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各地域からみた景気の現状(2025年10月支店長会議における報告)

2025年10月6日
日本銀行

今回の支店長会議における報告を総括すると、一部に弱めの動きもみられるが、すべての地域で、景気は「緩やかに回復」、「持ち直し」、「緩やかに持ち直し」としている。前回の支店長会議開催時点(2025年7月)と比較すると、全9地域中1地域で総括判断を引き下げている(参考参照)。

主な需要項目等別にみると(注)輸出・生産については、米国の関税引き上げに伴う駆け込みとその反動減に加え、資本財の受注についても下振れの動きがみられるとの報告があった一方、AI関連の受注の堅調さを指摘する報告も多数あった。この間、一部の地域のサプライヤーからは、関税の影響により収益が下押しされている国内納入先において、取引価格の交渉スタンスが厳格化しているとの声が聞かれたものの、現時点では、人件費の価格転嫁の流れを阻害するまでには至っていないとの報告が多かった。設備投資については、IT関連需要の拡大期待に基づく能力増強投資や、人手不足対応や生産性向上を目的とした省力化・デジタル化投資などで積極的な投資スタンスが維持されているとの報告が多かった。ただし、各国の通商政策の影響を巡る不確実性の高さを背景に、投資の先送りや見直しを検討・実施する動きがみられるとの報告があったほか、建設コスト上昇により投資の先送り・縮小等を検討する動きもみられるとの報告があった。

賃金設定面では、先行きの賃金設定について、各国の通商政策の影響や海外経済の減速等により企業収益が大きく下振れた場合には、賃上げを抑制せざるを得ないとの声があった一方、人手不足感の強さや最低賃金の引き上げ、最近の食料品を中心とする物価上昇等を受けて、引き続き高めの賃上げが必要とする声も報告された。

価格設定面では、仕入コストや人件費、物流費等の上昇を転嫁する動きが続いているとの報告が多かった。ただし、米などの食料品価格の上昇等を背景に消費者の節約志向がやや強まるもとで、値上げの抑制や低価格商品の品揃え強化等の動きもみられるとの報告があった。こうしたもと、個人消費(インバウンド需要を含む)については、イベント関連等でのハレの日消費の堅調さを指摘する報告があった一方、日常消費では、消費者の根強い節約志向を背景に、スーパー等において、購入点数の減少が続いているとの報告があったほか、値上げを行った外食等からは、客数の伸びがこのところやや鈍化しているとの報告があった。この間、都市部の百貨店等からは、高額品を中心に免税売上には弱さがみられる一方、最近の株価上昇もあって国内富裕層の需要は堅調さを維持しているとの報告が多数あった。また、観光・宿泊需要も、インバウンド需要の増勢鈍化の影響を受けつつも、底堅く推移しているとの報告があった。


(参考)

各地域の景気の総括判断と前回との比較
2025年7月判断 前回との比較 2025年10月判断
北海道 一部に弱めの動きがみられるが、持ち直している 右下がり 一部に弱めの動きがみられるが、緩やかに持ち直している
東北 持ち直している 不変 持ち直している
北陸 一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している 不変 一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している
関東
甲信越
一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している 不変 一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している
東海 緩やかに回復している 不変 緩やかに回復している
近畿 一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかに回復している 不変 一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかに回復している
中国 緩やかな回復基調にある 不変 緩やかな回復基調にある
四国 緩やかに持ち直している 不変 緩やかに持ち直している
九州・沖縄 一部に弱めの動きがみられるが、緩やかに回復している 不変 一部に弱めの動きがみられるが、緩やかに回復している
  • (注)前回との比較の「右上がり」、「右下がり」は、前回判断と比較して景気の改善度合いまたは悪化度合いが変化したことを示す(例えば、改善度合いの強まりまたは悪化度合いの弱まりは、「右上がり」)。なお、前回判断と比較して景気の改善・悪化度合いが変化しなかった場合は、「不変」となる。