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不動産ファンド市場における海外ファンドの資金フロー

2022年9月5日

金融機構局 法眼吉彦*、小出桂靖
*現・調査統計局

要旨

グローバルな不動産ファンド市場は、投資ファンドを通じた資金流入に牽引されながら拡大している。わが国の不動産ファンド市場にも、海外投資ファンドの資金が流入しており、J-REIT市場の2割弱程度にまで達している。こうした投資ファンドは、クロス・ボーダーで投資活動を積極化しているため、国際金融市場の調整などのグローバルなリスク要因の顕在化などを契機に、資金フローを大きく変化させる可能性がある。本稿では、投資ファンドの所在地域と投資先地域についての高粒度データを用いて、投資ファンドによる不動産ファンドへのクロス・ボーダーの投資フローを捕捉し、グローバルな金融・経済環境の変化が、投資フローや投資先地域の不動産価格に与える影響を推計している。分析の結果、グローバルな金融環境の広範な悪化や米金利上昇のショックがあった場合には、多くの地域において、不動産ファンドへの投資ファンドによる投資資金が減少し、不動産ファンド価格を押し下げに作用するほか、わが国については、他地域対比、相対的に大きい影響を受ける可能性があることが確認された。こうした結果は、わが国の不動産市場の動向をみるうえで、国内要因だけでなくグローバルな金融・経済環境の変化が投資ファンドの投資活動に与える影響も注視していく必要があることを示唆している。

日本銀行から

日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。ただし、レポートで示された意見は執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。
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