準に推移している。

金融面をみると、民間金融機関貸出については、住宅関連需資が既往住宅金融公庫貸出等からのシフトを中心に引続き底固く推移しているほか、事業性資金の貸出にも保証協会による中小企業金融安定化特別保証制度の利用による下支え効果が窺われるものの、一般企業需資が不振の度合いを強めていることから、総じて低迷を続けている。

一方、預金については、個人預金は流動性預金を中心に高目の伸びを維持している一方、法人預金は、企業の業況低迷に加え、金融機関サイドによる市場性大口定期預金の取入れ抑制もあって、引続き低調に推移している。

以上

大阪管内(大阪府、奈良県、和歌山県)金融経済概況

1999年 1月25日
日本銀行大阪支店

管内の経済情勢をみると、年末を挟んでいくつか明るい材料が出てきているが、全体としては依然厳しい状況にある。

すなわち、最終需要面では、公共投資は増加に転じている。個人消費は一部に売れ行き良好な商品がみられるが、全体としては弱含んでいる。また、設備投資が一段と減少しているほか、住宅投資も低迷を続けており、輸出の増加テンポも鈍化している。こうした最終需要動向を背景に、生産の減少テンポは足許やや緩やかなものとなっている。一方、企業収益は全般に悪化しており、その下で雇用・所得環境も悪化を続けている。

最終需要面の動きをみると、輸出は、AV機器、工作機械等を中心に欧州向けが増加を続けているほか、東南アジア向けが横這い圏内にあるものの、米国向けが鋼材、工作機械等を中心に弱含んでいることから、全体でも増加テンポが鈍化している。

設備投資は、収益環境の悪化を反映し、投資姿勢が一段と消極化しており、引き続き減少している。

個人消費は、一部に売れ行き良好な商品(パソコン、AV機器、軽自動車)がみられるが、旅行・高額品販売の減少傾向が続いているなど、全体としては引き続き弱含んでいる。

住宅投資は、低迷が続いている。

公共投資は、総合経済対策の効果から増加に転じている。

生産をみると、薄板、ガラス、塩ビ樹脂等、設備投資・住宅投資関連の品目では、引き続き減少しているものの、個人消費関連の一部(パソコン、AV機器、軽自動車)や公共投資関連品目(合板、塩ビ管、電線・特殊線等)が増加しており、全体として減少テンポは足許やや緩やかなものとなっている。

雇用・所得環境は、有効求人倍率の低下、所定外労働時間の減少が続くなど、引き続き悪化している。

物価は、軟調に推移している。

企業金融については、信用保証制度の拡充等、各種対策の効果もあって、逼迫感が幾分和らいでいる。こうした中、企業倒産は、このところ減少している。

金融面をみると、貸出については、景気悪化に伴う企業需資の落ち込みや住宅ローンの増勢鈍化から、低調な地合が続いている。金融機関の貸出態度は、総じてみれば依然慎重であるが、中小企業向け貸出をやや積極化する動きもみられる。

預金については、個人預金が増加基調を続けているほか、法人預金も横這い圏内にあり、総じて安定的に推移している。

以上

兵庫県内金融経済概況

1999年 1月25日
日本銀行神戸支店

県内景気をみると、雇用・所得環境の悪化を背景に、個人消費が家電の一部新製品を除き総じて低調に推移しているほか、震災復興需要の一巡等から公共投資、住宅投資も大幅前年割れを続けている。こうした需要減少を受け、企業の売上・収益は大幅に下振れており、設備投資の抑制、生産の下押しといった悪循環に陥るなど、景気は深刻な状況が続いている。

個人消費をみると、家電販売はパソコン、白物等の新製品を中心に持ち直しつつあるものの、乗用車販売は軽乗用車を除き前年割れを続けている。また、百貨店やスーパーの売上も、バーゲンセール等には動意がみられるものの、総じてみると依然として伸び悩んでいる。

住宅投資は、震災復興需要の一巡等から大幅前年割れを続けている。一方、公共投資は、本四架橋や大型の震災復興工事の完成に加え、経済対策も小口案件に止まり、効果が今一つなこともあり、前年を大幅に下回っている。

この間、設備投資は、設備過剰感の強まりや企業収益の悪化、金融面の制約等から、製造業を中心に3年連続の減少基調が続いている。

こうした状況下、管内企業の生産は、大手造船等の一部業種を除いて生産調整色を強めている。すなわち、鉄鋼が内需不振に加え米国のアンチダンピング提訴の影響もあって、予想を上回る減産を余儀なくされているほか、物流機器(コンベア)、射出成形機、環境装置でも、設備投資の抑制等の影響から操業度が低下している。また、自動車部品、電子部品(コンデンサー)、建設機械でも、セットメーカーの減産やアジア向け輸出の不振等から低水準の操業を継続している。地場産業では、ケミカルシューズ、清酒、播州織、豊岡鞄の生産(出荷)量が、個人消費の不振を映じて軒並み前年を下回っている。

