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地域経済報告―さくらレポート―(別冊シリーズ)* 地域企業の設備投資の動向と最近の変化

  • 本報告は、上記のテーマに関する支店等地域経済担当部署からの報告を集約したものである。

2025年12月9日
日本銀行

要旨

多くの地域企業で、中長期的な視点に立って設備投資を着実に進めている姿が確認された。具体的な投資内容として、(1)需要拡大・成長期待に基づく能力増強・研究開発投資、(2)製商品・サービスの差別化に向けた高付加価値化投資、(3)人手不足に対応するソフトウェア・省力化投資、(4)老朽化に対応した維持更新投資や大型施設等の再開発に関する投資をあげる企業が多かった。一方で、設備投資を下押しするリスク・制約を指摘する声もあった。(1)各国の通商政策の影響による不確実性や企業収益の悪化、(2)店舗・設備の稼働人材などの不足、(3)建設費上昇による投資採算の悪化や各種コスト上昇のもとでの案件絞り込み、(4)自社の財務面の制約などの指摘が聞かれた。

設備投資を巡る最近の特徴的な変化点としては、次の3点があげられる。

第1に、労働力の不足が量・質の両面で深刻化するもとでも、事業を発展させていくために、AI等のデジタル技術の活用を含めた省人化投資が拡大している。その背景として、人手不足の解消が中長期的にも見込みにくいとの見方が広がっていることや、省人化につながる設備・サービスの多様化、省人化されたサービス等が社会に浸透していることがあげられる。

第2に、事業活動に要する様々なコストが上昇し続けるもとでも、一定の収益を確保できることを目指した投資が拡大している。効率性・収益性を改善させる合理化投資や生産性向上投資のほか、収益構造の改善を図るための投資などもみられた。その背景として、事業コストが先行きも広範かつ持続的に上昇するとの見方が広がっていることや、施設・設備等の老朽化による弊害の顕在化、製商品・サービスのサプライチェーン全体の最適化への意識の高まりがあげられる。

第3に、投資の実行可否を決める判断にも変化がうかがわれる。建設費など投資費用の上昇が先行きも続くことを見越し、投資判断を前傾化する動きや、投資費用等が上昇しても、差別化・高付加価値化などを通じた値上げによる将来の収益確保や需要拡大を見据えて、投資判断を積極化する動きがみられた。

こうした動きは、長年続いた賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が変化し、前向きな企業の投資行動が増えていることを示唆している。

日本銀行としては、引き続き、労働供給制約や物価情勢などの経営環境が変化するもとで、地域企業がどのように行動を変容させるのか、丹念に点検していきたい。

日本銀行から

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行調査統計局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

調査統計局地域経済調査課

Tel:03-3277-1357