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企業年金の運用戦略からみた金融安定への含意―英国債市場の混乱からの教訓―

2023年1月30日

金融機構局 伊藤雄一郎、河西桂靖、轟木亮太朗*
豊田融世、堀江里佳子
*現・岡山支店

要旨

2022年9月、英国債市場において金利が大きく上昇した。英国企業年金は、金利急騰で現金準備を上回る追加証拠金に直面し、一時的な流動性逼迫に陥った。この背景には、英国企業年金において、積立不足解消に向けた利回り追求などから、デリバティブなどを用いたレバレッジ取引を拡大する運用戦略が広がる一方で、現金準備や流動性枯渇時の対応策が不十分であったことが挙げられる。今回の事例は、長期投資を行う機関投資家であっても、金融システムを脅かし得ることを示唆している。この点、わが国をみると、企業年金では、過度な利回り追求は行われておらず、レバレッジ取引の活用は限定的で、現金化が比較的容易な運用資産構成となっている。また、年金と同様、長期負債を抱える生命保険会社では、負債の時価評価を行う新規制の導入が控える中で、レバレッジ取引が幾分増加傾向にあるが、財務健全性や収益は改善傾向にあり、流動性も相応の頑健性を備えている。

日本銀行から

日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。ただし、レポートで示された意見は執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。
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