地域経済報告 —さくらレポート— (2013年4月) *
- 本報告は、本日開催の支店長会議に向けて収集された情報をもとに、支店等地域経済担当部署からの報告を集約したものである。
2013年4月15日
日本銀行
目次
- III. 地域別金融経済概況
- 参考計表
I. 地域からみた景気情勢
各地の景気情勢を前回(13年1月)と比較すると、全地域から判断を引き上げる報告があった。この背景としては、国内需要が家計・企業マインドの改善もあって底堅く推移し、海外経済も徐々に持ち直しに向かっていることなどが挙げられている。
各地域からの報告をみると、5地域(北海道、東北、北陸、東海、中国)から、「緩やかに持ち直している」、「回復しつつある」等の報告があった。また、4地域(関東甲信越、近畿、四国、九州・沖縄)からは、全体としてなお「横ばい圏内」等と判断しつつも、一部には持ち直しに向けた動きを指摘する報告もあった。
13/1月判断 | 前回との比較 | 13/4月判断 | |
---|---|---|---|
北海道 | 持ち直しの動きが続いているものの、一部に弱めの動きがみられている | ![]() |
持ち直しの動きが続いている |
東北 | 回復の動きが一服している | ![]() |
生産が下げ止まるもとで、回復しつつある |
北陸 | 弱含みとなっている | ![]() |
持ち直しの動きがみられる |
関東甲信越 | 弱含みとなっている | ![]() |
下げ止まっている |
東海 | 全体として弱めの動きとなっている | ![]() |
緩やかに持ち直している |
近畿 | 弱めの動きとなっている | ![]() |
なお弱めながらも、持ち直しに向けた動きが徐々に広がりつつある |
中国 | 弱含みとなっている | ![]() |
業種や規模によるばらつきを伴いつつも、全体としては持ち直しつつある |
四国 | 持ち直しの動きが一服し、弱めの動きがみられている | ![]() |
一部に弱めの動きがみられるものの、底堅く推移している |
九州・沖縄 | 全体として横ばい圏内の動きを続けている | ![]() |
全体として横ばい圏内の動きを続けているが、内需関連を中心に持ち直しの動きがみられている |
- (注)前回との比較の「
」、「
」は、前回判断に比較して景気の改善度合いまたは悪化度合いが変化したことを示す(例えば、右上がりまたは悪化度合いの弱まりは、「
」)。なお、前回に比較し景気の改善・悪化度合いが変化しなかった場合は、「
」となる。
公共投資は、東北から、「大幅に増加している」、6地域(北陸、関東甲信越、近畿、中国、四国、九州・沖縄)から、「増加している」、「持ち直している」等の報告があったほか、北海道、東海から、「底堅く推移している」、「概ね横ばいで推移している」との報告があった。
設備投資は、5地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、東海)から、「増加している」、「持ち直している」等、4地域(近畿、中国、四国、九州・沖縄)から、「底堅い動きとなっている」、「横ばい圏内で推移している」等の報告があったが、このうち複数の地域から、「製造業で弱めの動きがみられる」等の報告もあった。この間、企業の業況感については、多くの地域から、非製造業を中心に「改善している」等の報告があった。
個人消費は、消費者マインドの改善等を背景に、東海、九州・沖縄から、「持ち直しの動きがみられている」等の報告があった。また、5地域(東北、関東甲信越、近畿、中国、四国)から、「底堅く推移している」、「横ばい圏内で推移している」等の報告があった。この間、北陸からは、「下げ止まりつつある」、北海道からは、「ガソリン・灯油価格の高止まりや悪天候の影響もあって、弱含みとなっている」との報告があった。
大型小売店販売額をみると、百貨店は、多くの地域から、高額品の販売が堅調となっているなど、「持ち直しの動きがみられている」、「底堅く推移している」等の報告があった。一方、スーパーは、ほとんどの地域で、「弱めの動きが続いている」等の報告があった。
乗用車販売は、多くの地域から、引き続き「前年を下回っている」等の報告があったものの、複数の地域から、「新型車の販売は好調が続いている」、「持ち直しつつある」等の報告があった。
家電販売は、スマートフォンや節電機能に優れた白物家電等が堅調である一方、薄型テレビ等が低調であることから、多くの地域から、「低調に推移している」、「前年を下回っている」等の報告があった。
旅行関連需要は、多くの地域から、「持ち直している」、「堅調に推移している」等の報告があった。
住宅投資は、東北から、「増加している」、近畿から、「緩やかに増加している」との報告があった。また、7地域(北海道、北陸、関東甲信越、東海、中国、四国、九州・沖縄)から、「持ち直している」、「持ち直しつつある」等の報告があった。
生産は、国内需要が底堅く推移し、海外経済が徐々に持ち直しに向かっていることもあって、北陸から、「全体として増加している」、3地域(北海道、東海、中国)から、「持ち直している」、「持ち直しつつある」等の報告があったほか、3地域(東北、関東甲信越、近畿)からは、「下げ止まっている」等の報告があった。一方、四国からは、「幾分弱めの動きが続いている」、九州・沖縄からは、「全体として減少した状態が続いている」との報告があった。
