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エンゲル曲線に基づいた日本のインフレ率に関する考察

2020年3月23日
小黒曜子*

要旨

本稿では、エンゲル曲線を用いたマクロ的なアプローチにより、日本における生計費の上昇率を推定し、その結果を消費者物価指数でみた公式インフレ率と比較した。分析の結果、エンゲル曲線から推定されたインフレ率は、1985年から2013年前後までは公式インフレ率よりも低かった一方で、2013年前後以降は公式インフレ率よりも高かったことが示された。本稿の分析は、エンゲル曲線の安定性を前提とし、いくつかの仮定に依存している点には留意が必要であるが、分析結果は代替的なデータ等に対しても概ね頑健であった。

本稿は、東京大学金融教育研究センター・日本銀行調査統計局による第8回共催コンファレンス「近年のインフレ動学を巡る論点:日本の経験」(2019年4月15日開催)での報告論文を改訂したものである。
本研究は、宮田研究奨励金の助成を受けている。本稿の執筆にあたり、日本銀行金融研究所の関根敏隆氏、慶応義塾大学の白塚重典氏、日本銀行決済機構局の宇野洋輔氏、調査統計局の奥田達志氏、桜健一氏、中島上智氏、国際決済銀行のAndrew Filardo氏には大変有益なコメントを頂いた。また、東京大学金融教育研究センター・日本銀行調査統計局・第8回共催コンファレンスへの参加者からも多くのコメントを頂いた。ここに記して感謝の意を表したい。ただし、あり得るべき誤りは、全て筆者個人の責任に帰するものである。なお、本稿の内容と意見は筆者の個人的な見解を示すものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  • 明海大学 経済学部 E-mail : yoguro@meikai.ac.jp

日本銀行から

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