SCレポ市場からみた国債の希少性
2017年6月7日
衣笠慧*1
長野哲平*2
要旨
本邦レポ市場では、近年、需給タイト化等を背景にSCレポレート――担保となる国債の銘柄を特定して行うレポレート――が大きめに低下する、つまり貸借料が上昇する銘柄が増加している。本稿では、こうした個別銘柄でみた国債の「希少性(scarcity)」の強まりの背景について、SCレポレートの取引データから検証した。分析結果からは、(1)日本銀行の国債保有比率上昇が国債の希少性を強める方向に作用している可能性があること、(2)但し、同要因だけで最近の希少性の強まりを説明することは難しいこと、(3)金融規制改革に対応する動きや国債市場において海外投資家のプレゼンスが高まっていることなども希少性の強まりに影響している可能性があること、(4)この間、日本銀行の国債補完供給は、希少性の強まりを抑制する方向に作用しているとみられること、などが示唆された。
JEL分類番号:C23, C26, E43, G12, G14
キーワード:国債市場、SCレポ、希少性、市場流動性、取引データ
本稿の作成過程で、宇野淳氏(早稲田大学)、戸辺玲子氏(早稲田大学)、および日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂戴した。この場を借りて、深く感謝の意を表したい。なお、本稿の意見は筆者たち個人に属し、日本銀行の公式見解を示すものではない。また、ありうべき誤りはすべて筆者たち個人に属する。
- *1日本銀行金融市場局 E-mail : satoshi.kinugasa@boj.or.jp
- *2日本銀行金融市場局 E-mail : teppei.nagano@boj.or.jp
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