業種別の主な動きをみると、輸送機械は、5地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、中国)から、「持ち直している」等との報告があったほか、鉄鋼も、4地域(北海道、関東甲信越、東海、中国)から、「持ち直しに転じている」等との報告があった。化学については、複数の地域から、医薬品を中心に「高めの生産水準となっている」等の報告があった。また、建設関連需要の増加などを背景に、金属製品について、北陸、四国から、「緩やかな増加基調にある」等の報告があったほか、窯業・土石についても、北海道から、「増産となっている」との報告があった。一方、電子部品・デバイスは、多くの地域から、「情報関連財等の需要低迷から弱めの動きを続けている」等の報告があった。また、一般機械については、一部に受注持ち直しの動きがみられるとの報告があったものの、複数の地域から、「弱めの動きが続いている」等の報告があった。
雇用・所得動向は、多くの地域から、厳しい状況にあるものの、労働需給面を中心に「再び改善傾向に向かう動きがみられている」等の報告があった。
雇用情勢については、多くの地域から、「改善の動きがみられている」、「労働需給は改善に転じつつある」等の報告があった。雇用者所得は、6地域(北海道、北陸、東海、近畿、四国、九州・沖縄)から、「前年並みで推移している」、「横ばい圏内の動き」等の報告があった。この間、関東甲信越、中国から、「弱めの動きが続いている」等の報告があった一方、東北からは、「前年を上回って推移している」との報告があった。
需要項目等
公共投資 | 設備投資 | 個人消費 | 住宅投資 | 生産 | 雇用・所得 | |
---|---|---|---|---|---|---|
北海道 | 底堅く推移している | 緩やかに増加している | 株高等を背景に消費者マインドは改善傾向にあるものの、ガソリン・灯油価格の高止まりや悪天候の影響もあって、弱含みとなっている | 貸家中心に持ち直している | 国内外需要の回復から緩やかに持ち直している | 雇用・所得情勢をみると、労働需給は他地域と比べ厳しい状況にあるものの、改善傾向にある。雇用者所得は、前年並みで推移している |
東北 | 震災復旧関連工事を主体に、大幅に増加している | 増加している | 底堅く推移している | 震災に伴う建て替え需要等から増加している | 下げ止まっている | 雇用・所得環境は、改善している |
北陸 | 前年度の大型工事の反動減がみられるものの、北陸新幹線関連の施設案件や小・中学校の耐震関連工事等を中心に増加傾向を維持している | 製造業を中心に持ち直している | 下げ止まりつつある | 持ち直している | 海外経済減速の影響が徐々に後退する中で、全体として増加している | 雇用情勢は、持ち直しの動きが一服している。雇用者所得は、持ち直しの動きが一服している |
関東甲信越 | 増加基調にある | 製造業で弱めの動きがみられるものの、全体としては非製造業を中心に増加基調を維持している | 底堅く推移している | 着実に持ち直している | 下げ止まっている | 雇用・所得情勢は、横ばい圏内の動きとなっている |
東海 | 概ね横ばいで推移している | 着実に増加している | 持ち直しの動きがみられている | 持ち直しつつある | 持ち直している | 雇用・所得情勢は、改善の動きがみられつつある |
近畿 | 増加している | 非製造業が堅調に推移しているものの、製造業が弱めとなっており、持ち直しは緩やかとなっている | 消費者マインドの改善などから、底堅い動きになっている | 緩やかに増加している | 下げ止まりの動きがみられている | 雇用情勢をみると、労働需給は改善に転じつつある。雇用者所得は、賃金が弱い動きとなっているものの、振れを均してみると、なお横ばい圏内の動きとなっている |
中国 | 持ち直している | 全体としては横ばい圏内で推移している | 横ばい圏内で推移している | 持ち直しが続いている | 持ち直しつつある | 雇用情勢をみると、非正規雇用を中心に持ち直しの動きがみられ、有効求人倍率は足もと改善している。雇用者所得は、弱い動きが続いている |
四国 | 持ち直し基調にある | 一部大企業で弱めの動きがみられているものの、そうした影響を除いてみれば底堅い動きとなっている | 一部に持ち直しの動きがみられるものの、全体では横ばい圏内の動きが続いている | 持ち直している | 幾分弱めの動きが続いている | 雇用・所得情勢は、労働需給面で再び改善に向かう動きがみられている |
九州・沖縄 | 増加を続けている | 非製造業が底堅い動きとなっている | 消費者マインドの改善を受け、高額品の販売が増加しているほか、観光面でも九州・沖縄域内への入込みが堅調であるなど、全体として底堅さを増している | 持ち直している | 全体として減少した状態が続いている | 雇用・所得情勢は、厳しい状態が続いているが、労働需給面では、非製造業を中心に改善の動きがみられている |
II. 地域の視点(抜粋)
成長が期待される分野での事業者の取り組み
