米欧諸国におけるフィリップス曲線のフラット化
―背景に関する3つの仮説―
2016年5月25日
国際局 伊達 大樹*、中島 上智、西崎 健司、大山 慎介
*現青森支店
要旨
米欧諸国では、近年、需給ギャップが着実に縮小する一方、インフレ率はなかなか加速しない状況が続いている。こうした状況は「フィリップス曲線のフラット化」(需給ギャップに対するインフレ率の弾性値の低下)と呼ばれ、その背景に関する議論が活発に行われている。主たる仮説としては、(1)インフレ予想のアンカー強化、(2)フィリップス曲線の非線形性、(3)グローバル化や規制緩和に伴う競争環境の変化、という3つが指摘されているが、現時点では、いずれがフラット化の主因であるかについて、コンセンサスはない。この点は、主因となる仮説次第で先行きのフィリップス曲線の傾きが異なり得るため、金融政策運営上、不確実性が大きいことを意味する。このため、今後も3つの仮説それぞれに注意を払いつつ、フィリップス曲線の動態をしっかりと分析していく必要がある。
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