雇用・所得面では、企業収益の悪化やリストラ姿勢の強化から、冬季一時金が調査開始以来最大の落ち込みとなった。また、有効求人倍率は夏場以降既往最低水準のまま横這いとなっているものの、雇用調整助成金は増加傾向を辿るなど、雇用情勢は悪化の度を強めている。

金融面をみると、景気の悪化を映じて前向きな資金需要は依然乏しいものの、昨年10月から取扱が開始された中小企業向けの「貸し渋り対応特別保証制度」による金融機関窓口での融資実行の急増もあって、貸出全体では前年を若干上回っている。一方、預金をみると、法人預金は預貸相殺等の動きから低調だったものの、個人預金は慎重な消費姿勢を映じて、前年水準を引続き上回っている。

平成10年中の企業倒産は、件数、負債額とも前年を大幅に上回ったが、同12月は特別保証制度の効果もあって、件数は2年3ヵ月振りに前年を下回った。

以上

中国地区金融経済概況

1999年 1月25日
日本銀行広島支店

中国地区の景気をみると、公共投資は増加基調にあるものの、個人消費、住宅投資、設備投資の低迷が続き、雇用環境も厳しい状況となっている。もっとも、生産については総じてみると横這い圏内の動きとなっており、企業マインドの悪化テンポも緩やかになっているなど、景気は後退を続ける中で、後退のテンポは幾分和らぎつつある。

最終需要の動向をみると、個人消費は、一部に好材料がみられるものの、全体としては低調に推移している。家電販売は、新製品投入効果等から持ち直しつつあるほか、新規格の軽乗用車販売が好調に推移している。一方、百貨店、スーパー売上高は、前年割れが続いている。

設備投資を中国地区の企業短期経済観測調査結果(10年12月)からみると、10年度計画は、製造業、非製造業とも前年を下回っており、全産業では前年比−14.4%となっている。また、前回調査(10年9月)比でも下方修正となっており、企業の投資スタンスは慎重さを増している。

住宅投資をみると、新設住宅着工戸数は、前年水準を下回って推移しており、低迷を続けている。

公共投資について公共工事請負額をみると、経済対策による予算執行の本格化を受けて、増加基調で推移している。

輸出については、アジア向けが低迷を続けているほか、米国向けも幾分減速感が窺われており、力強さに欠ける展開となっている。

こうした最終需要のもと、生産は、総じてみると、横這い圏内の動きとなっている。主要企業の生産動向をみると、造船(新造船)、弱電部品(半導体、液晶表示装置等)、情報家電(MD、FAX、パソコン)では高水準の生産を続けており、自動車、石油化学では生産水準を引き上げる動きがみられている。もっとも、工作機械、鉄鋼では一段と生産水準を引き下げているほか、縫製、木材・木製品をはじめとする多くの業種では低水準の生産を続けている。

雇用面をみると、有効求人倍率は横這い圏内で推移しているものの、常用雇用者数が前年を下回っているなど、雇用環境は全体として厳しい状況が続いている。

この間、企業収益を中国地区の企業短期経済観測調査結果(10年12月)からみると、10年度計画は、前年比−5.1%の減益見通しとなっており、前回調査(9月)と比べても下方修正されている。

企業マインドを中国地区の企業短期経済観測調査結果(10年12月)からみると、製造業、非製造業ともほとんどの業種で業況感が悪化している。先行きについては厳しい見方を崩していないものの、悪化の度合いはやや緩やかになっている(業況判断D.I.<「良い」−「悪い」>9月△49%<前回調査比−5%ポイント>→12月△52%<同−3%ポイント>)。

金融面をみると、貸出は、依然として低迷している。個人向けは、住宅ローンの借換え案件等を中心に堅調に推移している。一方、企業向けは、『中小企業金融安定化特別保証制度』を利用した貸出が増加しているものの、設備資金が低調なため、全体では低迷基調にある。

