リーマン・ショック直後の円高の定量的解釈—スケープゴート・モデルによるアプローチ—
2013年8月28日
宇野洋輔*1
中山興*2
藤井崇史*3
要旨
ドル/円レートは、リーマン・ショック直後に大きく円高方向に振れたが、金利差やインフレ格差といったファンダメンタルズのみに基づくモデルでは、為替レートの短期的かつ大規模な変動を十分に説明し切れないため、これまで定性的な説明がなされることが多かった。本稿では、こうしたドル/円レートの短期的かつ大規模な変動について、「スケープゴート・モデル」と呼ばれる比較的新しい為替レート決定モデルを用いることによって、これまでの定性的解釈に代替するような定量的解釈を示す。
実証分析の結果、リーマン・ショック直後の大幅な円高は、投資家が消費者物価に対する主観的なウエイト(評価)を引き下げ、マネーストックに対する主観的なウエイト(評価)を引き上げたことによって、それらの変数のドル/円レートへの影響が修正されたことによるものであることが示唆された。また、スケープゴート・モデルのパフォーマンスは、ファンダメンタルズのみを説明変数としたモデルと比べて、総じて良好であることも確認された。
- キーワード
- 為替レート、円高、スケープゴート・モデル、合理的混同
本稿の作成過程で、岩壷健太郎教授(神戸大学)、西村清彦教授(東京大学)のほか、日本銀行の有識者・スタッフから有益なコメントを頂戴した。この場を借りて、深く感謝の意を表したい。ただし、ありうべき誤りは筆者に属する。本稿の内容と意見は、筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。
- *1日本銀行金融市場局(現大阪支店) E-mail : yousuke.uno@boj.or.jp
- *2日本銀行金融市場局(現調査統計局) E-mail : kou.nakayama@boj.or.jp
- *3日本銀行金融市場局(現静岡支店) E-mail : takanori.fujii@boj.or.jp
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