「総括的検証」補足ペーパーシリーズ(3):「量的・質的金融緩和」導入以降の政策効果—マクロ経済モデルQ-JEMによる検証—
2016年11月7日
菅和聖*1
喜舎場唯*2
敦賀智裕*3
要旨
日本銀行が「量的・質的金融緩和」を導入してから3年余りが経過した。本稿では、「量的・質的金融緩和」導入以降の政策がわが国の経済・物価動向に与えた影響を定量的に検証するため、日本銀行のマクロ経済モデルQ-JEMを用いたシミュレーション分析を試みる。
ここでは、仮想的なシナリオとして、一連の金融緩和策が行われていなかった場合を想定し、その場合の経済・物価情勢と、実際の経済・物価情勢との差を金融緩和の効果として影響を推計した(カウンターファクチュアル・シミュレーション)。具体的には、(1)名目長期金利の低下と予想物価上昇率の変化による実質金利の低下と、それが株価、為替を通じて及ぼす影響についてのシミュレーションを実施したほか、(2)実質金利の低下による影響のみならず、この間の株価や為替の変動が全て金融緩和によるものであると考えて行ったシミュレーションを実施した。また、シミュレーションの対象時期については、「量的・質的金融緩和」が実際に実行された時期と、そうした予想が発生した時期に金融資本市場や予想物価上昇率が早めに変化していた可能性を考慮して、複数の時期を設定した。
シミュレーションによると、多くのシナリオでは、「量的・質的金融緩和」導入以降の政策がなければ、CPI(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は引き続きマイナスまたはゼロ%近傍で推移していたとの結果が得られた。
JEL分類番号
E17、E37、E52、E58
本稿の作成にあたっては、関根敏隆、中村康治、法眼吉彦、一上響、武藤一郎の各氏および日本銀行スタッフから有益なコメントを頂いた。また、調査統計局の井上紗貴氏には、データ作成面で多大な協力を頂いた。ここに記して感謝したい。
- *1日本銀行調査統計局 E-mail : kazutoshi.kan@boj.or.jp
- *2日本銀行調査統計局 E-mail : yui.kishaba@boj.or.jp
- *3日本銀行調査統計局 E-mail : tomohiro.tsuruga@boj.or.jp
日本銀行から
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