預金は、低調な地合いが続いている。個人預金は、比較的堅調に推移しているものの、法人預金が財務リストラの影響等から低迷している。また、公金預金も減少傾向にある。

以上

四国地区金融経済概況

1999年 1月25日
日本銀行高松支店
日本銀行松山支店
日本銀行高知支店

概況

四国地区の景気は、依然として厳しい状況が続いている。すなわち、総合経済対策の実施に伴い公共投資が増加基調にあり、関連資材の生産水準引き上げ等への波及がみられはじめている。しかしながら、民間最終需要は、昨年の明石海峡大橋の開通効果から観光の一部で明るさが窺われるが、個人消費や住宅投資が長期にわたって不振となっているうえ、設備投資も抑制色が強いなど、なお低迷を続けている。こうした需要動向を反映して、一段の減産強化を図る企業もみられており、雇用・所得面も悪化傾向を続けている。こうした中、12月短観調査においても、企業マインドには目立った改善はみられていない。

需要動向

最終需要の動向をみると、個人消費は、パソコンや軽自動車など一部商品の売行きが好調であるものの、百貨店等の売上や耐久消費財の販売が依然として低調に推移するなど、全体として回復感に乏しい展開となっている。この間、観光面では、明石海峡大橋の開通に伴い、主要観光施設や宿泊施設の一部において利用客の増加が続いている。

公共投資は、本四架橋(今治〜尾道ルート)、高速道路網の整備や電源開発工事等の大型継続案件に加え、総合経済対策にかかる発注本格化もあって、高水準となっている。しかし、住宅投資については、先行きの雇用・所得環境に対する不安感等から、新設住宅着工戸数は前年を大きく割り込んだ状態にある。

設備投資は、製造業、非製造業ともに、一部において研究開発投資や合理化、省力化投資がみられるものの、設備過剰感が引き続き根強いうえ、企業収益の悪化や業績面の不振などから、設備更新や能力増強投資を先送りする先が少なくないなど、慎重なスタンスにある。

生産

企業の生産活動をみると、電気機械(情報・映像機器、液晶表示装置等)、造船(外航船)、化学(無機化学)が引き続き高操業を継続しているほか、公共投資の増加を受けて、鉄骨加工(橋梁関係)や窯業・土石の一部で生産水準を引き上げる動きがみられる。しかしながら、繊維(タオル、縫製品)は、ギフト需要や季節衣料の受注低迷から低操業を余儀なくされているほか、一般機械(建機、木工用プレス等)や木材・木製品では、東南アジア向け輸出の不振や内需の低迷等を背景に、一時帰休の実施等により一段の減産強化を図る先がみられるなど、生産活動は総じてみれば引き続き低調となっている。

雇用

雇用情勢をみると、生産活動の低調等を背景とする人員過剰感の強まりから、求人を抑制する動きが広がっているほか、このところ企業の業績悪化や企業倒産の増加等を映じて、求職者数が前年を上回る水準となっている。

金融

金融面をみると、預金は法人預金が低調に推移しているものの、個人預金は流動性を中心にまずまずの伸びを持続している。一方、貸出は企業向けが設備・運転資金ともに引き続き低調なことから、全体として伸び率が低下してきている。

以上

九州地区金融経済概況

1999年 1月25日
日本銀行福岡支店

九州経済をみると、全般に悪化した状態が続いており、企業の景況感も依然として厳しいものとなっている。

最終需要の動向をみると、公共投資は、補正予算の執行本格化を受けて増加傾向にある。

個人消費は、一部に新製品投入効果がみられるものの、雇用・所得環境が悪化するなか、全体としては低調に推移している。また、住宅投資は、依然として落ち込んだ状態が続いている。

企業の設備投資は、企業業績の悪化等を背景に大幅な減少を続けている。

輸出は、IC、鉄鋼等がアジア、米国向けを中心に減少しているため、このところ前年を下回っている。また、輸入については、内需の低迷を主因に減少傾向を辿っている。

企業の生産動向をみると、公共工事の発注増加から、一部建設資材で減産を緩和する動きもみられているものの、内外需要の減少を背景に、IC、鉄鋼、化学、情報関連機器等が低操業を継続しているほか、一般機械も生産水準を引き下げており、全体の生産は停滞している。

企業業績をみると、最終需要の低迷長期化等を映じて、製造業、非製造業とも悪化傾向にある。

雇用面をみると、雇用者所得が減少しているほか、完全失業率、有効求人倍率などの各指標も悪化傾向を辿っており、厳しい状況にある。

企業倒産は、引き続き高水準ながら、前年を下回っている。

金融面の動きをみると、銀行預金は、法人預金の不振が続いているほか、個人預金も伸びが鈍化しており、全体ではやや低調に推移している。また、銀行貸出は、全体として低調な推移を続けているが、信用保証制度の拡充等を受けて、中堅・中小企業向け貸出が増加している。

以上