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各地域からみた景気の現状(2023年7月支店長会議における報告)

2023年7月10日
日本銀行

今回の支店長会議における報告を総括すると、既往の資源高の影響などを受けつつも、すべての地域で、景気は持ち直し、ないし、緩やかに回復している。前回の支店長会議開催時点(2023年4月)と比較すると、全9地域中3地域で総括判断を引き上げている(参考参照)。

需要項目等別にみると(注)公共投資については、全国的に国土強靱化関連工事の発注が続いているほか、一部地域では大型案件の影響から増加しているとの報告があった。設備投資は、コスト高などから計画を先送り・減額する動きがみられるとの指摘もあったが、多くの地域から、人手不足感の強まりに対応した省力化・デジタル化投資、EV関連を含めた環境対応投資、商業施設や宿泊施設の改修・新設、物流施設の建設などを進める動きが報告された。個人消費(インバウンド需要を含む)は、多くの地域から、感染症の5類移行等を背景に、外食や旅行などのサービス消費を中心にペントアップ需要が顕在化していることが報告された(9地域中5地域で個人消費の判断を引き上げ)。具体的には、人流の増加に伴い、これまで低調であった大人数の会食を含め、外食が増加していることや、宿泊・旅行でも、全国旅行支援の効果が縮小する中にあっても、国内旅行需要が堅調に推移しているほか、インバウンド需要も着実に増加していることが多く報告された。このほか、百貨店等における高額品消費の好調が続いていることや、供給制約の緩和から自動車販売が増加していることなどの報告もあった。ただし、多くの地域から、物価上昇による消費者の生活防衛意識の強まりを懸念する声が紹介された。住宅投資については、住宅価格の上昇に伴う顧客の購買意欲の低下を背景に、弱めの動きとなっているとの報告があった。輸出・生産については、海外経済の回復ペースが鈍化するもとで、電子部品や素材、資本財などにおける生産調整が報告された一方、自動車関連の生産は、車載向け半導体の調達環境の改善から緩やかに持ち直しているとの報告もあり、全体としてみると横ばい圏内との判断が多かった。

雇用面については、経済活動の改善で労働需給が引き締まるもとで、企業の人手不足感は一段と強まっているという指摘が多かった。こうしたもとで、賃金は、コスト高などによる収益面の厳しさから賃上げに慎重な声も紹介されたが、人手不足感の強まりなどを映じた大企業による大幅な賃上げの動きやパート等の賃金上昇を受けて、地場の中小企業等でも近年にない積極的な賃上げの動きが広がっていることが多く報告された。この間、企業の販売価格設定スタンスについては、原材料費や光熱費の転嫁を積極的に進めているとの報告に加え、先行きの賃上げを睨んで販売価格引き上げを模索する動きがみられ始めているとの報告があった。


(参考)

各地域の景気の総括判断と前回との比較
【23/4月判断】 前回との比較 【23/7月判断】
北海道 緩やかに持ち直している 不変 緩やかに持ち直している
東北 一部に弱さがみられるものの、基調としては緩やかに持ち直している 不変 一部に弱さがみられるものの、基調としては緩やかに持ち直している
北陸 持ち直している 不変 持ち直している
関東
甲信越
資源高の影響などを受けつつも、感染症の影響が和らぐもとで、持ち直している 不変 持ち直している
東海 緩やかに持ち直している 右上がり 持ち直している
近畿 一部に弱めの動きがみられるものの、感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、持ち直している 不変 一部に弱めの動きがみられるものの、持ち直している
中国 緩やかに持ち直している 右上がり 持ち直している
四国 緩やかに持ち直している 不変 緩やかに持ち直している
九州・沖縄 持ち直している 右上がり 緩やかに回復している
  • (注)前回との比較の「右上がり」、「右下がり」は、前回判断に比較して景気の改善度合いまたは悪化度合いが変化したことを示す(例えば、改善度合いの強まりまたは悪化度合いの弱まりは、「右上がり」)。なお、前回に比較し景気の改善・悪化度合いが変化しなかった場合は、「不変」となる。