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新興国への資本フローを巡るリスク―パネル分位点回帰を用いた検証―

2021年4月19日
上田一希*1
渡邉友弘*2
乗政喜彦*3

要旨

本稿では、パネル分位点回帰を用いて、16か国の新興国を対象に、ストレス時の資本流出リスク(Capital Flows-at-Risk : CFaR)を分析した。本稿の分析からは、先進国の金融環境や米国の金融政策スタンスの変化は、一部の国から大幅に資本が流出するリスクに影響を及ぼすことが示された。とくに、米国の金融政策スタンスが変化する局面で、先進国の金融環境がタイト化した場合、新興国の資本流出リスクに大きく影響することがわかった。また、新興国の政府債務の拡大は、構造的な脆弱性として、ストレス時の資本流出リスクを高める重要な要因であることも明らかとなった。さらに、債券投資については、新興国の政府債務残高が高まると流出リスクが高まりやすい一方、銀行貸出を中心とするその他投資については、先進国の金融環境が悪化すると流出リスクが高まりやすいとの傾向が示された。

JEL 分類番号
E52、F32、F34、F37

キーワード
資本流出リスク(CFaR: Capital Flows-at-Risk)、グローバル要因、ローカル要因、パネル分位点回帰、相対エントロピー

本稿の執筆に当たっては、上野陽一氏、遠藤祐司氏、加藤直也氏、高橋耕史氏、武田直己氏、中島上智氏、長野哲平氏、福永一郎氏の各氏および日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂戴した。記して感謝したい。ただし、本稿に示される内容や意見は筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。また、ありうべき誤りは全て筆者らに帰する。

  1. *1日本銀行国際局 E-mail : kazuki.ueda@boj.or.jp
  2. *2日本銀行国際局(現・日本生命保険相互会社) E-mail : watanabe52628@nissay.co.jp
  3. *3日本銀行国際局 E-mail : yoshihiko.norimasa@boj.or.jp

日本銀行から

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