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国際金融ネットワークからみた世界的な金融危機

2009年7月9日
金融市場局
今久保圭

要旨

サブプライム住宅ローン問題を契機とした金融混乱が世界的な金融危機へと発展していく過程で、2002年頃からの信用拡張期に世界中に行き渡った資金の流れは急激に逆回転し、その負の影響は急速かつ広範囲に広がっていった。こうした現象を招いた要因の1つとして、金融取引のグローバル化の進展による、国際金融ネットワークの緊密化を指摘することができる。本稿では、国際決済銀行の「国際資金取引統計」を用いて、この間の国際金融市場の構造特性を検証した。その結果から、欧州の銀行部門がハブとしての機能を高めることで、国際資金取引の効率性に一段と寄与し、ネットワーク全体の頑健性を高めていたことが確認された。一方で、同部門がショックの直撃を受けた場合、各地に張り巡らされた取引経路を通じて、システミックな影響を瞬時に及ぼしやすくなるという意味で、ネットワークの脆弱性を高めていたことも示された。こうしたネットワークの二面性に対して、この間に各国中央銀行が協調して構築したドル資金の供給体制は、ハブの機能維持を通じて、ネットワーク全体を安定させるための措置として効果的であったと考えられる。

日本銀行から

日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。
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