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日本銀行国際局 国際連携課の仕事 「国際協調」を支える現場の取り組み(2025年12月25日掲載)

グローバル化が進み、日本経済が海外の金融経済情勢の影響を一段と受けやすくなっている中、世界の中央銀行をはじめとした金融・経済に関わる幅広い組織と連携し、日本銀行の国際的な活動を支えているのが国際局国際連携課です。中央銀行総裁が出席するG7やEMEAP(エミアップ)(注1)などの国際会議の準備・サポートをしたり、実務者会合に参加したり、日頃から国内外の関係当局と連携して情報収集や信頼関係の構築に努めています。業務に当たってどのようなことを心がけ、実践しているのか、それぞれが日本銀行の顔として国際協調の最前線に立つ同課の職員たちの、それぞれの思いや活動の詳細をご紹介します。

  • (注1)オーストラリア、中国、香港、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイの11カ国・地域が参加。1991年に日銀の提唱で発足。1996年以降は総裁会合が毎年開かれており、2025年は節目として報告書「EMEAP総裁会合の30年:過去の成果と今後の優先事項」も取りまとめられた。

多種多様な国際会議を企画調整

2023年G7中央銀行セッション参加者が会議テーブルに着席している写真。参加者は一斉に画面前方を見ている。会場後方には参加国の国旗が掲げられている。

ホスト国として対応した2023年G7中央銀行セッション
(写真出典:財務省・日本銀行)

約30人から成る国際連携課は2014年にできた比較的新しい課です。それぞれ担当する国際会議を持ちながらも、例えば国内で会議を開く場合などは一体で取り組んでいます。

主な定例の国際会議としては、グローバルでは、▼G7財務大臣・中央銀行総裁会議(注2)、▼G20同(注3)、▼BIS(国際決済銀行)の中央銀行総裁会議、▼IMF(国際通貨基金)の国際通貨金融委員会・年次総会などがあり、アジアでは、▼東アジア・オセアニア中央銀行役員会議「EMEAP」、▼東南アジア諸国連合「ASEAN」(注4)に中国・日本・韓国を加えた「ASEAN+3」の財務大臣・中央銀行総裁会議、などがあります。

国際会議がこれだけ多いので現場は多忙を極めますが、同課の竹村浩希課長は「事前の入念な準備が会議の成否を決めると言っても過言ではありません」と気を引き締めます。

「重要なのは自国の利益と国際的な課題解決とのバランス。国際会議では、総裁・役員だけでなく、事前調整などで課長や企画役などさまざまなレベルで議論をするのですが、当然ながら、日本として統一した意見でなければいけません。最近は、気候変動、地政学的リスクの影響、AI、ステーブルコイン(注5)などが重要課題となっています。金融経済情勢に加え、こうした課題についても幅広い観点から検討し、会議に臨むように心がけています」

  • (注2)カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の7カ国。
  • (注3)G7の7カ国に、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、欧州連合・欧州中央銀行、アフリカ連合を加えた枠組みのこと。
  • (注4)ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの10カ国が参加。
  • (注5)価値が安定的で決済手段として利用され得る暗号資産のこと。

議長国として会議を運営することも

国際会議では、日本銀行が議長国になることもあります。最近では、EMEAPの中で域内のマクロ経済モニタリングと危機管理メカニズムの中核を担っている通貨金融安定委員会(MFSC)の議長を、国際担当理事が2026年まで2年の任期で務めています。

議長国の役割は、▼アジェンダの企画立案、▼ゲストスピーカーの選定などの企画、▼取りまとめ方針の策定、▼会合でのプレゼン準備および発表、▼議事要旨の作成など、会議の運営全般を主導することです。