日本銀行は本支店等のネットワークを通じて日頃から各地域における景気情勢や各種取り組みについて調査・把握に努めているが、今般は、環境・エネルギー関連、医療・介護関連、農林水産業関連の3分野について、各地域から成長が期待される分野として事業者の取り組み等に関する報告が多く寄せられたため、関係者から聞かれた声を中心に整理して紹介することとしたい。なお、このほかにも幅広い分野で前向きな取り組みがみられている。
3分野における最近の主な取り組みは以下のとおり。今回の報告は各地域(本支店・事務所計34か店)においてご協力いただいた延べ約1,200先との面談等をもとにしている。
- 環境・エネルギー分野(31か店から報告、面談等約420先)
- 再生可能エネルギー固定価格買取制度:太陽光発電(メガソーラー等)等
- エネルギー管理システム(EMS):スマートハウス、ビル、工場等
- 次世代自動車関連:電気自動車、燃料電池自動車等
- 医療・介護関連分野(28か店から報告、面談等約390先)
- 介護関連サービス:在宅介護、サービス付き高齢者向け住宅等
- 医療機器・医薬品:検査・診断機器、治療機器、ジェネリック医薬品等
- 農林水産業関連分野(26か店から報告、面談等約380先)
- 生産面の改善:規模拡大、新型機械・ICTの導入、植物工場等
- 6次産業化・販売力強化:加工品の開発、ブランドの確立・強化、販路開拓・拡大等
各分野における事業者の取り組みの現状と今後の方向性について、面談等を通じて事業者や関係者から聞かれた声をもとに、次頁以降で3分野ごとに整理して紹介する。
日本銀行としては、今後とも、各地域における事業者の前向きな取り組みなどについて、調査・把握に努めていく。また、『貸出支援基金の運営として行う成長基盤強化を支援するための資金供給』等を通じて、わが国経済の成長基盤強化に向けた取り組みを金融面から支援していく方針である。
1. 環境・エネルギー分野
環境・エネルギー分野では、昨年7月の再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の開始を契機に、太陽光発電設備(メガソーラー等)の建設が活発化するなど、発電事業が増加している。また、東日本大震災後の省エネ意識の高まり等を背景に、エネルギー管理システム(EMS)関連や次世代自動車関連で開発を推進する動きがみられるなど、成長に向けた芽が出始めている。
関連企業では、さらなる事業拡大を図るため、製品・サービスの高付加価値化、自社のコア技術を応用した新規事業展開、比較優位分野への資源集中や業界標準の確立に取り組んでいる。
今後に向けて事業者から聞かれた声としては、再生可能エネルギー関連では、活発化している事業が持続的・安定的に成長していくような対応の重要性を指摘する声が聞かれている。また、EMS関連や次世代自動車関連では、事業拡大が期待される中で、技術の標準化や安全基準・規格の整備、将来の実用化に向けた技術革新や生産性向上、人材確保についても重要と指摘する声が聞かれている。なお、中小企業を中心に設備資金の供給等、金融面の役割に期待する声も聞かれている。
2. 医療・介護関連分野
医療・介護関連分野では、高齢化の進展等に伴い需要の増加基調が続くもとで、関連事業者の業容は全体として拡大しており、新規参入もみられている。
関連事業者では、更なる業容拡大に向けて、既存主力事業における競争力強化、新製品・サービス提供による新規需要の喚起、市場の拡大が見込まれるアジア等のグローバル需要の取り込みを図る動きがみられている。この間、介護サービス業では、人員不足感が続いており、引き続き人材の確保・育成に努めている。
今後に向けて事業者から聞かれた声としては、介護サービス業では、人材確保に向けて個社の取り組みだけでは限界もあるため、全体としての対応の重要性を指摘する声が聞かれている。また、医療機器・医薬品関連では、医療機関や研究機関との連携強化やベンチャー企業へのリスクマネーの供与を期待する声が聞かれている。
3. 農林水産業関連分野
農林水産業関連分野では、2009年以降の法整備を契機に、生産面の改善や6次産業化・販売力強化等の取り組みが徐々に増えている。
生産面の改善では、規模拡大、新型機械・ICTの導入、植物工場の活用、品種改良などがみられている。また、6次産業化・販売力強化では、加工品の開発、ブランドの確立・強化を図ろうとする動きに加えて、小売業、食品加工業等向けの販路開拓・拡大やインターネットの活用、輸出等に取り組む動きもみられている。
今後に向けて事業者から聞かれた声としては、小規模事業者が多いこともあって各事業者の努力だけでは限界があることから、生産面の改善、6次産業化・販売力強化の取り組みを進めていくうえで、各種制度面での対応や関係者間の連携強化の重要性を指摘する声が聞かれている。また、資金調達面では、金融機関の審査ノウハウの拡充等を期待する声も聞かれている。
日本銀行から
本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行調査統計局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。
照会先
調査統計局地域経済調査課
Tel : 03-3277-1357