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2022年の国際収支統計および本邦対外資産負債残高

2023年7月10日
日本銀行国際局

要旨

  • 2022年の経常収支は、第一次所得収支の黒字が拡大したものの、貿易収支が7年ぶりに赤字となったほか、サービス収支の赤字が拡大したため、前年対比で黒字縮小となった(21年21.5兆円→22年11.5兆円)。
  • 項目別にみると、貿易収支は、海外経済が回復する中で輸出が増加したものの、原材料価格の高騰等により輸入が大きく増加したことから、赤字に転化した。サービス収支は、旅行収支の黒字が小幅ながら拡大したものの、その他業務サービスで赤字が拡大したことなどから、赤字が拡大した。一方、第一次所得収支は、直接投資収益の黒字が拡大したことを主因に、黒字が拡大した。
  • わが国では、秋以降、水際対策の緩和を受けて増加傾向にあった旅行収支(受取)について、いくつかの国を目的別にみると、観光目的と留学目的で新型コロナウイルス感染症が与える影響は異なっていた(補論1参照)。直接投資収益(受取)を業種別・地域別にみると、前年対比では大洋州の鉱業やアジアの製造業等が増加に寄与した(補論2参照)。
  • 金融収支については、経常収支の黒字に伴って純資産増加となったが、増加幅は縮小した(21年16.8兆円→22年6.5兆円)。項目別にみると、直接投資において純資産増加となった一方、証券投資では純資産減少となった。
  • 直接投資を目的別に分類してみると、対外直接投資では、海外事業拡張のための増資引受け目的の投資がウェイトを高めた。一方、対内直接投資では、引き続きM&A型の投資のウェイトが高い(補論3参照)。対外証券投資について、国際収支統計とあわせて「対外及び対内証券売買契約等の状況」をみると、ヘッジコストの上昇等に伴う売却が指定報告機関以外にまで広がっていた様子がうかがわれる(補論4参照)。
  • 国際収支統計を資金フローの観点からみると、経常収支の黒字縮小、対外証券投資の処分超幅拡大、対内証券投資の処分超転化などを受けて、その他投資は前年と同程度の純資産増加となった(補論5参照)。
  • 2022年末の対外純資産残高は、円安により外貨建て資産の円建て評価額が増加したことを反映して増加し、過去最大となった(21年末417.9兆円→22年末418.6兆円)。対外純資産残高は、主要国の中で引き続き最大規模となっている。
  • 統計基準の点では、2025年に予定されているIMF国際収支マニュアル改訂に向けて、多くの論点について国際的議論が行われており、暗号資産の計上方法などが検討されている(補論6参照)。

補論目次

補論1
旅行収支の目的別の特徴 -各国比較-
補論2
業種別・地域別にみた直接投資収益(受取)
補論3
目的別直接投資の動向
補論4
対外証券投資の動向
補論5
2022年中の資金フローの特徴
補論6
IMF国際収支マニュアル改訂に向けた動き

日本銀行から

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行国際局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

国際局国際収支課国際収支統計グループ

E-mail : boj-bop@boj.or.jp