MFSCのアジェンダの企画・立案を担当した企画役補佐の川澄祐介さんは「MFSCでは中央銀行に関わる幅広いテーマについて中央銀行幹部が活発に議論しています。議長国が設定するアジェンダの内容が会合当日の議論の充実度を左右しますので、責任の重さを感じます。隔週で参加国とのオンライン会議を行い、丁寧に準備を進めました。また、アジェンダの設定には、国内外の金融経済情勢のほか、AIを巡る話題など新たなテーマも丁寧にフォローしておく必要があります」と口にします。また、「国際会議の円滑な運営には、海外の中央銀行との事前調整も大切ですが、行内の連携も重要です。EMEAPでは、銀行監督や決済システム、IT関連の議論も行われるため、行内の関係部署と連携して準備を進める必要があります。また、海外出張やオンライン会議も多く、必要な機材の準備やトラブル対応など、課内のサポートに大いに助けられています」と話します。

緊急時に備えた制度設計にも貢献

2025年ASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議の実務者会合参加者が一堂に会している写真。参加者は一斉に画面前方を見ている。参加者の背後のスクリーンには「3RD ASEAN+3 TASK FORCE MEETING」の文字が見える。

2025年ASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議の実務者会合
(写真出典:Ministry of Finance, Malaysia

アジアでの金融協力においては、1997年のアジア通貨危機を契機に作られたASEAN+3も重要な柱です。

東アジアの通貨・金融問題を広く議論する中、2000年には、経済的な危機を支え合う仕組みとして2国間通貨スワップ契約からなるチェンマイ・イニシアティブ(CMI)を設立。その後、発動時の手続きを共通化し多国間での支援を迅速にするマルチ化や、資金規模の倍増などの機能強化を図っています。日本銀行は財務大臣の代理人として、スワップ契約の締結に関する事務を行っています。

2025年5月には、パンデミックや自然災害などの外部からの影響に起因する外貨不足に対応する「緊急融資ファシリティ(RFF)」が正式に導入されました。日本の主導で実現に至ったもので、災害の多いアジアにおいて、迅速な危機対応などにつながるものと期待されています。

日本銀行でその実務的な制度設計に関わったのは、企画役補佐の佐伯加奈子さんです。語学力と大学で学んだ法律の知識を生かして、条文の整合性などを確認していきました。

「運用の細部まで関係国との間で取り決めておかないと、いざ発動する際に対応が遅れることがあり得ます。粘り強く、細かな点まで見ていった結果、外国の方々から『シャープ・アイを持っているね』『日本が見てくれているから安心』などの言葉をいただきました。地道な仕事ですが、国際金融協力に貢献できていると実感することができます」

総裁・役員のサポートと行内への情報還元

このように国際協調に貢献する同課ですが、日々の業務としては、やはり国際会議への参画に多くの時間を割いています。冒頭で触れたように、会議は頻繁です。例えば、世界の中央銀行の総裁が集まるBISの中央銀行総裁会議は隔月開催。加えて、IMFの会合が年2回あります。さらにアジアでの会議やG7・G20があり、そのほとんどに出席する総裁や役員のサポートは重要な業務です。

「総裁・役員の発言案や、会合に臨むにあたっての対処方針を用意するのが私たちの役割。金融経済情勢は目まぐるしく変化するので、各部署と協力して進めています」

と、説明するのは、企画役補佐の立野励さんです。会議の後には、逆に、行内に情報のフィードバックも行います。

「主に、会議の模様や重要なトピックについて行内に情報を還元しています。中央銀行の総裁たちの会議で行われる金融経済情勢の率直な意見交換で得られた情報は、政策運営においても重要な情報になっていると聞いています」

と、立野さん。頻繁に開催される国際会議については「中央銀行や当局同士の連携は世界の金融経済を支える上で不可欠なもの。会議への参加を通じてトップ同士が信頼関係を構築しておくことで、迅速な危機対応が可能になると思います。そういうことに自分の仕事がつながっているというのはやりがいを感じます」と話してくれました。

  • 会議中の植田総裁を国際連携課の課員がサポートしている様子を撮影した写真。

    会議中の総裁・役員サポート
    (写真出典:Bank of Thailand

  • 2025年IMF国際通貨金融委員会で発言する植田総裁の写真。

    2025年IMF国際通貨金融委員会
    ©IMFPhoto/Joshua Roberts

南アフリカで1日中コミュニケーション

G20などの国際会議では閉会後に共同声明(コミュニケ)などを出すのが通例ですが、その事前調整を行うのも同課の業務の一つです。総裁や役員が参加する会議体の傘下に実務者レベルの会合が多数あり、共同声明や報告書などに関する具体的な議論や、情報収集、各国当局との認識の共有に努めています。

担当する池永頌子さんは「特にG20は参加国それぞれの国際的な役割や関係性、経済情勢などが違うので、その調整に時間がかかります。ですので、日本だけでなく、世界全体を見渡す視点を持ち、どういうところなら合意できるかを探りながら、粘り強く交渉しています」と話します。

2025年のG20議長国は南アフリカ。6月に傘下の実務者会合に参加した池永さんは、まず一つの部会に行き、帰国後、1週間後に再び南アフリカに飛ぶというハードな日程をこなしました。現地では、到着直後でフライトの疲れがある時であっても、関係者を見つけては話しかけ、朝食、コーヒーブレイク、ディナーとあらゆる場面で各国の代表者と話し続けました。

「交渉や議論を円滑に進めるために大事なことは、最終的に人として信頼されること。信頼があれば、『この人が言うなら受け入れようか』と、主張が理解されやすくなっていきます。国際情勢がめまぐるしく変化する中で、若手ながら、日本の代表として議論を進める責任の大きさを感じますが、国際的な舞台で日本のために働きたいと思って入行したので、今の仕事に充実感を持っています」

各国代表団を専属でサポートするリエゾン

2025年EMEAP総裁会合参加者が一堂に会している写真。参加者は一斉に画面前方を見ている。参加者の背後のスクリーンには「30TH EMEAP GOVERNORS' MEETING」の文字が見える。

2025年EMEAP総裁会合
(写真出典:Bank of Thailand

海外に出向いていく一方、大規模な国際会議を日本で開く場合など、各国の要人・関係者を受け入れることもあります。その期間中、各国の代表団が快適に過ごせるように手配・サポートすることが重要です。

到着から出国までの移動、宿泊・食事など、「ロジ」と呼ばれるこの手配を担うのも同課です。会合当日は、リエゾンと呼ばれる案内係を各国に提供し、専属でサポートします。

2023年5月に新潟県新潟市で開催されたG7財務大臣・中央銀行総裁会議でイタリア中央銀行のリエゾンを務めたのは、若手の高森佐智さんです。事前に担当者と連絡を取り、特別な食事のニーズはないかなどを確認していきました。また、自主的にイタリア語の挨拶などを覚えて、準備したといいます。

「大きなトラブルはありませんでしたが、こちらの広報担当者と面談したいとおっしゃるなど、突然のご要望もありました。次の予定もあるので気持ちは焦るのですが、限られた滞在時間をより有意義なものにするため、ご希望をむげにはできません。上席と相談しながら、面談の調整を行いました」

と、振り返ります。その後、同年7月に横浜市で開かれたEMEAPではフィリピン中央銀行も担当し、「どこまで関わるべきか距離感の難しさを感じましたが、何でも答えられるように、日本銀行や日本経済のことをもっと学びたいと思う機会でした」と各国トップとの交流に刺激を受けたようでした。


「国際連携」と聞くと華やかな印象を受けますが、こうしてみると、地道な仕事の積み重ねの上に成り立っていることが分かります。竹村課長は最後にこうまとめてくれました。

「われわれの一番の責務は、総裁・役員が出席する会議を内容・ロジ面でしっかり支えること。良い準備ができれば、会議での意見交換が活発になり、他の会議の参加者からも良い発言を引き出すことができるなど会議がより有意義なものとなります。その成否は如実に表れるのでプレッシャーもありますが、私たちの用意した意見が国際的な場で取り上げられるなど、大きなやりがいもあります。EMEAPでは引き続き議長国を務めますし、2026年はフィリピンと共にASEAN+3の議長国になります。会議によって関わり方や課題は異なりますが、会議を成功させたいという気持ちは同じ。今後も課員一丸になって、国際協調に貢献していきます」

(肩書などは2025年9月時点の情報をもとに記載)